LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(20)

GM:
 敵は“不意打ち”を仕掛けてきました。《ハンター技能レベル+知力ボーナス+2D》による目標値12の不意打ち判定を行ってください。

一同:
(コロコロ)失敗。

GM:
(コロコロ)セルダルとテジーも失敗です。では、敵の不意打ちが成功したので、少し時間をさかのぼって、不意打ち実行中の行動から処理していきます。

森に潜む敵(GM):
 まず、敵は“迎撃移動”で位置取りを調整して……。そこから、一気に“全力移動”でアゼルの真ん前まで突進していきます。

アゼル:
 ぬおッ! まさか、いきなりモノケロース!?

GM:
 敵が“全力移動”を選択して、あなたたちの前に姿を現したので、この段階で“不意打ち”の効果は終了です。ここから各自行動できるようになります。それと、敵の姿が明らかになったので、目標値7・9・11の動植物知識判定を行ってください。

イーサ:
(コロコロ)10。

アゼル:
(コロコロ)11で完全成功。

GM:
 では、イーサとアゼルはその動物がムーンベアであることがわかりました。そして、完全成功したアゼルにはムーンベアの戦闘データを渡しておきます。

アゼル:
 うおー。ムーンベアの能力ランク、結構高いんだけど!

GM:
 そりゃあ、熊ですからね。普通の人間がかなう相手ではありませんよ。

ムーンベア
 森林に生息する体長1.5メートルを超える熊で、体毛は黒く、胸に白色の三日月形の斑紋があるのが特徴です。戦闘レベルが4と高いうえに、力が強く、動きも素早いため、よほど腕に自信のないかぎりは、戦闘に入ることを極力避けた方が良い相手です。

テジー(GM):
「こんなに接近されるまで、ムーンベアの存在に気づけなかったとはッ」と、思わずテジーが悔恨の言葉を口にします。

エルド:
「なるほど。これが熊ですか」

GM:
 あ、エルドも熊くらいは知ってていいですよ。ただ、ムーンベアだと識別できなかっただけで……(笑)。

ムーンベア(GM):
 では、あなたたちの手番が回ってくる前に、ムーンベアの攻撃です。アゼルに対して爪攻撃。命中値は(コロコロ)14!

アゼル:
 くぅ。命中値、高いな。盾でディフレクト。(コロコロ)やったッ! 14でディフレクト成功ッ! お返しにクルト・ソードで攻撃。(コロコロ)命中して物理ダメージ6点。

ムーンベア(GM):
 それは、ムーンベアの毛皮で止まりました。肉を切り裂く感覚はありません。

 アゼルの片手剣による攻撃では、ムーンベアの厚い毛皮をそうやすやすと貫くことはできません。それに対してムーンベアの爪は、鎖帷子のうえからでもお構いなしにダメージを与えてきます。

ムーンベア(GM):
 アゼルに対するムーンベアの爪攻撃。(コロコロ)今度は命中して、ダメージは8点です。

アゼル:
 1点通った。やばいな、押され気味だ……。

イーサ:
 任せろ。“プロテクション”で防御力を強化してやる。(コロコロ)あ……。1ゾロで発動せず(汗)。

アゼル:
 おいーッ! おいーッ!

エルド:
 うーん、嫌な流れですね……。

 場の流れが悪いほうへ向かいつつあるように感じられたそのとき、この男がその不穏な空気を一瞬で吹き飛ばしてしまいました。

セルダル(GM):
「耐えろアゼル。オレが仕留めるッ! 食らえッ!」
 熊の背後に回っていたセルダルが“渾身の一撃”を放ちます。(コロコロ)命中して……。おおッ! 2回クリティカルして、合計23点ダメージ!

ムーンベア(GM):
 そのセルダルの一撃で、ムーンベアの生命点は一気に半分を切りました。士気判定は(コロコロ)失敗。ムーンベアは大きくのけ反ると、恐怖に怯えたような表情を浮かべ、そのまま逃走に入ります。

一同:
 すげーッ!

 本来であれば、NPCがPCを差し置いて活躍するのはあまり好ましくないのですが、セルダルはこのパーティーで唯一の正当派物理アタッカーなので、ここはやむを得ないでしょう。

GM:
 ムーンベアは離脱しようとしていますが、阻止しますか?

アゼル:
 “離脱阻止”はしない。ここで余計な消耗はしたくないしな……。

セルダル(GM):
 では、セルダルは「手負いの熊を逃がすなッ!」と叫んで“離脱阻止”を試みます。

アゼル:
 お、そうか? セルダルがそう言うなら、俺も“離脱阻止”しておこう。

ムーンベア(GM):
 ムーンベアの離脱時の回避値は(コロコロ)16です。

アゼル:
 うおッ。かなり高いな。(コロコロ)だめだ。離脱阻止失敗。
「速いッ!」

セルダル(GM):
(コロコロ)セルダルもムーンベアの離脱を阻止できませんでした。

GM:
 ではここで戦闘終了です。30ウェイト内に終了したので、戦闘疲労はたまりませんでした。

セルダル(GM):
 ムーンベアの姿が見えなくなったところで、セルダルが舌打ちします。
「まずいな……。逃がしちまったか……。熊はかなり頭がいいんだ。オレたちのことを覚えていて、仕返しにくる可能性がある」

エルド:
「そうなんですか……」
 アゼルさん、気を付けてくださいね。アゼルさんはすでに味見されてますから(笑)。

アゼル:
 まあ、あまりうまい肉じゃないだろうから大丈夫だろ(笑)。しかし、“渾身の一撃”は強いな。

イーサ:
 ああ。それはもちろんそうだが、防御力の高いアゼルが敵を引き付けて、その背後から攻撃力の高いセルダルが仕留めるってのは、なかなかいいコンビネーションだったんじゃないか? この戦法でいけば、かなり強い相手でも倒せそうだ。

 ギュリスが口を酸っぱくして言っていた、組織力というのが少しだけ垣間見えた戦いでした。そして、ムーンベアを退けた一行は、19時半過ぎにD-5地点の泉へと到着します。

ウルム樹海NZ地点拡大地図2

セルダル(GM):
(コロコロ)足跡追跡をしていたセルダルが、泉の周囲にムーンベアの足跡を発見しました。
「ここら一帯に、熊の足跡があるな……」

エルド:
「血の跡とかはありませんでしたか?」

セルダル(GM):
「血の跡は見当たらねぇな。今さっきついた足跡ってわけじゃなさそーだ」

テジー(GM):
「この泉を拠点として熊が縄張りを作っていた可能性が高いな。近くに巣穴があるかもしれない」

アゼル:
「なるほど……。しかし、予定じゃこの地点で野営するんだよな? それって危険じゃないか?」

イーサ:
「そうは言っても、夜にこれ以上移動するのも危険だろ。ここは覚悟を決めて、また熊が襲ってきたら返り討ちにするまでだ」

GM:
 今のところ、周囲にモノケロースやそれ以外の大型動物の気配は感じられません。泉の周りに、小鳥やリスやウサギなどの小動物の姿が確認できるくらいです。

アゼル:
 んッ!? ウサギがいるだとッ!? それはヤバいな……。十分注意しろッ!

エルド:
 え? なんでですか?

イーサ:
(アゼルの意図を察して)ああ、殺人ウサギのことを警戒してるのか(笑)。

GM:
 バッカな事言うんじゃない! LOSTの世界に殺人ウサギはいませんから! ……まあ、今のところは(笑)。

殺人ウサギ
 モンティ・パイソン・アンド・ホーリーグレイルに登場する、見た目は可愛いもののとんでもない戦闘能力と凶暴さを誇るモンスター。古くはWizardryにボーパルバニーという名称で、最近ではドラゴンズクラウンにキラーラビットという名称で登場しました。

 どうでもいいネタだったのでリプレイではカットしようかと悩みましたが、往年のTRPGプレイヤーは共感できそうなネタであることと、2013年にモンティ・パイソンが再結成されたことを祝して一応残しました(笑)。

アゼル:
 ウサギは外見だけじゃ、強敵なのか雑魚なのか見分けがつかないからな(笑)。

エルド:
 ……まあ、冗談はほっといて、今晩はここで休むってことでいいですよね? だったら、野営の準備を始めます。

 一行は、大胆にも熊のテリトリー内と思われる場所を野営地と定めました。とはいっても、テントを持ってきていなかったため、たき火を囲んだだけの野営となります。


 夕食をとり終えると、一行は2人1組の3交代制で見張り番を立て、翌日6時まで休むことにしました。そして、ここで夜間の見張り番お馴染みの、交流タイムが始まります。

セルダル(GM):
 見張り番の間、セルダルは熊を一撃で撃退した両手剣の手入れをしています。

エルド:
 じゃあ、それを見て、「セルダルさん、さっきの一撃は凄かったですね。あの大きさの熊が一撃で逃げて行きましたもんね」と声をかけます。

セルダル(GM):
「ああ。オレもあの一撃には手ごたえを感じた。あんな感じの一撃が常に出せるよーになればいいんだけどな……。お目当てのモノケロースって奴は熊よりも強いんだろ? だったら、もっと一振りに磨きをかけねぇとよ」そう言うと、セルダルは両手剣を大きく一振りしました。

エルド:
「きっと、セルダルさんだったら、さらに上までいけますよ」

セルダル(GM):
「あんまりおだてんなよ」と言いつつも、セルダルはまんざらじゃなさそうにニコニコしています。

シーン外のアゼル:
 まったくだ。あまり死亡フラグを立ててやるなよ(笑)。

GM:
 ……。

 野盗と戦ったときの何気ない発言でもそうだったのですが、アゼルのプレイヤーはセルダルに死んでほしいのでしょうか(笑)?

セルダル(GM):
 セルダルは、何か吹っ切れたような顔をしています。

エルド:
「セルダルさん、だいぶ表情がかわりましたね」

セルダル(GM):
「そうか? 鏡がねぇから自分じゃわかんねぇけどな」そう言うと、セルダルは泉のほとりまで歩いて行き、水面に映った自分の顔を眺めました。


GM:
 続いて、イーサとテジーが見張り番を務めます。

テジー(GM):
 たき火に枯れ枝を投げ入れつつ、テジーが口を開きました。
「1つ聞いてもいいだろうか?」

イーサ:
「ん? なんだ?」

テジー(GM):
「オマエたちは、なぜこんな危険なことをしようとする? これまでにも、富を得るためにモノケロースを狩ろうとした者はいた。しかし、そういった輩は、誰一人として森から帰ってこなかった……。オマエたちにとって、セルピルとはそんなに大切な女なのか?」

イーサ:
「……いや、彼女とは最近あったばかりだし、ほとんど会話をしたこともない。ただ――」(そこまで言ったところで、言葉につまり無言になってしまう)

GM:
 ……?

イーサ:
「……ただ……。うーん……」

テジー(GM):
「す、すまない! 言いたくないことなら答える必要はないんだ。つまらないことを聞いてしまった。他人には話したくないこともあるものな。ワタシとてそうだ。すまない!」

シーン外のアゼル&エルド:
(爆笑)

イーサ:
「いやッ(汗)。ただ、困っている者を見過ごせないだけだ。これまでの道中でも――」

テジー(GM):
(手でイーサの言葉を制して)
「い、いいんだ! 無理に話す必要はない。そこまで詮索するつもりではなかったんだ。すまない。ワタシが悪かった」

シーン外のアゼル&エルド:
(爆笑)

テジー(GM):
「……なんというか、ワタシは人と話すのがあまりうまくないんだ。これまで森に入ってばかりで、そういった機会がほとんどなかった……。こうして顔を突き合わせている以上、何か話をしていなくてはならないのではないかと思ったんだが、慣れぬことをしても良いことはないな……。よし、あらためて周りを警戒することに集中するとしよう。ワタシはワタシの役目を果たすだけだ」

イーサ:
「あ……。ああ……」
 別に話したくなかったわけじゃないんだがなぁ……(汗)。

 思いがけず、テジーの変な一面を垣間見たイーサでした(笑)。


 翌日の朝を迎えてからも、一行のモノケロース探索は続きます。一行は、C-4、B-3、B-4と進み、13時半を過ぎたころに、4つ目の泉があるA-3地点へと足を踏み入れました。

ウルム樹海NZ地点拡大地図3

イーサ:
 A-3地点での足跡追跡は(コロコロ)9。

GM:
 ならば、イーサは泉に近づいて行く途中で、丸太のような形の足跡を発見しました。ここで全員、聞き耳判定をどうぞ。目標値は10です。

アゼル:
(コロコロ)11で成功!

GM:
 では、アゼルは「ワオーンッ!」という狼の遠吠えと、それとは別に「ムォーッ!」というくぐもった音を耳にしました。

アゼル:
「ん、なんだ、この音は? もしかすると、このうめき声のような音は……」

テジー(GM):
 テジーがアゼルの言葉に相槌を打ちます。
「まず間違いない。グレイウルフの遠吠えに交じってモノケロースのいななき声が聞こえる」

アゼル:
 モノケロースのいななき声はどっちのほうから聞こえてくるんだ?

GM:
 まさに進行方向ですね。狼の遠吠えも同じ方向から聞こえてきていますが、モノケロースの鳴き声のほうが近い場所から聞こえるようです。

エルド:
 じゃあ、このまま進み続ければ、いよいよモノケロースとの戦闘ってわけですね。

モノケロースの鳴き声(GM):
「ムォーッ! ムォーッ!」

エルド:
「ところで、皆さん。お昼の時間を過ぎたわけですが、昼食はどうしましょう?」

アゼル&イーサ:
(爆笑)

アゼル:
 このタイミングで昼食かよ(笑)!

セルダル(GM):
「さすがにここで悠長にメシを食い始めるのはまずいんじゃねぇか? その間に遠くに移動されちまったら、笑い話にもならねぇぞ」

エルド:
「それもそうですね(笑)」

GM:
 もし、疲労のことを心配しているのであれば、今のところ誰も戦闘時の判定にペナルティが発生するほどの疲労はたまってませんよ。

エルド:
 了解です。

アゼル:
 いまいる場所から周りを見渡しても、モノケロースの姿は見えないのか?

GM:
 木々がうっそうと茂っていますからね。まだ泉も視界には入っていません。

テジー(GM):
「ここから泉までは、あと500メートルといったところだ」とテジーが教えてくれます。

イーサ:
「よし、ならばここで戦闘準備をしておこう」

エルド:
「了解です」
 それじゃ、クロース・アーマーを脱ぎはじめます。

テジー(GM):
 唐突に装備を脱ぎ始めたエルドに対して、テジーから「なぜ脱ぐッ!?」と突っ込みが入りました(笑)。

イーサ:
「こいつの趣味なんだ。許してやってくれ」

エルド:
「誤解を招くような変なフォローはやめてください(笑)」
 クロース・アーマーに替えてマジック・ローブを装備します。これで“瞑想”によって得られる1ウェイトあたりのマナが1点増えました。そのかわり、ダメージ減少値はさらに貧弱になって、まさに紙装甲。

イーサ:
 それじゃ、俺もここで“プレアー”を唱えておく。(コロコロ)発動。

GM:
 さて、事前準備も終わったようなので、ここらへんで戦闘マップを出しておきましょうか(と言って戦闘マップを広げていく)。

ウルム樹海A-3地点

一同:
 広い!

GM:
 まあ、モノケロースが“突撃”を使うためには、最低限これくらいの広さは必要ですからね。

アゼル:
 1、2、3、4、5……(とマス目を端から数えていく)。うおー。




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