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宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話 ティータイム

 そんなこんなで、宮国紀行の第4話「ウルム樹海の一角獣」をお届けしましたが、いかがでしたでしょうか?

 今回は再びウィルダネス・アドベンチャーとなったわけですが、前回やろうとしてできなかったダンジョン・アドベンチャーの要素を詰め込もうと、ウルム樹海内の探索はあえてダンジョン風の処理にしてみました。バリエーションをつけるという意味では良かったと思います。毎回似たような内容では、飽きられてしまいますからね。しかし、PCに探索系技能を持った者がいなかったために、採用される判定値がほとんどNPCのものとなってしまったことは残念でした。

 物語の内容に関しては、偶然見つけた被毒者セルピルを救うという話になりましたが、これを無視してイルヤソールを目指して北上するというルートも用意してありました。その場合には、まったく異なるイベントが発生することになっていたのですが、セルピルを救うルートのほうが本ルートだと思っていただいて間違いありません。まあ、カルカヴァンを北上してる時点で、すでにキャンペーン開始時に想定していた正規ルートからは外れているのですが(笑)。

 流れとしては単純な内容となった第4話ですが、その実、とても重要な情報が組み込まれていました。それが、バリス教団にまつわる話です。途中でイーサが「サブリのことを中途半端な形で終わらせてしまったことが気がかりだ」というようなことを言っていましたが、GMとしてはそれをそのまま放置しておくつもりなど毛頭ありません。当然、あの手この手で収束させようと試みます。そして明らかになるサブリの積荷。第1話からの伏線が、徐々に回収されていきます。まあ、本当だったら、記憶術判定なんてせずに、プレイヤーに気がついて欲しかったところでしたが、ちょっとわかり難かったですかね……。

 また、話自体は単純でしたが、途中で発生した戦闘において、最初は各自が好き勝手に動いたことによって苦戦し、ギュリスの説教をうけて連携を取るようになった後で、見事にその成果を示してみせた流れなどは、それだけでも盛り上がる展開となりました。実は、アゼルに盾を装備するように促したあとは、モノケロース戦まで上り調子でいくかなと思っていたのですが、野盗戦であのような結果だったことから、想定外のギュリスの説教が追加されることになりました。

 さて、今回最大の衝撃でもあったニルフェルの離脱についても少し触れておきましょう。NPCそれぞれにPCたちに対する好感度が設定されているということは以前にも書きましたが、ついにニルフェルのアゼルに対する好感度がマイナスに突入しました。これを読まれている方のなかには、「え? アゼルって、そこまでニルフェルに嫌われるようなことしてたっけ?」と思われる方がいるかもしれませんが、ニルフェルのアゼルに対する好感度は、何もしないままストーリーを進めていくと減っていくという設定なのです。あと、それは別にしても、やっぱりアゼルはニルフェルに嫌われるような行動をしていたと思います(苦笑)。何もせずともニルフェルの好感度が下がっていく設定だった理由については、またあとで明らかになりますが、そのようなわけで、ここでニルフェルとはお別れです。

 思えば、ニルフェルの存在がアゼルにとっての癌だったかもしれません。ニルフェルを王都に送り届ければ良いという安直な目的をアゼルに与えてしまったことで、アゼル自身のヒーローとしての自立を妨げることとなってしまいました。そして、そのアゼルに守られる立場になってしまったニルフェルもまた、活発に行動できなくなってしまいました。当初の予定では、ニルフェルはもっと快活な女性であったはずなのです。たとえるなら、毒気を抜いたギュリスといった感じで。ですが、彼女の立場上、やっぱりアゼルよりも活躍させるわけにいかないじゃないですか……(笑)。結果的に、お互いに足を引っ張る形になってしまっていたことを、今回の話の中でギュリスが指摘した格好となりました。今後、その縛りがなくなったことで、アゼルとニルフェルはどう変わっていくのか……。その変化を見るのが、楽しみである反面、怖くもあります。

 最後に各PCについての感想などを。

 これまで、アゼルは青臭い正義や理想を振りかざしてはいたものの、それでも自分の信念を貫いてきました。なので、実力さえ伴えば、将来的に利己的欲求や打算で生きている者たちには真似のできない何かをやってくれるのではないかという期待を抱かせてくれていました。ところが、今回そのアゼルが、面倒だからという理由でモノケロースの仔馬を母馬もろとも殺そうとしたり、セルピルたちが窮地に陥っているのを知りつつ見過ごそうとしたりと、打算をみせはじめます。これまでにもプレイヤーとして打算的な意見をもらすことはありましたが、PCとしてその行動をとらせたことは今回がはじめてだと思います。

 物語の流れを追ってみると、アゼルは悪い意味で大人になりつつあります。このまま成長していった場合、その他大勢の人々の中に埋没していってしまうでしょう。しかし、成長物語に挫折や寄り道はつきものです。ニルフェルから「自分自身が本当にやりたいと思えることをみつけて」と言われたアゼルは、これから自分自身を見つめ直していくことでしょう。そのときに、アゼルが何を見つけて、なにを成そうとしていくのか。アゼルにとっては、ここからが本当の旅のスタートです。……ということになれば良いんだけどなぁ(笑)。

 エルドは相変わらず好き勝手している印象です。その中で、異性に対して興味深々な思春期の少年らしさや、死を恐れない達観した覚悟や、モノケロースの命を救おうとする優しさなどの意外な一面を、少しずつではあるもののみせはじめました。キャラクター性がつかみにくいため、いまいちエルドには共感しづらいのですが、今後その全容が明らかとなったとき、あらためてエルドの行動を見返すと、面白い何かが見えてくるのかもしれません。……ですが、保証はできません。なにせ、エルドはプレイヤーからしてルーニー気質ですから(笑)。

 そして、イーサ。今回からパーティーのリーダーを務めることになりました。それも、アゼルから押し付けられる形で。正直、イーサは参謀タイプであり、リーダーシップを発揮するタイプではありません。ですが、世の中には役割効果というものもあるようですし、いまいち地味なイーサがこれを切っ掛けとしてもっと活動的になってくれることに期待したいと思います。

 GM側としても、これまではアゼルにスポットライトを当てるシーンが多かったのですが、アゼルにはもう十分美味しい材料を与えたので、ここからしばらくはイーサにスポットライトが当たるように調整していこうと思います。予定としては、アゼル、イーサ、エルドの順にスポットライトを当てていって、宮国紀行全体のクライマックスになったら、誰か個人にではなく舞台の中心に光を当てておき、3人のうち誰かが自らその光の中に足を踏み入れてくるような構成にできればと考えています。

 ――といったところで、第4話のティータイムも終了です。次回から、いよいよバリス教団編。ついに、大きな事件を引き起こす(かもしれない)、強大な敵との戦いが始まります。そして、これまでにない最大級の衝撃がPCたちを襲うッ! ……とまあ、次回予告はあおれるだけあおっておくのが常ですよね(笑)。




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