LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第5話(02)

GM:
 さて、まずはエルドが今後どうするのかというところから始めて行きましょう。場所はデミルコルの屋敷内にある、一行が与えられていた男性用の部屋。時間はお昼を少し過ぎたところです。部屋の中には、エルド以外にセルダルとギズリの姿があります。

セルダル(GM):
 椅子に座っているセルダルは、落ち着きなく貧乏ゆすりしています。

エルド:
「どうしたんですか、セルダルさん?」

セルダル(GM):
 セルダルはエルドにそう指摘されたことで、自分が貧乏ゆすりしていることに気がつき、膝に手を当てて、その動きを押さえつけました。
「別になんでもねぇよ……」

エルド:
 あきらかに動揺してるじゃないですか(笑)。

ギズリ(GM):
 一方、ギズリは寝台の上に寝転がり、穏やかな表情を浮かべつつ、「アイツら2人ともこれでお別れか。少し寂しくなるな」と呟きました。

エルド:
「ギズリさん、言葉のわりに嬉しそうですね」

ギズリ(GM):
「いや、別に嬉しいってことはねぇよ」そう言って、ギズリは上半身を起こします。
「ただ……。まあ、そうだな。一安心ってところはあるよな。これは、イーサとアゼルが居なくなることとは関係なしに、デミルコル自警団の護衛を受けながらイルヤソールを目指せることになったって意味でな」

エルド:
「……それは、まあ、そうですけどね」

ギズリ(GM):
「しっかし、ニルフェルちゃんまでこっちに来ることになるとは意外だった。おそらくギュリスお嬢さんがけしかけたんだろうが……。アゼルの奴も度肝を抜かれたって顔してたな」

エルド:
「そうでしたね。でもまあ、ニルフェルさんが安全に王都に向かえるようになったんですから、アゼルさんの肩の荷も降りたってところじゃありませんか?」

ギズリ(GM):
「そうか? あの場じゃ、アゼルの奴はずいぶんと狼狽してたみたいだが……」

エルド:
「あの人の性格からすると、あと数時間もすればいつもどおりに戻ると思いますよ」

ギズリ(GM):
「そいつはどうかな。オレにはとてもそういった風には見えなかったが……」

セルダル(GM):
 セルダルは宙をぼんやりと眺めながら、「アイツにとっても、ニルフェルにとっても、きっとここで別れるのがいい選択だったんだ」と誰にともなく呟きました。

エルド:
「そう言うわりに、セルダルさんは何か引っかかってる様子ですね」

セルダル(GM):
「……今までオレは、アゼルと一緒に王都まで行くことになるとばかり思ってた。だが、そーじゃなかったってことが、ちょっと意外だっただけさ」

ギズリ(GM):
「だがよぉ、アゼルの奴と一緒に旅を続けてたら、あっち行ったりこっち行ったりで、いつになったら王都につけるかわかったもんじゃなかったぞ」

エルド:
「それは同感です。アゼルさんはいつもふらふらしてましたからね」

GM:
 ――といったところで、その会話に別の場面を重ねます。


ギュリス(GM):
「実は、あえて回り道をしてたとかね」と、ギュリスがニルフェルに対して言葉を投げかけました。

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは椅子に座ってうつむいたまま、「そんなことありませんよ……」と返します。
「むしろ、兄さんは少しでも早くわたしのことを王都へ送り届けようとしていました……」

ギュリス(GM):
 ギュリスは少し考える素振りをみせると、ニルフェルに向けていた視線を外し、小さな声でこう言います。
「回り道……して欲しかった?」

ニルフェル(GM):
「……」
 ギュリスの声が耳に入らなかったのか、ニルフェルはその質問に答えることなく、ただ自分の足元へと視線を落としていました。

GM:
 再び場面をエルドたちのいる部屋に移します。


ギズリ(GM):
「しかし、アイツら2人は本気であのセルピルって娘の手助けをするつもりなのかね? まったく信じんねぇほど損な性格してやがる」
 ギズリは両方の手のひらを天井に向けて首をすくめてみせます。

セルダル(GM):
 そんなギズリの言葉に、セルダルが「アゼルは、アンタら商人みてぇに損得で動くよーな奴じゃねぇんだよ」と返しました。

ギズリ(GM):
「お? ずいぶんとアゼルのことを高く評価してんだな」

セルダル(GM):
 セルダルは大きく首を振ってそれを否定します。
「そんなんじゃねぇよ。ただ、アイツはテメェが満足できるかそーじゃねぇかで動いてるってだけだ」

一同:
(爆笑)

エルド:
「それ、フォローになってないと思いますよ」

シーン外のアゼル:
 いや、セルダルは俺のことをよくわかってるよ(笑)。

エルド:
「……セルダルさん。アゼルさんたちのこと気になるんじゃありませんか?」

セルダル(GM):
「いや、別に……。アイツはアイツでやってくさ。それに、ニルフェルが後宮入りを果たせば、必然的にアイツが次のクルト氏族長ってことになるだろ。そーなれば、アイツは氏族の跡継ぎとして王都暮らしを強要されることになる。そんときには、嫌でもまた顔をあわせることになるだろーさ」

エルド:
 うーん、そう返ってきますか。ここは気になると答えて欲しかったんですけどね……。
(しばらく悩んでから)
「ところで話は変わるのですが、やっぱり僕はアゼルさんたちのほうについて行こうと思います」

ギズリ(GM):
 その言葉を聞いたギズリは、「唐突だな。王都に行くんじゃなかったのか? それとも、2人に情が移って、放っておけなくなったか?」と尋ねてきます。

エルド:
「王都には行きます。でも、情が移ったわけではありません。ただ……面白そうな感じがしたんですよ。あちらについて行くと、いろいろありそうなので……」

ギズリ(GM):
「そうか。まあ、別に無理にこっちについて来いって話でもねぇし、好きにしろよ」

エルド:
「そう言ってもらえると助かります。それじゃ、アゼルさんたちに置いて行かれる前に合流したいので、僕はこれで失礼しますね……。そうだ、セルダルさん。アゼルさんに伝えておいて欲しいこととかありますか?」

セルダル(GM):
「そーだな……。じゃあ、オヤジの名を汚すよーなことはするなよって伝えといてくれ。アイツ、なんか恥ずかしい戦い方するからな……」

一同:
(爆笑)

エルド:
「まあ、ここ数回の戦闘では、ずいぶんとまともになってきたと思いますけど……。わかりました。しっかりと伝えておきます」そう言って部屋を出ていきます。

セルダル(GM):
 エルドの去り際、その背中に向かってセルダルが「オマエは王都に行くんだろ? オレもニルフェルを連れて、必ず王都に行くから、そこでまた会おーな」と声をかけました。

エルド:
「ええ、必ず。そのときにはまたよろしくお願いします」

 こうして、一時はパーティー離脱と思われたエルドも、アゼルたちに合流することとなりました。GMとしては、別行動をとってもらっても良かったのですがね。


GM:
 エルドが今後の方針を決めて部屋をあとにした一方で、セルピルと行動を共にすることになったイーサとアゼルは、出発前にセルピルにあてがわれていた部屋でユセフと会話することになります。

ユセフ(GM):
「屋敷の正面に君たちの使っていた馬車と護衛を数人用意しておいた。馬の足で進めば、今晩中にはファジル様のところまでたどり着けるだろう。それと、これを渡しておく」そう言って、ユセフは小袋と書簡筒を取り出します。

イーサ:
「それはいったい?」

ユセフ(GM):
「まず、こちらの袋の中身だが……。これは、君たちがとってきたモノケロースの角で作らせた万能解毒薬だ」

イーサ:
 あれ、まだ余ってたのか?

GM:
 あれほど大きな角1本から、薬1つしか作れないというわけではありませんからね。万能解毒薬5つをアイテム欄に書き込んでおいてください。モノケロースの角の内部を削り、乾燥させ、すり潰し、薬草などと混ぜ、蜜蝋で固めて団子状にしたものが、いま渡した万能解毒薬です。解毒効果は1年間で失われるので、その間に使用してください。

アゼル:
 丸薬か。5つも貰えるんだな。売ったら1ついくらくらいになるんだ?

GM:
 時価です。取り引き相手と状況次第では、何万金貨という価格で売却できますよ。何せ、ありとあらゆる毒をたちどころに治してしまう秘薬ですからね。

アゼル:
 おおッ! 売ろう! 売ろう!

GM:
 ですが、買い手を探すのがたいへんですよ……。使用期限が限られているため、そのとき必要としていない人にとってみれば価値のないものですから。

アゼル:
 むぅ、そうか……。だったら、俺たちで使おう。

ユセフ(GM):
「バリス教団は毒を精製しているらしいからな。事を構えるなら、万能解毒薬は必要なものだろう? それと、書簡筒のほうは小型船の使用許可証だ。ここから60キロほどニメット川を下ったところに、小型船を止めてある船着場がある。そこで待機している船頭に許可証を見せれば、小型船を出してもらえる」

GM:
 船着場の場所は地図上のQT地点となります。

ビューク・リマナ地方北東部地図01

ユセフ(GM):
「私にできるのはこれくらいだ。あまり力になれず、すまないな」

アゼル:
「いえ、十分すぎるほどです。ありがとうございました。それでは先を急ぎますので、これで失礼させていただきます」

ユセフ(GM):
「待て待て。まだ、渡すものがある」そう言って、ユセフはアゼルに封書を渡します。
「これは、ギュリスお嬢様から君宛ての手紙だ。果たすべきことをすべて終えてから読むようにとことづかっている」

アゼル:
「果たすべきことをすべて終えてから……?」

ユセフ(GM):
「そうだ。たしかに渡したぞ。では、くれぐれも気をつけてな」

GM:
 ということで、アゼルにはギュリスからの手紙を渡しておきます。自分の判断で好きなときに読んでください(と言って封のされた手紙をアゼルに渡す)。


GM:
 こうして出発前の挨拶を終え、あなたたちが屋敷の正面玄関から外に出て行くと、そこにはファジルから借りた馬車のほかに、その周りを固める7頭の馬と6人の兵士の姿がありました。正午過ぎの空模様は雲ひとつない快晴です。

アゼル:
「いやー、いい天気だ! 馬車を返しに行くのにはうってつけの日和だな! さあ行こう、イーサ!」

イーサ:
 なんだ、その空元気は(笑)。
「まさか、こんなに護衛を付けてくれるとはなぁ」

アゼル:
「そうだな! 頼もしい限りだ!」

セルピル(GM):
 セルピルは、声を張り上げるアゼルの顔を不思議そうな顔で見ました。
「まあ、元気があるってことはいいことだけどさ……」

アゼル:
「そうさ! 元気が一番だ!」

イーサ:
(苦笑)

GM:
 では、あなたたちが屋敷から出てきて近づいてきたところで、護衛についているデミルコル自警団の面々が横一列に並んで敬礼します。そして、団長とおぼしき男が一歩前へと出てきました。40代後半の頭に白いものが混じる厳つい男です。

自警団団長(GM):
「ユセフ様の命により、我々が責任をもって君たちのことを船着場まで護衛する。馬車の御者も我々が務めるので、君たちは馬車の中でゆっくりと休んでいてくれ」

アゼル:
「そうか。いろいろと面倒をかけてしまってすまない」

GM:
 ちなみに、ここで確認しておきますが、エルドはいまどこにいますか?

エルド:
 間に合うのであれば、先に馬車の中に乗っていたいですね。

GM:
 ああ、やっぱり。ということであれば――

自警団団長(GM):
「それと……」そう言って自警団の団長は馬車のほうへと目を向けました。
「すでに君たちの仲間だという者が馬車の中に……」

アゼル:
「同行?」

GM:
(アゼルの口調を真似て)セルダル~! やっぱりついてきてくれるんだな~! 俺は信じていたぞ~!

一同:
(爆笑)

アゼル:
 じゃあ、そんな期待を胸に馬車の扉を開けた。そして、中を確認して、若干がっかりしたような顔をする(笑)。

エルド:
 そんなアゼルさんの顔を見て、「アホみたいにわかりやすい人ですね……」と言います。

アゼル:
「なんだ、エルドか……」

エルド:
「なんだとはなんですか。何か文句でもあるんですか?」

アゼル:
「いや……。それよりも、どうしたんだ? お前はギュリス嬢たちと一緒にイルヤソールを目指すんじゃなかったのか?」

エルド:
「いやぁ、こちらのほうが面白そうな予感がしたので……」

イーサ:
「面白そうな予感がしたからとは……。まったくエルドらしいな」

エルド:
「ああ、それとアゼルさん宛に、セルダルさんからのことづてがあります。変な戦い方をして、オヤジさんの名前を汚さないようにということでした」

アゼル:
「そ、そうだな……。わかった。たしかに受け取った」

エルド:
「それでは、またよろしくお願いします」

イーサ:
「ああ、こちらこそよろしく頼む」

セルピル(GM):
 新たに加わったエルドに対して、セルピルが念を押してきます。
「人数が増えるってことは、アタシにとってはありがたい話だけど、遊びに行くわけじゃないんだ。かなり危険な仕事になるけど、それでもいいの?」

エルド:
「全然問題ありません」

イーサ:
「エルドは面白そうだなんて言葉を使ってるが、いざってときには命懸けで戦ってくれる頼りになる奴だからな。心配はいらない」

エルド:
「まあ、少なくとも戦力にはなれると思いますよ」

セルピル(GM):
「そっか……。まあ、あのモノケロースを狩ったメンバーの1人なんだもんね。それじゃ、期待させてもらうよ」

自警団団長(GM):
 そうして、あなたたちが顔合わせを済ませたところで、自警団の団長が、「では、そろそろ馬車を出すが、準備はいいか?」と確認をとってきます。

アゼル:
「ああ。よろしく頼む」
 急いで馬車に乗り込んだ。

セルピル(GM):
 全員が馬車に乗り、馬車が動き始めると、その中でセルピルは自分の荷物袋の中から長い布を取り出しました。そして、その布で自分の顔を覆って隠します。

エルド:
 そういえば、セルピルさんはバリス教団に面が割れているんでしたっけ……。そういうことなら、ギュリスさんからあの魔法のマスクを借りてくればよかったですね。

GM:
 そうですね。もし、百面相の仮面を借りてくることができていれば、バリス教団に潜入するのもずいぶんと楽になったはずなんですけど。

イーサ:
 なるほど……。ホント、いつもながら俺たちって察しが悪いよな……。

アゼル&エルド:
(苦笑)




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