小型船から川に落ちてしまった少女ベステ。はたして一行は溺れる少女のことを救えるのでしょうか!?
ベステ(GM):
小型船から少し離れた水中の浅いところには、必死にもがいているベステの姿があります。
アゼル:
泳ぐための判定って、どうしたらいいんだ?
GM:
はい。ではここで、水中で行動するときに発生するペナルティなどについて説明しておきましょう。
今回のセッションで利用した水中行動に関するルールは以下のとおりです。
GM:
――このように、水中で行動する場合、陸上に比べて大きなペナルティが生じてきます。溺れる人を助けるのはとても危険な行為なので、安全性を考えると、ロープなどを投げて救助したり、もしくは相手の自由を奪ってから救助するなどの手段を講じることをおすすめします。
エルド:
ウッド・サーバントは水中で行動させられますか?
GM:
え? ウッド・サーバントですか?
(少し考えてから)
ウッド・サーバントは水に浮いてしまうので、水面でジタバタするだけしかできないことにします。
アゼル:
水に浮くのが問題なら、ウッド・サーバントの足にオモリをつければ――
GM:
仮にそうした場合、ウッド・サーバントは川底を歩けるかもしれませんが、小型船や川の流れに乗っているほかのものはどんどん川下に流れていくので、相対的に離れていってしまいますよ……。
アゼル:
そうか、川の水は流れてるんだったな(笑)。
GM:
さて、ここからは戦闘処理で進めていくので、ベステが溺れ死んでしまうまえに救出してあげてください(そう言って、戦闘マップを広げる)。
GM:
便宜上、小型船は戦闘マップ上を移動しませんが、実際は川の流れにしたがって川下に進んでいます。もし、前方に障害物などがあらわれたら、障害物のほうを戦闘マップ後方へと移動させていきますね。では、エルドの行動からどうぞ。
アゼル:
おっ、エルドに一番手を取られてしまったか。これは美味しいところを持ってかれてしまうかな?
エルド:
うーん。僕の所持品の中に20メートルのロープがあるんですが、それは身に着けていていいですか?
GM:
登攀に耐えられるくらいのロープって、結構かさ張りますからね……。よほどの理由がないかぎり、ほかの荷物とともに船尾に置かれているでしょう。
エルド:
そうなると、船尾に移動して、荷物の中からロープを取り出すことになりますね。
(ルールブックに目を通して)
“道具取り出し”にかかる時間は15ウェイトですか……。
GM:
そうですね……。15ウェイトというのは、背負い袋を背負った状態から荷物を取り出すことを想定したものなので、今回のようにすでに背負い袋が下された状態からであればもっと手早くすむことにしますよ。今回は、ロープを取り出して何かに結び付けるところまでで5ウェイトということにしましょう。
エルド:
了解です。ではまず、“小移動”で荷物のあるところに向かいました。ですが、僕は水の中になんて入りたくありませんからね。あとは、筋力の高い人が何とかしてください。
アゼル:
うむ。じゃあ、“小移動”でエルドの隣まで移動するとしよう。
イーサ:
俺は「川の中に落ちただとッ!?」と叫んで、方向転換して川の様子を確認している。
これでPCたちの行動が一通り終了しました。命綱をつけてから川に入るのは、ミイラ取りがミイラにならないためにもたいへん正しい行動だと思います。急を要する事態に陥ったとき、PCたちは衝動的に行動するのか、それとも安全性を優先させるのか……。それが確認できただけでも、この戦闘でやりたいことの半分は果たせました。
ファルザード(GM):
では、離れた場所に座っていたために、あなたたちに遅れてその出来事に気づくことになったファルザードでしたが、状況を把握するや否や、「これはまずいッ!」と叫んで、ためらうことなく服を着たまま川の中に飛び込みました。
イーサ:
おっ、ためらいもせずに飛び込んだか。
アゼル:
だが、ファルザードは泳げるのか?
エルド:
下手すると、要救助者が1人増えただけかもしれませんよ(笑)。
アゼル&イーサ:
(笑)
後方の船頭(GM):
川に飛び込んだファルザードを目にした船尾にいる船頭が、「いけないッ!」と叫びました。
GM:
ファルザードが川に飛び込んだ次の瞬間、川の中にいるベステの身体が水面に浮きあがります。その際に、船上にいる人たちには、ベステの身体とともに水面にあらわれた巨大ビーバー・アーヴァンクの姿が確認できました。
アーヴァンク(GM):
アーヴァンクはベステの腕に噛みついて“ホールド”した状態で、小型船とは反対方向へと引っ張りながら泳いでいます。
アゼル:
うはッ! こいつはヤバイぞ……。
「あれは、アーヴァンクじゃないかッ! エルド、早くロープをッ!」
後方の船頭(GM):
「全員、すぐに船べりから離れてくださいッ!」船頭はそう言うとともに、身を乗り出していたブルジュの身体を抱きかかえ、船の中央へと引っ張りました。
ブルジュ(GM):
「ベステーッ! ベステーッ!」と、ブルジュが叫び声を響かせます。
エルド:
アーヴァンクの頭が見えるんですよね? だったら、そこに“ファイア・ボルト”を撃ちこんでもいいですか?
GM:
構いませんよ。ただし、アーヴァンクとベステは同一マスに存在しているので、《2D》で6以下を出てしまった場合、その攻撃はベステに当たることになりますが……。
アゼル:
まずい、まずい。攻撃魔法を撃つのはやめておけ(笑)。
エルド:
うーん、そうですか? それじゃ、とりあえずアゼルさんにロープを結びつけておきます。結び終わるのは5ウェイト後です。
アゼル:
「エルド、早くしろッ!」
エルド:
むッ……。たいした言いぐさですね……。じゃあ、ロープで手足を縛って、川に突き落しますか……。
アゼル:
やめろッ、泳げなくなるだろッ(笑)!
こうして、アゼルはロープが結び終わるまで、船上で“待機”を続けました。その一方で、ファルザードは捨て身の救出へと向かいます。
GM:
ファルザードはベステのもとを目指して必死に泳いでいますが、彼女のところまでたどりつくためには少し時間がかかりそうです。なぜなら、彼はとっさに小型船の前方から川に飛び込んでしまったんですよね。後方に移動してから川に入れば、もう少し距離を詰められていたのに(苦笑)。
イーサ:
ホント、衝動的に飛び込んだんだな(笑)。
そうこうしているうちに、川の中から新手のアーヴァンクBが姿を現しました。新手もベステの身体に噛みつき、アーヴァンクAと協力してベステを引っ張って行こうとします。そして、その段階になってようやくアゼルの身体にロープが結び終わりました。
イーサ:
それじゃ、アゼルが川に飛び込む前に“プロテクション”をかけておこう。(コロコロ)発動。
セルピル(GM):
セルピルも“ブレス”を唱えておきます。船上にいる人全員が対象となります。(コロコロ)発動。
「ハルヴァ神よ、アタシたちに加護を!」
アゼル:
準備ができたのはいいんだが、これ、いまさら川の中に入る意味あるのか? 同じ速度で泳いでたら、いつまでたってもベステには追いつけないんだから、もうベステは助けられないだろ?
GM:
え……(絶句)?
アゼルの発言に、GMは思わず言葉を失ってしまいました。相変わらず諦めるのが早いです(苦笑)。
GM:
いやいやいやいや。まだ、必ずしもそうだと決まったわけではありませんよ! ベステが暴れているため、アーヴァンクといえども水中行動判定に失敗する可能性がありますから!
アゼル:
そうか。なら、俺も川に飛び込むとするか。
こうして、若干後ろ向きな感じではありましたが、ファルザードに続いてアゼルも川に身を投じました。
エルド:
では、アゼルさんが川に入ったところで、あらためて僕はアーヴァンクAに対し“ファイア・ボルト”を撃ちこみます。
アゼル:
おい、撃つのかよ!? やめておけって。ベステに当たったら致命傷になるぞ。
エルド:
いえ、撃ちます。ここでアーヴァンクの数を減らしておかないと、追いつけなくなってしまいます。必ずアーヴァンクに当てますから問題ありません。
GM:
では、同一マスに対象が3つ存在するので、1度目の《2D》の判定で7以上を出せばアーヴァンクAに、それに失敗したら再度《2D》で判定を行い、7以上を出したらアーヴァンクBに、失敗したらベステに攻撃が当たります。
エルド:
1回目は……(コロコロ)失敗。
アゼル:
うおーいッ(笑)!
エルド:
(コロコロ)2回目は成功したので、アーヴァンクBに命中です。この一撃で燃やし尽くしてやりますよ。(コロコロ)物理ダメージは1回クリティカルして19点。魔法ダメージは3点です。
アーヴァンクB(GM):
物理ダメージ19点ですか……。では、“ファイア・ボルト”の直撃を受けたアーヴァンクBの身体は、プカーっと川に浮きました。(コロコロ)絶命です。
イーサ:
燃やし尽くしたっていうより、物理で貫いた感じだな(笑)。
アゼル:
すげぇー! でも、危ねぇー(笑)! もし、間違ってベステに当たってたら、その一撃で殺してたところだったぞ。
エルド:
(アゼルの言葉を聞き流して淡々と)ところで、アーヴァンクが2頭から1頭になったわけですが、戦力半減による士気判定はないんですか?
GM:
ないですね……。
エルド:
なるほど……。
アゼル:
アーヴァンクBはベステを引っ張るためのサポート役だったから、戦力としてカウントされてないんじゃないか?
GMとエルドのやり取りからこの発想ができるアゼルはある意味凄いです。もしかして、わざとやってるんでしょうか(笑)?
まあ、それはひとまず置いておいて、こうしてエルドの魔法によりアーヴァンクが1頭倒されたことで、ベステとファルザードの距離は次第に詰まっていきました。しかし、この調子でいけばベステを無事に救出できるだろうという状況になっても、エルドはその手をゆるめません。
エルド:
もう一度、アーヴァンクAに対して“ファイア・ボルト”を撃ちます。
アゼル:
おいおい、もうやめておけよ。今度は対象が2つしかいないから、ベステに当たる確率も高いぞ。
エルド:
いいえ、撃ちます。(コロコロ)出目は6です。
アゼル:
あーあ。ついにやっちまったよ(笑)。
エルド:
GM。この判定にも“ブレス”の効果は使えますよね?
GM:
ええ、使えますよ。
エルド:
じゃあ、“ブレス”の効果で判定値に+1して、アーヴァンクAを“ファイア・ボルト”の対象にします。(コロコロ)魔法は抵抗されて、物理ダメージ9点と魔法ダメージ7点です。
アーヴァンクA(GM):
その一撃でアーヴァンクAが戦闘不能に陥ることはありませんでしたが、さすがに痛いですね。手痛い攻撃を受けたアーヴァンクは、咥えていたベステを放すと、水中に潜っていったん身を隠しました。水深50センチのところです。
イーサ:
おっ。これでベステを助けられるな。
ファルザード(GM):
では、ファルザードがベステとの距離を詰めていきます。(コロコロ)あーッ。ここでついにファルザードが水中行動に失敗しました。溺れたわけではありませんが、上手く泳ぐことができずにジタバタしています(笑)。
一同:
(笑)
余裕がみえてきたところで、このファルザードの失態。さすがに、ダイスの神様はよく心得ていらっしゃいます(笑)。そう簡単に万事解決とはいきません。そして、いったん水中に逃げたアーヴァンクAも、決して戦意を喪失したわけではなく、追従してくるアゼルたちに対して攻撃をしかけてきました。水中での戦いではアーヴァンクに圧倒的な分があり、アゼルは苦戦を強いられることになります。
前方の船頭(GM):
そうやってあなたたちが戦いを続ける中、唐突に船首側の船頭が大声を響かせました。
「あッ、あれはッ! 正面にアーヴァンクの巣が見えますッ!」
GM:
小型船の前方には、木の小枝をいくつも重ねて作られた小山と、その上で直立する3頭のアーヴァンクの姿が見えます。小山の上のアーヴァンクたちは、小型船のほうへと目を向けると、次々と川の中に飛び込みました。水中に潜ったその黒い影は、川の流れに逆らってあなたたちのほうへと一直線に向かってきます。
イーサ:
「アーヴァンクの巣だとッ!? こいつはまずいぞ……」
前方の船頭(GM):
「皆さん、急いで船に上がってくださいッ!」
2頭いたうち1頭のアーヴァンクが倒れても、もう1頭が士気判定を必要としなかった理由。それは、そもそもの戦力が2頭だけではなかったからです。それを予期したうえでのエルドの強引な攻めでしたが、あと一歩およびませんでした。
イーサ:
こうなったら、俺も攻撃にまわるしかないな……。アーヴァンクAに“エネルギー・ボルト”を発動。(コロコロ)抵抗されて、物理ダメージは11点。
アーヴァンクA(GM):
アーヴァンクAはすでに深手を負っていましたからね。その一撃で生命点はピッタリ0です。(コロコロ)アーヴァンクAは昏倒しました。
なんとか2頭目のアーヴァンクを倒した一行でしたが、新手は3頭です。それまでは和やかにしていたプレイヤーの表情からも、余裕の笑みが消えていました。そして、それに追い打ちをかけるように、この新手は根本的な行動方針が先の2頭とは異なりました。
アーヴァンクC(GM):
では、アーヴァンクCの行動なのですが……。ベステのところまで近寄って行って……巣まで引っ張って行く……わけじゃありませんよ? その鋭い爪でベステを引き裂きにかかります!
イーサ:
おいおいッ! ベステに直接攻撃するのかよッ!?
そうです。つまり、新手の3頭の目的は、「仲間のところまで餌を運ぶ」ことではなく、「餌を食べる」ことだったのです。
アーヴァンクC(GM):
ベステに対するアーヴァンクCの攻撃は……(コロコロ)命中して5点のダメージです。
ベステ(GM):
ベステの装備はクロース扱いなので、ダメージを1点軽減させて、4点負傷しました。(コロコロ)まだ生きていますが、士気判定には失敗しました。
アーヴァンクD(GM):
続いて、アーヴァンクDもベステに攻撃します。(コロコロ)命中してダメージは4点。
ベステ(GM):
ベステの生命点はマイナスに突入しました。(コロコロ)それまで必死にもがいていたベステでしたが、アーヴァンクの攻撃を受けると、ぐったりとして川に流されるままになってしまいました。
アゼル:
うわぁぁぁ……。終わった……。