アーヴァンクの牙にかかったベステは、ピクリとも動かなくなってしまいます。そして、川の中に入ったファルザードとアゼルの身にもまた、生命の危機が迫っていたのでした。
アーヴァンクE(GM):
では、アーヴァンクEはファルザードに攻撃を加えます。(コロコロ)命中してダメージは6点。
ファルザード(GM):
攻撃を受けて血を流すファルザードでしたが、それでも彼はアーヴァンクの攻撃をものともせず、ベステの隣へと移動します。
「まだ、諦めちゃ……ダメだ……!」
アゼル:
じゃあ、俺もファルザードと同じマスに移動する。
GM:
あ……。
アゼル:
ん?
GM:
いえ……それならそれで構わないですけど……。
このとき、GMはアゼルの何気ない移動がどのようなリスクをはらんでいるのかということに気がついていながら、次のファルザードの行動で問題を回避できると考えて、指摘せずにスルーしてしまいました。まさか、そのことが原因であんな事態を引き起こそうとは……。
イーサ:
俺はアーヴァンクCに“エネルギー・ボルト”を放つ。(コロコロ)抵抗されて、物理ダメージは6点止まりだ。
アーヴァンクC(GM):
ならば、アーヴァンクCは少しだけダメージを負いましたが、まだピンピンしています。
セルピル(GM):
セルピルは、射線が通るのがアーヴァンクEだけなので、そちらに向けて弓矢を放ちました。(コロコロ)命中して、物理ダメージ7点です。
アーヴァンクE(GM):
セルピルの放った矢がアーヴァンクEに刺さりましたが、こちらも士気判定に及ぶほどのダメージとはなりません。
エルド:
僕はアーヴァンクDに“ファイア・ボルト”を撃ちます。(コロコロ)誤射はなし。抵抗されて、物理ダメージは10点。魔法ダメージは4点です。
アーヴァンクD(GM):
アーヴァンクDも少しだけ傷つきました。
アゼル:
おいおい。まったく、砲台どもは何をチンタラしてるんだ。さっさとアーヴァンクを倒せよ。
ベステに隣接したことで役目を果たしたと感じたのか、ここぞとばかりに暴言を吐くアゼルでした(苦笑)。しかし、人のことを悪く言う者に幸運は訪れないのです……。運命の転機の始まりは、ファルザードのこの判定でした……。
ファルザード(GM):
さて、ここでファルザードの番です。水中行動判定は……。(コロコロ)あ……。ここでファルザードが溺れてしまいました。(コロコロ)50センチほど水中に沈んでしまい、10点の疲労がたまります。
アゼル:
こいつ、こんな肝心なところでしくじりやがった(苦笑)。
アーヴァンクE(GM):
では、アーヴァンクEが溺れたファルザードに攻撃をしかけますが、同一マスにいるアゼルが望むのであれば、攻撃を肩代わりできます。
アゼル:
いいだろう。代わりにその攻撃を受けてやる。
アーヴァンクE(GM):
では、アーヴァンクEの牙攻撃による物理ダメージは(コロコロ)7点です。
アゼル:
“プロテクション”の効果を含めたダメージ減少値で3点軽減して、4点通し。さすがに鎧をつけてないと痛いな……。じゃあ、俺の手番でベステのほうへ手を伸ばしてつかむ。これで一段落――
GM:
残念ながら、その行動は認められません。現在アゼルはファルザードと同じマスに存在するので、移動と待機以外の行動は選択できないです。
アゼル:
あッ! そうか……。そういえば、そんなルールもあったな……。じゃあ、ベステのいるマスに移動する。
GM:
あいにくなことに、それもできません。ベステと同じマスにアーヴァンクDが存在しています。通常の移動では、敵と同じマスに移動できません。
ここで、「通常の移動では、敵と同じマスに移動できません」と変な言い回しをしていますが、これは特殊な行動によっては敵と同じマスに存在できることを示しています。たとえば、アーヴァンクがベステに対して行っている“ホールド”であったり、対象にまとわりつく“とりつき”などの行動がそれにあたります。しかし、アゼルはその手の行動オプションを持ち合わせていませんでした。
アゼル:
ぬぉッ……。ってことは八方ふさがりじゃないか。
GM:
そうなんですよね……。アゼルがファルザードのいるマスに移動してきたことで、互いに身動きが取れなくなってしまったんですよ。本当はさっきの行動でファルザードを別マスに移動させてこの状況を回避するつもりだったんですが、溺れちゃいましたからね……。
エルド:
ファルザードさんは悪くありませんよ。あとから割り込んできたアゼルさんのほうに非があります。
アゼル:
うぐッ……。しかし、どうしたもんかな……。他のマスに移動するしかないか……?
(しばらく考えてから)
とりあえず、“小移動”で方向転換しておくか。
こうして、アゼルとファルザードは、ベステを目の前にしたところで互いに足を引っ張り合うことになってしまいました。
エルド:
GM。先に倒した2頭のアーヴァンクと、いま残っている3頭のアーヴァンクをあわせた5頭が敵の総戦力だと考えていいんですよね? そうであれば、ここでもう1頭倒せば、戦力半減ってことになりますよね?
GM:
うーん、その質問には答えられません。そう思うのであれば、実際に試してみてください。
アゼル:
そういえば、たしかアーヴァンクの情報にも、2~6頭の家族で暮らすって書いてあったよな。だったら、さすがに7頭以上いるってことはないんじゃないか?
エルド:
それじゃ、“ファイア・ボルト”を生撃ちで、アーヴァンクEに放ちます。(コロコロ)抵抗されて、物理ダメージは1ゾロでなし。魔法ダメージは2点です。
アーヴァンクE(GM):
では、その一撃ではアーヴァンクEは傷つきませんでした。
アーヴァンクC(GM):
その間に、アーヴァンクCが身動きの取れないアゼルに攻撃します。(コロコロ)8点の物理ダメージをどうぞ。
アゼル:
5点通して生命点が半減した。士気判定は(コロコロ)成功。くそッ、ここに移動したのは失敗だったな……。これ、死ぬかもしれないぞ……。
イーサ:
そうなる前に、敵を半壊させる。アーヴァンクEに“エネルギー・ボルト”を放つ。(コロコロ)抵抗されたが、物理ダメージは11点だ!
アーヴァンクE(GM):
うん、それでアーヴァンクEの生命点は半分以下になりました。士気判定は(コロコロ)失敗。逃走を開始します。
一同:
よし!
GM:
喜ぶのはまだ早いですよ。戦場から撤退するまでは有効戦力として数えますし、アーヴァンクEが撤退したところで敵の戦力が半減するとは限りませんからね。
――とGMがブラフをかけたのもつかの間、アーヴァンクEの撤退を待つまでもなく……。
アゼル:
それなら、やられる前にやるしかないよな……。アーヴァンクCにクルト・ソードで攻撃する。水中ペナルティがあるから、当たらないだろうが……。(コロコロ)おッ、命中! 1回クリティカルして16点の物理ダメージだ!
アーヴァンクC(GM):
それで、アーヴァンクCは(コロコロ)絶命しました。
GM:
エルドの予想どおりここで敵戦力が半減したので、敵側の士気判定を行います。
エルド:
ほら、だから最初からアーヴァンクめがけてドンドン攻撃しておけばよかったんですよ。それなのに、グダグダやってるから、後手後手になって苦戦させられることになるんです。
アゼル:
いや、そうはいっても、あの時点ではまさかこうなるとは思ってなかったからなぁ(汗)。間違ってベステを殺しでもしちゃったら大問題だろ?
エルド:
何のために“可能性”があると思ってるんです? こういうところで使わなくてどうするんですか(溜息)。
アーヴァンクD(GM):
えー、お話し中のところすみませんが、最後の1頭となったアーヴァンクDの士気判定を行います。(コロコロ)成功しました。まだ、ベステを“ホールド”した状態です。
イーサ:
くそッ。一番嫌な奴が逃げなかったか……。誤射すると危険だからな……。俺にはもう“可能性”が残ってないし、ここは“待機”しておく。
セルピル(GM):
セルピルも弓に矢をつがえはしているのですが、ためらってしまいそれを射かけることができません。
エルド:
まったく、覚悟が足らない人たちばかりですね。結局、僕頼みじゃないですか。事故が起きたときは起きたときで仕方ないんですから、覚悟を決めてください。じゃあ、そのアーヴァンクDに“ファイア・ボルト”を撃ちこみます。まず、誤射判定は(コロコロ)成功。(コロコロ)物理ダメージは2回クリティカルして24点。魔法ダメージは3点です。
アゼル:
24点ッ!?
アーヴァンクD(GM):
それは、もうどうしようもありませんね。(コロコロ)アーヴァンクDは絶命しました。
エルド:
ふぅ……。まあ、最後の最後でスッキリできたので、よしとしますか。まったく、最初からこうしていれば、もっと早く決着がついていたのに。次からは覚悟を決めてくださいね。
アゼル:
ぐぬぬ……。もう水中戦闘はこりごりだ……(苦笑)。
エルドに言われっぱなしのアゼルでした(笑)。
おまけ:戦闘ログ、戦闘中の大まかな動き
ファルザード(GM):
アーヴァンクとの戦闘も終わり、ようやくファルザードは、ベステのことを抱きかかえることに成功します。
アゼル:
じゃあ、そのファルザードのことを俺がつかもう。あとは皆でロープを引っ張ってくれ。
GM:
では、そうやって水の中の者たちを小型船へと引き上げることができました。船の上に横たえられたベステは、肩や首から血を流しているものの、幸いなことにまだかすかに息をしています。
セルピル(GM):
「ここはアタシに任せておいて」そう言うと、セルピルは“リプレニッシュ・ヘルス”の魔法を唱えました。(コロコロ)
GM:
“リプレニッシュ・ヘルス”の効果により、ベステの傷はゆっくりと癒えていきます。
ベステ(GM):
傷がほぼ消えたところで、ベステがかすかに目を開き、「……ママ……?」と声を発しました。
ブルジュ(GM):
そんなベステを力いっぱい抱きしめたブルジュは、涙を流して娘の名を呼びました。そして、安堵の表情を浮かべた後に皆にお礼を言います。
「皆さんには何とお礼を言ったらよいものか……。本当にありがとうございました」
ファルザード(GM):
そんな母娘の姿を見たファルザードは、晴れやかな笑顔を浮かべてこう言いました。
「何はともあれ、全員無事で何よりです」
イーサ:
「そうだな。犠牲者がでなくて本当によかった」
エルド:
「誰かさんは危ないところでしたけどね(笑)」
アゼル:
「う、うむ……。しかし、ファルザードはよく命綱なしで川に飛び込んだな」
ファルザード(GM):
「いやぁ、身体が勝手に動いてしまって……」そう言ってファルザードは笑いながら頭を掻いてみせます。
シーラ(GM):
そんなファルザードに対して、「結果的に無事だったから良いものの、正義感に振り回されて後先を考えずに行動するのは、お前の悪いところだ」と、シーラがたしなめました。
ファルザード(GM):
「それはそうかもしれないけど、困っている人を見かけたら、放ってはおけないだろ?」シーラにそう答えたファルザードの目には、自分の言葉に対する疑いなど一切感じられません。そして、彼はアゼルに向かって、「あなたもそうなんですよね? だから、私たちのことをこの船に乗せてくれた。そんな人たちと一緒なんですから、川に飛び込むのにためらう必要はありません。ね、そうでしょう?」と言ってほほえみました。
イーサ:
なんだか、ファルザードはアゼルよりもアゼルらしいな(笑)。
エルド:
綺麗なアゼルさんですね(笑)。
こうして、アーヴァンクとの戦いを乗り越えた一行は、その後、6時間に渡って川を下り続け、途中で雨に降られてずぶ濡れになるなどしたものの、23時頃にはTM地点の船着場のある宿場町へと到着したのでした。