LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第5話(09)

GM:
 街道が交差する場所につくられた宿場町には、旅人たちが羽を休めるための宿泊施設がいくつもあります。あなたたちは遅い時間でも受付している宿屋を見つけると、そこに部屋をとったのでした。ファルザードたちも別の部屋ではありますが、同じ宿屋に部屋をとりました。

ファルザード(GM):
 ファルザードは、部屋に行く前にあなたたちに挨拶をしていきます。
「もしかすると、これでお別れになるかもしれませんので、今のうちにお礼を言っておきます。皆さんのおかげで、無事にここまでたどり着くことができました。心から感謝しています。本当にありがとうございました」

アゼル:
「いや、当然のことをしたまでだ。ここからは街道を進んでいくのだろうからそんなに危険はないだろうが、それでも気を付けてな。旅の無事を祈っている」

ファルザード(GM):
「私もあなたたちが無事にクゼ・リマナまでたどり着けるように祈っています。ところで、ここからクゼ・リマナまでは船で向かわれるのですか? それとも陸路で?」

アゼル:
「まだ決めてはいないが……」

ファルザード(GM):
「ならば、船で向かわれることをお勧めします。そちらのほうが断然早いですし、安全です。イーラ・ユヴァ湾は波も穏やかですしね」

アゼル:
「なるほど。参考にさせてもらおう」

ファルザード(GM):
「それではこれで。お休みなさい」そう言って、ファルザードは自分たちの部屋へと入って行きました。

GM:
 シーラとブルジュもあなたたちに一礼して部屋へと入って行きます。なお、ベステはすでにブルジュに抱きかかえられて熟睡していました。

アゼル:
 それじゃ、俺たちも部屋に入って休むとしよう。

セルピル(GM):
 部屋に入ると、セルピルは大きく息をついて覆面を外します。そして、あなたたちのほうへと顔を向けると、「アンタたちが困っている人を見捨てておけないたちだってのは知ってるし、そのおかげでアタシも助かってるわけだけどさ、これから人目を忍んで仲間を救出に向かおうってときに素性の知れない相手と行動を共にしようってのは、さすがにどうかと思うんだよね……」と苦言を呈しました。

アゼル:
「……次からは気を付けよう」

エルド:
「そういえばこのあとの予定なんですけど、先ほどファルザードさんが話されていたとおり、海路で行くんですか?」

アゼル:
「ああ。早くつけるそうだし、船で行くのがいいんじゃないか?」

セルピル(GM):
 そこで、セルピルが少し申し訳なさそうな声を発しました。
「そのことなんだけどさ……。急ぎたいのは山々だけど、海路を使うのはちょっと難しいかな。……というのも、船でクゼ・リマナに入るとなると第1市壁内の港に降りることになるんだけど、第1市壁内は入市時のチェックが厳しくて、覆面と偽名でとおすわけにもいかないんだよ。まあ、アンタたち3人だけなら問題ないだろうけどさ……」

アゼル:
「なるほど。だがそうなると、陸路で向かったときにもお前は街中には入らないのか?」

セルピル(GM):
「少なくとも第1市壁の内側には入らないつもりだよ。でも、その外の管理はずさんだから、そこまでなら問題ないと思う」

アゼル:
「そうか。ならば陸路で向かうしかないか……」

エルド:
「そうなると、明日は何時くらいにここを出発することになりますか?」

イーサ:
「アーヴァンクとの戦いで、思った以上に魔法を多用したからな……。ここは万全を期すために十分な休息をとることにしよう。丸1日はここで休んで、明後日の早朝に出発することにしたいがどうだ?」

エルド:
「そうですね。クゼ・リマナに入る前に、いったんゆっくり休んでおきましょう」

 ここで一行は一気に疲労と精神点を全快させました。

GM:
 では、2泊することになるので、その間にアゼルの夢イベント判定を行ってもらいましょう。

アゼル:
(コロコロ)2回とも失敗……。俺は熟睡するタイプなんだ(笑)。

 ダイス目が9以上で発生するイベントなので、確率的にはそろそろ発生してもいい頃なのですが、デミルコルを離れてから3日が過ぎても夢イベントは発生しませんでした。


GM:
 2日後の早朝、相変わらず雨が降り続いています。

アゼル:
 朝起きたら、まず“天候予測”しておく。(コロコロ)ありゃ、達成値8だ。これじゃわからんな。

イーサ:
「うーむ。雨がいつ止むかわからないが、とりあえず予定どおり出発することにしよう」

 こうして、イーサたちは雨の中を徒歩で進むことにしました。午前中いっぱい振り続けた雨と重い荷物の影響で、普段ならば10キロを3時間で踏破できるところを4時間かけての行軍となります。その結果、1日30キロ進む予定だったところが、この日は20キロしか進めませんでした。


イーサ:
「あまり進めなかったが、今日はここで野営することにするか?」

アゼル:
「それは構わないが、今後のことも考えれば、移動速度をもう少しなんとかしたいところだな」

イーサ:
「テントが重いからな。そろそろ、荷物運搬用にロバが必要かもな……」
 そういえば、さっきの宿場町にはロバとか売ってたんだろうか?

GM:
 まあ、ロバや荷馬は街道が交わる宿場町では需要のある商品ですから、探せばきっと売っていたでしょうね。

イーサ:
 むぅ。買っておけばよかったな……。よし、クゼ・リマナから次の目的地に向かうときにはロバを買うことにしよう。

GM:
 ぜひそうしてください。
 では、あなたたちはRN地点で野営することとなります。

ビューク・リマナ地方北東部地図07

GM:
 設営と夕食を終えた頃になると、再び雨がぱらついてきます。そして、西の空からは、ゴロゴロと雷の音も聞こえ始めてきました。

アゼル:
「また、雨か。嫌な天気だ……。ところで、今晩の見張りはどうする?」
 まあ、生命点と精神点のどっちも全快だし、誰が見張りに立っても同じだけどな。

エルド:
「それでは、最初は僕がイーサさんと一緒に見張りに立ちましょう」

アゼル:
 ――っていうか、メシを食い終わったら剣の稽古をするから、俺が一番最初の見張りに立つわ。

エルド:
 ……。
(無言でアゼルに抗議の視線を送る)

GM:
(失笑)

 話し合いの結果、アゼル→イーサ→エルド→セルピルの順で2人1組のローテーションを作り、見張りをすることになりました。

アゼル:
 それじゃ、メシが終わったらさっそく訓練を開始する。3時間続けて、疲労が(コロコロ)10点たまった。

シーン外のエルド:
 あまり不用意に疲労をためないで欲しいんですけどねぇ……。

アゼル:
 誰からも突っ込みが入らなければ、俺はずっと訓練を続ける。それで剣士としても強くなれるしな。何かを振り払うかのように剣を振り続ける。

イーサ:
「……」
 俺はアゼルが剣の稽古をしてるのを、何も言わず眺めてた。


 時間は過ぎて、イーサとエルドが見張り番を務める時刻になります。

エルド:
「雨、上がりませんね……」

イーサ:
「そうだな。このままだと予定よりもクゼ・リマナに到着するのが遅れそうだ」

エルド:
「……そういえば、このところアゼルさんが必死に剣の稽古をしているみたいですが、あの様子だと身になってないんじゃありませんか?」

イーサ:
「たしかにな……。デミルコルを出てからというもの、少々無理をしているようだ」

エルド:
「ハッキリ言って、無駄に疲労をためているだけに見えるんですが……」

イーサ:
「まあ、思うところがあるんだろ。それが悪い方向に行きさえしなければいいんだが……」

エルド:
「もし何かあったときには、イーサさんがフォローしてくださいね」

イーサ:
「ふむ。一応気にかけておこう」

エルド:
「それと、イーサさんに1つ確認しておきたいことがあります。今後、サブリさんと顔をあわせることになったらどうするつもりですか? それも、本当に妖精石を商材として運んでいたとしたら……」

イーサ:
(すかさず)斬り殺すか。

シーン外のアゼル&エルド:
(爆笑)

エルド:
 即答でしたね。迷いがなかった(笑)。

イーサ:
 いや、今のは冗談だ。ところで、妖精石の取引って犯罪になるのか?

GM:
 現時点ではまだ妖精石を原料として猛毒がつくられるという情報がおおやけになっていませんから、法的に罰せられることはないでしょうね。

イーサ:
 そうか……。
(しばらく悩んでから)
「サブリには悪いが、毒の原料となるからには、妖精石の商談を成立させるわけにはいかないな……。もし途中で会うことがあれば、取引を中止するように説得しよう」

エルド:
「あのサブリさんが素直に応じるとは思えませんが……」

イーサ:
「そのときは多少強引なことをすることになるかもしれないが、仕方ないだろ。どのみち、バリス教団を潰してしまえばお破産になる商談なんだ」

エルド:
「わかりました。事前にイーサさんの意見が聞けてよかったです」

イーサ:
 もしサブリと会うことになったとしても、すでに取引が終わったあとなら、難しいことを考えずに済むんだが……。

 相変わらず、面倒事の回避を切望するイーサのプレイヤーでした(笑)。


GM:
 では、この日の野営の最後に、アゼルは夢イベント判定をどうぞ。

アゼル:
(コロコロ)失敗。

GM:
 うーん、なかなか発生しませんねぇ……。

 ここで先に結論を書いてしまうと、結局第5話の最後まで、アゼルが夢イベント判定を成功させることはありませんでした。よって、以降の夢イベント判定は成功したときまで省略してしまいます。


GM:
 翌朝6時、あなたたちが全員目覚めると、昨晩降り続いていた雨は止んでいました。

アゼル:
 恒例の“天候予測”だ! (コロコロ)12で成功。
「この先はしばらく霧が出てくるだろう。昼からは晴れそうだな」

エルド:
「そんなことはどうでもいいので、早く出発準備を整えてください。どうせ、晴れようが雨が降ろうが、前進するものはするんですからね」

アゼル:
(しょんぼりと)「……わかった……」

イーサ:
「アゼル。お前、顔色があまりよくないようだが、大丈夫か?」

アゼル:
「問題ない……」

イーサ:
「そうか……」
 じゃあ、通常の速度で街道を北上する。

GM:
 了解です。朝7時に出発して、徒歩の通常速度で北上するわけですね……。
(実際の移動速度とそれに伴う疲労の計算を行って)
 えー、ここでアゼルにお知らせです。昨日の疲労が回復しきっていなかったアゼルは、通常速度で移動しようとした場合、ほかのメンバーの移動速度についていけません。さて、どうしますか?

アゼル:
 それなら、俺は自主的に速足になって遅れないようにする。

GM:
 そうした場合、速度の問題は解決されるかもしれませんが、アゼルの疲労はほかの人よりもさらに多くたまることになりますよ?

イーサ:
 それはまずいだろ……。だったら、全体の移動速度を落として、アゼルの歩みにあわせるようにする。

アゼル:
 まて。俺は無理してることを隠して移動する。だから、イーサにはその判断ができないはずだ。

イーサ:
 いや、俺は朝からアゼルの体調が思わしくないことは認識してるんだから、アゼルの様子がおかしいことに気づいてもいいだろ?

GM:
 そうですね……。とりあえず、最初の10キロはアゼルが無理をしてほかの人の速度にあわせて移動したものとしましょう。そのうえで、アゼルが無理をしていることにイーサが気づけたかどうかは判定で解決します。アゼルは《実質敏捷度ボーナス+2D》で判定をどうぞ。その値を目標値として、イーサは《知力ボーナス+2D》で判定を行ってください。

アゼル:
(コロコロ)8。

イーサ:
(コロコロ)こっちは8で同値成功。

エルド:
(コロコロ)僕も9で成功です。

GM:
 何気にエルドまで(笑)。まあ、いいでしょう。では2人ともQM地点に移動している途中で、アゼルが無理をしてみんなの移動速度についてこようとしていることに気がつきました。

アゼル:
 隠すつもりがバレバレだな(笑)。


 こうして、一行は10時頃にQM地点に入りました。途中、草をはむインパラを見かけましたが、警戒心の強いインパラは一行の視線を感じると、いずこかへと去って行ってしまいます。

イーサ:
「よし、ここからはもう少しゆっくりと進むことにしよう。街に入ってからが本番だからな。ここであまり無理しても意味がない。皆、それでいいな?」

セルピル(GM):
「アタシはそれでいいよ」

アゼル:
「……ああ、構わない……」

エルド:
「僕も構いませんよ。特に、アゼルさんは疲れがたまっているみたいですからね」

アゼル:
「……そんなことはない。大丈夫だ」

エルド:
「隠そうとしてもバレバレですよ。まあ、何かあったときにちゃんと身体をはってもらえるのであれば、どっちでも構いませんけど」

イーサ:
「とにかく、ここからは急がずに進むからな」

 イーサからの提案で行軍速度を緩めた一行は、その後15時過ぎになってようやくQL地点へと入りました。

ビューク・リマナ地方北東部地図08

GM:
 午後になると霧が晴れてきます。霧が完全に消え去ると、あなたたちの左手側に青い海が見えてきました。少し見下ろすような感じになりますね。街道から海岸線までは1キロと離れていません。

イーサ:
 クゼ・リマナの南にバリスの聖域があるみたいだが、もしかして島なのか?

GM:
 いえ、島というわけではありません。バリスの聖域は海底に沈んでいます。

イーサ:
 海底なのか。じゃあ、“ウォーター・ブリージング”とかが使えないと探索できないんだな……。

“ウォーター・ブリージング”
 水中での呼吸を可能にするレベル3白魔法です。

アゼル:
 俺は、「これが海か……」とか言って感動しているんだが……うまく想像できないな。実際に初めて海を見た時ってどんな感じだったっけ……。初めて見た海は川や湖と比べると、どこが違うと感じるんだろう?

GM:
 ……まず、海特有の潮の香りがあたりに漂っていますね。そして、どこか粘性の高い風。それと、アゼルは水平線を初めて見たんじゃないですか?

アゼル:
 そうか。水平線ね……。
「向こう岸が見えん……。それに、なんだか空気が重い感じがする」

セルピル(GM):
 では、海を眺めるアゼルのことを見たセルピルが、「アンタ、海を見るの初めてなんだ?」と声をかけてきます。

アゼル:
「ああ、初めてだ」

セルピル(GM):
「それじゃ、泳ぎは川で覚えたの?」

アゼル:
「いや、泳いだことはない」

セルピル(GM):
「え? だってアンタ、ニメット川で川に落ちた女の子のことを、泳いで助けに行ってたじゃない」

アゼル:
 えっ? あっ? ああ、そうだった(笑)。しまった。泳いでたな。

セルピル(GM):
「もしかして、あれが初めての泳ぎだったの?」

アゼル:
「そうだな。そういえば、そうだ」

セルピル(GM):
 セルピルは呆れ顔でアゼルのことを見ました。
「あのファルザードってのも考えなしな男だったけど、アンタはそれに輪をかけて考えなしだね。まさか、泳いだこともないのに川の中に飛び込むだなんて……」

アゼル:
「人間、頑張ればなんとかなる。必死にやればなんとでもなるもんさ」
 だが、川でのこともあるから、海のそばには近づかないでおこう(笑)。

イーサ:
 それじゃ、ここで野営することにしよう。
「さて、今日のところはここで休むことにするか。明日にはクゼ・リマナに入ることになるから、しっかり休んでおかないとな」

 目的地であるクゼ・リマナまではあと20キロ。いよいよバリス教団の本拠地が目と鼻の先まで迫ってきました。




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