LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第5話(12)

エルド:
「で、イーサさん、このあとはどうしますか? アゼルさんたちと落ち合う時間までには、まだかなりありますけど……」

イーサ:
「うむ……。サブリのことを探そうかとも思っていたが、ちょっと当てが外れたな……。サブリが街についたのが3日前だとすると、すでに取引は済んだあとかもしれない……」

エルド:
「じゃあ、もう宿屋に戻ります?」
 イーサさんはこの街を知ってるんですよね。せっかくだから、街の中を案内してくださいよ。

イーサ:
 うーん。適当にぶらつけばいいのか? このあと、どこに行って何をすればいいかまったくわからん。情報収集できる場所なんてあるのか?

GM:
 え……? いや、いっぱいありますよね? 地図にもいろいろな施設名を書いておきましたし……。行きたい場所を指定してもらうだけで話は進みますよ。

エルド:
「そういえば、さっきシシュマンさんが劇場近くにバスカン一座が来てるって話してましたよね。やることがないなら、そこに行ってみませんか?」

イーサ:
 それでいいのか? バスカン一座のところに行ったとして、なにをどう聞けばいいんだ? 俺、シティ・アドベンチャーは苦手なんだよ……。
(しばらくぶつぶつ呟いてから)
 まあ、エルドの直感に従えば、うまい具合に話が進むと思うから、そうするか。

GM:
(苦笑)

 アゼルたちと合流する前に、第1市壁内でバリス教団やサイとハシムの行方に関する情報を集める手はずになっていたイーサとエルドでしたが、ここにきてどこでどうやって情報を集めればいいかまったく見当がつかないのでした。

 世の中には一本道のシナリオを嘲笑する風潮もあるようですが、たびたびこういう場面に立ち会ってしまうと笑うに笑えません。地図上に提示された施設を適当にまわるだけでも、いろんな情報を得られるようになっていたのですが……。

GM:
 ではあなたたちは、バスカン一座を訪ねるために劇場近くへと足を運ぶことにしました。
 街を南方向へと進み市街区の端まで行くと、大きな円形状の劇場とその隣に組み上げられた巨大なテントが見えてきます。その巨大なテントはカルカヴァンでも目にしたバスカン一座のものに間違いありません。巨大なテントの中からはときおり、「ワーッ! ワーッ!」という大歓声が響き渡っており、どうやら公演の真っ最中のようです。その人気は上々のようで、あいにくの小雷雨だというのに、テントの前には長い行列ができていました。

道化師(GM):
 行列の最後部では、チケット売りの道化師が、「次の公演は16時からだよ! ご覧になりたい方は、こちらで入場チケットをご購入のうえで、列にお並びくださーい!」と、大声を張り上げています。

イーサ:
 バスカン一座のところに来たのはいいが、ここで何をすればいいんだ?

エルド:
 バスカン一座の人たちはここまでサブリさんたちと一緒に来たってことですから、もしかするとサブリさんから何か話を聞いているかもしれません。とりあえず、それを確認してみたらどうですか?

イーサ:
 そうか……。じゃあ、ちょっと聞いてみるか。あ、でもまてよ……。テントの中から歓声が聞こえるってことは、いまはまだ公演中なんだよな……。
「せっかくここまで来たのになんだが、公演中に手間をとらせるのも悪いから、今日の公演が終わったあとで話を聞くことにしよう」

GM:
 そういうことであれば、巨大テントの横に立てられた看板に、本日の最終公演は17時から18時までと書かれています。

エルド:
 ここからヤルダー酒場まで向かうのには、どれくらいの時間がかかりそうですか?

GM:
 だいたい4キロくらいありますから、徒歩で1時間といったところです。

エルド:
 そうすると、18時過ぎにバスカン一座で話を聞いたとして、19時までに引き上げればちょうど待ち合わせ時間とピッタリですね。それじゃ、18時までどうしましょうか? 情報収集といえば、やっぱり酒場ですかね?

イーサ:
 そうだな。酒場に行ってみるか。

GM:
 ならば、酒場の多くは港の北側にあり、その周辺にはやたらと娼館の看板が並んでいます。

シーン外のアゼル:
 港に娼館はつきものだもんな。

GM:
 長期間、海上で禁欲生活を強いられる水夫たちには必要な施設ですからね。ただし、ここは総督府の監視下におかれた計画的な色町であり、カルカヴァンで見かけたような連れ込み宿などはないみたいです。
 さて、イーサとエルドはそんな場所にある酒場の1つを訪れました。

 ――と、ここまではそこそこ順調に進んでいるように思えたのですが、ここでまたイーサの「何をしていいかわからない病」が発症してしまいました。エルドもエルドで、自分から話の主導権をとろうとはしません。2人は長時間悩んだあげく、結局、ここでは何もしないまま時間をつぶすことにしました。

イーサ:
 しかし、本当にやれることがないな……。

 いいがかりです(苦笑)。PCたちを楽しませようと思って、いつもより多めに街中のイベントを用意していたGMは、この展開にしょんぼりしてしまいました。せめて、酒場の主人や飲みに来ていた水夫たちに話しかけるくらいのことはして欲しかった……(泣)。

イーサ:
 仕方ない。まだバスカン一座の公演終了まで時間はあるが、早めに行って終わるのを待ってるか……。

エルド:
 だったら、公演を観てからから話を聞くことにしませんか?

イーサ:
 なるほど、そうだな。じゃあ、観に行くとするか。

GM:
 了解です。バスカン一座の公演を観るのであれば、一般席で50銀貨、指定席100銀貨を支払ってください。

イーサ&エルド:
 一般席で。

GM:
 では、イーサとエルドはバスカン一座の出し物を楽しむことになったのですが、出し物の内容はカルカヴァンで観たときとほぼ同じものでしたので描写は割愛します。

エルド:
 公演が終わったら、急いで裏方にダッシュします。

GM:
 ならば、あなたたちが巨大テントの裏側に回り込もうとすると、途中でガタイのいい男性があなたたちの前に立ちはだかりました。バスカン一座で最も筋肉質な男、座員クロードです。彼とは、以前ギズリのロバ探しをしていたときに会ったことがありましたね。

クロード(GM):
「ちょっとキミたち! ここから先は関係者以外立ち入り禁止――って、あれ? キミたちには見覚えがあるな……」

エルド:
「お久しぶりです、クロードさん。僕たちは、以前タルカンさんと一緒にご挨拶させてもらった者なんですが……」

クロード(GM):
「あ! あの、ロバ騒動のときの!」

エルド:
「そうです、そうです。覚えていていただけて光栄です」

クロード(GM):
「いや、あのときは申し訳なかった。キミたちが探していたロバをうちで預かっていたのに、管理担当者がずさんだったばかりに迷惑をかけてしまったね」

エルド:
「いえ、その件については何とかなりましたから、もういいんですよ。それよりも、今回は別の件で団長さんにお伺いしたいことがありまして……」

クロード(GM):
 その言葉を聞いて、クロードはまたかといった顔をしました。

エルド:
 またです(笑)。

クロード(GM):
「この時間、団長はいろいろと用事が立て込んでいて忙しいんだがね……。ここで用件だけ聞いて、またあとで答えるってことじゃだめかな?」

 イーサたちは気を使って公演後に訪ねて来たつもりでしたが、団長は後援者へのお礼の挨拶などをしなくてはならないため、公演直後は特に忙しい時間帯なのです。

エルド:
「それじゃ、クロードさんに伺いたいのですが、この街に来る途中で同行した商人の中にサブリという人がいたのをご存知ですか?」

クロード(GM):
「サブリ? ああ……。たしか、シシュマンって商人と一緒にいた人だろ? 覚えてるよ。その人がどうかしたのかい? まさか、事件じゃないだろうね?」

エルド:
「そうですね……。もしかしたら、事件になるかもしれません」

クロード(GM):
 クロードは、眉をひそめて小さく溜息をつきました。
「この前のことといい、今回といい、まるでキミたちが事件を運んできてるみたいだな」

シーン外のアゼル:
 疫病神扱いだ(笑)。

エルド:
「あはははは……。それで、そのサブリさんとはどんな話をしましたか? どんなささいなことでもかまわないので、サブリさんが話していたことを教えて欲しいんですが……」

クロード(GM):
「うーん、何か言ってたかなぁ?」
(腕組みをしてしばらく考えてから)
「たしか……護衛が突然いなくなって困ってるって話をしてたっけかな……。街についたら護衛を雇い直さないといけないとかなんとか……」

エルド:
「街って、クゼ・リマナのことですよね?」

クロード(GM):
「まあ、そうなんじゃないのか?」

エルド:
「サブリさんは、クゼ・リマナについたあとでどこへ行くつもりだとか話していませんでしたか?」

クロード(GM):
「いやぁ……。そんな話は聞かなかったな……」

エルド:
 イーサさん、どうしますか? これ以上の手がかりは出てこなさそうですが。

イーサ:
 うーん、大した情報は得られないか……。

エルド:
 そうですね……。

GM:
 !?

 貴重な情報をスルーされそうになったので、GMは思わず慌てました。

クロード(GM):
「でもな、そのサブリって人は、街についたら新たに護衛を雇わなくちゃならないって話してたんだ」

一同:
 !?

クロード(GM):
「それで、サブリって人はな、酒飲んでくだ巻きながら、街で護衛を雇わないといけないって言ってたんだ」

シーン外のアゼル:
 これ、大事なことなので2回言いましたってやつか(笑)?

イーサ:
 都合3度同じこと言ったけどな(笑)。

クロード(GM):
「ほかには大したこと言ってなかったぞ」

イーサ:
「ふむ……。護衛を雇うねぇ……。だが、クゼ・リマナに到着したんだったら、いまさら護衛を雇う必要はないんじゃないか?」

エルド:
「もしかして、帰路の護衛を雇うつもりだったんじゃないですかね?」

イーサ:
「いや、もし帰路の護衛のことを言ってるのだとしたら、護衛が突然いなくなって困ってるとは言わないだろ。いなくなった護衛ってのは俺たちのことだろうが、もともとクゼ・リマナまでの護衛の約束だったはずだし……。まさか、この先さらにどこかに向かうつもりだったのか?」

エルド:
「うーん。それもおかしな話ですね……」

イーサ&エルド:
(しばらく考え込む)

イーサ:
「もしかして、護衛を雇おうとしてたのはどこかに行こうってわけじゃなくて、取引相手が危険な連中だと考えてたからじゃないか? だから、用心棒が必要だったとか」

エルド:
「ああ、なるほど」

イーサ:
「……だとしたら、護衛が確保できるまでは取引を行わないはずだ。3日前に街に入ったって聞いたからもう間に合わないかと思ってたが、もしかするとまだ間に合うかもしれないぞ」

エルド:
「そうですね。しかし、そうなると、サブリさんは妖精石が何に使われるのかも知っていた可能性が高くなりますね」

シーン外のアゼル:
 あー。これは、前にイーサが言っていたことが現実のものになるかもしれないな……。

エルド:
 あの僕の質問に対する即答のくだりですね(笑)。

シーン外のアゼル:
 斬り殺すか……(笑)。

クロード(GM):
「自分がサブリって商人から聞いた話はそれくらいだが、何かの役にたっただろうか?」

イーサ:
「ああ、十分だ。ありがとう」
 よし、それじゃ情報収集はこれくらいにして、情報交換のためにヤルダー酒場に向かうとしよう。これでこっちは一応収穫ありだな。

 こうして、なんとか最低限の情報を入手したイーサとエルドは、ヤルダー酒場へと向かったのでした。2人は先にヤルダー酒場に到着し、アゼルとセルピルが来るのを待つことになります。




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