イーサ:
さて、これからどうしたもんかな……?
エルド:
じゃあ、「そういえば、まだアゼルさんには話していませんでしたが――」と言って、不審船の話をアゼルさんにも伝えておきます。
「中央門が閉まるまでにはまだ時間がありますから、いまのうちに不審船を見に、港に行ってみませんか?」
アゼル:
「ちょっと待ってくれ。その不審船の話は、サブリさんやバリス教団と関わりのあることなのか?」
エルド:
「いえ、それはわかりません。総督府が関わっていることは間違いないんですけどね……」
アゼル:
「うーん……。いまは無駄なことに時間を使ってる場合じゃないと思うんだが……。それに、仮に俺たちが港に行ったところで、何がわかることがあるとは思えないが……」
(少し悩んでからイーサのほうを見て)
「どうする、イーサ?」
イーサ:
「そうだな……。それを決める前に、アゼルのほうの成果を教えてくれ。エルバート寺院では何かわかったか?」
アゼル:
「いや、特にこれといったことはわからなかった。途中、防具屋の近くでダットのことを見かけただけだな」
イーサ:
「そうか……。俺たちのほうも第1市壁の外では大した情報を得られなかった。これ以上、市壁の外で情報収集を続けたとしても、さして成果があるとは思えんし、ここは港で不審船を見るがてら、第1市壁内に行って情報収集してみるか……」
ちなみに、ここから港まではどれくらいかかるんだ?
GM:
徒歩で30分といったところですね。
イーサ:
それなら、往復時間を差っ引いても、市壁内で2時間くらいは調査できるわけだな。じゃあ、さっそく港に向かおう。
GM:
では、あなたたちは中央門を抜けて第1市壁内に入り、クゼ・リマナの港まで来ました。時刻は17時半になります。
港の先には、大きく傾いた太陽の光でオレンジ色に輝く海がどこまでも広がっています。その色づいた海の上には、港に近づいて来ようとしている1隻の帆船のシルエットが確認できました。そのほかに、港の桟橋にも数十隻の船が停泊しています。ちょうど荷物の積み下ろしをしている船もあり、そこには休みなく働く船乗りたちの姿がありました。
ちなみに、港は大きくわけて3つのエリアに区切られており、北側が漁船用、中央付近が商船用、南側が軍船など総督府用の港として利用されています。もちろん、総督府用のエリアは関係者以外の立ち入りが禁じられています。
アゼル:
総督府用のエリアに停泊している軍船は見えなかったりするのか? たとえば、壁で仕切られてるとか。
GM:
侵入禁止エリアの境界線を示す柵などはありますが、視界を妨げるための塀などはありません。ただし、ほとんどの船が係船ドックに入れられてしまうので、直接見ることはできません。もちろん、不審船らしき船の姿も確認できません。
アゼル:
ああ、やっぱり見えないのか……。
エルド:
「ある程度予想はしていましたが、不審船は外には係留されていないようですね……」
イーサ:
「まあ、総督府が情報を隠ぺいしてるっていうんじゃ当然のことだよな……」
エルド:
「ですが、この港で働いている人ならば、何か知ってるかもしれませんよ」
アゼル:
ちなみに、周りに人はいるのか?
GM:
港は常に人であふれていますよ。
エルド:
荷物の積み下ろしをしてる人たちもいますしね。
GM:
時間的に、そんな働き手たちも、「もうそろそろ仕事あがりだから、これを運び終えたら一杯引っかけに行くか」って話をしている頃です。
エルド:
ちょうどいい感じですね。アゼルさん、声を掛けてきたらどうです?
アゼル:
俺は人と話すのが苦手なんだ。ここはリーダーであるイーサが行くべきだろ。
イーサ:
こんなときばっかり、人に面倒なこと押し付けようとするなよ。
GM:
……(苦笑)。
では、あなたたちがどうしようか相談していると、桟橋のほうから鐘の音が聞こえてきました。続けて、「船が入港するぞーッ!」と大声が響きます。しばらくすると、沖のほうから大型の帆船がスーッと滑るように入港してきました。やがて船が動きを止めると、桟橋との間に橋が架けられ、船の中から商人やその護衛につく者たちが降りてきます。彼らは入市手続きを済ますために桟橋の袂で一列に並び、順番に審査を受けて通過してきます。
そうやって、ようやく上陸を果たした彼らのところに、陸地側から近づいて行く人物の姿がありました。その姿はサブリのものに違いありません。
一同:
おおッ!?
サブリ(GM):
サブリは船から降りた護衛たちに近づいて行き、何やら話しかけているようです。
アゼル:
こんなところで見かけるとは、ラッキーだな。じゃあ、さっそくサブリさんに接触しよう。
エルド:
いきなりですか? 少しは様子をうかがうとか、そういった発想は出てこないんですか?
アゼル:
な、なるほど……。それなら、少し様子を見てみよう。
サブリ(GM):
では、あなたたちがサブリのことを観察していると、その身振りだけで、彼が護衛を相手に何やら交渉していることがわかります。
GM:
しかし、護衛たちはサブリに対して首を横に振って、その場を立ち去って行ってしまいました。
サブリ(GM):
そうやって、新たに入港した船に乗っていた護衛たち全員に同じ反応を返されると、サブリはがっくりと肩を落とし、トボトボと街のほうに立ち去ろうとします。
アゼル:
「どうする? このままだと行ってしまうぞ……」
エルド:
「サブリさんの動きから察するに、護衛を雇おうとしていたみたいですね。とりあえず、声を掛けてみますか?」
イーサ:
「そうだな」
サブリを追いかけて行って声を掛けてみよう。
GM:
では、あなたたちはすぐにサブリに追いつきました。
イーサ:
「サブリ? やっぱり、サブリじゃないか」
サブリ(GM):
声を掛けられたサブリは、振り返ってあなたたちのことを確認すると、少し驚いたような顔をしました。
「おおッ! お前ら! なんでまたこんなところに? イルヤソールに行ったんじゃじゃなかったのか?」
アゼル:
「まあ、いろいろありまして……」
サブリ(GM):
「いろいろって、ニルフェルちゃんたちはどうしたんだ?」
アゼル:
くっ……。嫌なこと聞きやがる……。
GM:
いや、あんな別れ方しておいて、この再開なら、そこを確認するのは当然でしょう(苦笑)?
エルド:
「それが、またアゼルさんの悪い癖がでましてね……。人を助けるために、何にでも首を突っ込んでしまうという悪い癖が……」
サブリ(GM):
「ふぅん……。じゃあ、人助けのためにこの街に来たってことなのか?」
エルド:
「まあ、そういうことです」
サブリ(GM):
「なら、今はその人助けの真っ最中ってわけだ?」
エルド:
そこで、判断を仰ぐようにイーサさんに視線を送りました。もしこのまま話し続けていいなら、僕は全部話してしまいますが……。
イーサ:
うーん。
(しばらく考え込む)
アゼル:
(イーサの考えがまとまるのを待たずに)
「いや、人助けは解決したところだ」
サブリ(GM):
「おッ! そうなのか!?」そのアゼルの返事を聞いて、サブリの表情がパッと明るくなりました。
「なら、今は手すきってことだよな? だったら、護衛として俺に雇われてくれねぇか? 実はいま、信頼のおける腕の立つ奴らを探してたところなんだ」
アゼル:
「護衛? ここからまたどこかに行くつもりなのか?」
サブリ(GM):
「いいや。この街の中で商品の受け渡しをするだけなんだが、相手がちょいとばっかりヤバイ連中なんでな。それで、頼りになる護衛が必要だったんだ。もし、それに付き合ってくれるっていうなら、成功報酬で1万銀貨払おう」
アゼル:
「ほう……。悪くない話だ。どうする、イーサ?」
イーサ:
「たしかに商品の受け渡しに立ち会うだけで済むんだったら、1万銀貨ってのはずいぶんと魅力的な報酬だな……。しかし、取引相手ってのはそんなにヤバイ連中なのか?」
サブリ(GM):
「ま、まあ、ありていに言えば無法者の集団だな。それに、なにせ取引額がでかいんだ。用心するに越したことはないだろ。だが、野盗20人を敵に回しても蹴散らしちまうお前らになら、安心して任せられる」
アゼル:
「その無法者ってのは敵に回しても大丈夫な連中なのか?」
サブリ(GM):
「ん? ん~。ま、まあ、大丈夫なんじゃないか? それに、お前らはこの街で暮らしてくわけじゃないだろ?」
アゼル:
「まあ、それはそうだが」
サブリ(GM):
「だったら大丈夫だ」
エルド:
「ということは、その無法者というのは、この街に根付いている連中ということですね?」
サブリ(GM):
「ん、ん……。そうだな……。まあ、そういうことになるかもな」
イーサ:
「荷物の受け渡しってのは、いつあるんだ?」
サブリ(GM):
「日程はまだ確定させてないんだ。護衛を見つけてからじゃないと決められなくてな……。いやぁ、ホントに困ってたんだ。なにせ、アスラン商会から借りた金の返済期日まで、もうあまり余裕がないからな。そんなわけで、よろしく頼むよ」そう言って、サブリは両手をあわせると、あなたたちのことを拝みました。
アゼル:
「ちょうど予定も空いてることだし、いいんじゃないか? サブリさんも困っているようだし……」
サブリ(GM):
「そうか! それならありがたい。じゃあ、さっそくだが……」そう言って、サブリはあなたたち3人を見比べます。
「イーサ、お前がいいな。これから荷物の受け渡し場所と日時を調整しに仲介役のところまで行くから、お前も一緒についてきてくれ」
エルド:
「ちょっと待ってください」
いったん話を中断させておいて、イーサさんに、「一度シルクさんのところに戻って、彼女も交えて相談してから決めたほうがいいんじゃありませんか?」と確認をとります。
サブリ(GM):
エルドが話の腰を折ったことに、サブリは眉をひそめました。
「おいおい、二つ返事で引き受けてくれるんじゃないのかよ?」
エルド:
「いや、それが、実は僕たちにはもう1人同行者がいるんですよ。もし護衛の依頼を受けるなら、その人も一緒に行動することになると思うので、僕たちだけで決めるわけにいかないんです」
サブリ(GM):
「そーなのか……。だが、人数が増えたからって、報酬金額は増やさないからな。それに、お前たちが考えてる間にほかの護衛が見つかったときには、そっちに頼んじまうからな?」
エルド:
「まあ、サブリさんにはサブリさんの都合もあるでしょうから、そうなったときは構いません」
(声のトーンを落として)そうなったら、全力で取引の邪魔をしてやりましょう……。
アゼル&イーサ:
(爆笑)
イーサ:
「じゃあ、悪いんだがそう言うことで、一晩だけ時間をくれ。明日になったら、あらためて返事をしに来る」
サブリ(GM):
「……ホントに、ほかの護衛が見つかったときには、この話はなかったことにするからな? そのときは、雇ってくれって泣きついてきても相手にしないからな? いいんだな? ホントにいいんだな?」
エルド:
「ほかに護衛が見つかるなら、それに越したことないじゃないですか。ですが、そう簡単に見つかりますかね? 先ほど港でサブリさんの様子を見させてもらいましたが、護衛探しは難航してるんじゃないですか?」
サブリ(GM):
エルドの言葉に、サブリはピクリと眉を引きつらせました。あからさまに、こいつら見てやがったのかって感じですね。
エルド:
その顔がみられたなら僕は満足です(笑)。
イーサ:
「それで、明日あんたに返事するためには、どこに行けばいい?」
サブリ(GM):
「……港通りにラマザっていう宿屋があるから、そこに来てくれ。宿屋の主人には話をとおしておく……」
イーサ:
「わかった。それじゃ、また明日に」
よし、これでやるべきことは果たせたな。じゃあ、第1市壁の外に戻るとしよう。あらためて作戦会議だ。
こうして、サブリを見つけるという当面の目標を達成した一行は、その日の情報収集を終えたのでした。そして、ここから情報の整理と分析が始まります。