LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第5話(20)

 翌日の朝、イーサは市門が開くのを待ってから、1人でサブリが泊まっているラマザという宿屋を訪ねていきました。

GM:
 では、イーサがラマザ亭を訪れると、すでに宿屋の主人には話が通っていたようで、そのままイーサはサブリが泊まっている部屋に案内されました。

サブリ(GM):
 サブリはイーサのことを確認すると、待っていましたとばかりに部屋に招き入れます。

イーサ:
 サブリの部屋に入った。
「サブリ、昨日の護衛の話なんだが……」

サブリ(GM):
「引き受けてくれるのか? 引き受けてくれるんだよな!?」サブリは前のめり気味にそう聞いてきます。

イーサ:
「ああ。護衛の仕事は引き受けさせてもらう。俺とエルドとアゼル、それともう1人の合計4人でな」

サブリ(GM):
「……昨日も言ってたが、そのもう1人ってのは、いったい何者なんだ?」

イーサ:
「カルカヴァンであんたたちと別れてから出会った奴だ。シルクという名の女なんだが、腕は立つから安心してくれ」

サブリ(GM):
「戦力になる奴ならこっちとしても大歓迎だが、腕が立つっていうのは具体的にどれくらいなんだ? どんなことができる奴なのか、前もって知っておきたいところだが……」

イーサ:
「そうだな……。白魔法使いとしての腕前は俺より上だ。それと、弓の腕も優れている」

サブリ(GM):
「おお! 白魔法が使えるのか。それなら心強い」そう言って、サブリは満足気な表情をします。
「……で、昨日も少し話したことだが、まずは仲介役と接触をとって、荷物の受け渡しの日時と場所を決めなくちゃならねぇ。おまえ、今晩それに立ち会ってくれ。仲介役は、毎晩20時頃から、貧民街にある酒場に顔を見せる。それくらいの時間になったら酒場に向かうことにするから、予定は空けておいてくれ。……たしか、おまえたちは第1市壁の外にある宿屋に泊ってるんだったか?」

イーサ:
「ああ、俺たちはいま第1市壁の外にあるミルザ亭って宿屋に泊まってる」

サブリ(GM):
「そうか……ミルザ亭だな。じゃあ、19時くらいになったらそこまでおまえのことを訪ねに行く」

イーサ:
「わかった。そのくらいの時刻には宿屋にいることにしよう。それじゃ、また夜に」
 サブリとの調整が終わったら、ミルザ亭に戻ってエルドにこのことを伝えておこう。

GM:
 では、イーサはいったんミルザ亭へと戻りました。


エルド:
「おかえりなさい、イーサさん。サブリさんのほうはどうでした?」

イーサ:
 サブリとの会話の内容をかいつまんで報告した。
「――って感じで、予定どおり護衛を引受けることになった」

エルド:
「なるほど。じゃあ、アゼルさんにもこのことを伝えておく必要がありますかね……」

イーサ:
「そうだな」
 ……しかし……20時にヤルダー酒場に落ち合う以外に、アゼルたちと連絡取る手段がないな……。
(少し考えてから)
 しかたない、直接ババク亭に行って報告してくるとしよう。

エルド:
 じゃあ、僕も一緒にババク亭に向かいます。

GM:
 あーあ。せっかく、ここまで慎重を期して、仲間だということがわからないように行動してきたのに(苦笑)。

エルド:
 まあ、どうせもうすぐ4人一緒に行動することになりますし、セルピルさんの顔が割れなければ問題ありませんよ。

 こうして、ババク亭に足を運んだイーサたちは、アゼルとセルピルにもサブリとの会話の内容を報告しました。そして、その後はミルザ亭で、サブリが訪ねてくるのをひたすら待つことにしました。


GM:
 では、19時まで時間を進めてしまいますが、その時間帯、ミルザ亭にはイーサとエルドが待機してるってことでいいですかね?

アゼル:
 あ、俺もミルザ亭に行って待機しておく。仲介役との交渉後にも情報の共有は必要だろ。

GM:
 了解です。ならば、イーサとエルドとアゼルの3人がミルザ亭に待機しているということで進めます。
 19時になると、サブリがイーサを訪ねてミルザ亭までやってきました。宿屋の主人がそのことをイーサに伝えるために部屋まで呼びにきます。

イーサ:
 じゃあ、最低限の装備を整えて、サブリのところに行くとしよう。

エルド:
 僕とアゼルさんはここで留守番してるので、がんばってきてください。

GM:
 イーサが装備を整えてから階下に降りていくと、サブリが宿屋の入口であなたのことを待ち構えていました。

サブリ(GM):
「よう。準備はできてるか? できてるなら、さっそく仲介役のところに行くぞ」

イーサ:
「ああ」

GM:
 では、イーサはサブリに連れられ、夜の道を貧民街へと歩いていきました。ちなみに、この時点でサブリの積荷は、荷馬車ともどもラマザ亭に預けられています。


GM:
 サブリは貧民街の無計画に走る道を進み、ある寂れた酒場へと入って行きました。そうと言われなければ酒場だとわからないほどの、とてもみすぼらしい店です。店内にはなんのものともわからぬ煙が充満しており、天井から垂れ下がる黒ずんだ蜘蛛の巣や、床に厚く積もった埃が不衛生感を引き立てています。客層もそれに相応しく、いつ風呂に入ったか見当もつかないほど不潔な者や、露出した肌に古傷の跡や刺青が見える荒くれどもなどが大半を占めています。

サブリ(GM):
 そのような場末の酒場に足を踏み入れたサブリは、カウンター越しに店の主人と一言二言交わすと、店の最奥にある円卓へと向かっていきました。

GM:
 その円卓には、ひときわ人相の悪い男が1人で座り、チビリチビリと酒を飲んでいます。どうやら、その男がサブリの話していた仲介役のようです。

サブリ(GM):
 サブリは男の目の前で立ち止まると、懐の中から何かを取り出して、それを男に見せました。

GM:
 イーサには、サブリが懐から取り出したものがバリスの聖印であることがわかります。

仲介役の男(GM):
 バリスの聖印を確認した男は、あごをしゃくってサブリに自分の正面の席に座るよう促しました。

サブリ(GM):
 サブリは男に促されるままに席に着きます。

イーサ:
 じゃあ、俺は用心棒らしく、サブリの斜め後ろに立っていることにしよう。

シーン外のアゼル:
 だったら、身体を半身にして立っておけ。そうすると、強そうに見えるらしいぞ。

GM:
 イーサはけん制のためにこの場についてきたわけですから、そういったハッタリも必要かもしれませんね(笑)。

サブリ(GM):
 席に着いたサブリは、一呼吸してからこう言います。
「以前、あんたのところのメフメトに頼まれた荷物を運んできた。受け渡しの日時と場所を決めたい。メフメトとの仲介を頼む」

仲介役の男(GM):
 すると、それを聞いた男は、サブリを値踏みするような目で見てから、「メフメト爺さんとの仲介ねぇ……。オマエ、名前は?」と返しました。

サブリ(GM):
「俺はサブリ……。サブリ・オズディルだ」

GM:
 では、ここでイーサは《スカラー技能レベル+知力ボーナス+2D》での判定をどうぞ。目標値は10です。

イーサ:
(コロコロ)13で成功。

GM:
 ならばイーサは、オズディルという姓が、カーティス王国平定前にこの周辺の土地を勢力下に収めていた氏族のものであることを知っていました。
 平定戦争後、オズディル氏族長の直系に当たる者は全員処刑されています。また、直系以外の者たちも、オズディルという姓を名乗ることを禁じられています。まあ、早い話がお家取り潰しになったということですね。

イーサ:
 なるほど。サブリがバリス教団相手に商売できてたのは、オズディル氏族の人間だったからなのか……。

GM:
 そうかもしれませんね。バリス信者の大半はオズディル氏族の人間でしょうし、そういった伝手でメフメトが妖精石を高額で買い集めていることを知ったのかもしれません。

仲介役の男(GM):
 仲介役の男は、合点がいったという様子でうなずきました。「そうか……。わかった。じゃあ、2時間後にまたここに来い。そのときに、受け渡し日時と場所を教えてやる」

サブリ(GM):
「2時間後だな……」そう復唱すると、サブリはイーサの了承を確認するかのように後ろを振り向きます。

イーサ:
 サブリに対してうなずいてみせた。

サブリ(GM):
 イーサの反応を確認すると、サブリは再び仲介役へと視線を戻して、「じゃあ、2時間後にまた来る」と返答しました。そして、席を立つと酒場から出て行きます。

イーサ:
 サブリに続いて酒場から出て行く。

サブリ(GM):
 店の外に出たサブリは、緊張を解いて大きく息をつきました。
「ふー。とりあえず、いまのところ順調だな。……さぁて、次は2時間後か。それまで、どこで時間をつぶしたもんかな……。腹も減ったし、飯でも食いに行くか? それくらいなら、俺がおごってやろう」

イーサ:
「そうするか」


 2人は適当な飲食店に入って2時間潰すと、先ほどの酒場を訪れました。そして、再び仲介役と対峙します。

サブリ(GM):
 サブリは、今度は席に座らず、立ったまま仲介役に問いかけました。
「――で、日時と場所は?」

仲介役の男(GM):
 仲介役の男は、その問いに答える代わりに、1枚の紙をサブリに差し出します。

サブリ(GM):
 サブリは男の手から紙を受け取ると、それに目を落としました。

GM:
 紙にはこう書かれています。

 明日、24時。貧民街のとある廃墟にて受け渡しを行う。

GM:
 ちなみに、「とある廃墟」というのは具体的な地名が書かれていると思ってください。

サブリ(GM):
 その内容を確認したサブリは、「わかった。メフメトによろしくな」と仲介役に告げ、そのまま酒場をあとにしました。
 酒場からの帰り道、サブリは次のように漏らします。
「受け渡しが明日で良かったぜ。あんまり先延ばしにされちまうと、借金の返済期日に間に合わなくなっちまうからな……」

イーサ:
「それはよかったな。で、明日はどうする?」

サブリ(GM):
「そうだな……。24時に貧民街で受け渡しするとなると、市門はとっくに閉まる時間だ。だが、さすがに長時間、荷馬車でブラブラするわけにもいかない。そこで、おまえたちの泊まっている宿屋に部屋を取って荷馬車を預けておこうかと思うが、どうだ?」

イーサ:
「ああ。それがいいだろう」

サブリ(GM):
「じゃあ、さっそく今晩からそこに泊まるとしよう。この時間じゃ、第1市壁内には戻れねぇしな……。んで、あとのことはアゼルとエルドがいるところで話し合うことにしよう」

イーサ:
「了解だ」


GM:
 こうして、イーサとサブリは23時頃にミルザ亭に戻ってきました。
 戻ってきた2人は、部屋で待っていたエルドとアゼルに対して、受け渡しの日時と場所について報告します。

サブリ(GM):
「そんなわけで、――ってことになった」

アゼル:
「明日の24時か……」

サブリ(GM):
「ああ。で、それまでのことなんだが、とりあえず明日の朝になって市門が開いたら、ラマザ亭に置いてある荷馬車をこっちまで運んでくるつもりだ。それをおまえたちにも手伝ってほしい」

アゼル:
「わかった」

エルド:
「それは構いませんが、それ以外の時間、僕たちはどうしていればいいんでしょう?」

サブリ(GM):
「受け渡しの1時間前までは自由にしてていいぞ」

エルド:
「そうですか……。まあ、特にやりたいことがあるわけでもないので、僕は部屋でのんびりしていると思いますが……」

イーサ:
 俺も部屋で待機だな。

アゼル:
 じゃあ、俺も。

GM:
 あらら……(汗)。せっかくのシティ・アドベンチャーだというのに、相変わらずあなたたちは何もしませんね……。これじゃ、まるで引きこもりじゃないですか(苦笑)。

一同:
(笑)

 結局、翌日になって、サブリの指示どおり荷馬車をミルザ亭まで運ぶ手伝いを済ませた一行は、その後それぞれの部屋に引きこもってしまいました(苦笑)。そして、23時にミルザ亭に全員集合すると、いよいよバリス教団との商品の受け渡しに臨むこととなったのです。




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