GM:
では、ここでいったん場面をオズディル城の正面入り口へと移します。
そこでは、ダット率いる穏健派の軍勢と城の防御を固める警備兵とが、激しい戦闘を繰り広げていました。大勢的には、やや穏健派が優位に戦闘を進めているようです。
ダット(GM):
そんな中、前線に立って剣を振るっていたダットが、1人斬り倒したところで怪訝そうな顔をしました。
「おかしい……。なぜだ? もっとこちらに兵が押し寄せてきてもいいはずだが、なぜこんなにも警備が手薄なんだ……? まさか……」
GM:
ダットの感じた一抹の不安をあおり立てるかのように、潮気をはらんだ強い風がオズディル城へと吹き付けていました。
シーン外のアゼル:
おお? なにかあるのか?
GM:
さて、その一方で、あなたたちは螺旋階段の終点にたどり着こうとしていました。
螺旋階段を下り終えると、その先の通路はしばらく直線に伸び、突き当りで右手に折れています。そこを曲がった先は、幅が10メートル近くもある、とてもなだらかな下り階段となっていました。階段の左右の壁には見事な作りのレリーフが施されており、厳かな雰囲気をかもしだしています。
さらに20メートルほど足を進めると、今度は正面に大きな観音開きの扉が見えてきました。その扉は、人が1人通れるくらいわずかに開いています。
イーサ:
用心しながら扉の中に入ってみる。
GM:
扉の奥に進むと、その先の空間は礼拝堂となっていました。2階建ての建物がすっぽり収まるほど巨大な空間は、10本の柱で支えられています。それと、ホールの左右には8つの小さな泉があるのですが、それぞれの泉の中央にはバリス神の使徒をかたどった彫像がたたずんでいました。さらに正面奥には、それら使徒の彫像よりもひときわ巨大な、バリス神を模した像があります。
アゼル:
偶像崇拝が禁じられているわけじゃないんだな。
GM:
この手の像があったほうが、ヴィジュアル的に盛り上がりますからね(笑)。
バリス神は主に優れた海洋技術を人々にもたらした神様であり、その像の手にはトライデントが握られています。ポセイドンのような見た目だと思ってください。
そのバリス神像の奥には左右に1つずつ扉があります。それと、礼拝堂外周の6メートルほどの高さがあるところに、中2階の回廊があるのが見えました。
なお、礼拝堂内に人の気配は感じられません。
イーサ:
「ふむ……。ここには誰もいないようだな」
エルド:
「正面に巨大な像がありますが、あれはいったいなんなんですか?」
アゼル:
「おそらく、あれがバリスなんだろう。見事な出来栄えだ。もう少し近くで見てみるか」と言って、バリス像の近くまで歩いて行く。
「像の奥の左右に扉が見えるな……」
イーサ:
「扉の先に何かあるかもしれない」そう言って、アゼルについて行こう。
エルド:
僕は少し距離を置いてついて行きます。
「なかなか迫力のある像ですね」
アゼル:
「ああ。だが、バリス神の像を眺めていても仕方ない。扉を調べるぞ」
エルド:
「魔法的な罠がないといいんですが……」
イーサ:
「そうだな。ちょっと見てみるか……」
“センス・マジック”を唱える。(コロコロ)発動。周囲を見回してみるが……。
GM:
あなたたちの荷物以外に魔法の反応を示すものはないようです。
イーサ:
「魔法的なものはなにもないようだ」
アゼル:
「エルド、扉を調べてみてくれ」
エルド:
離れた場所からどうなるか見ていようと思っていたんですが、名指しされてしまっては出て行くしかありませんね(苦笑)。扉まで近づいて行きます。
GM:
では、エルドが扉に近づいて行く途中で、あなたたちの背後から声が聞こえてきました。その声は、少し高めでよく通る男性の声です。
男性の声(GM):
「バリス神の礼拝堂に何かご用ですか?」
アゼル:
声のほうを振り返ってみる。
GM:
礼拝堂の入り口のほうを振り返ってみると、黒い肌をした逆毛の男の姿がありました。
キツネ目の男(GM):
その男は特徴的なキツネ目であなたたちのことを見ています。
セルピル(GM):
「あッ!」
男のことを目にしたセルピルは一瞬言葉を失います。そして、あなたたちに対して、「気を付けて。アイツがレヴェントだよ……」と囁きました。
GM:
続いて、礼拝堂の入り口から3人のローブを羽織った人物が姿を現しました。その内の1人の顔には、あなたたちも見覚えがあります。それはメフメトでした。あとの2人は頭をフードですっぽりと覆っています。
メフメト(GM):
「ほうれ、やはり現れおった。こやつらが、ワシの話しておったダットの手先じゃよ」
アゼル:
……手先というわけではないんだが……。まあ、いいか(苦笑)。
メフメト(GM):
「不本意ながら、こやつらには借りを作ってしまったからのぅ。キッチリとお返ししてやらんといかんじゃろう」そう言うと、メフメトは、その大きな目であなたたちのことをギロリと睨み付けます。
アゼル:
剣を抜いて身構えた。
レヴェント(GM):
メフメトの言葉を聞いたレヴェントは、少し呆れたような顔をします。
「まったく、メフメトさんも根に持つタイプですね。ダットたちのことなど、もう放っておけばよいじゃありませんか」
メフメト(GM):
「馬鹿を言え。ワシの可愛い部下たちが殺されておるのじゃぞ。こやつらのことをモルモットにして使い倒さんことには、この怒りは収まらぬわ。それに、なかなか活きのいい奴らじゃからな。実験体としてはおあつらえ向きじゃわい」
レヴェント(GM):
「そうですか……。そういうことであれば、ワタシはしばらく傍観させていただくとしましょう」そう言うと、レヴェントは入り口の扉の横へと歩いて行き、自分は部外者だとばかりに壁に背を持たれかけさせました。
メフメト(GM):
「ああ、キサマはそこでそうしておれ。下手に手を出されてしまっては、実験体として使い物にならなくなってしまうからな。あやつら4人が相手なら、こいつらだけで十分じゃよ」そう言うと、メフメトは自分の背後に立つ2人の人物に対して、「おい、オマエたち。仕事じゃ。あやつらを大人しくさせるんじゃ。場合によっては殺しても構わん」と命じます。
GM:
その言葉に反応して、2人の人物はメフメトの前まで進み出ると、羽織っていたローブを脱ぎ捨てました。ローブの下から姿を現した人物のうち一方は、右手にメイス、左手にラージ・シールド、そしてプレート・メイルを装備した男です。そしてもう一方は、リング・メイルに身を包み、その両手にロング・スピアを握りしめた男でした。2人とも感情が抜け落ちたかのような目をしています。
セルピル(GM):
槍を手にした男の姿を目にしたセルピルは、大きく目を見開くと、「サイッ!」とその男の名前を叫びました。
サイ(GM):
しかし、自分の名前を呼ばれても、サイはピクリとも反応しません。
メフメト(GM):
「ほう。キサマらはこの人形の知り合いじゃったのか。じゃが、いまのこやつ等には、ワシ以外の者の声は届かんよ。せいぜい、感動の再会をじっくりと楽しむがいい。刃を交えてな! ヒャーッヒャッヒャッ!」そう言って高らかに笑うと、メフメトはサイたちに「やれッ!」と号令をかけました。
GM:
その言葉にあわせて、サイともう1人の戦士がゆっくりと動き始めます。では、ここから戦闘処理としましょう(と言って、戦闘マップを広げる)。ちなみに、イーサの目には、メフメトの装備しているローブとスタッフ、それとレヴェントの装備しているマントとブーツが、それぞれ魔法の付与されているものとして映っています。
さあ、いよいよメフメトとのリベンジ戦が始まりました。敵に操られるサイ。そして不気味なレヴェントの存在。お膳立てとしてはこれ以上ないほどのシチュエーションです。
セルピル(GM):
「祝福の魔法をかける。皆、集まって」とセルピルが押し殺すようにして声を発しました。
イーサ:
「了解だ」
俺はアゼルに“プロテクション”を掛けておこう。(コロコロ)発動。
エルド:
じゃあ、僕はセルピルさんの前に出ます。
アゼル:
おいおい、エルドが前にでるのかよ?
エルド:
あまり魔法を使えませんからね。まずは接近戦闘を挑みます。
アゼル:
だったら、俺もエルドの隣まででる。その途中でセルピルの横を通り抜けるときに、「いったいどういうことだ、サイは寝返ったのかッ!?」って言っておく。
セルピル(GM):
「そんなわけあるわけないでしょッ!」
アゼル:
「じゃあ、いったい……?」
GM:
……。
ここのアゼルの発言は、プレイヤーはそれとわかりつつもPCが状況を理解できずに戸惑っていることを表現しようとしたものなのだと思います。しかし、アゼルたちはすでにセルピルとダットからバリス教団の薬物による洗脳の話を重ねて聞いているわけで、その結果、ただ単に記憶力の悪い人、あるいは察しの悪い人になってしまいました(苦笑)。
サイ(GM):
サイは槍を構えて、徐々にあなたたちとの距離をつめていきます。
メフメト(GM):
そして、メフメトも4ウェイトの“瞑想”を開始しました。
セルピル(GM):
セルピルは、サイが攻撃を仕掛けてくる前に、“ブレス”を詠唱します。
「神よ、我らに祝福をッ!」
(コロコロ)“ブレス”が発動しました。対象はパーティー全員ですね。
イーサ:
メフメトは4ウェイトの“瞑想”か……。“エクスプロ―ジョン”じゃなさそうだが、結構大きめの魔法が飛んできそうだな。全員が魔法範囲に入らないように、広がって動こう。俺は右手から攻めて行って、重戦士を引き付ける。
ハシム(GM):
では、ハシムは、「オレ、サイ、止メル……」と言って、“通常移動”で左手側からサイに向かっていきました。
エルド:
うーん、できれば“瞑想”が完成する前に、なんとかメフメトのところまで一気に距離をつめて、“瞑想”を中断させたいところですね。僕のいるところから“全力移動”でメフメトのところまで行けませんか?
GM:
直線上に障害物はありませんが、途中でサイの横を通ることになるので、“離脱阻止”や“範囲支配”で停止させられる可能性が高いですね。リスクが大きすぎますので、あまりおすすめしません。やるのであれば、サイに誰かが接敵してからのほうがいいですよ。
エルド:
なるほど。それでは、しばらく“待機”しています。
アゼル:
じゃあ、俺が1歩前進してサイに接敵する。接敵はするが、まだ攻撃はしないでおく。
サイ(GM):
では、サイは目の前のアゼルに対して、“渾身の一撃”で攻撃を加えてきます。
アゼル:
おいおい、よりによって“渾身の一撃”かよ……(汗)。
サイ(GM):
(コロコロ)命中値は14です。
アゼル:
「やめろ、サイッ! 俺たちはお前を助けにきたんだぞッ!」
盾で“ディフレクト”する。(コロコロ)うわッ、ディフレクト値は13で1足りない。さすがにここで“渾身の一撃”を食らうのはヤバいよな……。“ブレス”の効果を使って達成値に+1する。それで防いだ。
迷いのあるアゼルに対して、サイは非情な攻撃を繰り出してきます。シチュエーションとしては美味しい構図ですが、ゲーム的には危険な状態です。早急に対応方針を定めなければなりません。
メフメト(GM):
では、うまい具合に、サイの周辺にあなたたちが固まってくれたところで、メフメトの“瞑想”が完成します。さて、ここで選択する魔法は……。“スリープ・クラウド”です。アゼルとエルドとハシムの3人を発動範囲におさめて、行使値は(コロコロ)13。
アゼル:
げっ! “スリープ・クラウド”かよ……。
ハシム(GM):
ハシムの魔法抵抗値は、(コロコロ)失敗。ハシムは睡魔に耐えられず、そのままゆっくりと地面に伏して眠り込んでしまいました。
アゼル:
(コロコロ)よしッ! 俺は魔法抵抗値16で抵抗に成功!
エルド:
僕は範囲の端にいるので、“移動回避”でも避けられますよね?
GM:
ええ、避けられますよ。
エルド:
では、“移動回避”に“全力回避”を併用して、(コロコロ)回避値15で“スリープ・クラウド”の範囲外に逃れました。
GM:
了解です。ちなみに、眠ってしまったハシムも、すぐ近くで戦闘行動が行われているため、次回の行動で目を覚まします。起き上がるのに多少時間がかかりますけどね。
混戦状態になる前に範囲魔法で一気に優位な戦局を作ろうとしたメフメトでしたが、魔法の行使値が振るわなかったこともあり、思ったほどの効果は得られませんでした。
アゼル:
さて、サイと交戦状態になったわけだが、このままサイを攻撃してもいいんだろうか? 一応、「セルピル、どうするッ!?」と確認しはしておくが、きっと答えは返ってこないんだろうな……。いっそのこと、セルピルからサイを殺してもいいって許可でないかな?
GM:
いや、さすがにあなたたちのほうから言い出さない限り、そんなことをセルピルのほうからすすんで言ってくることはないと思いますよ(苦笑)。
アゼル:
うーん……。じゃあ、とりあえず“防御重視”しておく。
イーサ:
正気に戻りさえすればいいんだよな? だったら、重戦士に“サニティ”をかけてみる。(コロコロ)行使値14でどうだ?
重戦士(GM):
では、重戦士はそれに対して抵抗を試みませんでした。そして、“サニティ”をかけられた重戦士の動きには、何の変化もみられません。相変わらず、うつろな目をしたまま襲ってきます。
レヴェント(GM):
そこで、イーサが“サニティ”を唱えたことに気がついたレヴェントは、鼻で軽く笑ってから、「無駄ですよ。彼らは一時的に正気を失っているというわけではないのです。すでにクスリ漬けで後戻りできない状態なのですから、気つけの魔法程度で自我を取り戻すことなどありえません」と口にしました。
イーサ:
なるほど……。つまり、この状態を回復させるためには“キュア・ポイズン”が必要ってことか? 俺には唱えられない魔法だが……。
ちなみに、ここで薬品による洗脳状態を“サニティ”で解除できないと処理したことに疑問をもたれる方もいるかもしれませんが、LOSTでは“サニティ”を、「一時的な精神の乱れを元の状態に戻す魔法」と定めています。よって、このケースでは、体内の毒を浄化しない限り洗脳状態を解除することはできないものとして処理しました。また、仮に毒による洗脳でなかったとしても、それが常態化した場合には“サニティ”では治療できなくなります。
メフメト(GM):
さて、“スリープ・クラウド”を唱え終えたメフメトが、次にどうするかというと……。
「一網打尽にはできなかったか……。よいじゃろう。ならば、ひとりずつ落としていってくれるわい」と言って、メフメトは2ウェイトの“瞑想”を開始しました。
エルド:
そうはさせません。いまなら、誰にも邪魔されませんよね? “全力移動”に“体当たり”を併用して、メフメトを吹き飛ばします。
メフメト(GM):
むむ……。そうきましたか。では、メフメトは“瞑想”を維持したまま、回避はしません。どうせ、回避できないでしょうからね。命中判定をどうぞ。1ゾロ以外で命中します。
エルド:
ならば、命中判定は、(コロコロ……出目は1ゾロ)あ……(絶句)。
アゼル&イーサ:
(爆笑)
エルド:
(少し考えてから)
ここで“可能性”を使います。命中判定をやり直して、(コロコロ)命中。ダメージは物理で3点です。
メフメト(GM):
3点であれば、メフメトにダメージは通りませんでした。そして、肝心の筋力対抗判定ですが、(コロコロ)メフメトは10です。お爺ちゃん、頑張った!
エルド:
こちらの値は、(コロコロ)うーん、同じく10です。……同値じゃ吹き飛ばせないんですよね? だったら、ここに“ブレス”の効果をつぎ込んで11にします。
メフメト(GM):
了解です。ならば、メフメトは後方に3メートル吹き飛ばされました。転倒判定は(コロコロ)成功して転倒せず。ですが、“瞑想”は中断されてしまいました。
エルド:
よしッ!
メフメト(GM):
後方によろめいたメフメトは、体勢を立て直すと、憎々しげにエルドのことを睨み付けました。
「くぅ……。このうるさいハエどもがッ!」
“可能性”と“ブレス”の効果をつぎ込んだ、エルド渾身の“体当たり”が炸裂! そして、いざメフメトとの接近戦へ。はたして、この危険な賭けは吉と出るか、凶とでるか?