LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第5話(31)

 一行がレヴェントとの激しい戦いを続ける中、頭上の回廊から響いてきた若い男性の声は、どこか聞き覚えのあるものでした。

聞き覚えのある声(GM):
「メフメトさん、レヴェントさん。そろそろ撤収しますよ?」

アゼル:
 ん? その声はファルザードか? だが、戦いの最中だから気にしない!

レヴェント(GM):
 興奮状態にあるレヴェントも、アゼルから視線を離そうとはしません。
「すぐに終わらせます! もうしばらく待っていなさい!」

イーサ:
 俺も、レヴェントに斬りつけようとしてる。

エルド:
 僕は礼拝堂から逃げだそうとしています。

GM:
 誰一人として回廊を見る人はいませんか(苦笑)。

ファルザード(GM):
 では、階下で戦っているのがあなたたちだということに気がついたファルザードは、「あ、あなたたちは!」と驚きの声を漏らしました。

GM:
 そして、そんなファルザードの背後から、さらに2人の人物が回廊に姿を現したのですが、誰もそちらに目を向けていないようですので、この段階では外見の描写は控えておきますね。

男性の声(GM):
 ファルザードの声をかき消すかのように、「レヴェント。こんなところでいつまで遊んでいるつもりだッ!」と、力強い男性の声が礼拝堂に響き渡ります。

レヴェント(GM):
 すると、レヴェントはその声にビクリと反応し、今度はアゼルから視線をそらして回廊のほうへと顔を向けました。
「サーラール様。お言葉ですが、こちらはメフメトさんが倒されてしまっています。息があるならばもちろん、死んでいたとしても、仇をとって差し上げるべきではありませんか?」

サーラールと呼ばれた男(GM):
 それに対し、サーラールと呼ばれた男はよく通る声でこう返します。
「メフメトはすでに役割を果たした。お前にはお前の、やらなければならぬ仕事があるだろう。まさか、忘れているわけではないだろうな?」

レヴェント(GM):
 そうたしなめられてしまうと、レヴェントは深く息をつきました。
「せっかく楽しくなってきたところだったのに、残念です。上からのお達しなので、今日のところはこれにてお開きとしましょう」

アゼル:
 レヴェントをにらんで剣を構えているだけで、俺は何も言いはしない。

レヴェント(GM):
 では、レヴェントは無防備な動きで、アゼルに背を向けると、イーサの隣を通り過ぎて行きます。

イーサ:
 そのまま行かせたくはないが……こいつには勝てないと思ってるから、手は出さない。

レヴェント(GM):
 レヴェントは2人から少し離れたところまで歩くと、くるりと振り返り、あなたたちのことを見ます。
「追撃はありませんか……。もしかして、戦う意欲を失ってしまいました? まあ、その選択は誤りではないと思いますが、もし再び剣を交える機会があるなら、そのときにはもう少し気概というものを見せて欲しいものですね……。それでは、ごきげんよう」そう言うと、レヴェントは、軽くバックステップしました。それと同時に、彼は魔導語で「跳躍」と呟きます。次の瞬間、彼の姿は掻き消え、いつの間にかに10メートル近く離れたところにある回廊の上へと移動していました。

重戦士(GM):
 それとほぼ同時に、重戦士が武器を取り落し、胸を押さえて苦しみ始めます。そのまま膝をついた重戦士は、地面を転がり、嘔吐を繰り返します。

アゼル:
 おや?

レヴェント(GM):
 その様子を見たレヴェントは、残念そうな口ぶりで、「おや、そちらも時間切れですか。彼に飲ませていた薬は、まだ研究中のものだったのですが、残念ながら失敗作だったようですね。こんな短時間で禁断症状がでてしまうようでは実用に耐えません。もう少し改良が必要のようです」と言いました。そして、「さて、それでは退散するとしますか」と口にすると、回廊を北に向かって進もうとします。

サーラール(GM):
 レヴェントに続いてサーラールも回廊を通り抜けて行こうとするのですが――

ファルザード(GM):
 歩みを進めようとしたサーラールのことをファルザードが呼び止めました。
「待ってください、サーラール伯父さん! あそこにいる人が先ほど話したイーサさんですよ。カダッシュ村の出身だと言っていましたし、間違いないんじゃありませんか?」

イーサ:
 ん? 自分の名前を口にされたのであれば、そちらへと目を向けるが……。

GM:
 では、イーサは回廊の上に以前出会ったファルザードとシーラの姿を目にするのですが、それ以外にももう1人、どこか見覚えのある40代半ばの男性がいるのを見つけました。

イーサ:
 え……? まさか……。

アゼル:
 重戦士も倒れたし、俺も回廊のほうに目を向けておこう。

GM:
 了解です。ならば、アゼルに対してはこう言っておきましょう。そのサーラールとおぼしき人物の顔は、どことなくイーサに似ています。

アゼル:
 おやおやおや~(笑)。

GM:
 ちなみに、イーサの父親の名前はすでに決まっていますか?

イーサ:
 いや、決めてなかったが……。

GM:
 では、こちらで決めてしまいます。名前が決まっていないと、セリフを言いにくいでしょうからね(笑)。あなたの父親の名前は、ベルカントといいます。

サーラール(GM):
 ファルザードの言葉を受けたサーラールは、階下にいるイーサへと目を向けました。その視線がイーサと交差します。

レヴェント(GM):
 足を止めたサーラールに対して、レヴェントは後ろを振り返ると、「どうかしました? あまり時間がないのではありませんか?」と言って、先を促します。

ファルザード(GM):
 ファルザードは、サーラールとイーサの顔を交互に見ています。

イーサ:
 ……。

アゼル:
 イーサは何の反応も返さないのか?

イーサ:
 まさか……。そんなはずはない……(と言いつつ、手をプルプル震わせている)。

アゼル:
 ……って言うのか?

イーサ:
 いや、口には出さずに自問自答している。

GM:
 ……。

サーラール(GM):
 では、サーラールは何も言わずにイーサから視線を外すと、そのまま足早に回廊を歩き去って行きました。

GM:
 シーラ、レヴェント、そしてファルザードも同じように回廊から姿を消してしまいます。

アゼル:
 なんだ、結局イーサは何も言わないのかよ……。じゃあ、俺のほうから、「イーサ、いまのはもしかして……?」って言ってやろう。

イーサ:
「いや……。そんなはずは……」(とだけ言って口ごもってしまう)

 第5話の冒頭でイーサが提出してきたPCの過去設定に対するGMからのアンサーがこれです。イーサが死んでいて欲しいと願った父親は、悪名高いバリス教団の指導者として生存していました。

 本来であれば、ここでイーサに何らかの反応をみせて欲しかったところだったのですが、イーサが完全に言葉を失ってしまったので、先に別の問題から処理することにしました。

サイ(GM):
 ……ではそんなところで、倒れていたサイが重戦士と同じようにもがき苦しみ始めました。

セルピル(GM):
 セルピルは、「いけない!」と言ってサイに駆け寄ると、自分の持っていた万能解毒薬をサイの口の中へ押し込み、水袋の水で無理やり流し込みます。

アゼル:
 ああ、そうか。そっちのほうも何とかしないといけないのか。あと毒に侵されてるのは、俺とイーサとハシムの3人だけでいいのか?

GM:
 それと、目の前でもがき苦しんでいる重戦士ですね。

アゼル:
 じゃあ、エルドに向かってこう言っておこう。
「お前の解毒薬をハシムに飲ませてやってくれ」

エルド:
「あ、僕の薬でしたら、もう飲んでしまいましたよ」

アゼル:
 あれ? そうなんだっけ?

エルド:
 さあ、どうでしょう(笑)?

アゼル:
 ……まあ、とりあえず、そう言ったんだよな? だったら、俺の解毒薬をハシムに飲ませよう。

イーサ:
 いや、その必要はない。俺が2つ持ってる。そのうち1つを自分で飲んで、もう1つをハシムに飲ませればいい。

アゼル:
 そうか。じゃあ、俺は自分の分を飲んでおこう。

GM:
 ならば、その時点であなたたちは万能解毒薬をすべて使い切ってしまったと認識してるわけですね。表面上は……。

アゼル:
 そうだな。表面上は(苦笑)。

GM:
 ということは、目の前でもがき苦しんでいる重戦士は見殺しにするということですね?

アゼル:
 うむ……。そうだな。苦い顔はするが、それは助けられないな(苦笑)。

エルド:
 別に、まだ解毒薬を持ってるだろうって突っ込んでくれてもいいんですよ?

アゼル:
 いや、俺はエルドを信じてる。エルドが嘘をつくはずがない。

重戦士(GM):
 では、しばらく苦しんでいた重戦士は、数度大きくけいれんすると、その後はピクリとも動かなくなってしまいました。

 万能解毒薬を使ってしまったと嘘をついたエルド。そして、ハシムへは率先して自分の万能解毒薬を飲ませようとしたものの、重戦士のことは放置したアゼル。なんとも後味の悪い展開となってしまいました。

GM:
 ちょうど重戦士がこと切れたところで、鎧をまとった重戦士たちが、礼拝堂になだれ込んできます。あらわれたのは、ダット率いる穏健派の軍勢でした。

ダット(GM):
 駆け込んで来たダットは、「サーラールたちはどうしたッ!?」と確認してきます。

アゼル:
「すまない。逃げられてしまった……」

ダット(GM):
「奴らはどこへ行ったッ!?」

アゼル:
「あの回廊を北に向かって去って行った」

ダット(GM):
 そうすると、ダットは配下の者たちの一部に、さらなる追撃を命じます。

穏健派の戦士たち(GM):
 追撃を命じられた穏健派の一団は、バリス神像の後ろ側の扉に取り付き、鍵がかけられていたその扉を無理やり破砕すると、奥の通路へとなだれ込んで行きました。

ダット(GM):
 そして、追撃を配下の者たちに任せてその場に残ったダットは、あなたたちにこれまでの報告と状況確認をしてきます。
「俺が予想していたよりも、城の警備が手薄だった。ここにたどり着くまでに見てきた感じからすると、どうやら、奴らはもともとここを離れる計画だったようだ」

アゼル:
「なんだって?」

エルド:
「……ということは、ここ以外にも別のアジトがあるんでしょうか?」

ダット(GM):
「いや、それはどうだろう……。少なくとも俺たちはここ以外のアジトを知らない……」

一同:
 ……。

ダット(GM):
「それはそうと、貴様らはずいぶんと疲弊しているようだな。あとは俺たちで何とかするから、しばらく休んでいるといい」ダットはそう言うと、残った配下の者たちにいくつかの指示を出し、自分はサーラールたちのあとを追ってバリス神像の後ろ側にある扉の先へと進んでいきました。

穏健派の戦士たち(GM):
 ダットの指示をうけた穏健派の戦士たちは、まだ息のあったメフメトのことを拘束すると、上の階へと運んでいきます。

エルド:
 あ、アイテムが持って行かれた……。泥棒ーッ(笑)!

アゼル&イーサ:
(苦笑)

アゼル:
 まあ、ダットたちもメフメトからはいろいろと聞き出したいことがあるだろうしな。とりあえず、俺たちはここで傷を癒しておこう。

 こうして、ダットたちを見送りその場に残った一行は、セルピルとイーサの魔法によって、傷を治療していきました。

GM:
 さて、傷を癒し終えると、ようやくあなたたちは一息つけるようになりました。ここらへんで、宙ぶらりんになっている話をまとめておいたほうがいいのではありませんか? それとも、シーンを切り上げて、街に戻りますか?

イーサ:
 そうだな。街に戻る前になんとかしておいたほうがいいよな……。だが、ここでいきなり、あれは俺の父親だ、なんて言うのかな……? 俺自身も、「まさか、そんなはずは……」と思ってるんだが(と言いつつ、またもや手をプルプルと震わせている)。

GM:
 えーとですね……。衝撃を受けていることを表現したくて、さっきから手をプルプル震わせているのかもしれませんが、きちんと口に出して描写してもらわないと、ほかの人だって拾いにくいと思いますよ? 少なくとも、リプレイに書き起こすときに困りますし(苦笑)。

一同:
(笑)

アゼル:
 ちなみに、俺もいまGMが指摘するまで、イーサが手をプルプルさせてることに気づいてなかった(笑)。

イーサ:
 じゃあ、イーサは口に手を当てて目を泳がせている。

アゼル:
 俺は、そんなイーサのことをじっと見ている。

エルド:
「イーサさん、何か考え事ですか?」

イーサ:
「いや……。そんな……そんなはずはない……。気のせいに決まってる……」

エルド:
「イーサさん? どうかしたんですか?」

イーサ:
 うーん。いったい、どう答えればいいんだ……? ここは俺から、サーラールが父親かもしれないって言い出すべきなのか? だが、確たる証拠があるわけでもないし、突然すぎるだろ……。

アゼル:
 じゃあ、俺から言ってやろう。
「イーサ。あのサーラールという男、お前によく似ていたが……」

エルド:
「あの人、イーサさんと関わりのある人なんですか?」

イーサ:
 ……俺はサーラールが父親だと確信してていいのか?

GM:
 それはプレイヤーが決めてしまって構いませんよ。

イーサ:
 うーん……。

アゼル:
「もしかして、あの男が以前お前の話していた……」
 あえて、父親だとは言わないでおいてやろう(笑)。

イーサ:
「違うッ! そんなはずはないッ!」

エルド:
 じゃあ僕は、ことと次第によってはとんでもないことになりますよといった顔で、イーサさんのことを見ています。

イーサ:
 いったい、どんだけ否定すれば、この場をやり過ごせるんだよ……。

エルド:
 別に言いたくなければ言わなくてもいいんですよ。僕は引き下がりませんけど(笑)。

イーサ:
(長時間悩んでから)
 ……言わない! 俺は何も言わない。ひとまず、ここでは言わないでおく。GM、時間を進めてくれ。

GM:
 了解しました(笑)。

 保留したら保留したで、そのときは次に言いだすタイミングを見つけるのが難しくなるんですけどね……(苦笑)。




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