LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第5話 ティータイム

 宮国紀行の第5話のタイトルは、イーサの独白から取って、「なりたかった者の姿」としました。これはイーサ視点で見たときのアゼルとサーラール両名の理想と現実の姿という意味になります。しかし、思った以上に理想と現実の差は大きかったですね(苦笑)。

 さて、バリス教団編がはじまって、いきなり話がスケールアップした感もありますが、これまでに張られてきた伏線からもわかるように、バリス教団の設定については第1話の頃から温めていました。ですが、そのバリス教団の指導者がイーサの父親であるということは、第5話冒頭で急きょ組み込んだ内容です。……あとづけじゃないかって? いいんです。なにせ、プレイヤーから情報提示されたのが、この話からだったんですから(笑)!

 などと冗談めかしてみましたが、実のところ、イーサの父親がサーラールであるという展開は、もとからあったいくつかの案うちの1つであったことをここに告白しておきます。各話の展開にあわせてあれこれと考えたうえで、結局、第4話終了時点ではまったく別の案を採用しようと思っていたのですが、そんなところにイーサから自分の父親に関する情報が提示されたので、以前考えていた設定を再度掘り起こすことにしたのでした。イーサから提出された設定を容易に組み込めたはそのためです。第3話にその片鱗が残されているので、あとづけでの回収となりますが、ここは素直に伏線だと思ってください(笑)。

 振り返ってみれば、第5話には様々な要素が詰め込まれることになりました。

 まずは、ウィルダネス・アドベンチャー。今回は、新たな移動手段として小型船が登場しました。移動手段が変わると、旅の楽しさもまた変わるものです。この調子でいくと、次は船、そしてゆくゆくは飛空艇でしょうか(笑)? しかし、その場合、ある問題が発生してしまいます。それは、移動手段がランクアップするにつれて旅が安全になってしまうということです。もちろん、移動手段のあり方としてはそれで正しいのですが、ゲームとしてはちょっと問題です。かといって、川下りすると必ずサハギンなどが出現するような世界も、それはそれで嫌ですが(笑)。

 次に、クゼ・リマナでのシティー・アドベンチャー。これには、この後に訪れるであろうメフメトとの戦いのための準備を整えてもらおうという意図もあり、街を探索していくことで、協力者を得られたり、さまざまなアイテムを入手していける構成になっていたのですが、ご覧の有様です(泣)。これまでにもほかのセッションで、情報集めに苦戦したり、情報分析に戸惑って右往左往するという場面はいくらでも見かけてきましたが、そもそも情報収集を行わないという展開ははじめて見ました。果報は寝て待てというやつでしょうか(苦笑)?
 情報集めしなくてはならないという必然性は提示されていたので、PCたちはもっとアクティブに動いてくれるものと予想していたのですが、あらためて読み返すと、これをしたらよくないというネガティブな情報ばかりが提示されており、ポジティブな部分が見えていないのですね。街をまわるとこんなにいいことがあるぞというエサを、もっとオープンにするべきだったと感じました。

 そして、本来であればメフメトを拘束したところで第5話終了として、続きは次の話に持ち越す予定だったのですが、メフメトを逃してしまったので、急きょ延長戦に突入し、ダンジョン・アドベンチャーまでもが加わることになりました。さすがにフルボリュームのダンジョン探索をさせるのもなんなので、シチュエーションにあわせて、戦闘を避けて最短ルートを通って行く内容にしたのですが……結局、立ちはだかるものをすべて力でねじ伏せていくことになってしまいましたね(苦笑)。ただ、力押しになってしまったものの、ここのくだりはほかのパートに比べてプレイヤーたちがいきいきとプレイしていました。やはり、プレイヤーにとって戦闘と勝利というのはとても楽しいものなのでしょう。ハック&スラッシュ最高!

 このように、GMの想定外のことが多かった第5話でしたが、結果としてリッチな内容にはなったと思います。少なくとも、自分がプレイヤーとして同じシナリオに参加できたら嬉しいと感じるだけのものは提供できたと思います。それを慰めに、次からも頑張ります(笑)。

 続いて、PCについても触れていきましょう。

 まずは、今回の話の中心人物であるイーサ。彼が第5話冒頭に提出したPCの過去設定が今回の話を決定づけました。第1話以降、自分の父親の姿をアゼルに投影していたイーサでしたが、そのアゼルは惑い人になってしまい、それどころか、死んでいたとばかり思っていた父親が最悪の形で登場します。燃えるシチュエーションです。しかし、今回の話の中で、イーサは父親との再会を現実のものとして受け入れることができませんでした。次回以降に、イーサがどのような行動をとることになるのか、注目したいところです。

 また、戦闘におけるイーサは、地味ではあるもののなかなかよい働きをしています。惜しいのは、ほかのプレイヤーたちと戦術を共有できていないことです。まあ、これはイーサ以外にも言えることなのですが、パーティープレイを行えておらず、個人戦が複数行われる格好となってしまっています。前回、あれほどギュリスに絞られたにも関わらず、1話経過して、また元通りになってしまいました。もし、うまく連携がとれていれのであれば、きっとレヴェントのことも倒せていたことでしょう。

 次に、アゼルですが、彼はニルフェルと離れたことで予想以上にひねくれてしまいました。なんだかとても面倒くさいキャラクターになっています(苦笑)。想定では、自分のやるべきことと自分にできることを再認識し、それ以外のことに対しても単純に諦めるのではなく、ほかの誰かに頼り、託すことでより良い結果を求めていくような展開を思い描いていたのですが、そもそも、パーティー間の信頼関係をつくれていない時点で、「あれ、これは違うかな?」と……(苦笑)。はたして、無条件に人を信じることと、信頼関係を築くということとがまったくの別物であることを、アゼルが理解する日は来るのでしょうか?

 最後にエルドですが、あいかわらず戦闘では八面六臂の活躍をしていました。一度こうと決めたら尻込みせずに挑んでいく、その危ういまでの積極性がよい結果を生んでいます。ただし、ゲーム的な視点から見ると、礼拝堂での戦闘においてはエルドこそが戦犯だったと言わざるを得ません。なぜなら、エルドがメフメトに突撃していなければ、レヴェントがあんなに早くに参戦することはなかったのですから。いわゆる、シミュレーションゲームにおける「このラインを越えると強力な敵ユニットが動き出すから、そのラインを越えないようにして、先にほかの敵を殲滅しておこう」というお約束を、エルドは破ってしまったのです。その後の、毒の短剣を手に入れたいがためにレヴェントを倒そうとしたことや、“ファイア・ボルト”を無駄撃ちしたことなども、パーティーを窮地に追い込む一因となりました。もちろん、エルド1人にだけ責任があるというわけではありませんが、次に活かすべき反省点は少なくなかったと思います。

 それと、今回エルドは他人の命を何とも思っていないどころか、人殺しを楽しんでいる描写をいれてきました。前回モノケロースの命を助ける行動に出たことで、命の尊さを知る人物であるような気配をただよわせていましたが、まったくの気のせいでした(苦笑)。あれはただの気まぐれだったようです。宮国紀行は少年誌に掲載される漫画などとは違いますから、正義が必ず勝つとは限りませんが、悪行を重ねているとそのうち手痛いしっぺ返しを受けることになるのではないかと、内心ドキドキしています。

 最後に、誤解する人が多いので、サブリの借金とメフメトとの取引金額についてあらためて解説しておきます。

 サブリがアスラン商会から借りた金額は20万金貨。この時点で利息の設定については不明ですが、近日中に全額返済しなくてはならないようだということが示唆されています。そして、メフメトとの取引で得ようとしていた売上金は10万金貨です。途中、サブリが10万金貨と発言しているのは誤字ではありません。つまり、サブリはアスラン商会への返済金のうちおよそ半分となる10万金貨程度を、今回の取引とは関係のないところから捻出するつもりだったわけです。設定上、この残り10万金貨というのは、イスパルタにあるサブリの店の一時的な運転資金として用いられていることになっていました。ここ、このあとの話で結構重要なところです。

 そんなところで、第5話のティータームも終了です。そして次回、意外にもあの人が動き出します。まさか、宮国紀行がこんなに幅広い話になるとは思っていませんでした。乞うご期待!




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