LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第6話(02)

GM:
 では、セッションをスタートします。よろしくお願いします。

セルダル:
 よろしくお願いします。

GM:
 まず、状況の説明から。
 時間はニルフェルとアゼルが行動を別にすることを決めてからまだ間もない、お昼を過ぎたばかりの頃。場所はユセフの屋敷の一室。男性陣にあてがわれた部屋の中です。昼食の席ではギュリスたちと同行すると言っていたエルドが、部屋に戻ってきたあとで突然気が変わったと言いだし、つい先ほど荷物をまとめてアゼルたちのもとへと行ってしまいました。つまり、第5話の冒頭部分のシーンが終わったところですね。

ギズリ(GM):
 セルダルとともに部屋に残されることとなったギズリは、窓際まで歩いて行くと、そこから階下を見下ろします。そして、視線の先にあるものを見つつ、「お、アイツら早速出発するみたいだぞ……」と呟きました。
「どうやら、この村の自警団の連中が護衛に付くみたいだな。まあ、アイツらのやったことを考えれば、これくらいのことはしてもらって当然ってことか……。ところで、オマエは見送んなくていいのか? アゼルとは長い付き合いなんだろ?」そこまで言うと、ギズリはセルダルのほうへと目を向けます。

セルダル:
「フンッ」
 椅子に座ったままギズリの言葉を軽く流しつつ、視線だけを右の床に落とした。

ギズリ(GM):
「まあ、別にいいけどよ……」ギズリはそう言って窓から離れると、寝台の上に寝ころびました。
「さあて、肝心のオレたちの出発は、いったいいつ頃になんのかねぇ?」そんなぼやきを漏らすギズリは、どうやら昼寝を決め込むようです。

セルダル:
 ギズリと目を合わせることなく、「なぁ、ギズリさんよ。アイツを見ててどー思う? アイツのやろーとしていることは、アンタにはどー映ってる?」って尋ねた。

ギズリ(GM):
「アイツって……アゼルのことだよな? アゼル……アゼルねぇ……」そう言って、ギズリはしばらく考え込みます。
「……正直、アイツがなにを考えてるのか、いまひとつわかんねぇんだよな。オレはまた、てっきり自分の手でニルフェルちゃんを王都に連れて行くことが、アイツの中での最優先事項なんだと思ってたんだが……」

セルダル:
「……最初はそーだったなずなんだよ。にもかかわらず、どーしてあーも、その場限りの感情や興味に流されちまうのか……。オレには理解できねぇ……。たしかに、アイツの選択によって救われた奴もいたし、思いがけない繋がりが生まれたりしたのも事実だ。だが、ものには限度ってもんがある。常に何でもかんでもできるってわけじゃねぇし、よそ見してたら見失っちまうものだってでてきちまう。なのにアイツは……」そこまで言って黙り込む。

ギズリ(GM):
 その言葉を聞いたギズリは、セルダルのほうへ顔を向けるとおもむろに、「オマエ、アゼルのことが好きなのか?」と口にしました。

セルダル:
「ばッ! そんなんじゃねぇよッ!」

ギズリ(GM):
「いや、別に茶化すつもりじゃねぇんだが、なんっつぅか、お前の言葉を聞いてると、ずいぶんと入れ込んでるみたいだからよ……」いったんは真面目な顔つきでそう口にしたギズリでしたが、しばらくするとこらえ切れずに吹き出してしまいました。

セルダル:
 椅子から立ち上がって、ギズリをにらみつけた。

ギズリ(GM):
「あ、すまん、すまん」

セルダル:
 ため息をついて椅子に座る。
「そーじゃねぇ。そーじゃねぇけどよ……。ただ、オレはニルフェルのことを無事に王都まで送り届けたあとで、アイツと一緒に祝杯あげんのを楽しみにしてたんだ……。だから、ちょっとガッカリしただけさ。……ったく、つまんねぇこと聞いちまった。さっきの質問のことは忘れてくれ」

ギズリ(GM):
「別に、そんなムキになって否定しなくてもいいんじゃねぇのぉ」そう言いつつ、ギズリはニヤニヤしながら目を閉じます。

セルダル:
「なんだよ、そのヘンな笑いは?」

ギズリ(GM):
「なんでもねぇよ。さあて、オレは昼寝すっからな。せいぜい静かにしててくれよ」

セルダル:
「そーかい! んじゃ、オレはちょいと外にでてくるぜ! せっかくの昼寝を邪魔しちゃわりぃからな!」そー言い残して、部屋から出て行く。

ギズリ(GM):
「どうぞお好きに」
 ギズリは寝台の上で手をヒラヒラさせ、セルダルのことを見送ります。

GM:
 では、部屋の外に出たセルダルは、廊下を歩いているギュリスの姿を見つけました。

セルダル:
「おっ、ギュリスじゃねぇか」

ギュリス(GM):
 ギュリスもセルダルの存在に気がつき、目の前まで歩いてきます。
「もしかして、出かけるところだった? だとしたら、その前に捕まえられてよかった。実は、あなたたちにちょっと伝えておくことがあってね」

セルダル:
「そーなのか? なら、部屋の中で話を聞かせてもらうとすっか」
 それじゃ、さっき閉じたばかりの部屋の扉を開けて、部屋の中にいるギズリに対して「どーやら、昼寝は終わりみたいだぜ」と意地悪そーに言ってやる。さっき茶化された仕返しだ。

ギズリ(GM):
 では、そんなセルダルの言葉に、「なんだよ、出てったんじゃねぇのか? まったく、人の昼寝の邪魔すんな――」と不機嫌そうな口調で返してきたギズリでしたが、セルダルの背後にギュリスの顔をみつけ、慌てて口を閉じました。

ギュリス(GM):
「邪魔して悪かったね」と言って、ギュリスはギズリのことを睨み付けます。

セルダル:
 ギュリスのほーに目を向けて、わざとらしく「なんかお邪魔みてぇだし、別の部屋に移って話すか?」って言った。

ギュリス(GM):
「まあ、時間は取らせないよ。少し伝えておくことがあるだけだから。それを聞いたらどうぞご自由に、昼寝でもなんでもしてちょうだい」

ギズリ(GM):
 ギズリは急いで寝台から跳ね起きると、「あ、いや、ギュリスお嬢さんとのお話しってことなら、いつだって構わないんですけどね……」と言いつくろい、部屋にある椅子に腰かけて話を聞く姿勢を整えました。

セルダル:
 オレも椅子に座った。

ギュリス(GM):
 では、ギュリスはあらたまって2人に対して話し始めました。
「あなたたちに伝えておくことっていうのは、この村からの出発日のことなんだけど……」

セルダル:
「ああ、いつになるんだ?」

ギュリス(GM):
「いろいろあって、早くても5日後になる予定だから。それまでは自由にしてて。まあ、ここにいるかぎり衣食住に困ることはないんだし、さして不満もないでしょう?」

セルダル:
「5日後!?」

ギュリス(GM):
「なに? 不満でもあるの?」

セルダル:
「あ、いや……。別に不満ってわけじゃねぇんだが……。理由は? なんで5日後まで出発できねぇんだ?」

ギュリス(GM):
 ギュリスは少し困ったように、首元に手を当ててから、その理由を口にしました。
「んー。ざっくばらんに言っちゃえば、アゼルたちの影響なんだけどさ……。アイツらがファジル様に馬車を返しに行くのに、ここの自警団員が6人ほど護衛についていったんだよね。それで、その自警団員は別の任務も帯びてて、いったんカルカヴァンに足を運んでから戻ってくる予定なんだって……」

セルダル:
「あー、なるほど」

ギュリス(GM):
「まあ、自警団員が全員出払ってるわけじゃないんだけど、同時にあたしたちの護衛までお願いしちゃったら、彼らの本来の役目であるはずの自警が手薄になっちゃうからね。援助をお願いしている立場として、5日待つくらいは仕方ないでしょう?」

セルダル:
「まぁ、そーだなぁ……」

ギズリ(GM):
「そういうことなら了解だ。永遠に出発できねぇってわけじゃねぇし、特に不自由することもねぇ。ここの食事は結構いけるしな。オレは構わねぇよ」ギズリはまったく気にした様子もなく、そう言います。

セルダル:
「んじゃ、この村にいるあいだは自由にさせてもらえんのか?」

ギュリス(GM):
「まあ、ある程度はね。でも、そうだな……。なにか特別なことがしたかったら、まずあたしに相談してちょうだい」

セルダル:
「わかった」

ギュリス(GM):
「それじゃまあ、そういうことでよろしく」それだけ告げると、ギュリスは部屋から出て行こうとします。

セルダル:
「……っと、早速なんだが、ギュリス」

ギュリス(GM):
「ん? なに?」
 声をかけられたギュリスは、立ち止まるとセルダルのことを振り返りました。

セルダル:
「5日も何もせずに過ごすってのはもったいねぇし、そのあいだ、ここの自警団員と訓練する機会を作って貰えねぇかな?」

ギュリス(GM):
「……まあ、それくらいのことなら、許可をとるまでもないよ。たしか、アゼルたちの護衛には付かずにここに残ってる連中が、屋敷の東側にあるひらけた場所で訓練してるらしいから、そこに行って直接頼んでみたら?」

セルダル:
「そーか。なら、早速行ってみるとすっか」

ギュリス(GM):
「せいぜい、迷惑かけない程度にね」それだけ言い残すと、ギュリスはあらためて部屋から出て行きました。

セルダル:
「オイオイ。このオレが、訓練の邪魔になるほど未熟だとでもゆーのかよ……」そんなことを呟きつつ、訓練に必要な準備を整え終えたら、屋敷の東に向かってみる。


GM:
 では、セルダルが自警団の面々と訓練を共にすべく、ユセフの屋敷から外に出て行ったところで、デミルコルの村の施設について説明しておきましょう。
 デミルコルの村には、「ユセフの屋敷」以外に、品ぞろえの悪い「雑貨屋」が1軒、村人たちの唯一の憩いの場となっている「酒場」が1軒、小さな「寺院」が1軒、そのほかに小さな「農園」や「広場」、あとセルダルと関わりのある施設としては、ハルクとテジーの住む「狩人親子の家」や「薬師の家」などがあります。

セルダル:
 こじんまりとしたステキな村だな……。

GM:
 加えて、デミルコル自警団についても簡単に説明しておきます。
 デミルコルの自警団は、おもに長期間村を離れることがない農夫たちによって構成されている組織です。日常的に戦闘訓練を行っているものの、構成員たちの実力は戦闘レベル3の下級騎士に遠くおよびません。そもそも、戦闘よりも村の周囲の柵の補強や、東の鉱洞から南西のニメット川まで続く小道の定期点検、および補修作業などが主な任務となっています。そして、そんな自警団員のうち、現在村に残っているのは6人だけとなっています。
 セルダルが屋敷の東側の広場に足を運んでみると、そこにはひとりの青年の号令にあわせてへっぴり腰で剣を振るう5人の村人の姿がありました。彼らは全員、革鎧を身につけ、手には片手剣と小盾を握っています。

セルダル:
 その素振りの様子は、ジャナンの下でオレとアゼルが剣を交えていたころの姿より劣るのか?

GM:
 それを知りたいのであれば、“技量推測”の判定をどうぞ。

“技量推測”
 自分と比べて、相手がどれくらいの力量を有しているのかを推測する行為です。あくまでも自分が基準となるので、取得していない技能のことについてはよくわかりません。

セルダル:
 戦闘レベルを推測する。(コロコロ)6ゾロ。オレの目は誤魔化せないぜ!

GM:
 ブハッ! 初っ端の判定から6ゾロですか(笑)。ならばセルダルは、現在剣を振っている5人の自警団員たちの戦闘レベルは、自分よりも格下であると確信しました。格下というのは、自分よりもレベルが2つ以上低いということなので、自警団員の戦闘レベルは1以下であることがわかります。

セルダル:
 そーか。それじゃ、あまり近づかずに、でも見ているのはあちらさんにもわかるよーに、訓練の様子を眺めてる。

GM:
 では、セルダルの目に映った自警団の訓練の様子を描写していきます。

自警団の青年(GM):
 まず目に入るのは、号令をかけている青年です。彼は、団員たちの素振りをチェックしつつ、「違う、違う! もっと腰を入れて! 剣先の軌道をぶれさせずに一直線に振って!」と声を張り上げています。

自警団員たち(GM):
 青年の号令にあわせて、「1ッ! 2ッ! 3ッ! 4ッ! 5ッ!」と自警団員たちも必死に剣を振り続けてはいるのですが、その姿はあまりさまになっていません。

GM:
 指導にあたっている青年は、見たところあなたよりも少し年上といった感じでしょうか。また、ほかの自警団員には10代の者もいれば、30代後半らしき者もいます。

セルダル:
 ヘタに出て行くのもなんだな……。ずっと動かずに訓練の様子を見てる。

自警団員A(GM):
 では、しばらくしたところで、自警団員のひとりがあなたの存在に気づきました。
「あ、メルト。お客さんが来てるぞ」その自警団員は、号令をかけている青年にそう言うと素振りの手を止めてしまいます。

メルト(GM):
 すると、メルトと呼ばれた青年は、「こらッ! 勝手に休むなッ!」と怒号を響かせました。

セルダル:
「ありゃ……邪魔しちまったか? すまないな。オレはただ訓練を見てただけなんだ」

メルト(GM):
 メルトはほかの自警団員に対して、「各自、100回まで素振りを続けて! 振り終わった者から休憩!」と指示すると、セルダルのほうへと近づいてきました。近くで見ると、彼は一般人より上背があり、日に焼けてよく引き締まった身体つきをしています。
 あなたと視線をあわせたメルトは、「もしかして、あなたはモノケロースを狩られたという……」と口にしました。しかし、名前まではわからなかったようで、そこで言葉をとめます。

セルダル:
「俺の名前はセルダルだ」

メルト(GM):
「失礼しました。セルダルさんですね。自分は自警団の団長代理を務めるメルトという者です。皆さんの活躍は伺っていますよ。……それで、自分たちに何かご用ですか?」

セルダル:
「いや、たまたま訓練の様子が見えたんで、興味があったから眺めてたのさ」

メルト(GM):
「そうでしたか」そう言うと、メルトはあらためてセルダルの格好を確認し、「装備も整っているようですし、もしよければ一緒にどうですか?」とセルダルのことを訓練に誘ってきました。

セルダル:
「いいのか? 邪魔しちゃわりぃと思ってたんだが……」

メルト(GM):
「邪魔だなんてとんでもない。モノケロースを狩られた方と一緒に稽古できるなんて、願ったりかなったりですよ!」

セルダル:
「そーか? そんなら、お言葉に甘えて一緒に剣を振らせてもらうとすっかな」

GM:
 こうして、あなたは自警団の面々とともに訓練することとなったのですが、彼らの初歩的な素振りと型の訓練に付き合いますか?

セルダル:
 初心に帰って、それに付き合おう。

GM:
 ならば、自警団の訓練はそれから3時間続きます。訓練による疲労判定を行ってください。

セルダル:
(コロコロ)疲労が6点たまった。
「ありがとな。久しぶりの稽古で楽しかったぜ」

メルト(GM):
(コロコロ)メルトは今の訓練で疲労が10点たまりました。
「いえ。こちらこそ……。ゼィ……ゼィ……」

セルダル:
「なんだか、ずいぶんと力が入っていたみたいだが、大丈夫か?」

メルト(GM):
「ハァ……ハァ……。大丈夫です。それよりも、もしよかったら手合せ願えませんか? こんな機会、そうそうないと思うので」

セルダル:
「なんだ、そんなことか。それだったら、喜んでやらせてもらうぞ」と、笑顔でそれに応じた。

メルト(GM):
 セルダルの答えに、メルトも素直に喜んでいます。
「それはありがたい! では、寸止めということで構いませんか?」

セルダル:
「ああ。まあ、怪我しねぇ程度にな」

GM:
 では、寸止めでの模擬戦を行います。実際の戦闘と同じくダメージを算出し、戦意喪失するか生命点が0以下になるまで行っていきますが、実際にはダメージ0として扱います。ただし、命中判定で1ゾロを出してしまった場合、再度命中判定を行い、相手がこれを回避できなければ実際に攻撃が当たってしまったことになります。

セルダル:
 そーいえば、セルダルは第1話でも模擬戦で死にはぐってたっけな。さすがに同じことは2度ないと信じたいが……(苦笑)。

GM:
 あのときとは違って、いまは攻撃時に“手加減”を宣言することでクリティカルを抑止したり、与えるダメージを減少させたりすることもできますので、必要であればそうしてください。なお、メルトは基本的に“手加減”しません。格上のセルダルに対して手を抜くのは失礼だと思うので。

セルダル:
 なるほど。んじゃ、オレは全部“手加減”で、クリティカルを抑止しておく。

GM:
 了解しました。
 では、戦闘を開始する前に装備を確認しておきましょう。メルトはほかの自警団員と同じく、革鎧に片手剣と小盾を装備しています。

セルダル:
 オレは革鎧に両手剣を装備してる。

メルト(GM):
 メルトはセルダルと少し距離をとり、剣と盾をしっかりと握りなおすと、「よろしくお願いします!」と大きな声を発しました。

セルダル:
「よろしく」そー言って、こっちも両手剣を構えた。

 こうして、セルダルとメルトによる模擬戦が開始されました。セルダルも途中で触れていましたが、何やら第1話のアゼルとセルダルによる模擬戦を思い起こさせるシーンです。




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