GM:
それから15分ほどで、メルト以下6名の自警団の面々とテジーがユセフの屋敷に集まりました。
セルダル:
まずは、ほかの連中の話を聞いておきたいから、しばらく黙って話を聞いてることにする。
テジー(GM):
では、最初にテジーが、「ムーンベアか……」 と呟いて、セルダルのことを一度だけチラリと見ると、すぐに視線をそらしました。
セルダル:
「なんだよ」と言ってテジーのほーを見た。
テジー(GM):
「いや……。なんでもない」
セルダル:
「気になるじゃねぇか。何か言いたいことがあるんだろ?」
テジー(GM):
「いや……」
テジーはセルダルの追及には答えず、話題をそらしました。
「それよりも、今こちらに向かっている鉱夫たちを保護するのはもちろんだが、この時間だと幾人かの狩人が森の中に入っている。普段の狩りでは、そこまで森の奥に足を踏み入れることはないから、熊と出くわすことも少ないが、森沿いの道にムーンベアが出たとなると……」
セルダル:
「放っておいたら被害が増えそーだな」
テジー(GM):
「ああ。狩人たちには森から出るように合図を送ったほうがいいだろう」
セルダル:
「何か連絡の手段でもあんのか?」
テジー(GM):
「鳥笛を使えば、ある程度の範囲に合図を送れる」
セルダル:
「なら、それは早めにしといたほーがよさそーだな」
GM:
テジーの発言に続けて、団員の1人が、今すぐにでも自警団全員で現場に向かうべきだと訴えます。しかし、メルトは、自警団全員が村から離れることに難色を示し、少なくとも2~3人は村に残るべきだと主張しました。
セルダル:
「オレも、現場に全員向かうのがいい選択だとは思えねぇな」
自警団員(GM):
「しかし、いまいる全員で立ち向かうならともかく、我ら数人が力をあわせた程度では、熊に太刀打ちできるかどうか……」
メルト(GM):
「くそ……。こんなときに団長がいてくれたら……」
メルトは下唇を噛むと、拳を固く握りしめました。
セルダル:
「まあ、いねぇもんは仕方ねぇさ」
テジー(GM):
「だったら、どうする?」
セルダル:
「そーだな。じゃあ、オレと土地に詳しい者の2人で現場に向かうってゆーのはどーだ?」
テジー(GM):
「2人だけでか!?」
セルダル:
「この村をもぬけの殻にするわけにもいかねぇんだろ? オレは足の速さには自信があるし、狩りの経験だってそれなりにある。急いで逃げてる奴らの護衛に駆けつけるってことなら、それこそ2人程度で行ったほーが都合いいんじゃねぇか?」
GM:
セルダルの提案に、テジー以外の一同も驚きを隠せません。ただ、メルトだけは――
メルト(GM):
「い、いや。モノケロースを倒したセルダルさんなら、熊だって……」と、尊敬のまなざしをセルダルへと向けています。
セルダル:
メルトの視線に気がついたなら、一応訂正しておく。
「おいおい、勘違いすんなよ。さすがにオレひとりでムーンベアを倒せるとまでは思ってないぜ?」
ユセフ(GM):
「……ふむ。あくまでも現在逃げている者たちを護衛するだけというわけだな……。それで、2人でというのであれば、いったい誰と行く気だね?」
セルダル:
「それは、オレが決めることじゃねぇだろ。なにせ、こっちが望んでなくても、下手すりゃ熊とやりあうことになるかも知れねぇんだ。そんでも助けに行きたいって奴が一緒について来てくれるなら、それが誰だろうとオレは構わねぇよ」
GM:
その言葉に、皆が顔を見合わせます。
メルト(GM):
そんな中で真っ先に名乗りを上げたのはメルトでした。
「では、自分がお供します!」
テジー(GM):
しかし、そんなメルトに対し、「お前は森周辺のことについてはそれほど詳しくないだろ? もし少人数で行くのならば、案内役を務められるワタシのほうが適任だ」とテジーが指摘します。
GM:
名乗りを上げたメルトとテジーは、互いににらみ合いました。
セルダル:
「……そうだな……。んじゃ、テジー頼む」
メルト(GM):
セルダルの選択に、「ちょっと、セルダルさん!」とメルトが抗議めいた声をあげます。
セルダル:
「わりぃ、メルト。別に戦力として頼りになるとかならねぇとかいった話じゃねぇんだ。ただ、ムーンベアに襲われた場合、最悪でもどっちかは生きて村に戻る必要がある。なら、森周辺のことにも詳しいテジーのほーが分があると思っただけさ」
メルト(GM):
「そんなぁ……」
メルトはガックリと肩を落としました。
ユセフ(GM):
「しかし、テジー1人だけを連れて行って、熊と遭遇したときはどうやってやり過ごすつもりなんだね?」
セルダル:
「まあ、ムーンベアが見逃してくれるかは分からねぇが、土地勘のあるテジーがいれば何とかなるだろ」
テジー(GM):
そのセルダルの発言に、テジーは眉をひそめます。
「……期待してくれているのかもしれないが、ハッキリ言って、ムーンベアと対峙したら逃げ切れる自信はないぞ」
セルダル:
「そこを上手く頼むぜ。下り道を逃げるとか、ムーンベアが越えられないよーな渓谷を抜けるとかよ」
テジー(GM):
「……ならば、ムーンベアと出会わないことを神に祈るとしよう。下り坂で多少速度が落ちようが、それでもムーンベアのほうが人の足よりは速いし、人間に越えられないような渓谷だろうとムーンベアならやすやす越えていく。誇張なしに、逃げ切れる見込みはほとんどない。それでも、セルダル殿が2人で行くというのであれば、ワタシも断りはしないが。本当にいいのか?」
GM:
えーと、ここでGMから説明しておきますが――
このときセルダルは、ムーンベアのデータに記載された実質敏捷度が自分よりも低かったため、万が一ムーンベアに遭遇してしまったとしても逃げ切れるだろうと考えていたのでした。しかし、それは誤解です。実際のところ、ムーンベアは“移動修正”や“加速”という特殊能力を備えているため、セルダルの倍以上の速度で走ることが可能なのでした。
ちなみに、“移動修正”や“加速”などの特殊能力は、動物本来の移動速度を再現しつつも回避力が極端に高くなってしまわないように実装されたものです。このことにより、ソード・ワールドRPGで発生していた、冒険者たちが野生動物を短距離走でぶっちぎるといったシチュエーションがLOSTでは発生しなくなっています。
GM:
――というわけで、ムーンベアはおおよそ時速40キロくらいで走ってきます。人類で最も足の速い人でも、ムーンベアの移動速度にはかないません(苦笑)。
セルダル:
おおぅッ! そいつは思いっきり勘違いしてたな……。いまのシーン、やり直したほうがいいか?
GM:
まあ、このままの路線で続けてもらっても、あとでGM側からフォローをいれますので、問題ありませんが……。
セルダル:
(しばらく考えてから)
「今、この村に残っている自警団は、村の警備に最低限必要な人数なんだろ? 本来の自警団の戦力なら対処できるはずだったところが、アゼルたちの護衛に人員を割いちまったからこんなことになってんだ。だったら、オレがそれを補うのは当然だ。テジーにはつき合わせることになっちまって申しわけねぇがな」
ユセフ(GM):
「なるほど。そんなことを気にして2人で行くと言っていたのか。それならば、心配無用だ。そうだな……。村に連絡役を3人ほど残しておいてもらえるのであれば、ほかの者は連れて行ってもらっても構わないぞ」
セルダル:
「いいのか?」
ユセフ(GM):
「うむ。自警団団長のトルガが不在のいま、頼れるのは君しかいないのだ。こう言ってはなんだが、逃げてきている鉱夫たちを保護するだけでなく、できればその人食い熊を退治してもらえると助かる。そのための協力であれば、私とて惜しみはしない」
セルダル:
「期待してくれんのは嬉しいが、多少戦力が増えたとしても、まともにやりあったなら死人が出るのは避けられそーに無いぜ?」
ユセフ(GM):
「人食い熊を長期間のさばらせておけば、それだけ被害は拡大してしまうだろう。ならば、多少の犠牲を覚悟してでも、できるだけ速やかに事態の収束を図りたいところだ。私が一番恐れていることは、その人食い熊がこの村にまで来てしまうことなのだよ」
セルダル:
「オレもそれが一番怖いと思ってるよ。……なぁ、ギュリス。何かいい案ねえか?」
ギュリス(GM):
話を投げかけられたギュリスは、難しい顔をしました。
「……うーん。長期的な方法ならあるんだけど、早期解決となると……。あるのは保険くらいかな……」
セルダル:
「オレだったらなんでもやるぜ。アンタのゆーところの使える捨て駒ってやつにできることがあるなら、そいつを教えてくれ」
ギュリス(GM):
「捨て駒ねぇ……」ギュリスはそう呟いて少し考えると、「だったら、あなた、ムーンベアが爪を3度振り下ろすまでの間に、そいつを仕留めきれる自信はある?」と聞いてきます。
セルダル:
「戦盤名人がそうしろってゆーなら、やってみせるぜ」
ギュリス(GM):
「そう……。なら、あたしのマントを貸してあげる。その対価は熊鍋ってことでね」
GM:
どうやら、ギュリスは蜃気楼の外套を貸してくれるつもりのようです。
セルダル:
「お! その話のったぜ!」
ギュリス(GM):
「あと、ついでに言わせてもらうけど、ムーンベアと戦うつもりがあるなら、そこの自警団の人も連れてってあげたら? さっきから、すっごくついて行きたがってるみたいだしさ」そう言って、ギュリスはメルトを見ました。
メルト(GM):
メルトが少し期待に満ちた表情でセルダルを見ます。
ギュリス(GM):
「だいたい、あなた、馬を走らせられないでしょう? 足は馬に乗り慣れた人に任せたほうがいいよ」
セルダル:
「そーいやそーだった」そー言って、カハハと笑った。周りの連中のムーンベアに対する不安が少しでも和らいだならいいなと思いながら……。
メルト(GM):
「じゃ、じゃあ、自分も連れて行ってもらえるんですか?」
セルダル:
「ああ、あらためてよろしく頼むぜ」
メルト(GM):
「よ……よかった……。自警団抜きでやられたら、あとで団長になんて報告していいものかと……」そう言って、メルトは安堵の息をつきました。
「じゃあ、出発前に寺院によって行きましょう。訓練で疲れているでしょう? あそこに行けば疲れをとってもらえますから」
セルダル:
「本当か? ありがてぇ!」
GM:
第4話でもチラリと登場していたのですが、この村には“キュア・ポイズン”を唱えることができるエルバート教の導師がいます。その導師にお願いすれば、“ファティーグ・リカバリィ”で疲労を回復してもらえます。
セルダル:
さっきの訓練で貯まった疲労が残ったままだと、ろくに戦えないところだったからな(苦笑)。ありがとー導師様。オレは生き残れるかもしれません……。
ちなみに、導師様を一緒に連れてくってのはさすがにまずいのか? レベル1以下の自警団の連中を連れてくくらいなら、そっちのほーがよっぽど戦力になるんだが。
GM:
……いえ、連れていってもかまいませんが、なにしろ年配の方なので生命点は5点しかありませんよ? ムーンベアにかぎらず、野生生物からの攻撃を受けてしまえば、かなり高い確率でお亡くなりになってしまいますが……。
セルダル:
まぁ、そこはメルトがキッチリ守ってくれる……はずだ(笑)。ってわけで、本人が断らないのであれば、連れて行く。
GM:
了解です。そういうことであれば、ユセフは使用人に対して、エルバート寺院におもむいて老子ギヴを連れてくるように言いつけました。ユセフからの頼みであれば、さすがに断られることもないでしょう。
GM:
さて、ギヴが屋敷を訪れるまでにしばらく時間がかかりますが、その間、ほかに準備しておくことはありますか?
セルダル:
うーん、そーだな……。じゃあ、雑貨屋をのぞきに行ってみる。何か役に立つもんはおいてねぇかな? まぁ、ここの雑貨屋は品揃え悪いらしいから、あんま期待できねぇけど……(笑)。
GM:
えーと……。
(少し考えてから)
《2D》で7以上を出せれば、たまたま入荷していた香辛料を買えることにしてもいいですよ。ムーンベアに投げつければ、多少は怯むかも(笑)? ただし、LOSTの世界設定だと香辛料は高級品扱いとなりますので、100銀貨で1袋だけ買えることにします。
セルダル:
オッケー。それじゃ、都合よく雑貨屋に香辛料が入荷されてるかどーかだが……。(コロコロ)あったッ! そして、100銀貨よさよーなら。
GM:
あ、待ってください。そのくらいであればユセフが都合をつけてくれるでしょうから、セルダルの所持金から支払ってもらう必要はありません。
セルダル:
おかえり、100銀貨(笑)。
GM:
では、首尾よく唐辛子を粉末状にして小袋に詰めたものを購入できました。香辛料は行使力5の“ディストラクション”として扱います。ですが、あくまでもオマケアイテム程度の扱いなので、あまり期待しないでください(笑)。
セルダル:
「へへっ、思わぬ武器が手にはいったぜ」
あと、この世界にベアトラップとかないか?
GM:
うーん。ベアトラップですか……。時代的にないわけではありませんが……。ちょっと考えさせてください。
(しばらく検討してから)
では、次のような効果でベアトラップを実装します。
GM:
黒魔法の“バインディング”のアレンジ版ってところですね。筋力の高いムーンベアにとっては、そこまで強力な罠とはなりませんが、時間稼ぎ程度には使えるでしょう。
セルダル:
それで十分だ。ちなみに、雑貨屋にはテジーも一緒に来てるのか?
GM:
はい。テジーとメルトはあなたに同行して雑貨屋まできています。
セルダル:
んじゃ、テジーのことを見て、「テジー、ちょっと聞いてもいーか?」と話しかける。
テジー(GM):
「……どうかしたか?」
セルダル:
「お前の家にベアトラップとかないか? できるだけデカいのがいいんだが……」
テジー(GM):
「普段から狩りに使っているものはあるが……あいにくと、父が狩りに持っていってしまっている可能性が高い……。セルダル殿が必要だというのならば、一応、家に残っているものがないか確認してみるが……」
セルダル:
「頼む。熊公の足を止められれば、かなり優位に戦えるからな」
テジー(GM):
「わかった。ならば、確認してくる。少し時間がかかるだろうから、セルダル殿は先にユセフ様のところに戻っていてくれ」そう言って、テジーは雑貨屋をあとにしました。
セルダル:
じゃあ、オレは買い物が終わったら、屋敷に戻ってる。
GM:
では、セルダルが屋敷に戻ってみると、ちょうど背の曲がった老人がユセフと挨拶をかわしているところでした。どうやら彼が老子ギヴのようです。その老人は、頭髪がほとんどなく、代わりに口元に白い髭を蓄えていました。
ユセフ(GM):
ユセフは老子ギヴに、「ご足労いただきありがとうございます。どうか、あなたのお力をお貸しください」と言って頭を下げました。
ギヴ(GM):
「こんな老体でも何かの役に立つようであれば」そう言うと、ギヴは好々爺らしい笑顔を浮かべます。
GM:
ギヴはレベル3のホワイト・マジシャンではありますが、老化によって能力値が軒並み低くなっていますので守ってあげてください。ちなみに、現在ギヴが記憶している白魔法は、“サニティ”、“キュア・ウーンズ”、“ファティーグ・リカバリィ”、“プレアー”、“キュア・ポイズン”の5つとなります。
早速ギヴは、セルダルとメルトの疲労を“ファティーグ・リカバリィ”の魔法で癒してくれました。
セルダル:
「ありがてぇ。ずいぶんと楽になったぜ」と老子に礼を言った。
GM:
ギヴがセルダルとメルトの疲労を癒し終えたところで、自宅にベアトラップを探しに行っていたテジーも戻ってきました。ここで、テジーがベアトラップを入手できたかどうかの判定を《2D》で行ってください。7以上でベアトラップを見つけることができたことにします。しかし、6以下の場合はテジーの父親であるハルクが狩りに持っていってしまっています。
セルダル:
了解。テジーはベアトラップを持って帰って……(コロコロ)こなかった(苦笑)。
テジー(GM):
ならば、戻ってくるなりテジーは、「すまない。ベアトラップは残ってなかった」とセルダルに頭を下げました。
セルダル:
「そーか。仕方ねぇな。探してくれてありがとよ」
ユセフ(GM):
さて、そんなところで、ユセフはあなたたちの顔を見ると、「これで準備は整ったか?」と確認してきます。
セルダル:
「ああ。そんじゃ、熊退治に行ってくる」
ユセフ(GM):
「うむ。くれぐれもよろしく頼む」そう言って、ユセフはあなたたちを見送ります。
ギュリス(GM):
ギュリスも、「そのマントは貸すだけなんだから、あとで必ず返しなさいね」と言ってあなたたちを見送りました。