LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第6話(08)

セルダル:
 D-4地点に入った。どーだ? そろそろ巣が見つかるころだろ?

GM:
 まずは、遭遇判定を7以上でどうぞ。

セルダル:
(コロコロ)8で遭遇せず。

GM:
 ここまで1回も遭遇なしとは、強運ですね(笑)。

テジー(GM):
 D-4地点でのテジーによる“足跡追跡”は、(コロコロ)15です。

セルダル:
「どーだ?」

テジー(GM):
「このあたりもムーンベアの足跡でいっぱいだな……」そう言って、ムーンベアの足跡を調べていたテジーですが、その途中で何かに気がつきました。
「……あッ! これは……」

セルダル:
「どーした、テジー!?」

テジー(GM):
「間違いない……。これは、さっきの血の跡だ」

セルダル:
「よしッ! それだ。それを追うぞッ!」

GM:
 では、血の跡をたどってさらに南へと進んで行くあなたたちでしたが、ここで索敵距離判定を行ってください。

セルダル:
(コロコロ)7。微妙だな……。

テジー(GM):
 テジーの索敵距離は、(コロコロ……出目は6ゾロ)17!

セルダル:
 テジー、いい仕事するなぁ。

テジー(GM):
 ならば、血の跡をたどっている途中、「まてッ」とテジーが押し殺した声で皆を制止しました。どうやら、テジーは前方に何かを発見したようです。

セルダル:
 その場で立ち止まる。
「いたのか?」

テジー(GM):
 テジーはゆっくりとした動作でランタンのシャッターを閉じると、そのまま地面に置きました。そして、息をひそめて、前方へと目を凝らします。
「やはりそうだ……。あれは、ムーンベア……」

GM:
 本来であればすでに日の昇る時間ではありますが、ウルム樹海の中はまだ薄暗いままです。そんな薄暗い森の中でテジーがムーンベアの姿を先にとらえたことは、奇跡に等しい幸運でした。まあ、6ゾロだったからなんですけど(笑)。

テジー(GM):
「距離はおよそ50メートル先。大木の根元に、大きな穴が開いている。その中で、わずかに何かが動いた。あの大きさからすると、ムーンベアで間違いないだろう」

GM:
 テジーはそう断言しましたが、ほかの者が目を凝らしてみても、そこにはただ真っ暗な空間が広がっているだけでした。

テジー(GM):
「明かりを見られていた場合、すでにこちらの存在は知られているだろう。だが、仮にそうだったとしても、ムーンベアが獲物を狩る態勢にない以上、あいつのテリトリー内に入るまでは反応されないはずだ」

セルダル:
「テジー、奴を仕留めるのにお前ならどんな手が思いつく?」

テジー(GM):
「そうだな。普段ムーンベアを狙って狩るようなことはないが、もしどうしても狩らなくてはならないのであれば、罠を仕掛けるだろう」

セルダル:
「いま仕掛けられそーな罠はあるか?」

テジー(GM):
「ない。ムーンベア用の罠を作るには数日かかる」

セルダル:
「そーか……。んじゃ、もーひとつ確認だ。ムーンベアを照らす明かりがあったとして、この距離からでもムーンベアを射ることは可能か?」

テジー(GM):
「この距離ではまだ少し遠い。だが、あと10メートルくらい近づけば当てられるだろう」

セルダル:
「わかった。なら、テジーは射撃可能なところで待機。で、オレとメルトはムーンベアに気づかれないよーに、巣穴に近づく。ムーンベアが出てきたら、メルトは奴の背後に回ってくれ。後ろがとれなきゃ横からでも構わねぇ」

メルト(GM):
「了解しました……。いよいよ……ですね……」そう口にしたメルトでしたが、その額には大粒の汗が浮かび、肩で大きく息をついています。昨日からの寝ずの追跡で、ずいぶんと疲弊しているようです。

ギヴ(GM):
 その様子を見たギヴは、「しかし、メルト。見たところ、オヌシは満足に戦えるような状態ではなさそうじゃのう」とメルトの体調を気遣います。

 LOSTのルールでは、24時間以内に睡眠をとらないでいると不眠ペナルティとして《12-20レーティング》分の疲労がたまることになっています。この時点ですでに7時半をまわっており、昨日それより早い時刻に起きていたメルトとギヴはそれに該当していたのでした。

GM:
 ここで一度、全員の疲労度を整理しておきましょう。メルトは11点、テジーは9点、ギヴは16点。3人とも疲労耐性は4点です。全員、疲労耐性の2倍以上疲労がたまっているため、移動ランク-1の修正に加えて、すべての判定のダイス目に-1のペナルティを負います。さらに、ギヴは疲労耐性の3倍以上も疲労を蓄積させてしまった影響で捻挫しており、追加でさらに移動ランク-1のペナルティを負っています。

セルダル:
 オレは疲労耐性4に対して7点の疲労だから、戦闘中のペナルティはないんだが……。
「そーだな。奴のネグラはわかったし、オレたちも休める場所をさがしていったん休むとすっか……」

メルト(GM):
「いえッ、やれますよ」
 メルトは強がって見せますが、疲労の色は隠せません。

セルダル:
「ここで無理しても仕方ねぇ。こーゆーときにこそ、我慢が必要なんだよ。さあ、テジー、休める場所をさがそーぜ。ムーンベアにみつからなさそーな所をな」

GM:
 あの……。自然回復を待つとなると、結構長い時間休む必要がありますが、それでも構いませんか? 一応、ギヴの魔法で疲労を回復させるという選択肢もありますが……。

セルダル:
 いや、この状況になるまで老子が魔法を使わなかったのには、なんか理由があるんだろーから、その判断に従うことにする。

GM:
 えーと、それはただ単に、わたしがギヴの疲労累積を見過ごしてしまっていただけのことなんですが……(汗)。

セルダル:
 なんだ、そーだったのかよ(笑)。

 NPCの疲労の管理はGM側でツールを用いて行っていたのですが、もともとギヴの同行は想定外であったため、そこから漏れていたのです。加えて、PC1人に対して複数のNPCを動かし、管理するというのは想像以上にたいへんな作業だったりします。なにせ、PC同士の会話というものが存在しないため、GMの手の空く時間がまったくないのですから。

ギヴ(GM):
 では、このタイミングでギヴがこう言います。
「せっかく時間を惜しんでここまで来たんじゃ。ここは多少無理しておくべきではないかのう? ただの付き添いとして、ワシを連れてきたわけではあるまい? ワシは直接戦えはせんが、オヌシらを支えることくらいならできるぞ」

セルダル:
「大丈夫なのか? 自分の足を痛めてたってーのに、それさえ治さねーでいたんだろ……?」

ギヴ(GM):
「治せぬわけではない。オヌシらのために力を温存しておったのよ。ほっほっほっ」

GM:
 ――と、GMのミスを男気に換えてくれる優しい老子ギヴでした。しかし、その影響で、ギヴが当初の予定よりも頑張るおじいちゃんに(笑)。

セルダル:
 流れ的にはオッケーだろ(笑)。
「んじゃ、頼むぜ老子。あとはオレたちに任せてくれ」

ギヴ(GM):
「うむ……。先日は、ワシの力であの赤毛の娘のことを救えなかったからのう。ここら辺で、少しはデミルコルにギヴありというところを見せておかねばなるまいて。では、ひとりずついくぞ」ギヴはそう言って、“瞑想”を開始しました。

 ここでギヴは残り精神点が6点になるまで“ファティーグ・リカバリィ”を連発し、自分の疲労を疲労耐性の2倍未満、それ以外の面々の疲労を疲労耐性未満になるまで回復させてくれました。

ギヴ(GM):
「ふぅ。これくらいで良いかのう」

セルダル:
「ああ。おかげで身体が嘘みてぇに軽くなったぜ。メルト、お前のほーは大丈夫か?」

メルト(GM):
「ええ! これで十分に働けそうですよ」そう言うと、メルトは力こぶを作ってみせます。

テジー(GM):
 そこで、真剣な面持ちをしたテジーが、セルダルとメルトに声をかけてきました。
「ムーンベアと戦う前に、ひとつ忠告しておく。野生生物は一度危険だと察したら、ためらわずに逃げる。そこが厄介なところだ。くれぐれも機を逃すな。逃がしてしまえば、また……」

セルダル:
「ああ……。逃がさねぇためにも、なんとか挟み撃ちにしてぇところだが……」

テジー(GM):
「幸いまだムーンベアのほうに動きはないようだ。今のうちに、周囲の地形を調べておくか?」

セルダル:
「そーだな」

GM:
 では、あなたたちはムーンベアの巣の周辺を簡単に確認しました(と言って戦闘マップを公開する)。

ムーンベアの巣

セルダル:
「テジー。弓で狙い撃つならどのへんがいーんだ?」

テジー(GM):
(10メートル前方の木の陰を示して)
「あの辺りだ」

セルダル:
「わかった。んじゃ、もー一度確認しておくが、まずムーンベアの近くまでオレたちが近づいて、ランタンであたりを照らす。そしたら、テジーが弓で仕掛ける。そんで、奴が飛び出してきたところを、オレとメルトで挟み撃ち……って感じでいくからな」

メルト(GM):
「了解です。挟み撃ちする場所は、セルダルさんの動きにあわせます」

テジー(GM):
「ワタシもそれで構わないが、矢がムーンベアの毛皮を貫通するかは疑わしい。あくまでもムーンベアの気を引くための射撃に過ぎないと考えてくれ」

セルダル:
「了解だ。それじゃ、メルト。ランタンを持ってオレの後ろからついて来てくれ。オレはテジーが矢を撃つのと同時に、奴に向って切りかかっていくからよ」

メルト(GM):
「え? 自分がランタンを持つんですか……?」そう言うと、メルトは右手に構えた片手剣と左手に構えた小盾を交互に見やります。

セルダル:
「ランタンのシャッターを開けてムーンベアを照らしたら、そのまま地面に置いて、盾を構える。できるか……?」

メルト(GM):
「わ、わかりました」
 メルトが生唾を飲み込むのがわかりました。

セルダル:
 じゃあ、“忍び足”でムーンベアに近づいて行く。

 こうして、ムーンベアを狩るための作戦が開始されると、セルダルは“忍び足”を駆使して、ムーンベアの巣穴へと近づいていきました。しかし、セルダルは肝心なことを失念していました。それがなにかといえば、ランタン持ちに同行させたメルトは“忍び足”などろくにできないということです。

GM:
 では、セルダルたちはゆっくりとムーンベアの巣に向かって行くわけですが、セルダルの耳には後方からついて来るメルトの足音がハッキリと聞こえます。

セルダル:
「メルト、気づかれないよう慎重にな……」

メルト(GM):
「は、はい」
 メルトはかすれた声で答えました。しかし、彼がどんなに注意を払おうと、足元の音は消えそうにありません。

 さすがに、素人相手に野生動物に気づかれないように動けというのは無茶な指示です(苦笑)。このままでは、メルトの足音にムーンベアが反応するのも時間の問題かと思われました。しかし、その直後――

セルダル:
 “忍び足”でさらに巣穴に接近。(コロコロ……出目は1ゾロ)。
「しまった……」

GM:
 まさか、メルトではなくセルダルのほうがやらかすとは(笑)。
 では、セルダルが思わず大きな足音を立ててしまった直後、正面方向から猛然と草木をかき分ける音が聞こえてきました。闇の中から黒い塊がセルダルめがけて突進してきます。

セルダル:
「来るぞッ!」

ムーンベア(GM):
 セルダルが身構えたのとほぼ同時に、その眼前に体長2メートル近いムーンベアが姿を現しました。
「グワウゥゥゥッ!」
 ムーンベアの唸り声があたり一帯に響き渡り大気を震わせます。




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