LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第6話(07)

GM:
 時刻は18時半になりました。さて、これからどうしますか?

セルダル:
「遺品を回収して、いったんデミルコルに戻ろう。生存者がいなかった以上は、ここで引き上げてユセフ様にこれまでのことを報告しとくべきだ」

テジー(GM):
 そのセルダルの発言に対して、「デミルコルまで戻るのか?」と、テジーが聞き返してきます。

セルダル:
「そーしたほーがいーだろ。オレたちがこの状況を伝えずに奴と戦い、万一全滅でもしたら最悪だからな」

テジー(GM):
「だが、今ならばまだ、さっきの場所から血の跡を追えるかもしれない」

セルダル:
「お前は、このまま奴を追いたいのか?」

テジー(GM):
「そうしたほうがいいと思う」そう言って、テジーはセルダルの目を見つめます。

メルト(GM):
 そんなテジーに対して、メルトが正気かとばかりに食ってかかりました。
「冗談だろ? もうすぐ日が暮れるっていうのに、これから森に入ろうってのか!? 俺は反対だぞ! いいから、ここはセルダルさんの言うことに従えよ!」

セルダル:
「……理由をきかせてくれ、テジー」

テジー(GM):
 テジーは無言でセルダルのことを見ています。

セルダル:
「テジー、話してくれ」

テジー(GM):
「このまま雨が続けば、血の跡が消えてしまう。それに……」

セルダル:
「それに……?」

テジー(GM):
 テジーはセルダルへと向けていた視線を外すと、口を閉ざしました。

セルダル:
「言ってくれ」

テジー(GM):
「……追跡の機を逃したくない。それだけだ」

メルト(GM):
 煮え切らないテジーの態度に、メルトはあきらかにイラついています。

セルダル:
「……。テジー、明かりは確保できるか? 」

テジー(GM):
「あ、ああ……。ランタンがある」

セルダル:
「……わかった。んじゃ、これから熊を追撃するぞ」

メルト(GM):
「えっ? ちょっと、本気ですか、セルダルさん!?」と、メルトが驚きの声をあげました。

セルダル:
「奴は暴れて、食事を終えた。満足した奴が次にすることはいったい何だと思う?」

メルト(GM):
「いや、何だと思うって聞かれましても……」
 メルトは答えにつまります。

テジー(GM):
 そんなメルトの代わりに、テジーが答えました。
「巣で休むだろうな」

セルダル:
「そーだな。うまくすれば、寝てるところを襲えるかもしれねぇ。だから行くんだ」

メルト(GM):
「……かもしれないって、そんな不確かな憶測で……。だいたい、夜間に熊と戦うのは避けたいと言っていたのは、セルダルさんじゃないですか。鉱夫の全滅を確認したからには、いったん戻って討伐隊を編成しなおしたほうがいいんじゃ……。今度は狩人たちの協力も仰げるでしょうし」

セルダル:
「ああ。オレも一度はそー思ったよ。そんで、そっちのほーがよっぽど安全だとは思う」

メルト(GM):
「だったら――」

セルダル:
「だから、メルト。あんたはそーしてくれ」

メルト(GM):
「……え?」

セルダル:
「老子を連れて、報告のため、デミルコルに戻ってくれ」そー言って森のほーを向いた。
「オレは、カタを付けてくる」

メルト(GM):
「い、いや、そんなわけには……」
 メルトはしばらく思い悩むと、それを振り払うように首を振りました。
「やっぱり、セルダルさんを残して村に帰るわけにはいきませんッ! セルダルさんが行くというのであれば、自分もついて行きますッ!」

セルダル:
「そっか……。サンキュー。だったら、行こーぜ。追撃だ」
 話がまとまったら、あの黒い線のあったところまで、馬で来た道を引き返す。

 セルダルの誘導に乗ってしまったメルト。はたして彼の運命やいかに(笑)? まあ、これまでのメルトのキャラクター性から反応を予想して、わざとやってるわけですが。


GM:
 では、あなたたちは小雨の降る中、先ほど見つけた血の跡のある場所まで戻ってきました。

セルダル:
「よし、それじゃ、ここから森に入ってくぞ」

 セルダルたちは乗ってきた馬を森の外に残すと、夜のウルム樹海の中へと足を踏み入れていきました。

GM:
 ウルム樹海の中へ少し進んでしまえば、その中で小雨の雨粒を被ることはありません。あなたたちの頭上に広がる樹海の木々の葉が、小雨を受け止めてくれています。

テジー(GM):
 少し森に入ったところで、テジーは荷物袋の中からランタンと火口箱を取り出し、慣れた手つきで明かりをつけました。

セルダル:
 これで、夜でも血の跡を追えるようになるのか?

GM:
 それは、判定の結果次第ですね。では、“足跡追跡”の判定を行ってください。目標値は6です。

セルダル:
(コロコロ)11で成功。

GM:
 ならば、セルダルには、あの赤黒い線が地図上のMZ地点に向かって伸びていっているのがわかります。

セルダル:
「こっちだ」そー言って、風向きに注意しつつゆっくり進む。そんで、雨はオレたちの足音を消してくれるはずだ。

GM:
 そうですね。おあつらえ向きなことに、この季節の風は南西から吹いています。

 セルダルたちは、暗闇の中をランタンの明かりだけを頼りに、ムーンベアが残したのであろう血の跡を追跡し始めました。そして、23時半頃にMZ地点に到達します。

デミルコル周辺地図02

セルダル:
 ムーンベアの就寝時間が人間と似たり寄ったりなら、ちょーどいー頃合いなんだがな……。

GM:
 では、遭遇判定を行ってください。《2D》で6以上なら遭遇しません。

セルダル:
(コロコロ)遭遇せず。まあ、バッタリ遭遇ってのも分がわりぃからな……。

GM:
 なら、ここでも“足跡追跡”をどうぞ。今度は目標値7です。

セルダル:
(コロコロ)危ねぇ。7で成功。

GM:
 それでは、血の跡がNZ地点へと延びていることがわかります。しかし、これまで鮮明に見えていた血は徐々にかすれてきており、森の足元の草が折れているほうが目印になりつつあります。

メルト(GM):
 ここでメルトが、「熊の、巣は、まだですかね……」と言葉を漏らしました。
 森の中を歩きなれていないメルトは、肩で息をつき始めています。デミルコルを出てくる前にギヴに疲労回復の魔法をかけてもらっていたメルトですが、そのときに昼間の訓練の疲労を全快することができていなかったので、それも影響しているのでしょう。

ギヴ(GM):
「メルト。おぬし、ずいぶんと疲労しておるようじゃの。回復しておいたほうがよいか?」そう言って、ギヴはメルトを気遣いますが、彼もまた疲れているようです。

セルダル:
「まだ、ここで休むわけにはいかねぇ。老子、お願いします」

ギヴ(GM):
「あいわかった。では、メルトの疲れを癒すとしよう」

 ここでギヴは、いったんメルトと自分の疲労を完全回復させました。

セルダル:
 ギヴ老子に来てもらって正解だったな……。老子がいなかったら、追跡自体ままならなかったかもしれねぇ……。
「んじゃ、先を急ごう」

GM:
 では、ここからNZ地点に入っていくわけですが、まず“記憶術”の判定を目標値5でどうぞ。

セルダル:
記憶術? (コロコロ)6で成功。

GM:
 そうすると、セルダルは周囲の景色に見覚えがあることに気がつきました。どうやら、このあたりは、モノケロースを狩るときにも通ったことがある場所のようです。

セルダル:
「ん? なんだ、この見覚えがある感じは……? まさか、ここは、あんときの……?」

GM:
 ということで、ここからは第4話でも用いたNZ地点の拡大マップに移ります(と言って、ウルム樹海NZ地点の地図を公開する)。

ウルム樹海NZ地点01

 ここからは、第4話でモノケロース狩りをしたときと同じ処理で、ムーンベアの巣を探すこととなりました。今回は詳細ルールの掲載は省きます。再度確認したい方は第4話シーン19をご覧ください。

GM:
 現在、あなたたちがいるのはD-2地点です。

セルダル:
 その位置から周りを見渡してみて、何か見当たるもんはあるか?

GM:
 そうですね。それでは、《ハンター技能レベル+知力ボーナス+2D》をどうぞ。

セルダル:
(コロコロ)11。

GM:
 ならば、近くの木のうろで横になっている……イノシシを発見しました! どうやら、寝ているようです。

セルダル:
「おやすみ……」
 そっとその場を離れて、血痕の追跡を続ける。

GM:
 では、“足跡追跡”を目標値8でどうぞ。

セルダル:
(コロコロ)10で成功。

GM:
 どうやら、血の跡はそのまま南に向かって一直線に伸びているようです。

 そのまま南へと進んだ一行は、D-3地点にある藻で濁った泉にたどり着きます。しかし、血の跡はそこで切り立った崖に向かって伸び、D-4地点へと消えてしまいました。この崖を登るためには“登攀”の判定が必要になりますが、一行の中に“登攀”ができる者はひとりもいません。仕方ないので、セルダルたちはいったん迂回してC-3地点へと向かうことにしました。

テジー(GM):
 では、テジーによるC-3地点での“足跡追跡”です。(コロコロ)成功。
「こちらにも熊の足跡はあるが、古いものだな……」

セルダル:
「南に続いてんのか?」

テジー(GM):
「ああ。前に来た時には気がつかなかったが……」 そう言って、テジーはセルダルのことをチラリと見ます。

セルダル:
 なんだ? さっきからテジーがチラチラと熱い視線を送ってくるが……。

 この事件が発生してユセフの屋敷に呼ばれて以来、テジーにはずっと口にしたい言葉がありました。しかし、人付き合いの苦手な彼女は、自分の憶測にすぎぬ言葉を口にしていいものか判断できず、ただセルダルがどういう行動をとるのかを見続けているのでした。

GM:
 森に入ってからかなりの時間が経ち、すでに時刻は3時半を回っています。

メルト(GM):
「……セルダルさん、まだ……歩き続けるんですか?」とメルトはうめくように言葉を漏らしました。

セルダル:
「熊の巣まではまだ先みてぇだが……。どーした、もう疲れたか?」

メルト(GM):
「いや、そういうわけでは……」と口にしたものの、メルトは目をしばたたかせています。

セルダル:
「二度と目を覚ませなくなっちまった奴らの事を思えば、これくれぇのことはなんでもねぇだろ?」

メルト(GM):
「そ、そうですね……」

セルダル:
「なぁに、もー少しだ。そんなに遠くはねぇさ」

 セルダルはメルトたちを鼓舞してC-4地点へと足を進めさせます。
 農夫として早寝早起きの生活を続けていたメルトを襲う睡魔は、そろそろ限界に達していましたが、それでもなお彼がセルダルについて歩き続けていたのは、モノケロースを倒したというセルダルへの憧れと、自警団団長代理としての意地でした。

セルダル:
 さぁ、巣はどこだ!?

テジー(GM):
「ムーンベアの足跡が四方八方にあるな……。これは前に来たときにも見たが……」

GM:
 C-4地点でも、肝心のムーンベアの巣は見当たりません。

テジー(GM):
「さて、足跡はほうぼうに伸びてるが、ここからはどちらに進む?」

セルダル:
「それならこっちだ」
 D-4地点に向かって進んで行く。もともと崖があって向えなかったところだからな。

 こうして、一行がD-4地点に到着した時刻は、7時半。森の中は薄暗いものの、すでに森の外では陽が昇っている時間帯でした。

ウルム樹海NZ地点02



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