LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第6話(10)

 デミルコルの鉱夫たちを襲撃した人食い熊の背中には、いましがたの戦闘でついた傷とは別に、大きな斬撃の跡が残されていました……。

メルト(GM):
 メルトは、その斬撃の跡を見ながら、「もし傷を負っていなかったのであれば、まだ倒せていなかったかもしれませんね……」と口にします。

セルダル:
「そーだな」
 さあ、突っ込んでこいよテジー(笑)。

テジー(GM):
 テジーはムーンベアの傷を見たまま沈黙を保っています。

ギヴ(GM):
 テジーのかわりに、ギヴがボソリと呟きました。
「しかし、裏を返せばその傷が今回の件の発端だったのかもしれんのう……」

テジー(GM):
 その言葉に、一瞬テジーが身をこわばらせます。

セルダル:
「まあ、それも否定できねぇな」

テジー(GM):
「……まだ、こいつには息がある。今のうちにトドメをさそう……」倒れているムーンベアを見下ろしていたテジーは、話題をそらそうとするかのように、そう口にしました。

セルダル:
「ああ。そーすっか……」
 じゃあ、両手剣でムーンベアの首を落とす。

GM:
 了解です。多少手こずりはしましたが、セルダルはムーンベアの首を切り落とすことに成功しました。

セルダル:
「あとは……。巣の中も確認しとかねぇとな。連れてかれた鉱夫の遺品でも残ってりゃいーんだが……」

メルト(GM):
 そのセルダルの言葉に、メルトは自分たちが追いかけてきたもののことを思い出し、勝利の余韻で高揚させていた顔を曇らせました。

GM:
 では、巣穴をのぞいたセルダルは“捜索”判定をどうぞ。目標値は6・8・10です。

セルダル:
(コロコロ……出目は1ゾロ)これだよ(苦笑)。

GM:
 ならば、セルダルは熊の巣穴の中に散らばるガラクタを見つけました。鉱夫の遺体はそこには見当たりません。なお、1ゾロはファンブルではなく自動失敗なので、自分が確実に失敗したことがわかります。

セルダル:
「ダメだ。こりゃ、わかんねーわ」
 まあ、同郷の面々が懸命に探してくれるだろ。

テジー(GM):
「どれ、ワタシもみてみよう」と言って、テジーもムーンベアの巣の中を“捜索”します。(コロコロ)達成値は9。テジーは熊の巣の足元に半分埋まっていたものを発見し、それを手に巣穴からでてきました。
「こんなものがあったぞ」

GM:
 テジーが手にしているものは、胴体部分に大きな穴のあいた鎖帷子と、薄汚れた2つの貴金属です。

セルダル:
「鉱夫の遺品か?」

ギヴ(GM):
 鎖帷子を目にしたギヴは、「いやぁ、それにしてはずいぶんと汚れておるのう。このさび具合からすると数年は経過しておるようじゃ」と口にします。

セルダル:
「ふーん……」

テジー(GM):
 そこで、テジーは「ふぅ……」と安堵の息を漏らし、その視線をセルダルのほうへと向けました。

セルダル:
「なんだよ、テジー」

テジー(GM):
「いや、何でもない。……どうやら、鉱夫の遺体はここにはないようだな。きっと、こことは別の場所に埋めたのだろう。そうなると、探し出すのは難しいと思う」

メルト(GM):
「それじゃ、この古びた遺品だけでも持ち帰りますか」

セルダル:
「そーだな。もしかすっと、村にこのさびた鎖帷子が戻ってくるのを待ってる奴がいるかもしれねぇしな」

ギヴ(GM):
「さあ、それはどうかのう。デミルコルで鎖帷子を持っておるものなど、代々の氏族長以外には聞いた覚えがないからのう……。まあ、それはそうとして、オヌシらもそろそろ疲労の限界じゃろう。いいかげん、少し休むことにせんか?」

GM:
 戦闘が終わり、その後の処理も含めて、時刻はすでに朝の8時です。話が一段落ついたところで、ムーンベア戦の戦闘疲労を累積させておいてください。

セルダル:
 了解。(コロコロ)5点たまった。

ギヴ(GM):
 すでにたまっていた分に、(コロコロ)7点追加されて……。誰が限界って、ギヴが限界でした(笑)。

セルダル:
 じーさん、頑張ってたからな(笑)。

ギヴ(GM):
 では、これから疲労影響表を用いた判定を行いますが、場合によってはギヴはこれで息を引き取るかもしれません。

セルダル:
 えー!? まてまてまて(汗)。

ギヴ(GM):
(コロコロ)ふむ……。お亡くなりにはなりませんでしたが、ギヴはすでに自分の脚では歩けないほど身体を酷使していました。

セルダル:
 仕方ねぇ。ここからは背負っていくとするか。
「じゃあ、安全に休めそーな場所に移動するぞ。テジー、北の泉辺りなら休めそーか? それとも、南の泉にするか?」

テジー(GM):
「……休むなら、下手に動かずここで休むべきだ。ムーンベアがこの周囲に縄張りのマーキングをしていたからな。それを知っている森の動物は、ここへはそうそう近づいてこない」

セルダル:
「そーか。わかった。なら、そーしよう。見張りは俺がやっとくから、3人とも先に休んどけよ」

ギヴ(GM):
「ならば、休む前にオヌシの疲労を癒しておくとしよう」

セルダル:
「老子、大丈夫か? 無理はすんなよ」

ギヴ(GM):
「なあに、寝る前の最後の仕事じゃよ。ワシらが休んでいる間、しっかり見張っておいてもらわんと困るからのう」

 ギヴは残った精神点を絞りだし、わずかにセルダルの疲労を回復させました。

ギヴ(GM):
「では、休ませてもらうとしよう」

テジー(GM):
「すまない、セルダル殿。少し休んだら見張りをかわろう。それまでよろしく頼む」テジーもそう言って横になります。

メルト(GM):
「すみません。自分も、さすがに限界で……」
 メルトはフラフラと倒れ込みました。

セルダル:
「ああ、まかせとけよ」と言って、辺りの警戒を開始する。

 こうして、ムーンベアとの戦いを終えた一行は、翌日の朝まで休憩をとることにしました。

GM:
 では、24時間の休憩に入ります。休憩の途中でメルトとテジーが順番に目を覚まし、見張り番をかわってくれました。一方で、精神点を大きく消耗したギヴ老子は、食事をとる以外はずっと休み続けます。
 さて、見張り番の間に何かやっておきたいことはありますか?

セルダル:
 まずは熊鍋用の肉を回収しておく。それがないと、デミルコルに戻った後でギュリスから何て言われるかわかったもんじゃねぇからな。

GM:
 ああ、そういえばそんな約束もありましたね(笑)。

セルダル:
 あと、テジーと2人で話す機会はあるか? ここで話をしておかねぇと、でっかい借りを残しちまうことになるからな……。

GM:
 メルトとテジーが最低限の睡眠をとったあとは、セルダルを含めた3人で代わりばんこに見張り番を務めることになるでしょうから、夜になればその機会もあるでしょう。
 では、時間を進めてその日の20時過ぎ。セルダルとテジーの2人で見張りを務める番になります。周囲から集めた枯れ枝で火を起こし、それを囲んで休んでいるものと思ってください。

セルダル:
 了解。
「なぁ、テジー」

テジー(GM):
 名前を呼ばれたテジーは、無言のままセルダルへと視線を向けます。

セルダル:
「どーして、言わなかったんだ?」

テジー(GM):
「……なんのことだ?」

セルダル:
「とぼけんなよ。何度もオレのほー見て、何かいーたそーな顔してたじゃねぇか」

テジー(GM):
「そう……だったか?」

セルダル:
「そうだったかって……。まぁ、いーたくねぇなら、それでもいーけどよ……。何はともあれ、ありがとよ」

テジー(GM):
 テジーはセルダルへ向けていた視線をたき火のほうに移すと、「……いや……。とにかく、よかった……」と口にしました。

セルダル:
「よかったってことは、やっぱり疑ってやがったな?」そー言って笑った。

テジー(GM):
 そのセルダルの笑顔に、テジーは困惑した表情を浮かべます。そして、「……わからない……」と呟きました。

セルダル:
「ん? 何がわからねぇんだ?」

テジー(GM):
「本当はどうしたほうがよかったのか、ワタシにはわからない。ワタシは何もしなかった。それだけだ」

セルダル:
「……だが、オレのことで悩んでくれて、ここまでついて来てくれて、一緒に戦ってくれた。それだけでも嬉しかったぜ」

テジー(GM):
「い、いや、それは違う! ワタシは自分のために悩み、真相を知るためにここまで来て、生き残るために戦っただけだ」そう言って、テジーは頭を大きく横に振りました。

セルダル:
「まあ、それならそれでもいーさ。だが、オレは嬉しいんだ」そー言いながら、荷袋からワインの入った瓶を取り出した。
「だから、こいつを開けちまおう。飲めるだろ?」

テジー(GM):
「なんだそれは?」

セルダル:
「酒だよ。飲めねぇわけじゃねぇだろ?」

テジー(GM):
「……ない。……酒を飲んだことはない」

セルダル:
「本当かよ!?」

テジー(GM):
「嘘を言う必要はない」

セルダル:
「……そーなのか……。まぁ、いいさ。だったら今飲んでみろよ。そら」そー言って、蓋を開けた瓶をテジーに渡した。
「美味いし、身体が温まるぜ?」

テジー(GM):
「そうなのか?」そう言って、瓶を手にとって液体を口に含むと、テジーはすぐさまそれを吐き出しました。
「ぺっぺっぺっ。なんだ、これは!? ……よくこんなものが飲めるな」

セルダル:
 オレはそれを見て笑ってる。
「ゆっくり味わって飲むんだよ。貸してくれ」そー言って、瓶を受け取るとワインを口に含んだ。

テジー(GM):
 テジーはその様子を顔をしかめて見ています。

セルダル:
 ある程度飲んだら、またテジーに渡そーとするが……。

テジー(GM):
 テジーは眉の間にシワを作って、顔を小刻みに横に振りました。
「それはワタシにはあわない。ワタシは水で十分だ」そう言って、テジーは自分の水袋をあおります。

セルダル:
 笑ったまま瓶を差し出してた手を戻して、ひとりでそれをあおり始めた。
「……そーいや、あのムーンベアがオレたちのことを襲ってきたときのこと覚えてるか?」

テジー(GM):
 テジーはコクリとうなずきます。

セルダル:
「あそこでに仕留め切れてれば、こんなことにはならなかったんだろーけどな……」

テジー(GM):
「あのとき、セルダル殿がムーンベアを逃すまいとしていたことは覚えている。アナタに責めを受けるようなトガはない」

セルダル:
「だから、黙っててくれたんだろ?」

テジー(GM):
 テジーはハッとした表情をして、「余計なことを言った……。さっきの飲み物のせいだ」と言うと、押し黙ります。

セルダル:
「そーだな。無理に飲ませちまって悪かったよ。……さてと、あとはデミルコルに帰って報告だ。悲しい報告になるが、誰かがちゃんと届けねぇとな」

 不器用なテジーの気遣いに感謝の意を示すセルダルでした。


 この後、一行は夜が明けるのを待ってから、一直線にデミルコルを目指しました。その途中でピューマの追跡を受けるというアクシデントはあったものの、ギヴ老子の“ファティーグ・リカバリィ”を頼りに、一行が休むことなく森の開けたほうへ向かうと、ピューマは追跡をあきらめたのでした。

ウルム樹海NZ地点03

GM:
 ちなみに、ここでメルトがあることに気がつきます。

メルト(GM):
「……そういえば、馬を降りたところに戻らず、直接村に向かってきてしまいましたね」

セルダル:
 あ……言われてみれば……。オレのミスだ。てっきり、頭の中では馬を回収してたつもりだったんだが……。

テジー(GM):
「今回は仕方ない。馬の回収に向かっていては遠回りになっていた」

ギヴ(GM):
「そうじゃな。ここは先を急ぐとしよう。早くベッドで休みたいしのう」

セルダル:
「わかった。んじゃ、このままデミルコルに向かって進むぞ」

 こうして、小雨の降る夜道を進み、セルダルたちがデミルコルに到着したのは深夜0時のことでした。

デミルコル周辺地図03



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