ギュリスとの会話を終えたセルダルは、ユセフの執務室へと足を運びました。
GM:
部屋の中にはユセフとギヴの姿があります。
ユセフ(GM):
「わざわざすまないな」そう言ってユセフはセルダルのことを部屋に招き入れました。
セルダル:
「いや、別に構わねぇけど、老子まで揃っていったいなんなんだ?」
ユセフ(GM):
「うむ……。実は、君たちがウルム樹海から持ち帰った荷物のことなのだがな……。あれは、デミルコルのものではないのだ。おそらくは、モノケロースを狩りにウルム樹海に入った探索者のものだろう」
セルダル:
「へー、そーだったのか」
このことは第4話でも示唆されています。ギュリスいわく、兄ニハトがモノケロースを狩るために何度か腕の立つ探索者を雇い、ウルム樹海へ向かわせていたということでした。
ユセフ(GM):
「鎖帷子の胸のあたりには、表側と裏側の両方に大きな穴が穿っていたが、ムーンベアではあのような穴はあけられまい。あれはまず間違いなくモノケロースの突進によるものだ。おそらくモノケロースと戦い敗れた者の死肉をムーンベアが食し、人の味を覚えてしまったのだろう」
セルダル:
「なるほど……。たしかに、それなら納得だな」
ユセフ(GM):
「それでだ。話の本題は、君たちが持ち帰った荷物のうち、鎖帷子以外の2つの貴金属のことなのだが……。どうやら、あの貴金属はただの装身具というわけではなさそうなのだ。そうだな、ギヴ?」そう言うと、ユセフはとなりに控えていたギヴへと視線を送ります。
ギヴ(GM):
「はい、ユセフ様」ユセフから掛けられた言葉にそう答えると、ギヴは布に包まれた貴金属を丁寧な手つきでテーブルの上に並べました。
GM:
汚れを取り払われて綺麗になった腕輪と指輪が、それぞれひとつずつテーブルの上に置かれます。
ギヴ(GM):
それらの装身具を前に、ギヴはセルダルに対して、「ワシが魔法の目で見極めたところ、どうやらこれらは神の遺産のようなのじゃ」と説明しました。
セルダル:
「すげぇもんなのか?」
ギヴ(GM):
「これまでに発見された遺産の特徴と照らし合わせてみると、おそらくこちらが“力の腕輪”、そしてこちらが“祝福の指輪”と呼ばれるものらしくてのう――」
GM:
ギヴの説明によると、それぞれ次のような効果を持っているようです。
これらのお宝は、本来、第4話で得られる報酬として用意していたものでしたが、モノケロース狩りのときにはムーンベアの巣を発見することがなかったため、今回のセッションの報酬として再利用しました。なお、ムーンベアの巣穴の中には全部で3つの遺産が眠っていたのですが、捜索判定に完全成功しなかったため、2つしか見つけられませんでした。残りひとつは、これで完全にお蔵入りです(苦笑)。
ギヴ(GM):
「――というような代物なのじゃ。探索者にとっては、さぞ大切なものだったじゃろう」
セルダル:
「うおー。すげぇお宝じゃねぇか」
ユセフ(GM):
「君たちは誰かの遺品ではないかということでこれを持ち帰ってきてくれたそうだが、残念ながら返すべき遺族がいるのかどうかさえもわからないのだ。かといって、神々の遺産をおいそれと捨てるわけにもいくまい。そこでだ……。君が望むのであれば、今回の件の報酬としてこの2つを受け取ってもらえないだろうか? 村の者にとっては持て余す代物だが、君ならばこれらを有効に使うことができるだろう?」
ユセフはあえて口にしませんでしたが、近年ヤウズ王子によって探索者による遺跡探索を禁じる法令が発せられており、いずれは神の遺産の個人所有に対する没収令も発っせられるのではないかと噂されています。つまり、現時点で神の遺産の所有はグレーな行為なのです。無用の長物となりかねない代物だったからこそ、ユセフはここで報酬代わりにセルダルに渡そうとしたとも考えられます。
セルダル:
「え? これをオレに!? そりゃ、オレとしては嬉しいけどよ……」
ユセフ(GM):
「この村ではこれ以上の報酬は用意できないのだが、不満かな?」
セルダル:
「とんでもねぇ! ありがたくいただくぜ、ユセフ様」
ユセフ(GM):
セルダルの返答を受けて、ユセフは満足気にうなずきました。
セルダル:
「これで王直属部隊への入隊にまた一歩近づいたな」
それは、ヤウズ王子の思惑次第です。逆に、遺産の所持によって王直属部隊への入隊が遠のいた可能性も否定できません(苦笑)。
GM:
こうして、セルダルは人食い熊を退治した報酬として、2つの神の遺産を手に入れたのでした。しかし、貴重なアイテムを手にしたセルダルではありましたが、心を病むニルフェルにいまだ回復の兆しはなく、そのためどこか晴れやかな気分にはなれずにいたのでした。
――といったところで、第6話のセッションを終了します。お疲れさまでした。
セルダル:
お疲れさまでした。