LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第7話(03)

GM:
 さて、あなたたちが第1市壁内に入ることが許されたのは、昼過ぎになってからのことです。そこから、エルドはアスラン商会へ、アゼルとイーサは商人ギルドへと向かうことになるわけですが、まずはエルドのほうから解決していきましょう。
 エルドは総督暗殺のニュースに混乱するクゼ・リマナの街をアスラン商会に向かって歩いています。

エルド:
 寄り道せずに、真っ直ぐアスラン商会を目指します。

GM:
 では、目抜き通りをしばらく南下すると、大通りの交わる一等地に建てられたアスラン商会の商館前までたどり着きました。商館は、巨大な倉庫が併設された4階建ての立派な建物です。ちょうど倉庫では荷物の積み下ろしが行われているところであり、そこに多くの馬車が止められているのが目に入りました。

エルド:
 止まっている馬車の中に、タルカン様の乗っていた馬車はありますか?

GM:
 はい。見当たります。

エルド:
 それが確認できたのであれば、アスラン商会の受付まで行って、そこで「さきほど中央門でタルカン様を見かけたのですが、タルカン様はこちらにいらっしゃいますか?」と尋ねてみます。

受付の男性(GM):
 ならば、受付には40代くらいの男性がいたのですが、その人物はエルドに話しかけられると、「失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」と聞き返してきます。

エルド:
「あ、こちらこそ唐突に失礼いたしました。私はエルドと申します。以前、カルカヴァンでタルカン様にお世話になった者です。先ほど中央門の前で偶然タルカン様のお姿を拝見したので、先日のお礼も兼ねてご挨拶をさせていただこうと思いこちらに伺った次第です」

受付の男性(GM):
「では、タルカンとお約束があるわけではないのですね?」

エルド:
「はい、そうです」

受付の男性(GM):
「そういうことであれば、少しのあいだこちらでお待ちください」そう言うと、男はエルドをその場に待たせ、いったん建物の奥へと消えていきました。
 しばらくすると、男はタルカンと共に戻ってきます。

タルカン(GM):
 タルカンは大きな扇子を揺らしながらエルドのそばまで近づいてきました。そして、あなたのことを一瞥すると、「あーら、聞き覚えのない名前の者がワタシを訪ねてきたというので出てきてみれば……アナタだったの。いったい何をしに来たのかしら?」と、さして興味のないものを見たというような態度をとります。

エルド:
 やっぱりそういう反応を返されてしまいますか。まあ、カルカヴァンでのことを考えれば、僕たちに対する心証は最悪でしょうからね……(苦笑)。
「実は、ひとつタルカン様の御知恵を拝借したく、失礼を承知で訪ねてまいりました。僕たちはちょうどこれからこの街の外に出ようと思っていたところなのですが、このゴタゴタで警備が厳しく、外に出られなくなってしまいまして……。何とか街の外に出る方法はないものでしょうか?」

タルカン(GM):
「ああ、あの警備網のことね……。この街もずいぶんとたいへんなことになっているみたいね。そのことに関しては、ワタシも驚いているわ。……で? アナタの言いたいことはそれだけなの?」

エルド:
「えーと……」(口ごもってしまう)

タルカン(GM):
「……じゃあ、こちらからの質問よ。仮にアナタたちに協力してあげたとして、それでワタシになんの見返りがあるというのかしら? ただ一方的に協力して欲しいと言いに来たのであれば、早々にお引き取り願うわ。なにせ、街に着くなりこのゴタゴタでしょう? ワタシもあまり暇ではないのよ」

エルド:
「……では、見返りがあればお力添えいただけると?」

タルカン(GM):
「もちろんよ。いつだって、より有益なことが優先されてしかるべきでしょう? それだけの価値があるものを用意できるのであれば、誰だろうと歓迎するわ。それが、たとえ一度はワタシを裏切ったアナタたちであってもね」そう言ってタルカンは皮肉めいた笑みを浮かべました。

シーン外のアゼルとイーサ:
(苦笑)

エルド:
 なるほど。一応交渉の余地はあるみたいですね……。
「……わかりました。では、一度出直してきます」そう言って、この場はいったん引き下がります。そして、商人ギルドに向かいます。

GM:
 了解しました。


GM:
 次はアゼルとイーサのほうへと場面を移します。2人は商人ギルドに向かったんでしたよね?

アゼル:
 いや、そのつもりではあったんだが、やっぱり商人ギルドに向かう前にラマザ亭に寄っておくことにしよう。それで3人分の部屋を取っておく。行動拠点は早めに確保しておいたほうがいいからな。で、大荷物を部屋に置いてから商人ギルドに向かうことにする。

GM:
 そうすると、時間経過を考えて、アゼルとイーサが商人ギルドの前までたどり着いたところで、エルドと鉢合わせすることになります。

アゼル:
「お、エルドじゃないか。思ってたより早かったな」

エルド:
 アゼルさんたちのほうが遅かっただけなんですけど(苦笑)。
「まあ、アスラン商会ではほぼ門前払いといった感じでしたからね。一応、タルカン様は見返りがあれば街の外に出るための手助けをしてくれるようなことを言っていましたが……」

イーサ:
 見返りか……。まあ、もとよりあのタルカンさんが無条件で協力してくれることなんてないだろうと思ってはいたが……。何か取引材料となるものがあればいいんだがな……。

アゼル:
 それはそれとして、とりあえず商人ギルドに入ってシシュマンさんにサブリさんについての話を聞いてみるぞ。

GM:
 では、あなたたちは先日のように商人ギルドの受付でシシュマンを呼び出してもらいました。

シシュマン(GM):
 しばらくすると、恰幅のよい身体を揺らしてシシュマンがでてきます。
「おう! またお前さんらか。ワシに話があるそうだが、いったいどうしたんだ?」

アゼル:
「いやー。どうにもたいへんなことになっていますねぇ」

シシュマン(GM):
「ん? あ、ああ……。ワシはあまり詳しい話を知らないんだが、どうやらここの総督が何者かに殺害されたらしいな?」

アゼル:
「その影響で街の出入りが厳しく制限されてしまいました。商人ギルドとしてもたいへんなんじゃないですか?」

シシュマン(GM):
「それだったら、ちょうどいまここのギルドの役員連中が今後の方針について相談してるところだが……」

アゼル:
「やはり、商人ギルドの隊商にも街の出入り制限はかかっているんですか?」

シシュマン(GM):
「そりゃそうだ」そう答えつつ、シシュマンは少しいぶかしげな視線をアゼルへと向けました。

GM:
 あの……。アゼルはそんなことを訪ねるために商人ギルドに来たんでしたっけ?

アゼル:
 いや、本題に入る前に世間話は必要かなと(笑)。
「……ところで、サブリさんのことについてなんですが……」

シシュマン(GM):
「おお! その後、サブリのことを見つけることはできたのか?」

アゼル:
「ええ、おかげさまで、サブリさんと会うことはできました……」

シシュマン(GM):
「そいつはよかったな。それで、あいつの商談はうまくまとまったのか? ずいぶんとでかい取引だったみたいだが」

アゼル:
「えーと……。それが、サブリさんのことを見つけたとき、ちょうどサブリさんのほうも護衛を探していたところだったので自分たちがそれを引受けて交渉の場に立ち会ったのですが、結局、交渉は決裂してしまって……」

シシュマン(GM):
「そうか。取引は失敗しちまったのか……」そう言って、シシュマンは沈痛な面持ちを浮かべました。

アゼル:
「それで、きっといまサブリさんは路頭に迷ってるところだと思います」

シシュマン(GM):
「はッ!?」
 アゼルの言葉に、シシュマンは信じられないというような顔をします。
「路頭に迷ってるところだと思いますって……。まさか、お前さんら、そんな状態のサブリのことをほったらかしにしてきちまったっていうのか?」

アゼル:
 うッ……。それはまあ、そうなんだが……(苦笑)。
「こちらも色々と事情がありまして……。一度サブリさんとは行動を別にしたのですが、そのあとでやはりサブリさんのことが気にかかり……。アスラン商会とのこともありますし、なんとかできないものかと……」

GM:
 あの……。PCの発言として直接説明するのであれば、もう少し内容をまとめてわかりやすく話してもらえませんか? 「事情が」とか「アスラン商会とのこともある」とか断片的に言われても、ことの経緯をしらないシシュマンにはあなたたちが何を言わんとしてるのか伝わりませんよ。シシュマンはサブリの取引相手がバリス教団だったことすら知らないわけですから。

アゼル:
 いやぁ、どうもこういった説明は苦手でなぁ……(苦笑)。

 無理にPCの発言として説明しようとするから難しくなるのです。慣れているならともかく、そうでないのであれば、こういうときはプレイヤーとして「これこれこういうことを説明した」と言ってしまったほうがよいでしょう。

GM:
 そうですね……。ならば、とりあえずこうしましょう。

シシュマン(GM):
「……どうやら随分と込み入った話らしいな。ここで立ち話もなんだ。少し場所を移そう。次に会ったときには飯をおごる約束だったしな」そう言って、シシュマンはあなたたちを近くの飲食店へと連れて行きます。

アゼル:
 じゃあ、それについていく。


シシュマン(GM):
 シシュマンは適当な店に入って腰を落ちつけると、「それじゃ、ワシにも話がわかるように細かい経緯について詳しく聞かせてもらえるか?」とあらためてあなたたちに説明を求めました。

アゼル:
 ……えーと、どこから話せばいいんだ?

GM:
 プレイヤー発言で構わないので、シシュマンに対してどのような説明をするかを宣言してください。

エルド:
 では、アゼルさんに代わって僕が、港で護衛を雇おうとしていたサブリさんと出会ったところから、バリス教団との取引が破談に終わったところまでの経緯をシシュマンさんに話します。ただし、サブリさんの商売関係以外のバリス教団とのかかわりについては伏せた状態で。

シシュマン(GM):
 ならば、そこまで話を聞いたシシュマンは、「どうしてお前さんらは、サブリのことをその場に残してきちまったんだッ!?」と強い口調で抗議してきます。

アゼル:
 そうだよな。そりゃ、突っ込まれるよな……(苦笑)。

イーサ:
 バリス教団とのことを隠していたら、いつまでたっても先に進めないんじゃないか? ここは、シシュマンにも納得してもらえるように、カルカヴァンでシシュマンたちと別れてからこれまでのことをすべて話すことにしよう。

 バリス教団について必要以上のことは伏せた状態でシシュマンにこれまでの経緯を話すというエルドの選択はたいへんよいものだったのですが、残念ながらいまの彼らにはその先に繋げることができません。結局、イーサの提案が採用され、これまでの経緯をすべてシシュマンに説明することになったのでした。まあ、シシュマンにバリス教団の情報を流したことで不利益を被る可能性はごくわずかなので、そこまで神経質になる必要もなかったとは思いますが。

シシュマン(GM):
 では、イーサの口からすべての話を聞いたシシュマンは、あなたたちの置かれていた立場にそれなりの理解を示し、「なるほどな……」と呟いてから腕を組みました。
「まあ、だいたいのところはわかった。納得しがたい部分も多少あるがな……。それで、お前さんらはワシのところまで何の用で来たんだ?」

アゼル:
「それなんですが……。やはり、このままサブリさんのことを見捨てるというのも心苦しい。そこで、サブリさんの借金を返済するために何かよい方法はないかと思って相談に来たのですが、どうにかならないものでしょうか?」

シシュマン(GM):
「無理だな」

エルド:
 バッサリだー(笑)。

 朝、宿屋を出るときはサブリの行方を聞くために商人ギルドに行くと話していたアゼルでしたが、半日とたたないあいだに目的が変わっていました(笑)。まあ、シシュマンもサブリのその後のことについてはまったく知らなかったわけですが……。

 というか、朝一番に中央門が封鎖された状況下で、昨晩第1市壁外にいたサブリがその後商人ギルドに立ち寄れる可能性などゼロに等しく、中央門が封鎖されていることが確認できた段階で、サブリの行方についての情報を集めるために第1市壁内に入ってくるという選択はありえないはずなのです。そのため、GMの思惑では、サブリのことを助けようとするなら第1市壁外で活動、見捨てて街の外に出ようとするなら第1市壁内で活動という筋書きだったはずなのですが、なんだかややこしいことに……(苦笑)。

アゼル:
 ……あのさ、あらためて確認したいんだが、サブリさんの借金っていくらだったんだっけ?

イーサ:
 たしか20万銀貨じゃなかったか?

GM:
 いいえ、銀貨じゃありません。20万金貨です(苦笑)。銀貨換算で500万銀貨。現実の円換算だとおよそ5億円といったところですね。

イーサ:
 5億円ッ!?

アゼル:
 ……そうか……5億円かぁ……。やべぇなぁ……。こりゃ事件が起きる金額だ。まずいことになった。

GM:
 第1話の時点でも説明したはずですが、いまさらの反応ですね(苦笑)。

シシュマン(GM):
「ヤナダーグ・プラト地方の商人ギルドとして、組合員の負債をある程度補填する取り決めはあるが、金額が金額だ。それも、借り先が商売敵のアスラン商会ときてるからな……」

アゼル:
「そうですか……」
 だめだ、行き詰った。

シシュマン(GM):
「個人的にサブリの奴を可哀想だと思わんこともないが、イチ商人として考えれば……サブリは商売に失敗した、それだけのことだ。商売を生業とする者にとってみれば、明日は我が身。皆その覚悟をもって日々の商売にいそしんでいる」

アゼル:
「やはり、短期間でそれだけの大金を集めるというのは無理なことなんでしょうか?」

シシュマン(GM):
「少なくともワシら零細商人がおいそれと用意できるような金額じゃない」

一同:
「……」

アゼル:
「……ところで、その話とは別に、何とかしてこの街の外に出る方法はないんですかね?」

GM:
 ……唐突に話題を変えましたね。もしかして、サブリの件は途中放棄して、街の外にでる方針に切り替える気ですか?

イーサ&エルド:
(笑)

アゼル:
 いや……まあ、聞けるだけのことは聞いておこうと思って(苦笑)。

GM:
 そうですか。まあ、いいですけど……。

シシュマン(GM):
 アゼルの質問に対して、シシュマンは次のように答えてくれます。
「ここの商人ギルドでも、幹部連中が集まって何とか最低限の通商だけでも行えないものかと話し合っているところだ。数日ものあいだ通商が完全に滞ってしまえば大問題だからな。まあ、そこらへんの事情は総督府も理解しているだろうから、頼み込めばギルドの商材のみを街の外に出してもらうことくらいは許可してもらえるかもしれんが、どうがんばっても一般人の通行許可は下りんだろう。むろん、総督の暗殺実行者が捕まれば、普段通りの往来になるんだろうが……」

アゼル:
「やはり、犯人が捕まるまでは街の外にはでられませんか……」
 こりゃ、俺たちでレヴェントをつかまえるしかないか?

エルド:
 それは無理な話ってもんですよ。第1市壁の外に出られない状況なのに、どうやってレヴェントをつかまえる気ですか?

アゼル:
 あ、そうか……。こりゃ、本当に手詰まりだな……。
 とりあえず、シシュマンさんに確認することはこれくらいかな。それなら、そろそろシシュマンさんとわかれることにしよう。
「シシュマンさん。お手間をとらせてしまいすみませんでした」

シシュマン(GM):
「いや、構わんさ。それより、お前さんらはこれからどうするつもりなんだ? 聞いたところじゃ、アゼルは妹さんとも離れ離れになっていてたいへんなんだろ?」

アゼル:
「まあ、いろいろありまして……(汗)。とりあえず、このままサブリさんを放っておくわけにもいかないので、まずはサブリさんのことを探してみようと思います」

シシュマン(GM):
「そうか。もし、サブリと再会することがあるなら、ワシが短絡的なことだけは考えるなと言っていたと伝えといてくれ」

アゼル:
「わかりました。必ず伝えます。では、これで失礼します」

エルド:
 サブリさんへの伝言を託されても、第1市門の外にでられないんじゃお話になりませんけどね……(苦笑)。

アゼル:
 それはそうなんだが……(汗)。

GM:
 こうして、あなたたちはシシュマンとの情報交換を終えたのでした。




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