LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第7話(07)

GM:
 さて、タルカンとの交渉を終えて屋敷からでてきた一行ですが、これからどうしますか? もうすぐ日没です。

エルド:
 僕は宿屋に戻って休みます。まだ精神点が回復しきっていませんから。

イーサ:
 俺もだ。明日はいろいろとやらなくちゃならないことがある。それに備えて、今日は早めに休もう。

アゼル:
 じゃあ、俺は街中でアスラン商会に関する情報を収集しておく。就職先がどんなところか知っておかないとな。

GM:
 では、街中でアスラン商会に関する情報収集をはじめるアゼルですが、どのようなところで情報収集するつもりですか?

アゼル:
 商店やらなんやらで、「ところでさ、アスラン商会ってどうよ?」って感じで(笑)。

GM:
 アバウトですね(笑)。そうすると、街の商店では、「商売上手だよな」とか「よその商会とは桁違いの規模だよ」とか「アスラン商会は自前の船で物資を大量輸送してるから利益もでかいんだ」というような話を聞けます。あと、融資を受けているお店なんかでは「うちはあそこのおかげで何とか商売を続けさせてもらってるよ」とか、逆にライバル関係にあるお店では「世知辛い金貸しさ」などといった声も聞けました。

アゼル:
 いまさらなんだが、アスラン商会の規模ってどれくらいなんだ?

GM:
 アスラン商会はカーティス王国南部最大の商会で、王国全体でも5本の指に入ります。ほかの大規模な商会のほとんどは王都を活動拠点としており、地方への進出にそこまで積極的ではないのですが、アスラン商会は各地方の全中枢都市に支部を置いていて、そのネットワークを積極的に活用したビジネスを展開しています。
 もともと、アスラン商会はヤナダーグ・プラト地方の小さな奴隷商を前身としており、そこから王都までの交易ルートをいち早く確立しました。当時、それだけの長距離交易をひとつの商会だけで行うのはかなりのリスクを伴うものでしたが、それが功を奏し、アスラン商会は国内最大級の商会にまで成長をとげています。

アゼル:
 なるほど。これはなかなかいいところに就職することになるのかもしれないな。ほかには、何か悪い噂とか聞かなかったか?

GM:
 うーん……。悪評というと、「アスラン商会から借りた金を返せずに店を畳んだ店も少なくない」とか「奴らは金のためなら何でも商売にしやがる」とか「どんなに金を持っていようが、所詮あいつらは奴隷商だ」とかですかね。

アゼル:
 ふむ。だが、この国じゃ奴隷は奴隷で優遇されてて、むしろ裕福な生活を送ってる奴もいるんだろ?

GM:
 奴隷はそれを従える主人にとってのステータスシンボルですからね。いい主人に買われれば、良い生活を送り、良い教育を受けることもできます。まあ、なかには奴隷をモノ扱いする主人もいるでしょうが、それは人それぞれですよ。
 さて、アゼルの行動はアスラン商会に関する情報集めをするだけで終了ですか?

アゼル:
 そうだな。ある程度話を聞いたら宿屋に戻る。

GM:
 では、アゼルは宿屋に戻る途中で、港方面から総督府に向けて歩いて行く物々しい集団を見かけました。彼らの身につけている装備から、アゼルはその一行がヤナダーグ・プラト総督府付きの騎士団であることがわかりました。どうやら、ユセフの働きかけによって、対バリス教団のために援軍が駆けつけてくれたようです。

アゼル:
 ふむ……。

GM:
 特に何もしないのであれば、翌日まで時間を進めてしまいますがよろしいですか?

アゼル:
 あ、宿屋に戻ったら、寝る前にひとつやっておきたいことがある。明日になればサブリさんの件も一段落つきそうだし、このタイミングでギュリスから渡されていた手紙を読むことにする。それによって今後の行動方針が決まるかもしれないしな。

GM:
 お、いよいよそれに手をつけるときが来ましたか。了解です。


GM:
 では、アゼルは宿屋に戻ってきました。イーサとエルドは精神点を回復させるために就寝中ですね。

アゼル:
 それじゃあ、手紙を読むとするか(と言って以前GMから渡された手紙の封を開けようとする)。

GM:
 あ、ストップ。その封を開けたら、後戻りできませんからね。あと、せっかくなので、それを読むときはほかのプレイヤーにも聞こえるように音読してください。

アゼル:
 お、そうなのか。了解した(そう言って封を開けると手紙を読み始める)。
「『単純馬鹿なアゼル・クルトへ……。念のため確認するけど、約束通り、やるべきことがすべて片付いたあとでこれを読んでるんでしょうね? もしそうじゃないなら、今すぐ読むのをやめなさい。そして、いっぺん死んでしまえ!』……って、相変わらず辛辣だな(苦笑)」

 ここからはギュリスのイメージを添えて、中の人はアゼルでお送りいたします。

ギュリスの手紙(アゼル):
「――さて、とりあえず調子はどう? セルピルさんのお仲間は無事に救出できた? あと、あたしたちと別れてから何か心境に変化はあった? できれば、こんな手紙なんて読まずに、あなたが自ら気づいてくれるのが一番なんだけど、あまりのんびりしている余裕もないだろうから、お節介だとは思うけれど手紙を書いておくよ……」
(手紙の1枚目をめくる)
「まず質問。あなたは、イスパルタを離れてからニルフェルがずっと苦しんでいたことに気づいていた? ニルフェルは、旅の途中でやけに陽気に振る舞ってみたり、食事会を催してみたり、ヤウズ王子のことを語るファジル様の言葉に聞き入っていたり、あと、ファジル様にはフェザ先生のことを詳しく教えてくれるように頼みこんだりもしていたよね。似たような立場にあったあたしには、ニルフェルが何を思ってそんなことをしていたのか何となくわかったけれど、一番近い場所にいたはずのあなたは、そんな彼女の気持ちに微塵も気づいていなかったんでしょう? なにせ、あなたは自分のことにしか関心がないものね」

アゼル:
(手紙の2枚目をめくりつつ)結構長いな(笑)。

ギュリスの手紙(アゼル):
「だから、サブリの護衛もあっさり辞めることができたし、その後、彼らのことを気に掛けることもなかった。普通、一度でも命懸けで助けたいと思った相手に対して、そこまで無関心にはなれないよ。要するに、あなたは正義漢を気取ってただ自己陶酔に浸っていただけだった。サブリのことだけじゃないよ。あなたは何かにつけてほかの人の考えを無視して、自分の意見を周りに押し付けてばかりいた。周りの人のことを本当に仲間だと思っているなら、少しくらい意見を求めてくれてもよかったのに、いっつも事後承諾。いつまでもそんなことを続けていたんじゃ、次第にあなたのことを本当に思ってくれている人はあなたのそばから離れていっちゃって、最後にはあなたのことを都合よく利用したい人だけしか残らなくなっちゃうよ? たとえあなた自身がそれで構わないと思っていたとしても、それじゃ、あなたのことを心の底から頼りにしてるニルフェルはいったいどうなっちゃうの?」
(手紙の3枚目をめくる)
「わたしが思うに、あなたはもう少し人の気持ちってものを考えてみるべきだね。ほかの人が何をして欲しいと思っているのか、何をして欲しくないと思っているのか、一度よく考えてみなさい。そうすれば、きっとこれまでよりはちょっとましなアゼルになれるんじゃない? それで、もしあなたが人と真正面から向き合って、その人のことを考えてあげられるようになったなら、そして、ニルフェルにかけてあげられる言葉が見つかったなら、そのときはイルヤソールまでいらっしゃい。それまでニルフェルのことは大切に預かっておくから。宮廷作法のさわりくらいなら、あたしや叔母様でも教えてあげられるし、フェザ先生からは教えてもらえないような女子教育を1ヶ月かけてみっちりと叩き込んであげる。このあたしがここまでしてあげるんだから、せいぜい感謝しなさいね! ――ギュリス・イスパルタより」

シーン外のエルド:
 ギュリスさんの先見の明はすばらしいですね。まさに指摘通りの状況となっています(苦笑)。ですが、手紙を読むのが遅すぎました。そして、イーサさんのこの泣きっぷり。手紙の途中からマジ泣きしてましたね(笑)。

 そう言うエルドの隣で、イーサが泣いていました。

シーン外のイーサ:
 ……いや……手紙を渡された時点でだいたい想像はついていたんだが、あらためて読み上げられると、ちょっとな……。ギュリス嬢は、アゼルに人として成長したうえで、ニルフェルのことを迎えに来てほしくて、この手紙を書いたんだろうけど、それが、こんなことになっちまって……。グスッ……グスッ……。どこかで、俺がアゼルの暴走を止められていれば……。グスッ……。ちょっとストップ。ティッシュを取ってくれ。

 GMの想定していた泣き所はここじゃなくて、これを踏まえたうえでアゼルとニルフェルが再会を果たしたところになる予定だったのですが、どうにもイーサの琴線に触れてしまったようです。ただし、どちらかというと、情けなくて涙がでるといった感じのようですが(苦笑)。

アゼル:
 ……よし、つまりイルヤソールに行けばニルフェルと合流できるんだな。だったら、サブリさんを見つけて契約をすませたら、次に目指すはイルヤソールだ。それじゃ、手紙を仕舞って朝まで寝ることにする。

GM:
 了解です。では、睡眠をとることになるので、アゼルは目標値11の夢イベント判定を行ってください。

アゼル:
 この流れだったら、そろそろ成功するだろ。(コロコロ)うりゃッ! 7で失敗(笑)!

シーン外のイーサ&エルド:
(笑)

シーン外のエルド:
 きっとアゼルさんの深層心理が、そのイベントの発生を拒んでいるんですよ。

アゼル:
 いやいや、これはダイス目のせいであって俺のせいじゃない(笑)。

 こうして通算11回目の夢イベント判定に失敗したアゼル。9以上のダイス目で成功する判定なので、11回連続で失敗する確率はおよそ3パーセント。それを潜り抜けてきたのですからある意味たいしたものです(笑)。


GM:
 では、何事もなく翌日の朝を迎えました。

エルド:
 さて、今日はこれからどうしますか?

イーサ:
 そうだな。まずはタルカンさんに会いに行くべきなんだろうが……。うーん……。
(なにやら悩みはじめる)

GM:
 もし悩んでいることがあるなら、ほかの人に相談してみたらどうですか?

イーサ:
 じゃあ、タルカンさんのところに向かう前に、思いの丈だけは言っておこう。
「アゼル。お前、本当にアスラン商会に入るつもりなのか?」

アゼル:
「ああ。ほかに方法が思いつかないからな」
 ほかの方法が見つからない限りは引き返せない。

イーサ:
「アスラン商会に入らなくても、たとえば王直属兵になれば借金を返済できるんじゃないか? それなら、間接的にニルフェルを守ってやることもできるだろうし……」

アゼル:
「それは、王直属兵になれればの話だろ? なれるかどうかはわからない。だから、確実な方法を選んだんだ」

GM:
 こんなところにもアゼルの打算的思考が(苦笑)。

イーサ:
「……なるほど。たしかにそんな考えでいるんじゃ王直属兵にはなれそうもないな。何としてでも王直属兵になってやる、ってくらいの気概すら持てない奴が採用されるほど甘くもないだろう……」

アゼル:
「……」

イーサ:
「正直言って、俺には今回のサブリの借金を肩代わりするって話が誰かのためになるとは思えない。たしかに、サブリは借金を肩代わりしてもらったことで一時的に喜ぶかもしれないが、本当にそれがあいつのためになるのか? クルト氏族の人たちにとってはどうだ? お前の勝手な判断で、彼らを苦しめることになるんじゃないか?」

アゼル:
「だったら、お前はサブリさんのことを見捨てろとでもいうのかッ!?」

イーサ:
「借金を肩代わりしなかったからといって、それがサブリを見捨てるということとイコールにはならないだろ? たとえば返済期限を延ばしてもらうとか、別の融資先を見つけるとか……。きっと、何かほかにいい方法があるはずだ。違うか?」

アゼル:
「それは……」
(しばらく考えてから)
「……たしかに、サブリさんを助けても、ほかの人間を不幸にしていては意味がない……か……」

イーサ:
「お前は一本気なところがあるからな。一度そうと決めたらなかなかそれを曲げられないのかもしれないが、もう少しだけ考えてみてくれ。ひとまず、サブリを探して話をしてみよう。どうするかを決定するのはそれからでもいいはずだ」

アゼル:
「……わかった。もう少し考えてみようと思う……」

エルド:
 イーサさんの勢いに負けて、アゼルさんが思いっきり折れる格好になりましたね(笑)。

アゼル:
 うむ。いまさらながら、20万金貨の借金を肩代わりするってことのヤバさが認識できてきた……(苦笑)。

GM:
 いやいや、そこは最初から気がついておきましょうよ(苦笑)。一般人には、人生のすべてをつぎ込んでもなお完済できないレベルですからね。

アゼル:
 まあそうなんだろうが、あまりにも現実味のない金額だったから実感が湧かなかった(笑)。


GM:
 では、あなたたちは朝の7時ごろにタルカンの別宅へと足を運びました。タルカンは昨日と同じ執務室であなたたちを出迎えます。

イーサ:
「……それで、総督府との交渉はどうなったんですか?」

タルカン(GM):
 イーサが話を切り出すと、タルカンは次のように答えます。
「どうも、アナタたちが想像していたとおり、ムヴァーシェは毒殺されたらしいわね。遺体には外傷がなかったんじゃないかってカマをかけてみたら、とてもわかりやすい反応を返してくれたわ。それで、アナタたちが教えてくれた情報と引き換えに、なんとかアスラン商会の隊商を街の外に出させてもらえることになったのだけれど、隊商の規模だとか通行可能な市門だとかの制限はつけられちゃった。まあ、まったく外に出られないよりはましだけれどね。そういうことだから、アナタたちのことは隊商の人員として外に出してあげられることになったわ。とりあえず、今日のところは3つの隊商を街の外に出すつもり。第1市壁の中央門を抜けるのはこれから1時間後、第2市壁は東門を抜けるのがお昼ごろになる予定よ」

アゼル:
「……ってことは、第1市壁の外に出てから昼までの間に、サブリさんを見つけてこなくちゃならないってことか……」

エルド:
「4時間程度しか猶予がありませんね……」

GM:
 今日中にクゼ・リマナの外にでるつもりならそういうことですね。

タルカン(GM):
「さてと……。それじゃ、アナタたちの準備が整っているなら、さっそくアスラン商会に向かって街を出る予定の隊商と合流したいのだけれど、構わなくって? そのあとは、すぐに中央門に向かうわよ」

イーサ:
「ええ。お願いします」


 この後、タルカンの別宅をあとにした一行は、アスラン商会で隊商と合流し、そのまま中央門まで向かいました。そして、厳重な荷物検査および身体検査を受けたうえで、ようやく第1市壁の外に出ることが許されます。こうして、一行が中央門の外に出られたのは、午前8時を回ったころのことでした。

タルカン(GM):
 中央門をくぐったところで、タルカンはあなたたちに対して、「ワタシは隊商を街の外に出すための手続きで東門にいなくちゃならないから、サブリのことを見つけたらそこまでいらっしゃい」と告げます。

アゼル:
「わかりました」
 じゃあ、さっそくその辺から片っ端にサブリさんのことを探していくとするか。

エルド:
 いやいや、せめて最後に目撃したところに行って、その後の足取りを追ってみるくらいのことはしましょうよ(苦笑)。

イーサ:
 そうだな。それじゃ、まずはサブリと別れた貧民街の屋敷跡まで行ってみるとしよう。

GM:
 了解です。では、あなたたちは中央門をあとにすると、貧民街の屋敷跡へと足を運んだのでした。




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