LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第7話(13)

 チルキンジュ村の村人たちからの依頼を断ったアゼルは、北方の交易都市ラカレットに向かう隊商を見つけ、彼らのあとについて北上することにしました。そして、明日の出発に備え、アゼルは黙々と旅路の準備を進めていきます。

GM:
 それではアゼルが買い物を終えて、宿屋……の馬小屋に向かって歩いているところへと場面を移します。ここで《ランド・ウォーカー技能+知力ボーナス+2D》の判定を行ってください。目標値は10です。

アゼル:
(コロコロ)11で成功。

GM:
 ならば、雑踏を歩いていたアゼルは、少し離れたところを見覚えのある人物が横切ったことに気がつきました。それは、あなたがこの宿場町を訪れた日に懲らしめた、あのゴロツキたちのひとりです。

アゼル:
 ああ、あいつらか。ぱっと見どんな様子なんだ?

ゴロツキ(GM):
 ゴロツキは何かを探すように周りをキョロキョロ見渡しています。

アゼル:
 ふーむ。……ここは、また悪さを働かないか調べるために、あとをつけてみるか。

GM:
 アゼルが“追跡”ですか……。いいでしょう。では、追跡判定の目標値ですが……。
(ゴロツキのデータを確認して)
 あ、やっぱりいいです。スカウトやハンター技能を持っていないアゼルには、判定の余地がありませんでした。

ゴロツキ(GM):
 アゼルがゴロツキの足取りを追おうとすると、ゴロツキはすぐに追跡者の存在に気がつき、突然背後を振り返りました。そしてあなたの顔を確認するや否や、驚いた顔をしてダッシュで逃走します。

アゼル:
 逃走した!? 怪しい。追いかけるぞ。
「オイッ! 待てッ!」

GM:
 いまのアゼルの実質敏捷度はいくつですか?

アゼル:
 鎧をつけてないから、実質敏捷度は14だな。

GM:
 なるほど……。では、アゼルは徐々にゴロツキとの距離をつめていき、やがて追いつきます。

アゼル:
 うしろから掴みかかって引きずり倒す。

GM:
 了解です。まあ、ここは判定しなくてもいいでしょう。アゼルはゴロツキを抑え込むことに成功しました。

アゼル:
「貴様、なぜ逃げる!」

ゴロツキ(GM):
「テメェこそ、なぜ追いかけてきやがった!?」

アゼル:
 そりゃそうだ。当然の疑問だな(笑)。
「貴様が怪しい動きをしてたからだ。なにをキョロキョロしていた? まさか、また悪さをしようとしていたんじゃないだろうな!?」

ゴロツキ(GM):
「オレがなにをしようがテメェには関係ねぇだろうが! ……と言ってやりたいところだが、せっかくだから教えてやる。オレはテメェのことを探していたのさ!」

アゼル:
「俺のことを探していた? どういうことだ?」

ゴロツキ(GM):
「テメェには恥をかかされたからな。その分の礼をしてやろうと思っていたのよ」

アゼル:
「なるほどな。じゃあ、二度とそんなこと考えられないようにここで痛めつけてやろうか」

ゴロツキ(GM):
「まだなにもしてねぇうちから暴力で黙らせようってか。いいぜ、やれるもんならやってみな。このクズ野郎! その分、報復するときの楽しみが増えるってもんだ!」

アゼル:
 ふむ……。さすがに先に手を出すのはまずいか? だが、こういう奴は力ずくでわからせてやったほうがいいかもしれないしなぁ……。

ゴロツキ(GM):
「だいたい、オレたちはただ店の給仕に酒をついでもらおうとしただけだっていうのに、あんなヒデェ目にあわせやがってよ!」

アゼル:
 ……たしかに、思い返してみれば、こいつらってそんなに悪さしてたわけじゃないのか(苦笑)?

ゴロツキ(GM):
「おかげで、オレたちはここら辺じゃいい笑い者だ。だからよぉ、その恥をすすがせてもらうぜ」

アゼル:
「恥をかいたのは、おまえたちが弱いせいだ。鎧をつけていない奴ひとりに、3人がかりで挑んで負けたおまえたちが悪い」

ゴロツキ(GM):
「ああ、そうだな。負けた奴が悪い。勝った奴が正しい。だがな、そういうテメェも、すぐに力の差ってやつを思い知ることになるだろうさ!」

アゼル:
 ん? なんか、いやな台詞だな……。しまったな、追いかけてこなければよかった……。こいつはこのまま殺しておいたほうがいいか?

GM:
 あ……。一応、いま普通に街中ですからね。遠巻きにあなたたちのことを見ている人もいますよ。

ゴロツキ(GM):
「クソッ! いつまでこうしてるつもりだッ!? いいかげんに放しやがれッ!」そう言ってゴロツキはもがきます。

アゼル:
 そうは言われても、ここで逃がしてしまうのは得策じゃないような気もするが……。
(しばらく考えてから)
 ……ま、いいか。ゴロツキのことを乱暴に引きずり起こして、「行けッ!」と言って突き飛ばした。

ゴロツキ(GM):
 では、ゴロツキは数歩距離をとってからアゼルのことを指さして、「待ってろよッ! すぐにオレたちに盾突いたことを後悔させてやるからなッ! 臆病風に吹かれて、逃げるんじゃねぇぞッ!」と啖呵を切って、その場を去って行きました。

アゼル:
 逃げるつもりはないが、明日になったらここから出発するからな。来るならそれまでに来いよ(笑)。

 こうして、ゴロツキから報復宣言を受けると、アゼルは急いで宿屋へと戻りました。


アゼル:
 宿屋の馬小屋まで戻ってきたら、いつ襲われてもいいように装備を整えておく。

GM:
 了解です。ほかにすることがなければお昼過ぎまで時間を進めてしまいますが、それまでに何かやっておきたいことはありますか?

アゼル:
(少し考えてから)
 じゃあ、せっかくだし、出発の前にちゃんとしたメシを食っておこう。こう毎日保存食だけを食べ続けていると、さすがに飽きがくるだろうからな。以前使った安宿に行ってメシを食うことにする。

GM:
 では、食事をとるためにアゼルが安宿に入って行くと、給仕の娘がその姿を見つけて声をかけてきました。

給仕の娘(GM):
「あ、アゼルさん! いらっしゃいませ!」

アゼル:
 あれ? 俺、名乗ったっけ?

GM:
 いえ、名乗ってはいなかったと思いますよ。ですが、サイエが何度かアゼルの名前を口にしていましたからね。おそらく、給仕の娘はそれを耳にして覚えていたのでしょう。

アゼル:
 なるほど。

 ……というか、アゼルはすでに一度この宿屋に泊まっているのですから、宿帳に書かれた名前をみれば一発でわかったことですね。まあ、どちらにしても、給仕の娘はアゼルに興味津々だったということです。

アゼル:
「すまない。昼メシを食いに来たんだが」

給仕の娘(GM):
「はい、ご利用ありがとうございます! こちらのカウンター席をお使いください」そう言って、彼女は笑顔で接客してくれます。おまけに、ドリンクまでサービスしてくれました。

アゼル:
「ああ、すまないな」
 金欠だからありがたい。

GM:
 そうやって、あなたが久しぶりにまともな食事を楽しんでいると、荒々しい音を立てて安宿の入り口の扉が開かれます。そして、そこから4人の男たちが入ってきました。先頭に立っている金属鎧を身につけた男は初めて見る顔ですが、ほかの3人はあのゴロツキたちです(と言って、金属鎧の男のイラストを提示する)。

金属鎧の男(GM):
 金属鎧の男は入り口付近で仁王立ちすると、店の中を見渡しつつ、ゴロツキたちにこう問いかけました。
「お前たちに恥をかかせた奴はどいつだ?」

ゴロツキ(GM):
 すると、そのうしろに付き従うゴロツキのひとりが、アゼルのことを指さして、「アブドラさん、アイツですよ。あのカウンター席でメシを食ってる野郎です」と答えます。

アゼル:
 取り巻きの台詞はいかにも三下っぽいな。それに、リーダーらしい奴もゴリラ顔でお山の大将って感じだ(笑)。

GM:
 顔つきはゴリラっぽくても、その身体付きはアゼルほど筋肉質ではないようですよ。

アブドラ(GM):
 アブドラと呼ばれた金属鎧の男は、アゼルのことを確認すると、ゆっくりと近づいてきました。

アゼル:
「俺になにか用か?」

アブドラ(GM):
「……聞いたところによると、オレの仲間たちに随分と恥をかかせてくれたらしいじゃねぇか」

アゼル:
 ムッ! こいつ、仲間って言いやがった……。手下とか言ったら、手下のしつけもできないのかって言ってやろうと思ってたのに……。

 あいかわらず、他人を下げることで自分を上げようとするアゼルでした(苦笑)。

アゼル:
「悪いのは店に迷惑をかけたお前の仲間たちのほうだ」

アブドラ(GM):
 アゼルがそう言うと、アブドラはカウンターの奥にいる安宿の主人へと視線を向け、「この兄ちゃんの話によれば、オレの仲間がアンタの店に迷惑をかけたらしいんだが、アンタもそう思うかい?」とドスを効かせた声で問いただします。

安宿の主人(GM):
 すると、主人は真っ青な顔をして、「い、いいえ、滅相もございません! 皆さま、お酒を楽しまれていただけで、迷惑だなんて、決してそのようなことは……」としどろもどろに弁明しました。

アブドラ(GM):
「そうか、そうか。だったらいいんだ」アブドラは薄ら笑いを浮かべてそう言うと、ふたたびアゼルへと視線を向けます。
「どうやら、オレの仲間たちが店に迷惑をかけてたっていうのは、兄ちゃんの勘違いだったらしいな……」

アゼル:
 なるほど、そうきたか。さて、どうしたもんか……。
(しばらく悩み始める)

アブドラ(GM):
 アゼルが黙っていると、アブドラはこう続けます。
「まあ、きっかけは勘違いだったのかもしれねぇが、オレの仲間が恥をかかされた事実にかわりはねぇ。そして、仲間の恥はオレの恥でもある。なら、このまま黙って見過ごすわけにはいかねぇよな……。そこでだ……。キサマに決闘を申し込む」

アゼル:
 なぬ? 決闘?

ゴロツキ(GM):
 そうすると、取り巻きのひとりが、「アブドラさん、決闘なんて生ぬるいこと言ってないで、全員でコイツをボコボコにしちまいましょうよ!」と言って鼻息を荒くします。

アブドラ(GM):
 しかし、そんな声にもアブドラは、「オマエは少し黙っていろ。正々堂々と戦ってこそ、恥をすすげるってもんだ。ここは1対1の決闘で白黒つけようじゃねぇか」と言います。

アゼル:
 正々堂々……だと? なんだこいつ? 怪しい……。怪しいぞ。

給仕の娘(GM):
 給仕の娘が、アゼルの袖を引っ張って耳元でこうささやきます。
「アゼルさん。やめておいたほうがいいですよ。このアブドラという人は、“騎士狩り”の異名を持つほどの腕の立つ傭兵なんです」

GM:
 “騎士狩り”の異名を聞いたところで名声知識判定を行ってください。目標値は11です。

アゼル:
(コロコロ)13で成功。

GM:
 では、アゼルは“騎士狩り”のアブドラについて、次のような噂を耳にしたことがありました。
 平定戦争後、地方で起きる反乱の鎮圧戦などに傭兵として数多く参加していたアブドラは、あるとき友軍の騎士と口論になり、激高した騎士から決闘を申し込まれたのですが、逆にその騎士を返り討ちにしてしまいました。その決闘で騎士と戦うときのコツをつかんだのか、それ以来アブドラは戦場でも好んで騎士階級の首を多くとるようになり、やがて“騎士狩り”と呼ばれるようになりました。
 現在は傭兵としての働き口も激減したため、数人の取り巻きを従え、メーメット街道周辺の宿場町でミカジメ料を徴収したり、隊商の護衛を務めたりすることで利益を得ているようです。

アゼル:
 たしか、いまの俺の実力って騎士レベルなんだよな?

GM:
 そうですよ。下級騎士とだったら対等に渡り合えるはずです。基本能力値が通常よりも高いことや“可能性”が使えることなどを考慮すると、対等以上だと言ってもいいかもしれません。

アゼル:
 そうか……。それじゃ、アブドラの力量を推測してみる。(コロコロ)

GM:
(ダイスの目を確認して)
 ふむふむ。では、アゼルがアブドラの動作を観察してみたところ、どうやらアブドラはアゼルと同等の実力を有しているように思えました。

アゼル:
 ふむ……。

アブドラ(GM):
「どうした? いまになって怖気づいたか? もし痛い目にあうのが嫌だっていうなら、この街の連中の前で土下座して詫びてもらおうか。粋がってしまい申し訳ございませんってな。そこまでするっていうんだったら、今回は若気の至りってことで許してやっても構わねぇぞ。オレも悪党ってわけじゃねぇからな」

GM:
 昼飯を食べるために安宿を訪れていたほかの客たちは、アゼルがどのような返答をするのか、その動向にくぎ付けになっています。

アゼル:
 どうしたもんかな……。ゴロツキと戦ったときみたいに、いいダイス目が続くとも限らないしなぁ……。
(しばらく考えてから)
 ……いや、だが、ここは受けて立とう。大きく出てやる。強気でいくぜ!
「手加減はできないが、いいのか?」

アブドラ(GM):
 その言葉に、アブドラはにんまりと笑みを浮かべます。
「もちろん手加減無用だとも……。覚悟が決まったなら、武器を持って表に出ろ」

アゼル:
 それじゃ、剣を手に取って宿屋の外にでる。しかし、大きく出てみたものの、これで返り討ちにあったら格好悪いな(苦笑)。

GM:
 さて、どうなるでしょうね? 一応、身体能力ではアゼルが勝っているようですよ。

アゼル:
 俺の場合、ダイス運が極端だからなぁ……。ここは意地を通すために“可能性”を奮発するか。しかし、こんなところで決闘する羽目になるとは、なんともおかしなことになってきたもんだ。

 こうして、アブドラからの決闘の申し出を受けることにしたアゼル。はたして“騎士狩り”の異名をもつアブドラを返り討ちにすることはできるのでしょうか?




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