GM:
では、アブドラとの決闘から数時間後。昏倒状態から回復したアゼルは、寝台の上で見知らぬ天井を見ることになります。
アゼル:
今度は、見知らぬ、天井……か(笑)。
GM:
最低限の手当てはしてあるので、傷チェックを外して生命点を1点にしておいてください。目を覚ましたアゼルの視界には、天井のほかに、濡れタオルを固く絞ってあなたの頭部へ置こうとしているサイエの姿が目に入りました。
アゼル:
「……サイエ……?」
サイエ(GM):
「あ、アゼルさん。気がつきましたか。よかった……」
アゼル:
「……ここは?」
サイエ(GM):
「私が泊まっている部屋ですよ。宿屋の主人に無理を言って、あなたをこの部屋で休ませてもらうことにしたんです。ここまであなたを運んでくるの、たいへんだったんですよ?」
アゼル:
「そうか……。いろいろと面倒をかけてしまったみたいですまない……」
サイエ(GM):
「まったくです」そう言ってサイエはわざとらしくため息をつきました。
「まあ、それはさておき、ずいぶんとたいへんな目にあったみたいですね。ことの成り行きを見ていた人からだいたいの事情は聞きましたが、あの“騎士狩り”のアブドラと一戦交えたそうじゃないですか」
アゼル:
「ああ。完膚なきまでにやられてしまった……」
サイエ(GM):
「どうやら、先日あなたが懲らしめた連中はアブドラの取り巻きだったみたいですね」
アゼル:
「そのようだ」
サイエ(GM):
「だから、むやみに首を突っ込むべきではないと忠告したのです。この世の中、一見して全容が測れるものなどそうそうありはしないのですから。触らぬ神に祟りなしですよ」
アゼル:
「ほんとうに、そうだな……」
サイエ(GM):
「しかし、それでも命に別状はなかったようでなによりです。いまあなたに死なれてしまったら、借金の取り立てがますます困難なものになってしまいますからね」
アゼル:
俺のことよりもそっちの心配をしてたのかよ(苦笑)。
そういえば、身ぐるみ剥がされたことはこの段階になってはじめて気がつくのか?
GM:
そうですね。
アゼル:
「……俺の剣は?」
サイエ(GM):
「あなたが倒れていたあたりには見当たりませんでしたよ。私が発見したときあなたが身に付けていたのは、衣服のほかにはそこにおいてあるチェイン・メイルだけでした」そう言って、サイエはテーブルの上に置かれているチェイン・メイルへと目を向けます。
アゼル:
「全部、あいつらに持っていかれちまったのか……」
茫然としている。はたして、こんなんで王直属兵になんてなれるんだろうか?
GM:
まあ、設定上アゼルは実戦経験が少ないために実力を発揮しきれていないということになっているので、場数を踏んでいけば短期間で今以上に強くなれることは間違いないですよ。もう、戦闘レベル4も目前ですしね。
サイエ(GM):
「さて、明日の出発の件はどうしましょうね。その怪我では、出発は延期したほうがよいでしょうか?」
アゼル:
そうだなぁ……。うーん。
「すまないが、傷が癒えるまで、しばらく休ませてくれ……」
サイエ(GM):
「そうですね。無理はしないほうがいいでしょう。ですが、できる限り早く出発できるように、私も白魔法の使い手がいないか探してみますよ。魔法で傷を癒してもらえば、すぐに動けるようになるはずです」
アゼル:
「あ……。いや、それがどうやら金も持っていかれたようで、白魔法使いを見つけたとしても、傷を治してもらうことに対する礼金すら払えない状態なんだが……」
サイエ(GM):
「……しかたありませんね。それなら、その礼金は私のほうで立て替えておきますよ。あくまでも個人的な貸しということで。無一文ではなにかと困るでしょうからね」
アゼル:
「すまない……」
さらに借金がかさむな(苦笑)。
サイエ(GM):
「いえいえ、あとでしっかり返済してもらえれば構いませんよ。では、さっそく探しに行ってきます。この街に来ている隊商の護衛を総当たりすれば、ひとりくらい白魔法を使える者を見つけることもできるでしょう」そう言って、サイエは部屋から出て行きました。
GM:
さて、部屋にひとり残されることになったアゼルはどうしますか?
アゼル:
うなだれるしかないな(苦笑)。ついでに、このタイミングで聖印が奪われていることにも気がついた。
イーサとエルドがいなくなったところで、これ以上のどん底はないだろうと踏んでいたんだが、まさかそこからさらに突き落とされることになるとは……。さて、これからどうしたもんか……。
GM:
では、数時間が経過したところで、サイエが部屋に戻ってきました。
サイエ(GM):
「アゼルさん! よかったですね。白魔法を使える方が見つかりましたよ!」そう言いながら、サイエは傭兵らしき格好の男性を連れて部屋に入ってきます。
アゼル:
ちなみに、礼金ってどれくらい払えばいいんだ?
GM:
通常、白魔法を施してもらうためのお布施は「消費精神点×使用魔法レベル×使用者レベル×50銀貨」となるので、今回は“キュア・ウーンズ”1回あたり100銀貨になります。
アゼル:
なるほど。じゃあ、これでサイエへの個人的な借金は100銀貨になるわけか……。
GM:
ん? 生命点を全快させなくていいんですか? 1回100銀貨なので、全快するためには数百銀貨かかることになると思いますよ。
アゼル:
あ、そうか……。
GM:
では、回復判定は自分で行ってください。さすがに自動失敗や回復量が0点だった場合は請求されないので、それは省いていいですよ。
アゼル:
了解。(コロコロ)5点、2点、7点、4点。400銀貨で全快した。
サイエ(GM):
そして、その費用はサイエが立て替えました。
アゼル:
さすがにここまで世話になったし、サイエさんにはしっかり敬語を使うようにしよう。
GM:
ようやくですか(苦笑)。
アゼル:
「ありがとう、サイエさん。いろいろと面倒をかけてしまって……」
サイエ(GM):
「おやおや。どうやら今回の件で、やたらと高かった鼻っ柱も折れてしまったようですね」
アゼル:
さすがに、これだけのことがあればな(苦笑)。それに、目付け役とはいえ、サイエさんは意外にいい人みたいだし。
「あなたは俺の恩人だ」
サイエ(GM):
「なあに。貸した分はしっかりと返してもらいますから、気にしないでください」
アゼル:
「ええ、当然必ず返します」
サイエ(GM):
「それはそうと、怪我は癒えたようですが、これからどうしますか?」
アゼル:
(少し考えてから)
ここは恥の上塗りになるが仕方ない。
「すみませんが、武器を買うお金を貸してもらえませんか?」
サイエ(GM):
「……武器の購入ですか……。まあ、どうしても必要だというのであれば貸さないこともありませんが、私の財布の中身にも限りがありますから、手頃なものにしてくださいね」
アゼル:
「はい。それはもちろん。いやぁ、本当になにからなにまで――」
サイエ(GM):
「ですが、私が確認したかったのはそういうことではなく、明日の出発を見送るのか見送らないのかということですよ」
アゼル:
「あ……。そうですねぇ……。どうしましょうか……」
サイエ(GM):
「まあ、特別この宿場町でやることがあるというわけでもないのですが……。明日の出発でかまいませんか?」
アゼル:
「そうですね……」
父親と母親の形見を両方いっぺんに奪われてしまったが、もはや取り返そうという気も起きないな。そして、王直属兵に志願する気力も失せそうだ……。こんな状態で、いったいどんな顔してニルフェルと再会すればいいんだ?
GM:
(苦笑)
サイエ(GM):
「では、明日出発するということで、最低限の装備だけでも買いに行きますか」
アゼル:
「よろしくお願いします……」
なんだか、俺、惨めだな。惨めすぎる(笑)。
こうして、サイエと共に街に出たアゼルは、武器屋でバスタード・ソードを購入しました。ただし、小さな武器屋にはアゼルの振りなれた重さのバスタード・ソードは売っておらず、以前よりも小ぶりな必要筋力値14のものを購入することになりました。