LOST ウェイトターン制TRPG


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宮国紀行 第7話 ティータイム

 はい、そんなこんなで、第7話「間違ったことなんかしちゃいない!」はまさかのミッション失敗となりました。それも、ミッションに挑戦したうえでクリア条件を満たせなかったわけではなく、放棄するという形で。これは、なかなか珍しいケースではないでしょうか? 少なくともわたしは、このような形で終わるリプレイを読んだことがありません。まあ、解決すべき問題を途中放棄されてしまっては読み物にならないので、当然と言えば当然ですが(苦笑)。

 今回は、GMから提示された2つのミッションをアゼルが拒んだことでミッション失敗となったわけですが、そのことについて、わたし個人としてはよい経験ができたなと肯定的に受け止めています。というのも、TRPGはその自由さを特長として語られることが多いわりに、GMが準備してきたシナリオをプレイするという大前提があるため、PCたちは望みもしないミッションを強要されるということが往々にしてあるからです。

 通常であれば、参加者はあれこれと理由をつくって、依頼を引き受け、解決していく方向へと話を持っていくわけですが、それを堂々と拒否できる自由を与えられるのであれば、それに越したことはありません。もちろん、GMが快くそれを許せばの話で、ひとつのシナリオを制作するにあたってのGMの苦労を想像すると、そんなことはとても推奨できませんが(苦笑)。

 さて、肝心のミッションが放棄されてしまったため、話としては用意していたものの半分くらいのボリュームとなってしまったわけですが、それでもこの第7話は語るべき部分が多い内容となりました。思いつくところを順に追っていきたいと思います。

 まずは、冒頭にあったバリス教団幹部であるレヴェントによるビューク・リマナ総督ムバーシェの暗殺。PCたちはその重要性が把握できていないのか、結構あっさりとスルーしていますが、これはとてつもない大事件です。ファンタジー世界を舞台にした物語ではつい考えがちな、転移や飛行、姿を消す魔法などが存在すのであれば、元首クラスの人物を簡単に殺せてしまうのでは……ということをそのままやっています。これを可能とした場合、絶対王政の国家では致命的な問題となり、戦争のあり方ががらりと変わってしまいます。このような事態に対して、今後世界的にどのような対策が取られていくことになるのか……というところが見どころのひとつです。

 続いて、タルカンの再登場。相変わらず濃いキャラクターです(笑)。今回、タルカンはイーサの父ベルカントとの関係を語ってくれました。第3話で用意した伏線が無事に回収できたことで、わたしもホッとしました。このエピソードが語られたことで、イーサが物語の本流にぐっと押し上げられました。はたしてイーサは主人公として輝くことができるのでしょうか?

 そして、大きなターニングポイントとなったのがサブリの借金問題です。どうも、アゼルは借金を肩代わりすることの意味をよく考えず、うわべだけの判断で動いてしまっているようにみうけられました。結果、より多くの人を不幸にする種をまいてしまいます。あえて浅はかなキャラクターを演じるつもりでやっているのであればそれでもかまいませんが、そうでなければ、もう少し深く考えてから行動したほうがよいでしょう。

 あと、イーサが思わず感涙していた、ギュリスからの手紙も印象的なシーンのひとつです。この手紙は第5話の冒頭でユセフの手からアゼルへと渡されたもので、実際にGMが用意した手紙をアゼルに渡していました。その内容をGMが語るのではなく、あえてアゼルに読ませることによって、狙い通りの臨場感を演出できたと思います。この手紙仕込んでいたときには、手紙を読んだアゼルが成長を遂げ、ニルフェルを迎えにきてくれることを期待していたのですが、アゼルがギュリスの忠告を聞き入れて成長できたかというと……。

 さらに、今回最大級の衝撃となったのがイーサとエルドの離脱でしょう。これまでPC同士であるからと安易に仲間意識を抱いていたアゼルでしたが、イーサとエルドはそれぞれの果たすべき目的を優先して、アゼルのもとを去って行きました。ちなみに、GMの視点から見る限り、彼らはこれまでのあいだ仲間としてのつながりを築いてこれていなかったと思います。唯一、イーサからのアゼルに対する言動に、多少仲間意識が感じられたくらいでしょうか。コメディタッチの物語を和気あいあいと楽しむセッションであればそれでもよいと思いますが、シリアスを基調とした内輪ノリで終わらせるつもりのないセッションにおいては、特別な理由がない限りPC同士の信頼関係をしっかりと作っておくべきでしょう。

 こうしてどん底まで落ちた(と、この段階では思っていた)アゼルでしたが、そのあとでようやく第5話から続けてきた夢イベント判定に成功し、ニルフェルとの約束を思い出します。ほかのシーンとは打って変わり、このシーンはとてもよくプレイできていたと思います。おかげで第2話冒頭にでてきたニルフェルの部屋の壁につけられていた傷が何であったのかも無事に回収できました。この夢イベントの終了直後、わたしには、かつての約束を思い出したアゼルがここから上昇気流に乗っていくのではないかという予感がありました。いよいよアゼル覚醒のときか!?……と、誇張なしにそう思ったものです。しかし、その先にまっていたのは、チルキンジュ村の村人を見捨て、アブドラに完全敗北し、両親の形見を奪われたまま逃げるように宿場町をあとにしたアゼルのうしろ姿でした……。どうしてこうなった(苦笑)。

 そのようなわけで、どん底だと思っていたさらにその下にまで落ちたアゼル。我が身可愛さに、両親の形見ともお別れです。この先、はたしてアゼルはどのような旅をして、どのような顔でニルフェルとの再会を果たすつもりなのでしょうか? もうわたしにも見当がつきません(苦笑)。まあ、なんとか物語として収まるように考えてはみますけれど……。

 さて、そして次回は、今回の話の途中でアゼルと別れたイーサとエルドのお話です。彼らはどのようにしてバリス教団の行方を追いかけて行くのでしょうか? これまでの冒険とは一味違った海洋アドベンチャーが彼らを待っています。

「野郎ども、持ち場につけ! 水平線まで突っ走るぞ!」




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