LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(01)

GM:
 はい。それでは、イーサ&エルド編を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。

イーサ&エルド:
 よろしくお願いします。

GM:
 イーサとエルドは第7話で途中退場となっているため、今回は経験点の配布などはありません。

イーサ:
 まあ、そうだろうな。

エルド:
 了解です。

GM:
 では、さっそく本編を開始します。時間はお昼を過ぎたころ。場所はクゼ・リマナの第2市壁東門付近ですね。

クゼ・リマナ市街地図

GM:
 あなたたちは、総勢20人程度のアスラン商会に所属する商人や護衛たちと共に、アゼルがクゼ・リマナを離れていくのを見送っています。その集団は、門を出たところで二手に別れ、一方は西アルダ街道を東へと、もう一方はメーメット街道を北上するため、クゼ・リマナ第2市壁の外周を逆時計回りに進んで行きました。

タルカン(GM):
 しばらくして一団の姿が見えなくなると、あなたたちのすぐそばにいたタルカンが声をかけてきます。
「それじゃ、ワタシは第1市壁内に戻るわね。商会か別宅のどちらかにはいるから、必要があればいつでも訪ねていらっしゃい」

イーサ:
「はい。なにかのときにはよろしくお願いします」そう言って、タルカンさんがいなくなるのを見送った。

タルカン(GM):
 タルカンはイーサの言葉にうなずき返すと、その場から引き上げていきました。

エルド:
「……さて、イーサさん。僕たちはどうしますか?」

イーサ:
「そうだな。なんとかして、バリス教団の足取りを追うための手がかりを探さないとな……」

エルド:
「手がかり……ですか……」

サブリ(GM):
 では、あなたたちがそんなことを話し始めたところで、サブリが――

エルド:
 あ、サブリさんもいたんですか?

GM:
 もちろんいますとも(笑)。サブリは市街に出ることもできませんし、宿も引き払ってしまったので、いまのところ行くあてなしの状態です。

サブリ(GM):
 その身に重くのしかかっていた借金がなくなったことで、サブリはこれまでになく晴れ晴れとした顔をしています。
「さてと……。俺も一段落ついたからな。この街の外に出られるようになり次第、イスパルタに戻ることにするわ。早くかみさんのところに戻って、安心させてやりてぇからよ……。あ、そうだ。お前ら、タルカンのつてを使えばこの街の外に出られるんだろ? だったら、ついでに俺も一緒に街の外に出させてくれよ。な、いいだろ?」

イーサ:
「……それは、まあ、できなくもないだろうが……」

サブリ(GM):
「おお、よかった! そんじゃ、よろしく頼むぜッ!」

エルド:
「待ってください、サブリさん。僕たちはそれなりの対価を支払ったうえで、タルカン様の助力を得ているんです。あなたも商人なら、僕たちの協力を得るためにそれ相応の見返りが必要だということくらい理解してていますよね?」

サブリ(GM):
「おいおい、そんなつれねぇこと言うなよぉ。俺とお前らの仲じゃねぇか」そう言って、サブリはエルドの肩に手を置きました。

エルド:
「借金がきれいさっぱりなくなったんですから、少しくらいのお金なら出せるんじゃありませんか?」

サブリ(GM):
「まあ、たしかに借金はなくなったんだが、このあいだの商談が流れちまったもんだから、持ちあわせもなくってなぁ」

エルド:
「だったら、新たに借金でもして、僕らに支払うお金を用意してください」

サブリ(GM):
「な、なんてこと言いやがるッ! 鬼かお前はッ!?」

エルド:
「それができないなら、この封鎖が解除されるまで大人しく待っているしかありませんね」

サブリ(GM):
 エルドにそう言われると、サブリは「チッ」と小さく舌打ちしました。
「なんだよ、そりゃ。アゼルのやつは気前よく借金を肩代わりしてくれたっていうのに、お前らときたら湿気てやがるなぁ……」

イーサ:
 ……いまさらだが、こんな奴のために巨額の借金背負うことになっちまって、アゼルの奴は本当にそれでよかったのか?

エルド:
(苦笑)

 もちろん、よくありません。イーサが心配したとおり、第7話でアゼルは思いっきり後悔していました。しかし、この時点のイーサとエルドは、そのことを知る由もありません。

イーサ:
「……ところで、サブリ。話は変わるんだが……。あんた、このあいだオズディル姓を名乗ってたよな? もしかして、あんたはオズディル氏族の人間なのか?」

サブリ(GM):
「ん? あ、ああ……。元々俺はこの街の生まれだからな。だが、いまは使ってない名前だ。バリス教団の連中と話をとおすために名乗ったに過ぎねぇよ」

イーサ:
「そうなのか……。じゃあ、サーラールについてなにか知ってることはないか?」

サブリ(GM):
「サーラールっていやぁ、オズディル本家の次男で、平定戦争後に処刑されたと思われてたのが実は生きてて、いまはバリス教団の指導者になってるって話だろ? それくらいのことなら聞いたことがあるが、それ以上詳しい話は知らねぇよ。別に俺はオズディル本家の人間ってわけじゃねぇからな」

イーサ:
「なら、バリス教団のアジトとかに心当たりは?」

サブリ(GM):
「いいや、さっぱりだな。だいたい、そんなこと知ってるくらいなら、仲介人をとおさずに直接バリス教団と接触してたさ。俺は平定戦争の最中にこの街を離れてからというもの、その後は商売で立ち寄る程度で、バリス教団のことに関してもそこまで詳しくは知らねぇんだ」

イーサ:
 平定戦争の最中って、まだ俺が生まれてないころの話だよな……。

エルド:
 どうやら、これ以上サブリさんから役に立つような情報は聞けそうにありませんね。こうしていても時間がもったいないですし、情報を集めに街を巡ってみることにしましょう。さしあたり貧民街で情報収集するのがよさそうですかね。

イーサ:
 そうだな……。じゃあ、貧民街に行ってみるか。……と、その前に、装備を新調しておきたいんだが、いいか?

エルド:
 ええ、構いませんよ。それじゃ、武具店によってから貧民街に向かうことにしましょう。

GM:
 ……あの、サブリとの別れの挨拶とかはしておかなくてもいいんですか?

エルド:
 僕たちにとってはもう必要のない人間ですからね。放置プレイしておきます(笑)。

GM:
 わかりました(失笑)。では、あなたたちはたいした言葉を交わすこともなく、サブリと別れました。

エルド:
 これで、この街の外にサブリさんを出すという煩わしい話も、きれいさっぱりなくなったわけですね。

イーサ:
(笑)


 こうして、サブリと別れて武具店に向かったイーサは、高品質+1のソフトレザーアーマーとクイックの補助石を埋め込んだスタッフを購入しました。

 鎧に関しては、これまでクロースアーマーを装備していたイーサでしたが、盾役のアゼルがいなくなったことで、さすがに装甲を厚くする必要性に迫られたようです。そして、スタッフについては、エルドがクイックの補助石を使うのを頻繁に目にしていため、その有用性に気がつき、自分でも欲しくなったのでしょう。

 ちなみに、高品質の鎧とは実質敏捷度に対するペナルティが軽減されたものです。イーサは高品質のソフトレザーアーマーを装備することで、実質敏捷度を落とすことなくダメージ減少値だけを高くしたのでした。


GM:
 では、買い物を終えたあなたたちは、貧民街へと向かうことになります。

エルド:
 あ、貧民街に向かう途中で、イーサさんに話しかけておきます。
「いまのうちに確認しておきたいんですが、イーサさんはサーラールたちバリス教団のことを追いかけるつもりなんですよね?」

イーサ:
「ああ。そのつもりだ」

エルド:
「首尾よく追いつけたとしたら、その先はどうするつもりですか?」

イーサ:
 うーん……。仮にも親なんだから、いきなり力尽くでどうこうってことにはならないだろうな……。
「まずは、なんとか話せる機会をつくって、なにをやろうとしているのかを聞き出す。それで、もしとんでもないことを企てようとしているなら、それを止めるつもりだ」

エルド:
「それは、もしものときには実の父親であるサーラールを手にかけることもいとわないということですか?」

イーサ:
「……その可能性も……あるんだろうな……。止める手段がそれしかないなら、そのときは……」

エルド:
「そうですか。まあ、僕にとってはどちらでも構わないんですけれど……」

イーサ:
(しばらく沈黙してから)
「……それはそうと、お前はどうしてこっちについて来たんだ? 王都に行くなら海路が速いとは言うが、俺の目標はあくまでもバリス教団だ。直接王都に向かうことになるとは限らないぞ」

エルド:
「そこは、ほら、僕にもいろいろと事情というものがありましてね……。ちょっとした探し物があるんですよ」

イーサ:
「探し物……?」
 ここまでなんだかんだで一緒に旅をしてきたものの、エルドがいったいなにをしようとしてるのか、まったくわかってないんだよな……。
「なあ、エルド。探し物ってなんのことだ? お前はいったいなにを探して――」

エルド:
(イーサの台詞をさえぎって、わざとらしい口調で)
「あ! イーサさん、貧民街が見えてきましたよ」

イーサ:
 うッ……。
「……あ、ああ、そうだな」

エルド:
「さあ、それでは情報収集を開始しましょう!」と言って、歩みを速めます。

イーサ:
「……」
 逃げられた……。

 イーサの抱いた疑問は、エルドの強引な誘導の前にうやむやにされてしまいました。ここまで来ると、プレイヤーとしてはもちろん、キャラクターとしてもエルドの行動になにかしら裏があることを薄々感じ取ってはいるのですが、それをうまく形にすることができずにいるイーサでした。




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