LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(04)

 クゼ・リマナからの出発を前に宿屋でゆっくり休憩したイーサとエルドは、オズディル城での戦い以降消耗していた精神力をようやく全快させ、翌日の朝を迎えました。

イーサ:
「さてと……。それじゃあ、タルカンさんのところに行くとするか」

エルド:
「あ、そのことなんですが、それはイーサさんひとりにお願いしてもいいですか? そのあいだ、僕はこっちで出発の準備を整えておきますので」

イーサ:
「そうだな……。わかった。それじゃ、準備のほうはよろしく頼む」


 こうして、イーサは単独で第1市壁内に入ると、タルカンから第2市壁の西門から街の外に出るための許可を取り付けました。そのあいだに、エルドは公言どおり旅の準備を進めていきます。

エルド:
 ふーむ。カルマシャ半島までは100キロちょっとってところですか……。往復で8日分の食料を用意しておけば足りますかね。

GM:
 イーヴァ・ユラ湾を横断することができれるのであればそうなりますが、迂回した場合は倍近くかかりますからね。

エルド:
 まあ、そこは漁村で交渉すればなんとかなるでしょう。というわけで、保存食を8日分購入します。

シーン外のイーサ:
 俺の分も忘れずに購入しておいてくれよ。

エルド:
 はい、もちろんそうするつもりです。ですが、そうなると結構な量になりそうですね……。この機会にロバでも買っておきましょうか?

GM:
 ロバだったら800銀貨で購入できます。積載量は制限値が100キロ、限界値が200キロとなります。ちなみに、ラバだと1,000銀貨で、積載量はロバの1.5倍になりますよ。

エルド:
 なるほど……。では、ラバを購入することにします。ラバの名前はなににしましょうかね……。うーん。
(しばらく考えてから)
 ここは、アルゼって名前にしておきます。

シーン外のイーサ:
 アルゼって(笑)。

エルド:
 間違ってもアゼルではないので、言い間違えないように注意してください(笑)。

 こうして食料にラバ、それとインクとペンを買いそろえたエルドは、買い物を終えるとイーサと合流しました。


GM:
 では、10時ごろになると、あなたたちは曇り空の下、ビューク・リマナの西門から街の外に出て行くことになります。

エルド:
 あ、出発前に、イーサさんにひとつ報告しておくことがあります。
「イーサさん。そういえば、イーサさんがタルカンさんのところに行っているあいだに、バッツ海賊団のアジトの場所について有力な情報が得られましたよ。どうやら、バッツ海賊団のアジトはこのあたりにあるようです」(と言って、地図上のAH地点を指でさし示す)

ビューク・リマナ地方西部地図02

イーサ:
「なるほど……。じゃあ、まずは漁村を目指して、そこからカルマシャ半島を目指すルートだな」
 あまりのんびりしていられないし、漁村までは多少無理してでも速足で移動することにしよう。

エルド:
 そうですね。漁村までは街道も通っているようですし、特に“警戒”もしなくていいでしょうか?

イーサ:
 そうだな。というか、俺たち2人そろって周囲を“警戒”できるような技能は持ってないな(苦笑)。

エルド:
 これまでは、セルダルさんやアゼルさんがいましたからねぇ……。

GM:
 あ、“警戒”は専門の技能がなくても行えますよ。もちろん、ダイス目に-2のペナルティはつきますけどね。もし“警戒”しないとなると、万が一敵との遭遇が発生したとき、かなり接近されてから対応することになりますが、よろしいですか? その場合、きっとあなたたちが敵の接近に気がつくより先に、アルゼが暴れはじめることになるでしょうが……。

エルド:
 敵が接近してきたときにアルゼが暴れてくれるのであれば、特に“警戒”しておかなくてもそれで十分かもしれませんね(笑)。

GM:
 念のため忠告しておきますが、敵の索敵能力がアルゼより優れていた場合、アルゼが気がつく前に敵から“不意打ち”されることもありますからね。そのときは、アルゼが真っ先に倒されてしまう可能性もありますよ。

エルド:
 ふむ。まあ、そのときはしかたありません。とりあえず、アルゼが暴れたら敵の襲撃に備えるってことにしておきましょう。

GM:
 了解です。では、行軍処理を開始しましょうか。

 こうして、イーサとエルドは、途中海側にオズディル城を望みながら、まずは漁村を目指して海岸沿いを西に進んで行きました。

 一応、GMからは“警戒”することを促したものの、地方中枢都市近くの街道では、そう滅多に敵と遭遇することもありません。2人はそのまま何事もなく、漁村までたどり着きます。


ビューク・リマナ地方西部地図03

GM:
 では、あなたたちはWO地点に入りました。お昼を過ぎたころから海上に立ち込めはじめた霧は、浜風によって陸に押し上げられ、周囲を薄白く染めています。そのような少しぼやけた視界の中、密集するあばら家の影が見えてきました。漁村とはいっても、建物の影はほんの数軒分しかありません。そこは、海岸線から数百メートルくらいしか離れておらず、絶えず波の音が聞こえてくるような場所です。

イーサ:
「どうやら、あれが例の漁村らしいな」

エルド:
「目的の漁師がいてくれるといいですね。とりあえず、その人物を探してみましょうか」

イーサ:
「そうだな」
 じゃあ、一番近くにある家の前まで行って、戸を叩いてみる。コンコン。
「すまない。誰かいないだろうか?」

GM:
 イーサがそう声をかけると、それに対する反応は……。ここは《2D》で判定してみましょう。出目が7以上であれば、目的の漁師が出てきます。それ以外のときは、別の人の家だったということで。

イーサ:
 了解。(コロコロ)8で一発成功!

GM:
 ならば、イーサの呼びかけに対して、あばら家の木戸が横に引き開けられました。……って、思わず描写してしまいましたが、漁村とはいえ近東風の文化圏で引き戸ってありなんでしょうかね(苦笑)?

エルド:
 雰囲気的にはありだと思いますよ(笑)。

GM:
 では、木戸が引き開けられて、中から頭の禿げあがった男が顔をだしました。

禿げ頭の漁師(GM):
「アンタら、なにもんだ?」男は少しなまりのある言葉でそう尋ねてきます。

エルド:
「突然の訪問、失礼します。僕は旅の者で、エルドといいます」

イーサ:
「俺は、イーサだ」

禿げ頭の漁師(GM):
「……そのエルドさんとイーサさんが、いったいうちになんの用で?」

エルド:
「この一週間のあいだに、イーラ・ユヴァ湾を大きな船が通らなかったかお尋ねしたいんですが……」

禿げ頭の漁師(GM):
 そのエルドの質問に、男は少しいぶかしげな顔をしました。
「なんでそんなこと調べてんだ?」

イーサ:
「実は、クゼ・リマナにある酒場のマスターから、この漁村の漁師が幽霊船を目撃したという噂話を聞いてな。なんでも、その幽霊船ってのはバッツ海賊団の船だったって話じゃないか。それで、興味深い話だったから、もっと詳しい話を聞きたくてここまで来てみたんだ」

禿げ頭の漁師(GM):
「ああ、クゼ・リマナの酒場のマスターにその話をした漁師ってのは、きっとオレのことだ。アンタら、あの船に興味があんのか。だったら、見かけたのは6日前のことだよ」

イーサ:
「そのときのことについて、もう少し詳しく聞かせてもらえないか?」と言って、男に金貨を1枚手渡した。

禿げ頭の漁師(GM):
 金貨を手渡されると、男は少し驚いた顔をして唾液を飲み込みます。
「い、いやぁ……。詳しい話を聞きたいって言われても、その船のことに関しちゃ、バッツ海賊団の2番艦のように見えたってことくらいしか話せることはないからなぁ……」

エルド:
「べつにその船のことだけじゃなくてもいいんですよ。ここ最近、普通の商船以外の船が往来していたのを見かけたとか、そういった話があれば、ぜひ聞かせてください」

禿げ頭の漁師(GM):
「あー、それなら……」そう口にすると、男はキョロキョロと周囲を見渡してから、「まあ、立ち話ってのもなんだ。ちょうどこれからメシにしようかと思ってたところだったんだ。よかったらアンタらも一緒にどうだい?」と言って、あなたたちに家の中に入るよう勧めます。

イーサ:
「ああ。ちょうど腹も減ってきたところだし、お言葉に甘えさせてもらうことにしよう」

エルド:
「そうですね」
 では、漁師の家の中に入って行きます。

GM:
 あばら家の中に入ってみると、部屋の中央には石組みのかまどがあり、壁際には魚が吊るされています。

禿げ頭の漁師(GM):
「まあ、適当に座っててくれよ」そう言って、男は吊るされていた魚をはずすとそのまま調理場へと向かい、大雑把にさばいた魚をほかの食材と共に鍋に投入して、それをかまどの火にかけました。
「それで、まずは幽霊船騒ぎになった船のことを詳しく話せばいいんだっけか? ……ありゃ、6日前、朝の漁にでたときのことだったんだが、イーラ・ユヴァ湾のちょうど真ん中あたりでそいつを見かけたんだよ。そいつは帆も張らず、ただ波に揺られて漂ってたんだ。どこの船かと思ってよくよく見てみたら、バッツ海賊団の2番艦だったって話さ。普通、海賊連中はこんな湾の中までは入り込んでこないから、オレも無警戒でな。それと気が付いたときにはかなり近づいてたから、そりゃあ肝を冷やしたね。ただ、こっちの心配はよそに、むこうの船からはまったく人の気配が感じられなかった。ずいぶん静かに遠ざかっていったのを覚えてるよ」

エルド:
「ふむ……。では、そのほかに商船以外の船を見かけたということは?」

禿げ頭の漁師(GM):
「それだったら、2日前の夜明け前くらいに、街のほうの海上に船影らしきものが見えたことがあったよ。まあ、実際に船影がはっきり見えたわけじゃなくて、海上に明かりが見えたってことなんだが……。そんとき見かけたやつが商船だったのかそうじゃなかったのかはわからないけどな」

イーサ:
「2日前か……」
 それって、俺たちがオズディル城でバリス教団と戦った日のことだよな?
「その明かりっていうのは、どれくらいのあいだ海上に見えたんだ?」

禿げ頭の漁師(GM):
「さあ……。用を足そうとして外に出たときにチラリと見かけただけだから、そこまで詳しいことはなぁ……」

エルド:
「その後、その船が沖に出て行ったということは確認しませんでしたか?」

禿げ頭の漁師(GM):
「時間が時間だったし、用を足し終えたらすぐに寝床に戻っちまったんだよ」

エルド:
 ふむ……。しかし、こんなに海の近くに家があるんですから、船が通ったらその物音とかで気が付かないものですかね?

GM:
 太鼓を鳴らしてオールを漕いでいたとかならまだしも、帆だけで航海していた場合はよほど近くを通らない限り気がつかないでしょうね。それに、地図を見れば、その船がこちら側の海岸から10キロ以上離れた場所を移動した可能性もあるということはわかりますよね。

エルド:
「……では、その船影から、それがどのような船であったか推測はできませんか?」

禿げ頭の漁師(GM):
「いやぁ……。さっきも話したとおり、海上に明かりが見えたからそこに船があるんだと思っただけで、はっきりと船影を確認したわけじゃないんだ。だから、どんな船かと聞かれてもなぁ……」そう言いながらも、漁師は記憶をたどり始めました。漁師がなにかヒントとなる情報に思い当たるかどうかを、“記憶術”で判定してみます。(コロコロ)お、成功しました。
「……うーん。そういえば、明かりの位置がずいぶんと高い位置にあったような気もするなぁ……。もしかすると、あれは結構な大きさの船だったのかもな……」

エルド:
「うーん、大きな船ですか……」
(イーサに対して)「おそらく、夜間海上にあった船影というのは、バッツ海賊団の旗艦なのではないでしょうか?」

イーサ:
「ふむ。そうかもしれないな……」

エルド:
(ふたたび漁師に対して)「ほかに、なにか思い出したことはありませんか?」

禿げ頭の漁師(GM):
「うーん……。あとは……。これはもっとずっと前の話で、アンタらが知りたいこととはまったく関係ない話かもしれないんだが、アッバス海賊団の2番艦が東に向かって行ったのを見かけたこともあったな。まさか、海賊船が街の港に向かってったわけでもないんだろうが……」

イーサ:
「街以外に東側にあるものといえば……。バリスの聖域か?」

エルド:
「バリスの聖域になにかあるんでしょうか?」

イーサ:
「まあ、神の聖域だからな。想像もつかないような宝の山が眠ってるんだろうさ。ただ、バリスの聖域って海の底にあるんだろ?」

エルド:
「ということは、アッバス海賊団は、海中の遺跡を探索できるすべを持っているということでしょうか?」

イーサ:
「かもしれないな。まあ、どちらにしても、その話はずいぶん前のことらしいし、今回の件とは関係ないみたいだが……」

エルド:
(しばらく考えてから)
 うーん……。ここではこれ以上情報を得られなさそうですし、バッツ海賊団のアジトのほうに向かってみましょうか?

イーサ:
 そうだな。

エルド:
 バッツ海賊団のアジトになにか決定的なものが残されていればいいんですけどね……。じゃあ、イーサさん、対岸に舟を出してもらえるように漁師と交渉してください。

イーサ:
 わかった。
(漁師に対して)「ところで、今日はもう漁にはでないのか?」

禿げ頭の漁師(GM):
「いや、まだ舟は出すつもりだが、もっと日が暮れてマヅメどきになってからだな」

イーサ:
 なるほど……。
「俺たちはこれから対岸に渡るつもりなんだが、できれば舟で乗せていってもらえないか? もちろん金は払う」

禿げ頭の漁師(GM):
「オレに渡しをやれって? たしか、アンタらラバも連れてただろ? それも一緒にってことだよな?」

イーサ:
「ああ。ダメか?」

GM:
 ではここで、漁師の持っている舟の積載量がアルゼを含めたあなたたちの総重量を上回っているかどうかを、《2D》の判定で決めましょう。6以上を出せれば、漁師の持っている舟に全部乗せることができるものとします。

エルド:
 よし、ここはアルゼの飼い主である僕が判定しておきましょう。(コロコロ)成功です!

禿げ頭の漁師(GM):
「そりゃ、やってできないわけじゃないが……」
 舟の積載量自体に問題はないようですが、慣れない依頼に漁師は返答を渋っています。

イーサ:
「100銀貨でどうだ?」

GM:
 交渉に持ち込むのであれば、目標値8の交渉判定をしてみましょうか。

イーサ:
 了解。(コロコロ)6ゾロで成功!

GM:
 ブッ(失笑)!

エルド:
 イーサさん、あと一押しですよ(笑)。

イーサ:
(コロコロ)11で成功!

禿げ頭の漁師(GM):
 いいでしょう。イーサがさらに頼み込むと、漁師は意を決してパンッと手でひざを打ちました。
「わかった。100銀貨で請け負おう。しかし、対岸に渡っても、あっちにはろくになにもないだろ。アンタら、いったいなにをしに行くつもりなんだ?」

エルド:
「バッツ海賊団のアジトを探しに行くんですよ。幽霊船のことについて、直接確認しに行ってみるつもりなんです」

禿げ頭の漁師(GM):
「なるほど……。そういうことなら、少し西側まで行ってやろう。陸を進むよりはいくらか早く目的地につけるはずだ。だが、舟を出すのは片道だけで、迎えにはいけんぞ? それでもいいのかい?」

イーサ:
「さすがにそこまで無理を言うつもりはない。行きだけでも十分だ」

禿げ頭の漁師(GM):
「そうか。で、すぐに出るつもりかい? もしそうなら、この鍋の中身を片付けたら、さっそく舟を出すことにするが……」

イーサ:
「ああ。あまり時間がないんだ。よろしく頼む」

GM:
 ならば、漁師の家で昼食を済ませると、そこから対岸までは舟で移動することになりました。

 第5話の川下りでもそうでしたが、舟での移動は好戦的な敵と遭遇する危険性が低く設定されています。そのため、イーサたちは敵に襲われることなく、日が水平線に沈むころにZL地点に到達することができました。そのかわり、もし遭遇してしまった場合、致命的なケースとなることがほとんどですが(苦笑)。

ビューク・リマナ地方西部地図04

禿げ頭の漁師(GM):
 あなたたちを対岸に降ろすと、漁師は「じゃあ、たっしゃでな!」という言葉を残して舟を離岸させていきます。

イーサ:
「助かった。ありがとう!」

 こうして、当初の計画通り、漁師から情報を得たイーサとエルドは、バッツ海賊団のアジトがあると思われるAH地点にあと40キロというところまで迫ったのでした。




誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。