LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(06)

イーサ:
 さて、朝起きたらさっそく野営地を出発……といきたいところだったんだが、昨日の行軍で無理をしたせいで、まだけっこう疲労が残ってるんだよな……。ここは、“ファティーグ・リカヴァリ”を使って疲労を回復させておこう。

 この宣言どおり、イーサは野営地を離れる前に、全員の疲労を完全に回復させました。

 “ファティーグ・リカヴァリ”は一見地味な魔法ではありますが、この魔法を使える白魔法使いがいるのといないのとでは、行軍速度に雲泥の差が生じます。ウィルダネス・アドベンチャーを厳密にプレイするなら、白魔法使いにとって必須の魔法と言っても過言ではありません。

イーサ:
 じゃあ、あらためて出発するか。順当にいけば、半日後にはカルマシャ半島につけるだろう。それじゃ、行軍処理を――

エルド:
 あ、ちょっと待ってください。出発前に魔法を入れ替えておきます。スペルリングから“ティンダー”を削除して、“ライト”を記憶させます。今後のためにも、光源を確保しておきたいので。

イーサ:
 ん? “ライト”だったら、俺のほうで記憶ずみだぞ。

エルド:
 いえ、イーサさんの精神点の消耗はできるかぎり抑えておきたいので、緊急時以外の“ライト”は僕が担当することにします。

イーサ:
 そうか? じゃあ、エルドが魔法を入れ替えるのを待ってから、野営地を出発することにしよう。

GM:
 了解です。では、出発の時刻は6時半となります。そのころの天候は曇りです。

 こうして、予定より少し遅れて行軍を開始した一行は、通常の速度でカルマシャ半島のUB地点を目指しました。

 目的地までの40キロの道のりの途中、イボイノシシ、ヌー、インパラなどの野生動物と連続して遭遇したイーサたちでしたが、幸いにして好戦的な敵と遭遇することはなく、その日の20時過ぎには目的地であるカルマシャ半島付近に到着します。

ビューク・リマナ地方西部地図05

GM:
 では、あなたたちは無事にカルマシャ半島の海岸線までたどり着きました。
 カルマシャ半島の海岸線は複雑な形をした崖で形成されており、周囲にはゴツゴツした大きな岩ばかり転がっています。典型的な岩石海岸ですね。あなたたちがカルマシャ半島の西に広がる海を視界に収められるところまでやってきたころには、曇天模様の空からポツリポツリと雨粒が落ちてきました。時間の経過とともに風も強くなり、それに伴い波も高くなってきています。

エルド:
「雨が降ってきてしまいましたか……。嫌な天気ですね……」

GM:
 さて、エルドが入手した情報によれば、この周辺にバッツ海賊団の隠れ港があるらしいのですが、なにせ人目につかないように隠されているわけですからね。そう簡単には見つけられません。というわけで、隠れ港を発見するために《ランド・ウォーカー、もしくはハンター技能レベル+知力ボーナス+2D》の判定を試みてもらいましょう。目標値は10で、再判定も可能ですが、初回の判定にかかる時間は1時間とします。

イーサ:
 目標値は10か……。俺もエルドも、ランド・ウォーカー技能やハンター技能はもってないんだよな……。これ、見つけられるのか(苦笑)?

エルド:
 まあ、成功の余地はあるようなので、根気よくやっていくしかないでしょうね。
 ところで、時間的にもう周囲は真っ暗になっていますよね?

GM:
 そうなりますね。

エルド:
 では、明かりをつけておきましょう。

イーサ:
 それなら俺の荷物の中にランタンがあるから、それを使っておこう。
「よし、エルド。それじゃ隠れ港を探すとしよう」
(コロコロ)うん、ダメだ。1で失敗(苦笑)。

エルド:
(コロコロ)10でジャスト成功です。

イーサ:
 あいかわらず、凄いなエルドは(笑)!

GM:
 まったく、こういうところでの判定では失敗知らずですね。

 こうして、これまで長年見つからなかったという話のわりに、あっさりと発見されてしまう隠れ港でした。確率的には3割弱で成功するように設定しておいたので、再判定を含む4回の判定の時間経過として1週間を要して発見する、あるいは諦めて帰ることになるくらいのイメージだったのですが……(苦笑)。

GM:
 ならば、エルドは北側にある崖下の海岸線付近に、ぼんやりと明かりのようなものが見えたことに気がつきました。

エルド:
 明かり? その明かりは動いているんですか?

GM:
 そうですね……。ゆらゆら動いているという感じではなく、遮蔽物の向こう側にあった明かりがわずかに漏れて、すぐに見えなくなったという感じです。

エルド:
「イーサさん、ちょっといいですか? いま、あの辺りに明かりらしきものが見えたんですが……」

イーサ:
「明かり?」そう言って、俺もエルドが示した辺りを見てみるんだが……。

GM:
 いまは真っ暗闇ですね。

イーサ:
「あのあたりに、バッツ海賊団が使ってる建屋でもあるってことか?」

エルド:
「建屋……? いやいや、船も隠さなくてはならないでしょうから、巨大な洞窟とかそういったところなんじゃありませんか?」

イーサ:
「ふむ……。じゃあ、飯でも食いながら少し様子を見てみるか?」

エルド:
「この雨の中で、ですか……?」

イーサ:
「ああ。ちょうど干し肉が柔らかくなっていい感じだろ?」

エルド:
(失笑)

イーサ:
 そういえば、向こうからこっちのことは見えないもんなのか?

GM:
 ……いま、あなたたちは光源としてランタンに火をつけていますよね……? つまり、そういうことです。

イーサ:
 だよな(汗)。じゃあ、ランタンは消しておこう。

 落し物を探すというわけではないのですから、自分の周囲を照らす光源を用意しても、これといったメリットはありません。逆に、闇夜の中で遠くからでも発見されやすくなるというリスクのみを発生させることになってしまいました。むしろ、ここでは“インフラビジョン”を使っておいたほうがよかったでしょう。

エルド:
 ちなみに、雨の中でずっと向こうの様子をうかがっていることで、体調的になにかペナルティとか発生するんですか?

GM:
 あー。たしかに、そういった可能性はありそうですね。雨天の場合、環境ランクが低下するので自然治癒の速度が遅くなるとかの影響はあるのですが、特に体調不良を起こすなどのルールは設けていないので、そこはフレーバーとして考慮した行動をとってもらえると助かります。

エルド:
 了解です。

イーサ:
「おっしゃーッ! 雨のおかげで久々に身体を洗えてスッキリだぜッ!」

エルド:
 ブッ(失笑)! イーサさんは、なんでそんなにポジティブ思考なんですか(笑)? もしかして、雨大好き人間ですか?

イーサ:
 いや、別にそんなことはないんだが、ルール的にペナルティがないなら、いいほうに解釈しておいたほうがいいだろ?

GM:
 ……まあ、初夏に入って気温も上がってきているので、イーサの行動が間違っているとは言いませんけどね(笑)。

 そういえば、イーサは第3話でも雨が降り出したのをこれ幸いと、汗を洗い流していましたっけ……。イーサの中では、もうそれが普通のことなのかもしれません。

エルド:
 ……それはともかく、とりあえずいざというときに身を隠せる僕が見張りを担当しておきます。イーサさんはアルゼくんのことを連れて、少し離れたところで待機していてください。

イーサ:
 おお、そうか。じゃあ、ここは任せた。俺は少し離れたところで、雨に濡らして柔らかくした干し肉を食ってることにする。

エルド:
 僕は岩陰に身を隠しつつ、さっき明かりが見えた辺りをもっとよく観察できそうな場所に移動して、そこで見張りを続けます。

GM:
 了解です。では、ここでそれぞれの位置関係を整理しておきましょう(と言って、地形とそれぞれの位置を示す)。

カルマシャ半島のとある海岸線

イーサ:
 なるほど。離れ岩が目隠しになっていて、たしかに海側からは見えにくい構造になってるんだな……。

GM:
 一応補足しておきますが、こういった地形になっているのはここだけでなく、カルマシャ半島の海岸線には似たような地形が多く見られます。でなければ、すぐにアジトの場所が特定されてしまいますからね。
 さて、そうやってしばらくエルドが見張りを続けていると、1時間ほど経過したところで、ふたたび微かな明かりがチラリと目にはいりました。

エルド:
 その明かりは、人が手に持っているものなのでしょうか?

GM:
 うーん。エルドのいる位置からでは、人の姿までは確認できませんね。明かりのある場所までの距離を測る目安となるものがないので、具体的にどれくらい距離が離れているのかはわかりませんが、少なくとも数百メートル単位の距離があるものと推測されます。

エルド:
 了解です。一旦、イーサさんのいるところまで下がります。
「イーサさん。また明かりが見えました。さきほどと同じようにチラリと見えただけなのですが、なにかあることは間違いないようです……。これから、明かりが見えた場所の崖の上まで行ってみようかと思いますが……」

イーサ:
「そうだな……。じゃあ、そうしてくれ。俺には斥候としての経験がないから、邪魔にならないくらい距離をとってついていくとしよう」

エルド:
 では、さきほど明かりが見えた場所の真上まで移動します。

GM:
 了解です。ちなみに、イーサはエルドとどれくらい距離をとります? あと、アルゼはどうします?

イーサ:
 うーん……。それじゃ、アルゼはさっき待機していた場所にロープを使って繋いでおく。それで、俺自身はエルドから50メートルくらい距離をおいてついて行く。俺が身に付けてるのは革鎧だし、それくらい離れていれば気がつかれることもないだろ。

GM:
 わかりました(と言いつつ、おもむろにダイスを振る……コロコロ)。

イーサ&エルド:
 ……!?

GM:
 はい。ではエルドは明かりが見えた崖の上まで到着しました。そして、その場所まで行ったところで、さらに少し北側に、崖下まで伸びる細い道があることに気がつきました。

エルド:
 それが確認できたのであれば、少し戻って、もう一度イーサさんと合流します。
「イーサさん。北側に、崖下まで降りられる道があるようですよ」

イーサ:
「なるほど。じゃあ、海賊たちはその道を使って崖下まで降りてるってことか。どうやら、その先にバッツ海賊団の隠れ港があるってことで間違いなさそうだな。ということは、さっきエルドがみた明かりってのは、海賊の見張りが持ってる明かりだったってことか?」

エルド:
「いえ、まださっきの明かりが海賊のものだったかどうかはわかりませんよ。ここは人目を避けるためにはおあつらえ向きの場所ですからね……」

イーサ:
「ふむ。つまり、海賊以外の連中が身を隠すために使ってる可能性もあるってことか……。たとえば、バリス教徒とか……」

エルド:
「どうします? このまま崖下まで降りてみますか? この雨の中、無灯であればそうそう見つかりはしないと思います。相手側の動きは離れた場所からでも明かりの動きでわかりそうですし、もし光源を持つ者が単独行動しているようなら、それを排除して中に入ることができるかもしれません」

イーサ:
「うーん……。じゃあ、行ってみるか」

エルド:
 ……というわけで、まずは先ほど明かりが見えた場所からは死角になるところまで進んで行きます。極力物音を立てないように“忍び足”で。

GM:
 明かりが見えた場所から死角になるところですか? そうすると、さっき明かりが見えた場所のすぐ近くにある角の手前まで進むということになるわけですが……。

エルド:
 まあ、こちらは無灯ですから大丈夫でしょう。角の手前まで進みます。

イーサ:
 じゃあ、俺はエルドのあとから30メートルくらい離れてついて行く。

GM:
 了解です。では、まず忍び足判定を行って、達成値を教えてください。イーサもエルドついて行くのであれば、一緒に判定してください。

エルド:
(コロコロ)8です。

イーサ:
(コロコロ)俺も8。

GM:
 続けて、エルドは聞き耳判定をどうぞ。

エルド:
(コロコロ)12です。

GM:
 ならば、細い道の角の手前まで進んで行ったエルドの耳には、こんな歌声が聞こえてきます。

何者かの声(GM):
「ヨーホー! ヨーホー!」

エルド:
 あ、これは海賊で間違いありませんね(笑)。

何者かの声(GM):
「フフフン♪ フフフン♪ フフフフ、フフフン~♪」

 ここでGMが歌ったのは、ヨーホーではじまるお馴染みのあれですが、著作権侵害を避けるため、歌詞をぼかしてお送りしています(苦笑)。

GM:
 その調子っぱずれの歌声は、どんどんエルドのいるほうへと近づいてきます。そして、曲がり角のすぐそこまで来たところで、地面になにか置く音と、それに続いて衣服のずれる音、そして、液体が放出される音が聞こえました。チョロチョロチョロチョロチョロチョロチョロチョロ……。

エルド:
 なるほど。そういうことでしたか……(笑)。

何者かの声(GM):
「ふぃ~。スッキリしたぜぇ。さ~てと、もう一杯やってくっか。ヨーホー! ヨーホー!」そうやって、ふたたび始まった歌声とともに、その者の気配は遠ざかっていきました。

エルド:
 では、足元から小石などを拾い上げて、それをイーサさんがいるほうに投げつけます。

GM:
 イーサの足元に小石が転がります。カツン、コロコロコロ……。

イーサ:
「ん? なんの音だ……?」(と言って、おもむろに周囲を手で払い始める)

GM:
 ……?

エルド:
(しばらく沈黙してから)
 察しが悪いですね……。仕方ないので、イーサさんのいるところまで戻ります。
「ちょっと、なにをやっているんですか?」

イーサ:
「いや、どうやら、この辺には羽虫がいるみたいでな。払いのけてた」

エルド:
 ダメだ、この人……(苦笑)。

GM:
 伝わりにくいリアクションのうえに、ネタとしても拾いにくいですね(苦笑)。

イーサ:
「……で、どうかしたのか?」

エルド:
「えーと、酔っぱらった海賊がいました。で、用を足し終えると、中のほうへ戻って行きました」

イーサ:
「そいつは海賊で間違いないのか?」

エルド:
「ええ、間違いありません。あんなわかりやすい歌をうたうのは、海賊くらいなものです。それも、おそらく下っ端です」

イーサ:
「そうか……。ということは、バッツ海賊団はバリス教団に壊滅させられたわけではなかったんだな」

エルド:
「そのようですね。……しかし、そうなると、なぜ2番艦だけがバリス教団に利用されたのかという疑問がでてきますが……」

イーサ:
「ふむ……。ただ単に、2番艦だけ奪取されたということなのかもしれないな」

エルド:
「ですが、クゼ・リマナに流れ着いた2番艦には、争った形跡はなかったわけですよね? だとすると、バリス教団はどうやって2番艦を奪ったんでしょうか?」

イーサ:
「そうだなぁ……」(そう言って、腕を組んで考え始める)

 ちなみに、いまのところ2番艦の船体に目立った損傷が見受けられなかったという話を人づてに聞いただけで、船内に争った形跡がなかったという情報はどこからも得られていません。情報は正確に押さえておかないと無用な混乱を招きますので、ご注意を。

エルド:
「隠れ港の中に入り込めば、もう少しなにかわかりますかね? もし、またひとりで出てくる海賊がいれば、そいつに成り代わって中に潜入できるかもしれませんが……」

イーサ:
「相手が声を発するまえに倒せそうか?」

エルド:
「うーん、どうでしょう……。かならず成功するという保証はありませんが、やってみるしかないでしょうね……」

GM:
 えーと、いまエルドが海賊に成り代わると発言していましたが、それが“変装”して潜入するということであれば、肝心なことを忘れていませんか? バッツ海賊団の構成員は白人種なんですよ。肌や瞳の色から骨格の違いまで、その特徴はちょっとした“変装”程度で誤魔化せるものではありません。

イーサ:
 そうか……。じゃあ、仕方ない。皮を剥ぐとするか……。

エルド:
 えッ!? ちょっと、なんてこと言いだすんですかッ(失笑)! いや、そりゃぁ、やれって言われればやりますけど、その場合はイーサさんに対して“変装”を施すことにしますからね!

イーサ:
 う、うむ……(汗)。……まあ、それは冗談として、なんとかしてうまく中に入り込む方法はないもんかな?

エルド:
 そうですねぇ……。だったら、海中を泳いで中に入るというのはどうですか? 幸い、洞窟の中まで海水が入り込んでいるようですし……。

イーサ:
 うーん……。
(長時間悩みはじめる)

 こうして、バッツ海賊団のアジトとおぼしき隠し港を目の前にしたイーサとエルドは、隠し港内に潜入するための案を検討するのでした。

 しかし、今回の話では、いつになくイーサがボケネタを投入してきています。これまではアゼルがネタ発言をするたびにイーサから冷静な突っ込みが入るというケースが多かったのですが、もしかすると、そのアゼルがいなくなったことでイーサのプレイに影響がでてきているのかもしれません。ある意味、これも役割効果というものなのでしょうか(笑)?




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