LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(09)

バッツ(GM):
「チッ、手こずらせやがって……。思った以上に歯ごたえがあったじゃねぇか……」そう言って、バッツは自分の腹部に手を当てると、苦痛に顔をゆがめました。

手下たち(GM):
「おかしら、大丈夫ですかッ!」と、手下たちが心配そうにバッツに駆け寄ります。

バッツ(GM):
「ああ、問題ない。それよりも、こいつらの身ぐるみを剥いで、牢屋に放り込んでおけ。あとで、色々と聞きたいことがあるからな……」

手下たち(GM):
「わかりやした!」
 手下たちのうち2人はバッツの指示に従ってあなたたちの装備を奪い、ロープで両手を後ろ手に縛り上げると、隠し港の内部にあなたたちを連れて行きます。
「そら、いくぞ! さっさと歩けッ!」

バッツ(GM):
 それに加えて、バッツは残り2人の手下に対しても、「ほかにも仲間が潜んでるかもしれねぇ。何人か連れて、周囲を調べてこい」と命じました。

GM:
 この指示によって、離れた場所に待機させられていたアルゼも、海賊に捕まってしまうことになります。まあ、あのまま放置ということになると、野生動物に襲われるか空腹でお亡くなりになるかのどちらかになってしまいますからね(苦笑)。
 こうして、海賊につかまってしまったあなたたちは、隠れ港の中へと連行されていくことになります。
 隠れ港となっている大洞窟の中に入って行くと、そこにはまるで夜空に浮かぶ星々のように、いくつものロウソクや松明の明かりがきらめいていました。洞窟の壁面は3段の棚状になっています。見たところ、壁には人が立って通れるほどの穴がいくつも開けられており、その奥に居住空間が確保されているようです。
 あなたたちは、壁面棚の最上段にある、ほかの穴と比べるとかなり小さな、入り口に格子が取り付けられている穴の前まで連れてこられました。どうやら、その大人ひとりがやっと入れるほどの小さな穴が、バッツの言っていた牢屋のようです。
 牢屋の前には、十歳程度の金髪碧眼の少年が見張り番として立っていました。

手下(GM):
「アイダ、新しいお客さんの到着だ。牢屋を開けてくれ」と、海賊が少年に対して声をかけると――

アイダと呼ばれた少年(GM):
 アイダと呼ばれた少年は「オッケー」と言って、手に持った鍵で2つの牢屋の格子をそれぞれ開錠していきます。

GM:
 そして、あなたたちは手足の自由を奪われたままの状態で、牢屋の中に叩き込まれました。

手下(GM):
「どっちも出血がひどい。おかしらが、あとでいろいろと聞きたいことがあるそうだから、死なねぇように手当てしてやれ」

アイダ(GM):
「わかったよ! まかせといて!」アイダは、ハキハキとした口調でそう答えます。そして、一旦その場を離れてどこからか治療用の道具を取ってくると、それを使ってあなたたちの傷を手当てしてくれました。

GM:
 ここで、傷チェックは外してしまって構いません。ただし、生命点は1点にしておいてください。

手下(GM):
 傷の手当てがひととおり済んで、アイダが牢屋の外にでて施錠したことを確認すると、海賊たちはアイダに「絶対に牢屋から逃がすんじゃねぇぞ!」と言いつけて、その場から離れて行きます。

アイダ(GM):
「任せてよ! オイラ、絶対、こいつらを牢屋から逃がしたりなんかしないよ!」海賊たちの背中に向けて、アイダはそのように返しました。

GM:
 さて、こうして牢屋に押し込められることとなったあなたたちですが、なにか行動はありますか?

イーサ&エルド:
 ……。

GM:
 ……では、特に行動もないようですので、少し時間を経過させます。

アイダ(GM):
 しばらくのあいだ牢屋の前に無言で立っていたアイダ少年でしたが、ただ黙って突っ立っていることに飽きてしまったのか、やがてあなたたちに対して話しかけてきました。
「あのさぁ……。アンタたち、いったいなにやらかしたの?」

イーサ&エルド:
「……」

イーサ:
(しばらく沈黙してから)
 ……しかたない。やれることもないし、少し話し相手になってやるか……。
「……俺たちはバリス教団の行方を追っている。それで、バッツ海賊団がバリス教団と関わり合いがあるんじゃないかと思ってここまで来てみたんだが、このざまだ」

アイダ(GM):
「はぁ? なに言ってんの? バリス教団とオイラたちとのあいだに、いったいなんの関わり合いがあるっていうのさ?」

イーサ:
「……」

アイダ(GM):
 イーサが黙り込んでしまうと、アイダは今度はエルドのほうへと目を向けました。

エルド:
 僕は、この海賊たちに対してどう復讐してやろうかと、ずっと下を向いたまま考えています。

アイダ(GM):
 ならば、アイダはしばらくエルドのことを眺めたあとで、先ほどの話など忘れてしまったとばかりに、「ねぇ、ねぇ。その肌って、なにかを塗って染めてるの?」と新たな質問をしてきました。どうやら、この白い肌の少年にとって、エルドの黒い肌はとても不思議なものに思えるようです。

エルド:
「僕のような肌の色の人間を見るのは初めてですか?」

アイダ(GM):
「ううん。でも、遠目に見たことはあっても、こんなに近くで見たのは初めてだよ。その色って、お風呂に入れば落ちるの?」

エルド:
「風呂に入って落とせるものなら、とっくにそうしていますよ」

アイダ(GM):
「へぇ……。じゃあ、噂に聞いた、悪魔に魂を売ると肌の色が黒くなるって話はホントのことなの?」

エルド:
「ふふ……。まあ、あながち間違いではないかもしれませんね……」

GM:
 否定しないんですね(笑)。

イーサ:
 カーティス王国内では、黒人ってそんなに多くないんだっけ?

GM:
 黒人の割合は、全体の2割に満たないくらいですね。それも、そのほとんどが奴隷を含む下層民であり、ヤナダーグ・プラト地方に集中しています。

エルド:
 じゃあ、その少年を少しからかってみますか。奴隷であったことを示す、肩についた焼印を少年にみせます。
「これがなんだかわかりますか?」

アイダ(GM):
 アイダは興味深そうにその焼印を見たあとで、大きくかぶりを振りました。

エルド:
「なにを隠そう、これこそが悪魔と契約を交わした者の証なのです」

アイダ(GM):
 エルドのその言葉にアイダは恐れおののき、とっさにその場から飛び退きます。そして、胸の前であなたたちが見たこともない印を結ぶと、「神様、神様、助けてください。どうか悪魔をおはらいください……」と口の中でくりかえしながら祈りをささげ始めました。

エルド:
 その反応を確認したなら、僕はもがき苦しんでいるような演技をします。
「や、やめろ! 苦しい!」

イーサ:
 なにやってんだよ(笑)。

アイダ(GM):
「やった! 効いた! 効いてるよ!」

エルド:
「くっ……。たしかに、僕は悪魔と契約を交わしていますが、隣の男だって邪神を信仰する者なんですよ」と言って、今度は少年の興味がイーサさんのほうに向くように仕向けます。

イーサ:
 ここで俺に振るのかよ……。

アイダ(GM):
 エルドの言葉に、アイダの視線はふたたびイーサへと向けられました。その目は、先ほどよりもいっそう注意深くイーサのことを観察しています。

イーサ:
 ふむ……。なにを話したもんかな……。
(しばらく考えてから)
「俺の信じる神が邪神だっていうなら、お前たちの信仰する神はいったいなんなんだ?」

アイダ(GM):
 イーサの質問に、アイダは一旦きょとんとした顔をしてから、さも当たり前のようにこう答えます。
「そんなの決まってるじゃないか。全知全能の創造主だよ。アンタたちが信じてるような、偽物の神なんかじゃなくてね」

イーサ:
 ほう、全知全能の神か……(と言って、メモを取る)。

GM:
 いや、それは別にメモを取っておくほどのことじゃないですからね(苦笑)。

エルド:
(苦笑)

アイダ(GM):
「そういえば、これからおかしらが、アンタたちのことを拷問するらしいね。いまのうちに言っておくけど、おかしらの拷問は凄いよ……」そう言って、アイダはごくりと唾を飲みこみます。

イーサ:
「拷問だと……? こんなところで悠長なことをしてる場合じゃないっていうのに。畜生!」

アイダ(GM):
「それでさぁ……。おかしらの拷問がはじまるまえに、ひとつお願いがあるんだけど、いいかな?」

イーサ:
「お願い?」

アイダ(GM):
「おかしらが拷問しようとしたら、つまんない意地なんか張らないで、拷問が始まる前に、知ってることを洗いざらいぜんぶ話しちゃって欲しいんだ……」

イーサ:
「ふむ……。しかし、なんでまたお前がそんなことを頼むんだ?」

アイダ(GM):
「実は、オイラには6つ年下の妹がいるんだけど、夜中に拷問を受けてる連中の悲鳴が聞こえてくると、妹は怖くて眠れなくなっちゃうんだ。おかしらの拷問を受けると、ほとんどの連中はそれに耐えられなくて、これでもかってくらいの絶叫を響かせるからね」

イーサ:
 いったい、どんな拷問なんだよ……(汗)。

エルド:
(おどろおどろしく)「……残念ながら、それは無理な願いというものです。きっと、悪魔の叫び声が、あなたたちの心の奥底まで響くことでしょう!」

アイダ(GM):
 エルドの言葉に、アイダはふたたび唾を飲みこみました。
「……そ、そうなんだ……? じゃあ、今晩はオイラ、妹と一緒に寝て、一晩中耳を押さえておいてやらないとね……。でも、妹の耳を押さえてると、オイラ自身の耳は押さえられないんだよなぁ……」

イーサ&エルド:
(笑)

GM:
 さて、そのような感じで、バッツの拷問がはじまるまで、あなたたちはアイダと会話する機会をもつわけですが、ほかになにか話しておきたいことなどはありますか?

イーサ:
 うーん……。じゃあ、試しに少し聞いてみるか。
「お前たちはバリス教団の仲間じゃないのか?」

アイダ(GM):
「はぁ? オイラたちがバリス教団の仲間だって? なに馬鹿なこと言ってんの? バリス教ってあれだろ? ここらへんの土地にもともと住んでいた連中が信仰してるやつだろ? たとえば、アッバス海賊団の連中とかさ。仲間だなんてとんでもない。むしろ敵だよ」

エルド:
 あ、なるほど。アッバス海賊団の海賊たちって、バリス教を信仰しているんですね。

GM:
 もともと、この土地はバリス神の勢力下にあったわけですし、なによりもバリス神は人々に優れた海洋技術を授けた神ですからね。いわば海神なわけで、アッバス海賊団の海賊たちがそのような神を崇めるようになるのも、極自然なことなんですよ。

イーサ:
「そうなのか……。さっきも言ったが、俺たちはお前たちがバリス教団と関わり合いがあるんじゃないかと思ってここまできたんだ。バリス教団と関係がないなら、お前たちと敵対するつもりはない。誤解を解いて、早くここから解放してもらうためにも、お前たちのおかしらには洗いざらいすべてを話そう。俺たちにはあまり時間がないんだ」

GM:
 自分たちから斬りかかっておいて、いまさら「敵対するつもりはない」ですか。それはまた、ずいぶんと都合のいい話ですね(苦笑)。

イーサ&エルド:
(苦笑)

アイダ(GM):
「ふーん……。まあ、アンタらの都合は知らないけど、夜中に悲鳴を聞かずにすむなら助かるよ」

イーサ:
「フッ……。ぐっすり眠るんだな。坊主」

エルド:
 いくら格好つけてその台詞を言っても、この状況では、まったくもって格好よくありませんよ(笑)。
「ところで、アッバス海賊団について、もう少し詳しい話を聞かせてもらえませんか?」

アイダ(GM):
「なんだよ。アンタら、アッバス海賊団のこともろくに知らないの? アッバス海賊団は、ここから北の方角、イーラ・ユヴァ湾の向こう側にアジトを構えてる連中のことさ。アイツらとオイラたちは、もうずっと前から縄張り争いを続けてるんだ。縄張り争いっていっても、少し前までは早い者勝ちで獲物の奪い合いをするくらいの関係だったんだけど、近頃になって、アイツら、直接オイラたちの船まで追い回してくるようになったんだ」

イーサ:
「アッバス海賊団ってのは、そんなに規模の大きな連中なのか?」

アイダ(GM):
「ううん。以前おかしらたちから聞いた話じゃ、戦力はオイラたちよりも少ないらしいんだけど、いまはオイラたちも2番艦を失っちゃったからね……」そこまで口にしたところで、アイダは慌てて手で口を押さえました。余計なことまで言ってしまったといった様子です。

イーサ:
「2番艦は誰にどうやって奪われたんだ?」

アイダ(GM):
 アイダは両手で力いっぱい口を押えています。

エルド:
「規模としてはあなたたちのほうが優っているというのに、2番艦がなくなった程度のことでアッバス海賊団に勝てなくなるものなのですか?」

アイダ(GM):
 もう何も言うまいと口を押さえていたアイダでしたが、そのエルドの質問に対し、こらえきれずに口を開きました。
「バーカ! バーカ! バーカ! オイラたちは海賊なんだよ。陸地で戦ってるわけじゃないんだ! たとえどれだけ戦力になる人員が揃っていようと、肝心の船がなけりゃ、それが持ち腐れになっちゃうってことくらいわからないの? それに、船の数が1隻なのか2隻なのかってことは、できることに雲泥の差が生まれるんだよ!」

エルド:
 ムキになってる少年に対して、少しにやけながら、「そうでしたか。船のことは不勉強なもので、知りませんでした」と返しておきます。

アイダ(GM):
「ふんッ! よく知りもしないくせに偉そうに! そんなんだから、悪魔の力に頼るような真似をするんだ。悪霊退散、悪霊退散、悪霊退散!」

エルド:
「や、やめろ~(笑)!」
 えーと、話はもう十分なので、そろそろおかしらに登場願えますか(苦笑)?

GM:
 了解です。

バッツ(GM):
 では、あなたたちがそのようにじゃれ合っているところで、バッツが手下をひとり伴って姿をあらわしました。
「ずいぶんと騒がしいようだが、どうかしたか?」

アイダ(GM):
 バッツの声に、アイダは悪魔ばらいの詠唱をやめて背筋を伸ばします。
「お、おかしら!」

バッツ(GM):
 バッツはアイダのことを一瞥してから、牢屋の中を覗きました。
「どうやら治療は済んでいるみたいだな」

アイダ(GM):
「もちろんさ! オイラが手当てしたんだ。ここから逃げられないように、ちゃんと見張りもしてたんだよ!」

バッツ(GM):
「よくやったな。じゃあ、褒美をやろう。今日はもう休んでいいぞ」そう言って、バッツは焼き菓子を2つ、アイダに手渡します。

アイダ(GM):
「ありがとう、おかしら! 妹も喜ぶよ! それじゃ、また明日!」
 アイダは焼き菓子を手に飛び跳ねると、意気揚々とそのままどこかへ走り去っていきました。

 海賊の少年アイダとの交流を経て、この後、いよいよバッツとの会話がはじまります。はたして、アイダとその妹は、今晩ぐっすり休むことができるのでしょうか?




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