LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(13)

バッツ(GM):
「オレは前方でメルテムたちを引き付けておく。そのあいだに、オマエらは船尾側の橋からダウ船に乗り込んで、奴らを蹴散らせッ! いいか、今回の作戦は時間との勝負だ。チンタラやってんじゃねぇぞッ!」そう言うと、バッツは船尾楼甲板を駆け下りていきました。

GM:
 お待たせいたしました。いよいよここから移乗戦闘へと移ります。2隻の船のあいだには、このような感じで橋が架けられました(と言って、2つの戦闘マップを近づけて橋を描く)。

軽ガレー船とダウ船2

GM:
 さて、今回は34人対16人、総勢50人での戦闘となるわけですが……さすがにそれだけのユニットを使った戦闘処理は難しいので、今回はこの範囲の戦闘のみ処理することにします(と言って、戦闘マップ上に範囲を示す赤線を引く)。

軽ガレー船とダウ船3

エルド:
 なるほど。その場合、範囲外の戦闘はどうなるのでしょうか?

GM:
 メルテムのほうは旗艦と合流するまでの時間稼ぎに徹していますし、バッツのほうはあなたたちが船尾を制圧するまで敵の主力を船首側に引き付けておくためのおとりに過ぎませんから、船尾側の戦いが決着するまでのあいだは両者ともあまり犠牲を出すことなく、それなりの戦いが繰り広げられることになるでしょうね。

エルド:
 それなりの戦いですか(笑)。

GM:
 まあ、そこはTRPGのお約束として、スポットライトはPCたちが活躍する場面に向けられるわけですよ(笑)。
 ちなみに、アッバス海賊団側の装備ですが、パッと見てわかる範囲では、重戦士タイプがハードレザーアーマーを身に着け、大振りのカトラスを腰から提げているのに加え、装填済みのクロスボウを装備、軽戦士タイプがソフトレザーアーマーを身に着け、小振りのカトラスを腰から提げています。一方、友軍となるバッツの手下たちは全員が重戦士で、ハードレザーアーマーに大振りのカトラス、そしてこちらも飛び道具として装填済みのクロスボウを装備しています。
 なお、バッツの手下たちは可能なかぎりクロスボウで援護射撃を行ってくれますが、積極的に援護してくれるのは戦闘マップ中にいる8人のうち4人だけで、残りの4人は援護している者が倒されたときの補充要員となります。

イーサ:
 前線にでてはくれないのか?

GM:
 あくまでも今回の移乗戦闘の主役はあなたたちですからね。バッツの手下たちがあなたたちのことを追い越してダウ船に移乗することはありません。
 あと、今現在、後方からアッバス海賊団の旗艦が猛追してきているわけですが、接触は150ウェイト後になる予定です。それまでにダウ船を奪取できないと、アッバス海賊団の旗艦からの攻撃が開始されることになりますので、注意してください。

イーサ:
 ふむ……。

GM:
 余談ですが、メインマスト上にいてエルドに“ファイア・ボルト”を撃ちこまれたアッバス海賊団の船員も、軽戦士Dとしてこの戦闘に参加しています。

エルド:
 了解です。あの一撃も無駄にはならなかったわけですね(笑)。


 こうして、制限時間付きの戦闘が開始されました。普段の戦闘とは異なり、短時間で戦闘を終了させなくてはならないため、多少乱暴であろうとも積極的な行動が求められてきます。

バッツの手下A(GM):
 さて、初撃を放ったのはバッツの手下Aです。正面にいる重戦士Dに対してクロスボウの矢を放ちました。(コロコロ)命中して、ダメージは8点です。

エルド:
 なかなか好調な出だしですね。僕は1ウェイトの“瞑想”をしておきます。

バッツの手下B(GM):
 続いて、バッツの手下Bが敵の重戦士Aに射撃。(コロコロ)6点のダメージを与えました。

軽戦士C(GM):
 相次ぐ射撃に、アッバス海賊団の軽戦士Cは、「粘れ! 旗艦が追いつくまでのあいだ、なんとしても時間を稼ぐぞ!」と声を張り上げ、手に持っていたオーブを頭上に掲げました。そして、魔導語で「闇よ、広がれッ!」と叫びます。(コロコロ)魔導語の詠唱に反応してオーブが黒い光を発すると、あたりが闇に包まれました。

GM:
 両陣営を巻き込む範囲で“ダークネス”が発動します(と言って、戦闘マップにダークネスの範囲を書き込む)。

軽ガレー船とダウ船4

エルド:
 うわぁ……。僕も同じことをやろうとしていたのですが、先にやられてしまいましたか……。しかし、なにやら面白そうなアイテムを持っているみたいですね。これは、奪い取らないわけにはいきません(笑)。

 今回の話の途中でアッバス海賊団の船がバリスの聖域に入ったらしいと仄めかされていましたが、その恩恵を受けた彼らはいくつかの神の遺産を所持しているのでした。

GM:
 さて、次はエルドの手番です。1ウェイトの“瞑想”が完成しましたが、なにを唱えますか?

エルド:
 うーん。予定していた“ダークネス”は先に使われてしまいましたし、どうしましょうね……。
(少し考えてから)
 じゃあ、“ライト”を唱えて、“ダークネス”を打ち消すことにします。(コロコロ)発動しました。

GM:
 では、エルドが唱えた“ライト”の一部が“ダークネス”に触れると、互いの効果が一瞬にして消滅します。

軽戦士C(GM):
「なッ! 闇がかき消されただとぉーッ!」
 せっかく張った闇が取り払われてしまい、軽戦士Cは驚きの声をあげました。

 もともと、“ダークネス”を唱えるつもりだったと発言していたエルドにとって、敵の唱えた“ダークネス”はかえって好都合なもののようにも思えましたが、どうも敵の思惑通りにことが進むのは許せなかったようです(笑)。

イーサ:
 やっと俺の行動だな。ここは1ウェイト“瞑想”しておく。

GM:
 えーと、イーサはいったいなにを唱えるつもりです?

イーサ:
 とりあえず、自分に対して“プロテクション”を唱えておくつもりだ。

GM:
 戦闘開始までに結構時間があったわけですが、そのあたりの補助魔法は事前に掛けておかなかったのですか?

イーサ:
 一応、“プレア―”は使っておいたんだが、それ以外の魔法を戦闘前に掛けておくのは卑怯かなと思って……。

GM:
 え……? 移乗戦の前にあれだけ矢が飛び交っていて、あなたたちも被弾する危険性があったというのに、その状況で補助魔法を唱えておくことが卑怯だとでも? エルドなんて、“ファイア・ボルト”まで撃ち込んでいたじゃないですか。

エルド:
(失笑)

GM:
 念のために忠告しておきますが、これまでの話の流れからもわかるように、本来この戦闘はバッツ海賊団だけでは勝ち目がなく、イーサとエルドが参加するからこそ勝算があるだろうと踏んで仕掛けた勝負です。あまり悪手が続くようだと、本当に全滅しかねませんからね。

イーサ:
 そうなのか。じゃあ、気を付けるとしよう。まあ、今回はとりあえず、さっきの宣言と変わらず、“プロテクション”を唱えるために“瞑想”しておくことにする。

GM:
 ……。

 直前にエルドが“瞑想”から魔法の発動までを何事もなく済ませていたため、イーサは深く考えずに追従したのでしょうが、装填済みのクロスボウを手にした4人の敵を前にしておもむろに“瞑想”する行為を、悪手と言わずになんと言うのでしょう(苦笑)。こうして、GMの忠告もむなしく、イーサは“瞑想”を開始したのでした。

重戦士A(GM):
 では、足を止めて“瞑想”するイーサに対して、重戦士Aがクロスボウの矢を放ってきます。命中値は10です。

イーサ:
 うッ、“瞑想”の完成前に攻撃されたか。じゃあ、“瞑想”を中断して“回避”する。(コロコロ)回避成功。

重戦士B(GM):
 いま、“全力回避”しませんでしたね? ならば、続けて重戦士Bもイーサに射撃します。

イーサ:
(コロコロ)あッ……。それは回避値9で食らった。

エルド:
 “全力回避”していれば避けられていたのに(苦笑)。

重戦士B(GM):
 クロスボウのダメージは、(コロコロ)10点です。

イーサ:
 くっ……。結構痛いな。

重戦士C(GM):
 さらに、重戦士Cがイーサに射撃します。

イーサ:
 おいおい、3連発かよ……(汗)。(コロコロ)今度は回避成功。

GM:
 本当は重戦士Dもイーサに対して射撃したかったのですが、現在の位置関係だと直接射線が通らないので、今回はこれくらいで許してあげますね(笑)。

 情け容赦ない集中砲火で1発被弾してしまったイーサ。油断し過ぎです(苦笑)。

軽戦士C(GM):
 次は軽戦士Cの行動です。(コロコロ)彼は「闇よ、広がれッ!」と叫び、再びオーブを使用して“ダークネス”を発動させました。
「いいか、オマエたち、無理にやりあう必要はないッ! 旗艦が追いつくまで時間を稼ぐんだッ!」

エルド:
 く、こいつ……(苦笑)。

イーサ:
 よし、それならもう一度1ウェイトの“瞑想”をして、今度は俺が“ライト”を唱えるとしよう。

エルド:
 了解です。なら、僕は3ウェイトの“瞑想”をしておくことにします。“ダークネス”が消えたところで、あのオーブを使っている奴に“ファイア・ボルト”を撃ちこんで仕留めてみせますよ。

イーサ:
 じゃあ、俺の番。(コロコロ)“ライト”を発動!

GM:
 はい、イーサの唱えた“ライト”の効果で、ふたたび闇がかき消えました。

軽戦士B(GM):
「くッ、また明るくなりやがった! おいッ、闇だ、急いでもう一度、“闇の宝玉”をつかえッ!」

バッツ(GM):
 そうやってあなたたちが旗艦の船尾楼甲板上に留まり、闇に包まれたり、それを解除したりしていると、そのことに気がついたバッツが、前方の甲板からがなり声を響かせました。
「なにを悠長なことしてやがるッ! 時間がないんだぞッ! さっさと敵船に乗り込めッ!」

イーサ&エルド:
(笑)

 旗艦が追いつくまでの時間を稼げばいいアッバス海賊団は、あくまでも“ダークネス”による戦闘の停滞を狙ってきます。しかし、そんな彼らとてただじっと守りを固めているだけではありません。ここで、軽戦士Dが、もうひとつの魔法のアイテムを使ってきました。

軽戦士D(GM):
 では、三度“ダークネス”が発動する前に、軽戦士Dの行動となります。彼は、この戦闘が始まる前、マスト上に登っていたところを、エルドの“ファイア・ボルト”で攻撃された人物です。
「さっきはよくもやってくれたなッ! お返しだッ!」
 彼はエルドのことをにらみつけると、手に持ったワンドを振りかざして魔導語で「魔弾よ、射抜けッ!」と叫びました。ワンドの先から放たれた“エネルギー・ボルト”が、“瞑想”を続けているエルドに対して飛んでいきます。行使値は10です。

エルド:
 む……。所持している遺産はオーブだけではなかったということですか……。

GM:
 よかったですね。倒したときの報酬が増えましたよ(笑)。

エルド:
 どちらも自分で唱えられる魔法なので、そこまで嬉しくはありませんけどね(苦笑)。
 では、抵抗判定をします。(コロコロ)あらら……。1ゾロで魔法抵抗に失敗してしまいました。

軽戦士D(GM):
 ならば、ダメージは(コロコロ)物理で12点です。

エルド:
 げッ、12点ですか!? ……10点のダメージが通りました。一気に生命点が半分以下です。

GM:
 ダメージが通ったのであれば、まず“瞑想”を維持するために目標値17の精神抵抗判定を行ってください。そのあとで士気判定もお願いします。

エルド:
 うわぁ……。目標値17って、6ゾロ以外で失敗じゃないですか……。(コロコロ)失敗。“瞑想”は中断させられました。(コロコロ)士気判定のほうは12で成功です。しかし、これは何気にまずい展開になってきましたね……。

軽戦士C(GM):
 さあて、お待ちかねの軽戦士Cの行動です。
「闇よ、広がれッ!」
(コロコロ)軽戦士Cは、またしても“ダークネス”を発動させました。

 この後、イーサとエルドは、半ば意地になって“ダークネス”の解除を続けました。しかし、なかなか“ダークネス”が解けた直後に行動して、次の“ダークネス”の発動を阻止するといったことができません。逆に、わずかな合間を縫って、軽戦士Dがワンドを振るい、“エネルギー・ボルト”を撃ちこんできます。

エルド:
 僕の番、また“ライト”で“ダークネス”を消滅させます。(コロコロ)発動。

軽戦士D(GM):
「ハッ! 懲りもせず、また闇を払いやがったか。だがそのおかげでこっちからも丸見えだぞッ!」そう言って、軽戦士Dはワンドをエルドに向けます。
「魔弾よ、射抜けッ!」
 ふたたび、エルドに向って“エネルギー・ボルト”が飛んできました。

エルド:
 さすがにもう一発食らうのはまずいですね。今度は“移動回避”と“全力回避”を併用して避けます。(コロコロ)成功。うしろに飛び退いて避けました。

 “移動回避”と“全力回避”を併用したことで、なんとか“エネルギー・ボルト”を避けることに成功したエルドでしたが、もしこの一撃を食らっていればその時点で勝負が決していたと言っても過言ではない、実に危険な場面でした。




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