LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(14)

 敵の“ダークネス”による時間稼ぎ作戦に手を焼くイーサとエルド。半ば意地になって“ダークネス”の解除を続けていたところ、単に時間を稼がれてしまったばかりか、逆に返り討ちにあいかねないほどの苦戦を強いられてしまいます。しかし、エルドが絶体絶命の一撃を“移動回避”で鮮やかにかわしたところで、ようやく風向きが変わりはじめました。

バッツの手下B(GM):
 では、バッツの手下Bの援護射撃です。重戦士Aに対して、クロスボウの矢を放ちました。(コロコロ)命中して、ダメージは10点です。

重戦士A(GM):
 それで重戦士Aの生命点が半分以下になりました。(コロコロ)しかし、士気判定には成功。重戦士Aはまだ戦い続けます。

イーサ:
 次は俺の番か。久々に明るい状態で行動できるな(笑)。じゃあ、“瞑想”をキャンセルして、橋の上に移動。そして、重戦士Bに攻撃。(コロコロ)命中。ダメージは7点。チッ、これくらいじゃ倒せないか……。

軽戦士C(GM):
 ここでオーブを手にした軽戦士Cの手番です。

イーサ:
 うへぇ……。また“ダークネス”かよ……。

軽戦士C(GM):
 できることならそうしたかったのですが、軽戦士Cの精神点は底をついてしまったため、もうオーブを使えません。
「クッ! 打ち止めだ……」と言うと、軽戦士Cは“武具換装”でカトラスを構えました。

エルド:
 よかった。さすがに無制限に使えるわけではなかったんですね。

GM:
 ええ。もし無制限に使えるアイテムだとしたら、とてつもなく貴重なアイテムってことになってしまいますからね。今回登場させた“闇の宝玉”は、使用者本人の精神点を消費して使用するタイプのアイテムです。ソード・ワールドRPGでいうところの、コモン・ルーンの指輪に相当するものですね。

バッツの手下A(GM):
 さて、闇で視野が遮られなかったので、バッツの手下Aが援護射撃を実行します。ターゲットは重戦士Dです。(コロコロ)ミス。……しかし、その後方にいた軽戦士Dに流れ矢が命中しました(笑)。ダメージは(コロコロ)13点。

軽戦士D(GM):
 そして、さらについていないことに、この軽戦士Dというのは、戦闘開始前にエルドから“ファイア・ボルト”を撃ちこまれていた奴なんですよね(苦笑)。すでにダメージを受けていた彼は、この一撃に耐えられず、ワンドを手にしたままその場に倒れました。

イーサ&エルド:
 やった(笑)!

 こうして、運命のいたずらにより形勢が逆転すると、ここからイーサが一気に攻勢にでます。レベル3のイーサに対し、敵の海賊たちはレベル1に過ぎず、正面から斬りあうことになれば、その実力差は明らかです。

イーサ:
 重戦士Bに攻撃。(コロコロ)クリティカルヒット! ダメージは14点だッ!

重戦士B(GM):
 その一撃で重戦士Bが倒されることはありませんでしたが、それでも瀕死の重傷ですね。(コロコロ)重戦士Bは士気判定に失敗しました。彼は恐怖に顔を引きつらせて、あとずさりしはじめます。
「う、うわぁぁぁ……。それ以上、来るな! 来るなーッ!」

 この直後、軽戦士Cからオーブを受け取った軽戦士Aが“ダークネス”を発動させたのですが、一度敵に隣接してしまえば、実力で他を圧倒するイーサにとっては闇もたいした障害になりませんでした。戦意を喪失して船首側に撤退しようとしていた重戦士Bも、あえなくイーサにとどめを刺されてしまいます。

イーサ:
(コロコロ)逃げようとする重戦士Bに5点のダメージ。

重戦士B(GM):
 それで重戦士Bの生命点はピッタリ0点になりました。まあ、さすがにこれなら生死判定には失敗しないでしょうが……。(コロコロ……出目は1ゾロ)あッ……。
 これは……あれですね。重戦士Bは、イーサの斬撃を受けて意識を失うと、そのまま斜め前方に倒れ込み、船側を越えて海に落ちていきました。ドボーンッ!

イーサ&エルド:
(笑)

 波に乗り始めたイーサは、その後も暗闇をものともせず次々と海賊たちを倒していきます。

イーサ:
 重戦士Aに攻撃。(コロコロ)命中。クリティカルしてダメージは14点。

重戦士A(GM):
「ぐはッ!」
(コロコロ)イーサの攻撃を受けた重戦士Aは昏倒しました。

イーサ:
 もしかして、こいつらって意外と弱い?

GM:
 基本的に海賊たちは金属鎧を装備していないので、格上のライト・ウォリアーであるイーサとの相性が良くないんですよ……。もし、開幕直後からイーサが“インフラビジョン”を唱えて闇の中に飛び込んで戦っていたとしたら、もっと楽に戦いを進められていたでしょうね。

イーサ:
 なるほど、そうだったのか。バッツと戦ったときもそうだったんだが、どうも敵の戦力把握は苦手でな……(苦笑)。やりようによっては、相手が使ってきた“ダークネス”を逆手にとって蹴散らすこともできたわけだ。

GM:
 まあ、GMの当初の想定では、そうなるはずだったんですけれどね(苦笑)。

 こうして、この戦闘の結末もあらかた見えてきて、ようやく一息つけるかと思えたそのとき、思わぬところから伏兵が現れました。

エルド:
 では、僕の番。“ライト”を唱えて“ダークネス”をかき消します。(コロコロ)発動。

 その伏兵とは、エルドです。この何気ないエルドの行動が、イーサを窮地へと陥らせます。

軽戦士B(GM):
 お、闇が晴れましたか。ならば、軽戦士Bはさきほど軽戦士Dの倒れている場所で拾い上げたワンドを使い、イーサに対して“エネルギー・ボルト”を放ちます。
「魔弾よ、射抜けッ!」

イーサ:
(コロコロ)魔法抵抗は成功。

軽戦士B(GM):
(コロコロ)ダメージは物理で12点です。

イーサ:
 痛ってぇ。装備が薄いから、抵抗に成功しても結構ダメージが通るんだよな。それで生命点が半分を切った。(コロコロ)士気判定は16で成功。

 第2話のチーター戦などでも言及されていましたが、LOSTの定石のひとつに「回避力が高く防御力の低い相手には、“エネルギー・ボルト”が有効である」というものがあります。それを覆すものとして、“移動回避”という行動オプションが存在するのですが、イーサはそれを習得していないのでした。闇にまぎれていたうちは飛び道具の対象とならずにいられたイーサでしたが、エルドはそのことに気がつかず、“ライト”を唱えてイーサの姿を白日の下に晒してしまったのです。
 そして、そのまま一巡が経過して――

軽戦士B(GM):
 軽戦士Bは、もう一度イーサに対して“エネルギー・ボルト”を放ちます。
「魔弾よ、射抜けッ!」

イーサ:
(コロコロ)魔法抵抗値13で抵抗成功。

軽戦士B(GM):
(コロコロ)10点ダメージです。

イーサ:
 うッ……。ダメージを半減しても3点食らった。(コロコロ)士気判定には成功したが、これ、やばいんじゃないか……?

 ついに、イーサは瀕死の状態にまで追い詰められてしまいました。そして、エルドはさらに失策を重ねてしまいます。

軽戦士A(GM):
 ここでオーブを手にした軽戦士Aの行動なのですが、ついに彼も精神点を使い切ってしまいました。
「クッ……。もう“闇の宝玉”は使えないか……」
 しかたないので、武器を構えます。

エルド:
 やった! これでようやく、思う存分魔法を使えそうですね。ならば、僕は3ウェイト“瞑想”します。

GM:
 ……えーと、その行動を確定させる前に再確認しておきます。戦闘開始前にも説明したとおり、イーサとエルドが移乗を完了しない限り、バッツ海賊団の面々がダウ船に移乗することはありません。それを踏まえたうえで、この状態になってもエルドはまだその場から動きませんか?

エルド:
 いやぁ、スタッフ以外の武器を装備していないもので。その状態で敵船に乗り込むというのもちょっと……(笑)。

GM:
 そうですか。まあ、理解したうえでの行動ならばGMとしては構わないのですけれどね……。

バッツの手下D(GM):
 では、エルドが敵船に乗り込まないようなので、移乗に備えてクロスボウからカトラスに武器を持ち替えた重戦士Dも、その場で“待機”を続けました。

イーサ:
 うッ……。正直、この明るい中、これ以上俺ひとりで前線に立ち続けるのは無理だぞ。もし倒れることになったら、そのときはすまん。

エルド:
 あれ? もしかして、僕もそっちに行ったほうがよかったですか?

イーサ:
 ああ。なにせ、次に“エネルギー・ボルト”を撃ち込まれると、抵抗に成功したとしても気絶する可能性が高いっていう状況だからな(汗)。

 一旦は勝利を確信したにも関わらず、ここにきてイーサ絶体絶命の危機。このまま絶命してしまおうものなら、まるでエルドに殺されたようなものです。

軽戦士B(GM):
 ……イーサもつくづくついていませんね。ここで、ワンドを手にした軽戦士Bに手番がまわってきましたよ。

イーサ:
 なんてこったい……。俺の旅はここで終わりなのか(汗)?

軽戦士B(GM):
 ここで軽戦士Bがワンドを使えば、おしまいですね……。
(すこし間を開けてから)
 ところが、なんと軽戦士Bの精神点もすでに底をついていたのでした(苦笑)。しかたないので、軽戦士Bは“武具換装”でカトラスを構えます。

イーサ:
 おおッ! なんとか“エネルギー・ボルト”は免れたか。

 軽戦士Aとほぼ同じタイミングで精神点を消費していた軽戦士Bの精神点がここで尽きたのは必然ですが、エルドはそこまで計算して行動していたわけではありません。ただただ、エルドは自分の欲求に忠実だったのです(苦笑)。

エルド:
 よし! それでは、僕の番ですね。軽戦士Aに“ファイア・ボルト”を撃ちこみます! (コロコロ)行使値は14でクリーンヒット! ダメージはクリティカルして物理20点と魔法3点!

軽戦士A(GM):
 それはさすがに耐えられません。軽戦士Aは物理ダメージが入ったところで絶命しました(苦笑)。

エルド:
 やった! ようやくスッキリしました。あー、スッキリ!

 この後、“ダークネス”と“エネルギー・ボルト”が飛んでこなくなると、バッツの手下による援護射撃を最大限に得られるようになったこともあり、イーサたちはそのまま船尾を制圧することに成功します。
 なお、それまで敵船に移乗していなかったエルドも、戦闘終了直前にようやく移乗を果たし、それに続いてようやくバッツの手下たちも敵船上への移動を開始したのでした。

GM:
 こうして、あなたたちはダウ船の船尾に配置されていた敵をあらかた排除することに成功しました。

バッツ(GM):
 それを確認したバッツは、「よし、もう一息だッ! 一気に制圧するぞッ!」と号令をかけて、船首側の攻撃も射撃から移乗へと切り替えさせます。

GM:
 バッツの号令をうけた手下たちが前方にかけられた橋に群がり、いよいよ本腰を入れてダウ船へ乗り込もうとしています。対するアッバス海賊団は、前方の橋と、船尾に乗り込んできたあなたたちの両方を同時に相手にしなくてはならないという絶望的な状況に追い込まれました。

メルテム(GM):
「くそッ! 旗艦はまだかッ!?」そう言って、後方へ向けられたメルテムの目には、まだ遠く離れた場所に位置する旗艦の船影が小さく映ります。
「なぜだ? なぜ、まだあんなところに……?」そう呟いたメルテムは、ハッとなにかに気がついて船縁に走り、海面をにらみつけます。そして、その潮の流れを目にしたところで、ようやく自分たちがはめられたことに気がついたのでした。
「海流に流されているだと……? さては、謀ったなバッツ!」

アッバスの手下(GM):
 憤るメルテムに、手下たちは悲鳴にも似た声を投げかけます。
「ダメです、船長ッ! もはや船尾の防衛は不可能ですッ!」
 一気に攻勢にでたバッツたちに対して、アッバス海賊団の手下たちの士気は、もはや崩壊寸前です。

メルテム(GM):
 ところが、もはや勝敗は決したかと思われたそのとき、メルテムがあらんかぎりの大声を張り上げました。
「こうなったら一か八かだッ! 右舷のいかりを落とせッ!」

アッバスの手下(GM):
 そのありえない指示に、手下は戸惑いの声をあげます。
「この状況で、いかりをッ!? で、ですが船長――」

メルテム(GM):
「うるせえッ! ぶっ殺されたくなけりゃ、つべこべ言わずに、いますぐやれーッ!」
 寸刻を争う状況に、メルテムの口からは有無を言わさぬ怒声が響きました。

アッバスの手下(GM):
「アイ、アイ、船長ーッ!」

バッツ(GM):
 そのやり取りを耳にしたバッツは、片目を見開いて驚愕の表情を浮かべます。
「なッ、なんだとッ! メルテムの野郎、正気かッ? そんなことをすれば、船が沈むぞッ!?」

アッバスの手下(GM):
 バッツの心配をよそに、ダウ船の右舷いかりが勢いよく海に投げ込まれました。
「右舷いかり投下ッ! 総員、衝撃に備えろッ! 総員、衝撃に備えろォォォォォォォッ!」

GM:
 ほどなくして、水深のあまり深くない岩だらけの海底に、いかりがガッチリとくい込みます。その瞬間、ダウ船や橋の上にいる者に対して、ガツーンッ!と、前方への衝撃が走りました。
 では、2人とも吹き飛ばしに対する目標値10の筋力判定を行ってください。

エルド:
 あわてて船縁につかまります。(コロコロ)ピッタリ10で成功。

イーサ:
(コロコロ)うわ……失敗。吹き飛んだ。

GM:
 ならば、イーサは3メートル前方に吹き飛んだうえで、目標値9の転倒判定を行ってください。

イーサ:
(コロコロ)6ゾロで成功! なんとか転倒せずにこらえた。

バッツの手下D(GM):
(コロコロ)あなたたちと一緒にダウ船に乗り込んだバッツの手下Dも、なんとか吹き飛ばされずに済みました。

バッツの手下A(GM):
(コロコロ)しかし、ちょうど橋を渡ろうとしていたバッツの手下Aは、残念ながら筋力判定に失敗です。転倒判定の余地もなく、勢いよく海に投げ出されてしまいました。ドボーンッ!

バッツの手下E(GM):
(コロコロ)唯一、前方の橋を渡り切り、ダウ船に乗り込んだ手下Eは、筋力判定に成功です。

GM:
 凄まじい衝撃を受けて、ダウ船が激しく揺れます。そして、2つの船のあいだに架けられていた橋は小枝のようにポッキリと折れ、あっけなく崩れ落ちてしまいました。同時に両船をつないでいたロープも急激なテンションに耐え切れず、たちまち千切れとんでしまいます。
 ロープによる束縛を解かれたダウ船は、船首を軸にして異常な速度で時計回りに船の向きをかえ、その船尾をバッツ海賊団の旗艦の横っ腹に擦りつけていきました。
 メキメキメキメキ! ズザザザザザザ! ドリドリドリドリ!(そう言いながら戦闘マップを動かし、それを再現してみせる)

クラブホーリングの軌跡

イーサ&エルド:
 おお……!

GM:
 その接触を最後に、やがて両船はその距離を広げていきます。

バッツ(GM):
「チッ! なんてことしやがるッ!」
 バッツは吐き捨てるようにそう言うと、旗艦の船尾楼甲板へと走り、離れていくダウ船の上に取り残されることとなったあなたたちに向かって、あらんかぎりの声を張り上げました。
「オマエらッ! なんとしてもその船を制圧しろッ! そして、いかりを捨てて、アッバスの海賊旗を引き下ろすんだッ! アッバスの旗艦が来る前にそれが確認できれば、オレたちも合流するッ!」

イーサ:
 じゃあ、こっちも大声で叫びかえした。
「わかったッ! なんとかしてみるッ! だから、必ず戻ってきてくれーッ!」

 こうして、ダウ船に取り残されることとなったイーサとエルド。バッツとの合流を図るためには、ダウ船を制圧する必要がありますが、その眼前にはダウ船の船長であるメルテムが立ちはだかるのでした。




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