LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(16)

 メルテムたちとの戦いにおいて、絶体絶命の窮地に追いやられたイーサとエルド。苦し紛れにエルドが唱えた“ダークネス”の30秒(15ウェイト)ほどの効果時間が、彼らに残されたわずかな時間となってしまうのでしょうか?

軽戦士A(GM):
 では、新たに発生した闇の中から、軽戦士Aがエルドに対して攻撃してきます。命中値は6です。

GM:
 この攻撃は闇の中からのものであるため、命中力に-4のペナルティがついています。しかし、闇の中から突然攻撃されることになるエルドも、同様に回避力に-2のペナルティを負った状態で判定してください。

エルド:
 了解です。(コロコロ)回避値12で成功しました。

イーサ:
 おお! エルドの回避力も結構高いんだな。じゃあ、俺は闇の中でメルテムにダガーで攻撃。

メルテム(GM):
 メルテムは“全力回避”を宣言します。回避値は11です。

イーサ:
(コロコロ)12でギリギリ命中。ダメージは8点。

メルテム(GM):
 では、その一撃はメルテムのキャプテンコートを切り裂き、浅からずメルテムを傷つけました。
「クッ! この攻撃……。ただの雑魚ってわけじゃなさそうだな」

バッツの手下D(GM):
 続いて、必死状態のバッツの手下Dが重戦士Aに攻撃します。(コロコロ)しかし、闇の中で振るわれたカトラスは、虚しく空を切りました。

重戦士A(GM):
 そして、その手下Dの背後から軽戦士Bが斬りかかります。(コロコロ)命中してクリティカル!
「これでも食らってくたばりやがれーッ!」
 ダメージは14点です。

バッツの手下D(GM):
「グアアアアアッ!」
(コロコロ)背後から攻撃を受けたバッツの手下Dは、断末魔の叫びを上げてそのまま絶命しました。 

イーサ:
 ついに俺たちだけになっちまったか……。

エルド:
 GM。こちらは2人やられてしまったわけですが、勢力の半壊による士気判定はあるんですか?

GM:
 いえ、バッツの手下たちはあくまでもゲスト戦力なので、友軍とは数えません。イーサかエルドのどちらかが倒れたら、その段階で勢力半壊とみなします。だいたい、あなたたちとバッツの手下たちとのあいだに仲間意識があったようには思えませんでしたし(苦笑)。

エルド:
 了解です(苦笑)。しかし、それならばまだ戦えそうですね。
 僕は1ウェイト“瞑想”しておきます。

軽戦士A(GM):
 では、“瞑想”するエルドに軽戦士Aが斬りかかってきました。

エルド:
 う……。それは、“瞑想”を中断して“回避”します。(コロコロ)回避成功。
 せめて“プロテクション”を掛けておきたかったのですが、もう魔法を使っている余裕もありませんか……。ならば、杖を捨てて、ダガーを構えます。

イーサ:
 俺の手番。メルテムに攻撃を続ける。(コロコロ)おっ、結構いい目だ。13で命中。ダメージは……7点。

メルテム(GM):
 メルテムはさらにダメージを負いましたが、まだ士気判定には至りません。
「よくもやってくれたなッ!」
 イーサの攻撃を受けたメルテムが反撃してきます。メルテムは手に持っていたダガーをイーサに投げつけました。命中値は11です。

イーサ:
 ん? 投てき? 投げると避けにくいとか?

GM:
 いえ、命中値は普通に斬りつけるのと変わりません。もし、イーサの背後に誰かいたのであれば流れ弾判定が発生するところなのですが、闇の中では隣接対象以外を狙って攻撃できませんしね。

イーサ:
 ふむ……。じゃあ、“全力回避”で避けておく。(コロコロ)危なッ! 12で回避成功!

メルテム(GM):
「チッ、こいつまでかわすとは……」

 こうして、“ダークネス”のおかげで、船首側にいる軽戦士Bと重戦士Aが船尾側の戦闘に加わってくることはなく、イーサ対メルテム、エルド対軽戦士Aの構図ができあがります。しかし、“ダークネス”の効果時間が切れてしまえば、4人対2人という絶望的な状況が待ち受けているのでした。

エルド:
 新たに構えたダガーで、軽戦士Aに攻撃します。(コロコロ)命中して6点のダメージです。

軽戦士A(GM):
 その攻撃で、軽戦士Aは軽く傷を負いました。
 その軽戦士Aがエルドに反撃してきます。

エルド:
 普通に“回避”します。(コロコロ)回避成功。この程度の相手であれば、正面からの攻撃は食らいませんよ。

GM:
 言ってくれますねぇ。しかし、闇が晴れてしまえば、現在発生している達成値2の差がなくなるうえに、船首側にいる2人も船尾側の戦闘に参加してくるわけです。本当の戦いはそこからですよ(ニヤリ)。

メルテム(GM):
 さて、次はメルテムの番ですが、ここでメルテムは、ふたたびイーサに対してダガーを投げてきました。命中値は11です。

イーサ:
 また、投てき? (コロコロ)回避値12でそれを避けた。しかし、ダガーを2本投げたってことは、メルテムは無手になったってことか?

GM:
 さあ、どうでしょうね?

エルド:
 僕の番。軽戦士Aに攻撃します。(コロコロ)命中して3点のダメージです。

軽戦士A(GM):
 それは、皮鎧で止まりました。

イーサ:
 じゃあ、俺はメルテムに攻撃。(コロコロ)命中値9はミス。

GM:
 はい、それではここでアナウンスしておきます。軽戦士Bと重戦士Aが“待機”したところで戦闘開始から40ウェイトが経過しました。あと26ウェイトで旗艦が追いついてきます。

イーサ:
 うおッ、こいつは本格的にやばいな……。

エルド:
 そうはいっても、あとはどちらかが倒れるまでひたすら攻撃し続けるしかありません。もう一度、軽戦士Aに攻撃します。(コロコロ)命中。またしても3点のダメージ。くぅ……。僕の攻撃力じゃ、クリティカルを発生させないとそうそうダメージも通りませんか……。

イーサ:
 なら、俺が決めるしかないな。メルテムに攻撃。(コロコロ)ぐはッ。命中値10でミス。ここにきてミスを連発するなんて、なんてこったい……。

 この後、敵味方ともに攻撃が外れ続け、状況の改善が図れぬまま、いよいよこのときが訪れてしまいます。

GM:
 ここで、ついに“ダークネス”の効果時間が終了しました! ダウ船の甲板上に発現していた闇が消失していきます。

軽戦士A(GM):
「ハッ! ようやく互いの顔が見れたなッ! もう外さねぇぞッ!」と、軽戦士Aがエルドをにらみつけました。

エルド:
 攻撃を当てやすくなったのはこちらも同じです。軽戦士Aに攻撃。(コロコロ)命中。ダメージは5点です。うーん……。致命傷には程遠いですね。

メルテム(GM):
 では、メルテムはチラリと斜め前方にいるエルドを視界にとらえると、手に持ったダガーをイーサに投げつけました。射線を斜めにとって、もしイーサが避けたらエルドのほうに流れるようにします。命中値は15です。

イーサ:
 はぁ!? どうやったらエルドのほうに攻撃がいくんだ?

GM:
 いや、そう難しい話ではありません。つまり、こういう軌道でダガーが飛んでいくわけですよ(と言って、戦闘マップ上に軌道を示す)。

ダウ船4

GM:
 イーサがこの攻撃を避けた場合、クロスボウの流れ矢の処理と同様に、メルテムが《2D》の判定で7以上を出せば、投げられたダガーはエルドに向って飛んでいくことになります。いやぁ、込み入った場所での投てきって、誰にあたるかわからなくて危険ですね(笑)。

イーサ:
 くッ……。嫌なことしやがる。……いや、その前に、メルテムはいったい何本ダガーを持ってるんだ?

GM:
 もっともな疑問ですが、見たところメルテムは1本しかダガーを持っていないようですよ(ニヤリ)。さあ、避けますか? それとも避けずに食らいますか?

イーサ:
 ……避ける! (コロコロ)ピッタリ15で回避成功!

メルテム(GM):
 では、メルテムはそれを見てニヤリと笑みを浮かべます。イーサが避けたダガーはそのままエルドのほうへと……。(コロコロ)残念。ダガーはエルドには命中せず、横を素通りしていきました。

エルド:
 まさか、ここで僕のほうを狙ってくるとは……。

GM:
 メルテムにとっては、イーサに避けられたとしてもまだエルドにあたるチャンスがあるわけで、この状況ではこれ以上ないほどお得な攻撃ですからね。

軽戦士B(GM):
 さて、ここで軽戦士Bの行動です。闇が晴れたいま、ためらわずに船尾に向かってきます。そして、イーサの背後まで移動してきました。

重戦士A(GM):
 続けて重戦士Aも船尾に向かい、こちらはエルドの側面に移動します。

イーサ:
 うッ……。この状況は……。

エルド:
 どうやら、次の攻撃がラストチャンスになりそうですね……。
 僕の手番。軽戦士Aに攻撃します。(コロコロ……出目は1ゾロ)うはッ。真っ赤な目が並んでいますねぇ……(苦笑)。

 これまで幾度となく逆転の一撃を放ってきたエルドも、ここにきてダイスの神様に見放されてしまいました。

イーサ:
 じゃあ、俺の番。メルテムに攻撃! (コロコロ)あーッ、同値でミス。……終わる。このままだと完全に終わってしまう……。くぅぅぅ……。
(少し押し黙ってから)
 ……やるならここしかない! “可能性”を使っていまの攻撃を命中させるッ!

GM:
 いいでしょう。では、ダメージ判定をどうぞ。

イーサ:
 ここでやらなきゃ、こっちがやられるんだ! 頼むからいい目が出てくれよ……。(コロコロ)おおッ! ここでまさかのクリティカルヒットッ!

エルド:
 おおッ! これでメルテムにとどめを刺せますかね?

イーサ:
(コロコロ)いや、2回目の威力ロールは奮わず……。ダメージは12点止まりだ。

GM:
 12点!?

イーサ:
 あい、いや……計算違いだな。11点だった……。
(少し考えてから)
 せっかくだし、もう一度“可能性”を使って威力ロールを振り直しておくか。どうせ、ここでメルテムを倒せなけりゃゲームオーバーだからな。(コロコロ)うーん、それでもダメージが1点増えただけかぁ。結局ダメージは12点だ。

メルテム(GM):
 ……12点ですか……。ならば、その一撃でちょうどぴったりメルテムの生命点を削り切りました(笑)。残り生命点ゼロです。
「まさか……」
(コロコロ)メルテムはひざを折って甲板に倒れ込むと、そのまま昏倒します。

イーサ:
 え? それほどダメージを与えてたつもりはなかったんだが……。

エルド:
 どうやら、生命点は低かったみたいですね。

GM:
 まあ、メルテムはライト・ウォリアーですからね。生命点も低ければ、ダメージ減少値も低いわけで、クリティカル込みで3回も攻撃を受けてしまえば、さすがに耐えられませんよ。想定ではもっと攻撃を回避できるものと思っていたのですが、イーサの命中判定のダイス目が冴えていましたね。
 そして、メルテムは敵勢力の指揮官でもあったため、彼が倒れたことで彼の指揮下に加わっていた者は、指揮官の喪失に伴う士気判定を行うことになります。

軽戦士A(GM):
 軽戦士Aの士気判定は、(コロコロ)失敗。
「メ、メルテム船長ッ!?」

軽戦士B(GM):
 軽戦士Bは……。(コロコロ)こちらも失敗。
「うわぁ、もうダメだ。船長がやられちまったら勝ち目はねぇッ!」

重戦士A(GM):
 重戦士Aは……。(コロコロ)あらら……。全員失敗です(苦笑)。
「ま、待ってくれッ! 命だけは勘弁してくれッ!」

イーサ&エルド:
(爆笑)

GM:
 まだ人数で勝るアッバス海賊団ではありましたが、メルテム船長を失ったことで一気に戦意を喪失してしまいました。

 コマンダー技能を取得している者は、勢力の指揮官となり指揮下に加わった者の士気判定にボーナスを与えることができますが、本人が先に倒れてしまうと、このように勢力が一気に壊滅状態に陥ってしまうこともあります。よく言われる、敵の頭を叩けというケースはこれを狙ってということになります。

エルド:
 かなり押し込まれて、このままじゃ負けるかと思いましたが、一気にかたがつきましね(笑)。

GM:
 ええ。イーサが最後に使った“可能性”が運命の分かれ目でした。あそこでメルテムが倒れていなければ、次に軽戦士Bがイーサの背後から攻撃を仕掛けてきたわけで、そうなればアッバス海賊団の勝利が濃厚だったんですけれど……。最初にイーサが12点のダメージだと言ったときに、つい大きく反応してしまったのは失敗だったかもしれませんね(苦笑)。

イーサ:
 まあ、“可能性”の使いどころに関しては、かなり悩まされたけどな。結果的にいい方向に転がったみたいでよかったよ。

エルド:
 さて、メルテムを倒しはしたものの、ゆっくりしている余裕はありません。まずは、倒れずに残っているアッバス海賊団の船員たちに、「殺されたくなければ、いますぐ海賊旗をマストから降ろしてもらいましょうか。それと、いかりも外してください」と命令します。

軽戦士B(GM):
「わ、わかった」
 軽戦士Bは武器を手放して、急いでマストを登って行くと、アッバス海賊団の海賊旗を取り外しました。

軽戦士A&重戦士A(GM):
 残りの2人も、エルドに言われるままにいかりの鎖を船から外して海に投げ捨てました。

エルド:
 それが済んだら、バッツ船長が来る前にアッバス海賊団が持っていた遺産を回収しておきます。オーブとワンド。ほかになにかありますかね?

GM:
 ダウ船の甲板上には色々なものが転がっていますが、魔力感知系の魔法をつかわなければ、どれが遺産なのかは判断できませんね。

イーサ:
 さっきの戦闘で精神点を使い切っちまったから、もう“センス・マジック”は唱えられないんだよな……。

GM:
 実に残念ですね(苦笑)。

イーサ:
 ……あ、そうだ。メルテムの持ってたダガーはなにかありそうだったから、それは拾っておくとしよう。

GM:
 了解です。
(少し考えてから)
 ならば、今回の戦闘では“ダークネス”の中でしかその行為が行われなかったため、その効果をうまく描写できていなかったのですが、特別にこうしておきましょう。メルテムが投げたはずのダガーは、倒れているメルテムの手の中に握られていました。

イーサ:
 ん? もしかして、投げても手元に戻ってくるってやつか?

GM:
 そうですね。詳しくはのちほどじっくりと鑑定してから判明するものとして、プレイヤーにはこの段階で今回入手した遺産の内容について説明しておきます。

“闇の宝玉(ダークネス・オーブ)”
 これを手に持つ者は、ウェイト3の“道具使用”を行い、精神点を3点消費することで、行使力5の“ダークネス”を発動させることができます。
“魔弾の小杖(エネルギー・ボルト・ワンド)”
 これを手に持つ者は、ウェイト3の“道具使用”を行い、精神点を3点消費することで、行使力5の“エネルギー・ボルト”を発動させることができます。
“舞戻る短剣(リターニング・ダガー)”
 この短剣は、最後に柄に触った者(所持者)が合言葉を唱えると、その者の手元に瞬間移動します。合言葉を唱えるのにウェイトを消費する必要はありませんが、短剣を手放してから次の自分の行動手番になるまでのあいだ、この効果は発揮されません。短剣を手元に戻したあとは続けて通常の行動を取れます。ただし、もし短剣を手元に戻すまでのあいだにほかの者がその柄に触れた場合、所持者の権限はその瞬間に柄に触れた者へと移ってしまいます。なお、柄に触れる行為についてもウェイトを消費する必要はありませんが、自分の手番に行う必要があります。

 こうして、薄氷を踏む思いでなんとか勝利を収めたイーサとエルドは、無事にアッバス海賊団のダウ船を制圧し、その困難な戦いの対価として神の遺産まで手に入れることができたのでした。ただ惜しむらくは、ここで“センス・マジック”を唱えることができなかったということで……。




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