LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(17)

GM:
 では、いかりを外されたダウ船は、海流に流されてゆっくりと南下していくことになります。マスト上から海賊旗がはずされて少しすると、海流に乗って先行するバッツ海賊団の旗艦が旋回をはじめたのが確認できました。
 北側からは、アッバス海賊団の旗艦があと少しのところまで迫ってきていたのですが、ダウ船から自分たちの海賊旗が外されたことと、バッツ海賊団の旗艦が反転し、太鼓の音を響かせてオールを漕ぎ始めたことを確認すると、船首を西の方角へと向けてそのまま離脱していきました。
 それからしばらくすると、バッツ海賊団の旗艦がダウ船に接舷してきます。そして、バッツが部下を引き連れてダウ船に乗り込んできました。

バッツ(GM):
「どうやら、上手くいったようだな」
 バッツは甲板上のありさまに目を向けつつ、そう言ってあなたたちの働きを労います。

エルド:
「まあ、かなり際どい戦いでしたが、なんとかなりました。これで、約束通り僕たちは自由の身というわけですね?」

バッツ(GM):
「ああ。神の名において誓った約束は必ず守る。港に戻ったら、あとはオマエらの好きにするがいい」
 バッツはあなたたちに対してそれだけ言うと、それ以降は戦いの後処理のために部下に指示を送り始めました。部下たちにダウ船を操舵するための準備を進めさせると同時に、白魔法を使える者に怪我人の治療もさせていきます。

GM:
 この時点で生命点は全快させてしまってください。ただし、精神点についてはそのままです。

エルド:
 了解です。

イーサ:
 精神点は0点のままか……。

バッツ(GM):
 そしてバッツは、治療を終えた白魔法使いに対して魔力感知の目でダウ船上の荷物を確認するように指示しました。

白魔法使い(GM):
 バッツからの指示を受け、“センス・マジック”を使った白魔法使いは、いくつかの魔法の品々を見つけることに成功します。
「おかしら。アッバスの連中、かなりの数の遺産を手に入れてるみたいですね……。特にこの壺なんかはめっけもんですぜ! どうやら、中にいれた液体を真水に変えることができる魔法の壺みたいです」

エルド:
 おお、素晴らしい。船乗りにとってはかなりありがたい品物ですね。

白魔法使い(GM):
 さらに白魔法使いによる鑑定は進みます。
「あと、このメルテムが履いてるブーツには、足が速くなる魔法が付与されていますね! さしずめ“疾風の靴”といったところでしょうか」

イーサ:
 うおッ。そんなものまであったのか……。

白魔法使い(GM):
「おや? メルテムの野郎、グローブの下に指輪までつけてやがります。あッ! こいつは“守りの指輪”ですよッ!」

バッツ(GM):
「おおッ、そいつはいいもんが手に入ったな!」と、“守りの指輪”に関しては思わずバッツも反応しました。

GM:
 戦利品は以上です。ここで一旦、その効力を整理しておきましょう。

“真水の壷(ピュリフィケーション・ウォーター・ポット)”
 10リットルの容積がある壷で、中に液体を入れて24時間経過させると、どんな液体でも真水に変えてしまいます。
“疾風の靴(クイックネス・ブーツ)”
 このブーツを履いた者は、常時敏捷度に+3のボーナスを得ます。
“守りの指輪(プロテクション・リング)”
 このリングを身につけている者は、常時“プロテクション”の効果を得ます。

エルド:
 くそー。“センス・マジック”さえ使えていれば、これらの遺産を全部僕たちが入手できていたかもしれないんですね。これは、もったいないことをしました。

白魔法使い(GM):
「今回の戦利品はこんなところですかね……」
 こうして、白魔法使いによる遺産の確認は一通り終了しました。

バッツ(GM):
 白魔法使いの報告を聞き終えたバッツは、今度はイーサとエルドに対して、「ところで、オマエたちもなにかいいものを手に入れられたのか?」と尋ねてきます。

エルド:
 うッ……。もしかして、僕たちが入手した遺産のこともばれているのでしょうか……?

 アッバス海賊団との戦闘において、敵勢力が“ダークネス”を連発していたことは、バッツも目撃していました。そして、本来出てきてしかるべき“ダークネス”を発動させるアイテムが見つからなかったため、バッツはイーサとエルドにその所在を確認してきたのです。

イーサ:
「ああ。なにに使えるものかはよくわからないんだが、せっかくだから戦利品として一応こいつをもらっておいた」って言って、メルテムから奪ったダガーを出してみせるが、これって言っちゃまずかったのか?

エルド:
 ……なにをいまさら(苦笑)。

バッツ(GM):
 そのイーサの反応に、バッツは目を丸くします。
「はッはッはッ。こっそりくすねるつもりなのかと思ったが、まさかあっさり出してくるとはな(笑)。まあ、それくらいならダウ船を拿捕した報酬としてくれてやろう」そう言うと、バッツはエルドのほうにも視線を向けました。

エルド:
 ははははは……(汗)。その視線に気がついて、僕も懐からオーブとワンドを取り出します。
「僕のほうも、これくらいは戦利品としてもらっておいて構いませんよね?」

バッツ(GM):
 バッツは苦笑してから、「いいだろう」とそれを許可しました。まんまとダウ船の拿捕に成功したことで、バッツはかなり上機嫌です。
「さあ、野郎どもッ! それじゃ、港に帰るとするぞッ! いざ凱旋だッ!」

バッツの手下たち(GM):
「アイアイ、サーッ!」
 海上に海賊たちの威勢の良い声がこだまします。

 こうして、バッツ海賊団は新たに手に入れたダウ船を伴い、隠れ港に向って舵を切ったのでした。

海図4

GM:
 日が少し傾き始めたころ、旗艦とダウ船が隠れ港に入っていくと、帰りを待っていた者たちが、各々手に持った明かりを大きく振り、鳴り物を鳴らすなどして、その戦果を大いに喜び讃えて出迎えてくれます。

アイダ(GM):
 その中には、「お帰りーッ! お帰りーッ!」と大声を張り上げながら飛び跳ねているアイダの姿もありました。

GM:
 船が着桟すると、手足を縛られたアッバスの海賊たちがダウ船から下船させられます。ダウ船に乗っていた者のうち、今回の戦闘で絶命を免れた者の数は、船長であるメルテムを含めて10人ほどですね。彼らはそのまま、つい半日前まであなたたちが押し込まれていた牢屋のほうへと連れていかれました。

バッツ(GM):
 船から降りたバッツは、あらためてあなたたちに声をかけてきます。
「ご苦労だったな」

イーサ:
「ああ。まあ、ことがうまく運んでよかったよ。……ところで、このあとアッバスの連中からは、いろんな話を聞きだすことになるんだよな?」

バッツ(GM):
「当然だ。連中の戦力やら、アジトの場所やら、聞かせてもらいたいことは山ほどある。なにより、連中がどこでどうやって神々の遺産を手に入れたかを聞きださないとな」そう言うと、バッツはズボンのポケットからクルミを2つ取り出して、それを手の中でもてあそびはじめました。

イーサ:
「だったら、俺たちもそれに立ち会わせてもらえないか? バリス教団のことについてなにか知ってることがないか、連中に確認しておきたいんだ」

バッツ(GM):
「ふむ……。まあ、それくらいなら構わんぞ。だが、奴らから話を聞くのは少々後回しにして、まずは今日の勝利を祝い、うまい酒とうまい飯で腹を満たすとしよう」そう口にしたバッツの視線の先には、宴の準備を進めている手下たちの姿があります。

エルド:
「そうですね。ここしばらくはゆっくりする機会もありませんでしたし、少し息抜きすることにしましょうか」

バッツ(GM):
 では、バッツはアイダ少年を呼び寄せると、あなたたちのことを指し示して、「今後こいつらのことは客人として扱う。こいつらがアジト内にいるあいだ、オマエが案内役を務めろ」と言いつけました。

アイダ(GM):
 すると、アイダはあなたたちの顔を見て、「ついに、おかしらに認められたんだ。よかったね!」と言って顔をほころばせます。

イーサ:
 ははは……。反応に困るな(苦笑)。

バッツ(GM):
「じゃあ、アイダ。オレはしばらくほかの連中の様子を見なくちゃならんから、こいつらの面倒は頼んだぞ」そう言うと、バッツはその場を離れていきました。

アイダ(GM):
 残されたアイダは、バッツの姿が見えなくなるまで見送ったあとで、あなたたちに対して、「で、あんちゃんたちは、これからどうしたいの?」と尋ねてきます。

イーサ:
 そうだなぁ。精神点が底をついてることだし、まずは休みたいところなんだが……。

エルド:
 宴はすぐに始まりそうなんですか?

GM:
 ええ。気の早い者はすでに酒を飲み始めていますが、あと十数分もすれば食べ物もでてくるようですよ。

エルド:
 じゃあ、僕はこのまま宴を楽しむことにして、どこか適当な席につくことにします。イーサさんはどうしますか?

イーサ:
 それなら、俺もエルドと一緒に席に着くとするか。

GM:
 ならば、やがて海賊たちの宴が始まります。
 宴の席では、この地方では珍しい酒と料理が振る舞われ、あなたたちの舌を楽しませてくれます。おそらくは、北の国の郷土料理なのでしょう。そして、そんな料理に舌鼓を打っていると、どこからか聞いたこともない陽気な曲が聞こえてきました。やがて、その曲につられて歌をうたう者が現れ、テーブルの上で踊りだす者が現れ、勝利の宴は大いに盛り上がります。
 あなたたちとはさして面識のなかった者たちも、あなたたちがメルテムを倒し、ダウ船を拿捕するのに大きく貢献したことを知ると、酒瓶を片手にあなたたちの席を訪れて、酒を勧めるとともに讃辞の言葉を贈ってくるのでした。

バッツの手下(GM):
 海賊のひとりなどは、「オマエら、このままうちに入っちまえよ。船に慣れるのには少し時間がかかるだろうが、きっといい戦力になる。なにせ、あのメルテムをブチのめしてくれたんだ。その気があるなら歓迎するぜ?」と勧誘してきます。

エルド:
「それもいいかもしれませんね」

イーサ:
 おいおい、俺たちにはほかにやるべきことがあるんだから、下手な約束はするんじゃないぞ(苦笑)。

GM:
 さて、そのような感じでしばらく宴が続くわけですが、この宴の席でバッツ海賊団の人間となにか話しておくことはありますか?

イーサ&エルド:
 ……。

GM:
 特にないようであれば、酒と料理を楽しんでいるうちに時間は進み、やがて夜になります。


GM:
 日が落ちると、宴の席にちらほら見えていた子供たちの姿も少なくなってきます。そして、少なくなった子供たちの代わりに綺麗に着飾った女性たちが登場し、急きょ用意された舞台の上で、なかなか扇情的なダンスを披露してくれます。どうやら、ここからは大人向けのお楽しみが始まるようです。まあ、アイダ少年は、例外的にあなたたちの案内役としてその場に残っていますけどね。
 そんな時間帯になったころ、ふたたびバッツがあなたたちのところへと足を運んできました。

バッツ(GM):
「どうだ、楽しんでるか?」
 バッツも酒を入れているらしく、白い肌を朱色に染めています。

エルド:
「おかげさまで、楽しませてもらっています。バッツさんもずいぶん飲んでるみたいですね」

バッツ(GM):
「いいや、これくらいは腹ごしらえに過ぎん。まだまだ宵の口だ。今日はとことん飲むぞ!」そう言って、バッツはガハハと笑います。

エルド:
「そうですか(苦笑)。……ところで、アッバス海賊団の尋問はいつごろ行う予定なんです?」

バッツ(GM):
「おっと、そうだった。そのことで、オマエらに声を掛けにきたんだった。すでに手下たちには、メルテムの野郎を地下の部屋に連れていき、下準備を済ませておくように指示を出しておいた。もうそろそろ、準備も整うころだろう。で、そのメルテムへの尋問は、本格的に酒を入れちまう前にすませておこうかと思ったんだが、これからすぐにってのはどうだ?」

イーサ:
「こっちとしては、少しでも早いに越したことはないからな。これからやるっていうなら、それで構わない」

バッツ(GM):
「よし。だったら、ついてこい」そう言うと、バッツはあなたたちを伴って大洞窟の壁面にある横穴のひとつへと向かっていきました。そして、横穴の前まで来たところで、アイダに対して、「オマエはここで待っていろ」と命じ、少年を残してそのまま横穴の中へと進んでいきます。

GM:
 バッツの入って行った横穴は、地下に潜る長い通路です。途中、数十段の階段を下りて、鉄の扉を潜り、あなたたちはとある一室へと連れていかれます。その部屋は6メートル×3メートルほどの大きさがあり、部屋の中にはバッツの手下が数人と、身ぐるみをはがされ、手足の自由を奪われた状態で壁際にはりつけられているメルテムの姿がありました。

メルテム(GM):
「ついにきやがったか、このクソッたれめ……」
 全身に真新しいあざを作ったメルテムが、うなだれたままそううめきます。

 勝利の宴に酔いしれる海賊たち。しかし、一見陽気なように思えても、彼らは情け容赦ない無法者の集まりです。その裏側では、青少年にはとても見せることができない不健全な行いが繰り広げられているでした。




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