LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(18)

バッツ(GM):
 バッツはメルテムの目の前まで歩いて行くと、ぐったりしているメルテムに対して、「待たせたな」と声を掛けました。

メルテム(GM):
 拘束状態にあるメルテムは、目だけを動かしてバッツのことをにらみつけます。

バッツ(GM):
「一応、事前に確認しておくが、オマエの身体に話を聞く前に、自らの意志で口を割るつもりはあるか?」

メルテム(GM):
 バッツの問いに対し、メルテムは勢いよく唾を飛ばすと、「クソ食らえだッ! テメェらにとって有利になるようなことなんて、なにひとつ口に出したりなんかしねぇよ。こっちはもう覚悟できてんだ。さっさと殺しやがれッ!」と吐き捨てました。

バッツ(GM):
 その文句を聞いたバッツは、にやけ顔を浮かべます。
「大いに結構。だったら、オレたちの故郷のやり方で話を聞かせてもらうことにしよう」そう言うと、バッツは部屋の中に置かれたテーブルへと歩み寄り、その上に並べられた、ペンチやハンマー、釘など、様々な道具の中から、小型の万力を手に取りました。バッツは、普段から持ち歩いていたクルミを万力に挟み込むと、ハンドルを回して殻を割ってみせます。そして、クルミの実を殻の中から取り出し、それをメルテムの顔の前に差し出しました。
「食うか? 濃厚でうまいぞ」

メルテム(GM):
 メルテムは口を堅く結んで、無言のままバッツをにらみつけます。

バッツ(GM):
「そうか、残念だな……」
 続けて、バッツはあなたたちに対してもクルミの実を勧めてきました。
「メルテムはいらんそうだが、オマエらはどうだ?」

イーサ:
「……」

エルド:
「では、僕がいただきます」

バッツ(GM):
 エルドにクルミの実を手渡すと、バッツはポケットの中からもうひとつクルミを取り出し、ふたたび万力で殻を割ります。
「おい、イーサ。オマエもどうだ?」

イーサ:
「……そ、そうだな……」
 じゃあ、俺もクルミの実を受け取って食べるとしよう。

バッツ(GM):
 2人がクルミの実を頬張る姿を満足気に見ると、バッツはさらにクルミを割り始めました。そして、慣れた手つきでクルミを割りながら、こんなことを口にします。
「オレたちは北の国の出身だ。わけあってこの土地まで流れてくることになったわけだが、こっちに来てよかったと思えることがいくつかある。そのうちのひとつは、うまいクルミが大量に手に入ることだ」

イーサ:
「ほう。北のほうじゃクルミは手に入らないのか?」

バッツ(GM):
「まあ、あることにはあるんだが、希少品だ」イーサにそう答えたバッツは、クルミの実を頬張りつつメルテムに近づきます。
「……さてと、メルテム。これからオマエには知ってることを洗いざらい吐いてもらうことになるわけだが、まあ、そう緊張するな。間違っても、オマエを死なせたりはしない。それに、延々と時間をかけて痛めつけるようなこともしない。オレがやることはいたってシンプルだ」そう言うと、バッツは新たに2つのクルミを手の中に握り込み、それを器用に回転させはじめました。
「何年もこんなことを続けてると否が応でも気付かされるんだが、どうやら世の中には2種類の人間がいるらしい。それは、痛みに屈する者と、屈しない者だ。この後者に属する連中はいろいろと面倒でな。どんなに痛めつけても、死ぬまで口を割ろうとしない。まるで沈黙したまま死ぬことが勝利であるとすら思っていやがる。きっとオマエもそういう人間なんだろうな……」
 バッツはそこまで話してから、歯を食いしばり、手に力を込めます。細かく震えるこぶしの中から、パキッと乾いた音が聞こえました。そして、バッツがゆっくりと手のひらを開くと、粉々になったクルミの殻がこぼれ落ちます。
「……だが、そんなたぐいの連中にすら、人が変わったように口を割らせちまう方法がある。これはオレの故郷のやり方で、男にしか通用しない方法なんだがな……」

イーサ&エルド:
(失笑)

GM:
 どうやら、察しがついたようですね(笑)。数日前にバッツへの情報提供を拒んでいたら、あなたたちが受けることになっていた予定の拷問ですよ。

イーサ:
 素直に全部話しておいてよかったな……(汗)。

バッツ(GM):
 バッツはテーブルの上から、先ほどクルミ割りに使った万力を手に取ります。
「いいか? チャンスは3回だ。もし、オレが望む答えを返せないようなら、まずオマエの大事なもんを片方潰す。次にもう一度答えられなかったら、残りの一方を潰す。最後の1回は……まあ、言わなくてもわかるよな? この方法は、泡を吹いて気絶しちまうくらいの激痛を与えることになるが、どうもそれだけじゃないらしくてな……。まあ、一言でいえば、心が折れちまうんだよ。こいつをやられると、それまで覚悟を決めた目をしてた奴らが、まるで人が変わったようにペラペラと口を割りやがる。そのあたりは馬の去勢と似たようなもんだな……」そう言うと、バッツはメルテムの下半身にそれを装着させました。
「さてと……。それじゃ、準備が完了したところで、さっそくひとつ目の質問だ。オマエらのアジトの場所を教えてくれ。制限時間はオレが10を数え終えるまでだ。……10……9……」
 バッツは数字のカウントにあわせて、万力のハンドルを絞めていきます。

メルテム(GM):
 メルテムは顔を苦悶に歪めつつも、「誰がオマエらなんぞに教えるもんかッ!」と拒絶の言葉を口にしました。

バッツ(GM):
「8……7……6……」
 バッツの指に力が込められ、万力はさらに絞められていきます。挟み込まれたものが押しつぶされて、万力の端から少しはみ出してきました。

メルテム(GM):
「うううッ……」

イーサ:
 うへぇ……。

バッツ(GM):
「5……4……3……」

メルテム(GM):
「ウグググッ……。ヒィッ! ヒィッ! ヒギィッ! ギ、ギャーッ!」
 それまでなんとか堪えていたメルテムでしたが、やがてその痛みに耐えられなくなり、大声で悲鳴を響かせます。

バッツ(GM):
「ん~。いい声だ。しばらくこの状態を楽しむのも悪くない……。悪くはないんだが、あと2回は同じことができる。というわけで、今回はあまり引き伸ばさず、このまま最後まで行ってみるとしようか」そう言ってニンマリを笑みを浮かべると、バッツはハンドルをさらに回していきます。
「2……1……ゼロッ!」

イーサ:
 俺はカウントにあわせて目を閉じた。

メルテム(GM):
「ウギャアアアアアアアーッ!」
 狭い拷問室の中で、その悲鳴は鼓膜を破らんほどに響きわたりました。

GM:
 万力のあいだから圧潰した肉片がはみ出し、それを伝って真っ赤な血液が床にしたたり落ちます。

メルテム(GM):
「アガッ、アガッ、アガッ、アガガガガガガガッ」
 メルテムは声を枯らして言葉にならない悲鳴を漏らし続けています。その顔は涙や鼻水やヨダレでくしゃくしゃになり、とても見られたものではありません。

バッツ(GM):
「おお、おお。気絶せずによく頑張ったな。これでひとつ目は完了だ。どうだ? 単純明快だろ」そう言って、バッツは万力のハンドルを緩めると、それを一旦メルテムの身体から外しました。
「なあに、大丈夫さ。まだオマエは男だよ。もう少しで生まれ変わっちまうけどな」
 バッツは自分の言葉に思わず失笑しながら、今度はまだ無事な部分に万力を装着させていきます。

エルド:
 僕は興味深そうにそれを見ています。

イーサ:
 よく見てられるな(苦笑)。俺はずっと目を背けたままでいる。

GM:
 了解です(笑)。しかし、メルテムに対する万力を使った拷問はここで終わってしまいました。バッツがふたたび万力に力を込めようとすると、間髪入れずメルテムが声を発します。

メルテム(GM):
「や、やめてくれッ!」

バッツ(GM):
「ん? やめてくれ、だって? オイオイ、まだ音を上げるには早すぎるんじゃないか? チャンスはあと2回もあるんだぞ?」そう言うバッツの顔には満面の笑みが浮かんでいます。

エルド:
 バッツさんはドSですね(笑)。

メルテム(GM):
 メルテムは大きく首を横に振ると、「い、嫌だッ! 頼むからもう勘弁してくれッ! 答えるッ! いますぐ質問に答えるからッ!」と必死に懇願しはじめました。

GM:
 こうして、拷問に屈したメルテムは、あっさりとアッバス海賊団のアジトの場所を白状したのでした。
 ちなみに、アッバス海賊団のアジトはVC地点にある小島だとのことです。

イーサ:
 そうか。VC地点には島があるのか……。

GM:
 スケールが小さいので、さすがに地図上には描かれていませんけどね。アッバス海賊団のアジトに限らず、小島はいくつも点在しています。

バッツ(GM):
「なるほどな。そんなところにいやがったのか」
 バッツはメルテムの答えに満足すると、イーサとエルドに対してこう言ってきます。
「オイ、オマエらもコイツから聞いておきたいことがあるんだろう? オレはあとでじっくりと話を聞くことにするから、オマエらはいまのうち好きなように聞いてみな」

イーサ:
「あ、ああ。わかった」
 じゃあ、メルテムに質問してみるしよう。そうだな、まずは……。
「アッバス海賊団は、バリス教団となにか関わりがあるのか?」

メルテム(GM):
 もはや、メルテムに質問を拒む気力はありません。彼が知りうる情報は、ペラペラとなんでも話してくれます。
「も、もちろんだ。アッバス海賊団の中にはバリス信徒も多くいる。オレもそうだ。バリス教団の連中の頼み事を何度かきいたこともある」

イーサ:
「なら、サーラールという名の男は知ってるか?」

メルテム(GM):
「サーラールというのは、バリス教団の指導者の名前だ。その男ならば、何度か会ったことがある」

イーサ:
「ここ最近、その男からなにか頼まれなかったか?」

メルテム(GM):
「……頼み事というわけではないが、2週間ほど前に、バッツ海賊団の2番艦が単独で海上を漂っているところを見かけたとしても無視するようにとは言われていた」

エルド:
「ふむ……。サーラールがそう言ったということは、やはりバッツ海賊団の2番艦は“死神の吐息”の実験のために使われたみたいですね。しかし、なぜサーラールは、バッツ海賊団の2番艦に手を出すななんて言ったのですかね? アッバス海賊団にその船を拿捕させてもよかったような気がしますが……」

イーサ:
「……いや、そこはあえてクゼ・リマナで総督府に拿捕させようとしてたんじゃないか? たとえば、“死神の吐息”の脅威を知らしめるために……。ただ、それだけじゃたんなる変死体で処理されてしまうかもしれないから、あえて総督も同じ殺し方をしたと……」

エルド:
「なるほど。バリス教団が“死神の吐息”という力を手にしたことを誇示しようとしたというわけですね。……しかし、それならバッツ海賊団の2番艦を使わずとも、街中で“死神の吐息”を使えばよかったのでは?」

イーサ:
「それは、街中で使うにはまだ効果が未知数だったからじゃないか? 海上で使えば、船以外に被害を出さずに済むだろ。バッツ海賊団はアッバス海賊団と対立しているんだし、ちょうど手ごろな実験対象だったんじゃないかと思うが……」

エルド:
「ふむ……」
 まあ、それで一応筋は通っていますかね……。

イーサ:
「じゃあ、次の質問だ。以前アッバス海賊団の船がバリスの聖域に向かったことがあるらしいという話を聞いたが、それはなんのためだ?」

メルテム(GM):
「……たしかに、ずいぶん前にバリス教団の依頼で聖域に船を出したことがあったな。そのときは、教団の何人かを聖域のある海上で船から降ろした」

エルド:
「アッバス海賊団の人間は、一緒に聖域の中には入って行かなかったのですか? あなたたちも遺産を所持していたようですが……」

メルテム(GM):
「オレたちが所持していた遺産は、つい最近、バリス教団の高速船をオレたちのアジトに停泊させ、水や食料を補充させてやったことの対価として、バリス教団から譲り受けたものだ。直接オレたちが聖域から持ちだしたものじゃない」

エルド:
 あ、やはり、バリス教団は自前の船を持っていたんですね。

イーサ:
「バリス教団の船は、まだお前たちのアジトに寄港してるのか?」

メルテム(GM):
「いいや、6日ほど前に出ていった」

エルド:
「そのバリス教団の船がどこに向かったかはわかりませんか?」

メルテム(GM):
「いや……。行先まではわからない。だが、北上していったのはたしかだ。ギュネ・ラヴァソン地方……。あるいはその先にある王都まで向かったんじゃないか?」

エルド:
「なるほど。ということは、王都にたどり着くまでに十分な水と食料は補充していったというわけですね?」

メルテム(GM):
「まあ、王都までなら、3、4日で着けるからな……。連中の船には百人近い人間が乗っていたが、それでも優に20日はもつ量の水と食料を補充していった」

エルド:
「ふむ……」
 おそらく、バリス教団の目的地は王都だと思うんですが、聖域に出入りしていた件については謎ですね……。普通、教団の人間って、聖域に出入りしたりするものなんでしょうか?

GM:
 LOSTの世界設定として、信心深い者ほど聖域探索に拒否反応を示すというものがありますから、エルドがそのあたりのことを不思議に思うのも当然ですね。まあ、聖域に入って神の降臨を祈るなどの行為であれば、信心深い者も抵抗なく行えるでしょうが……。

イーサ:
 うーん……。とはいっても、ただ出入りしていただけでなく、遺産を手に入れていたらしいからな……。とても、敬けんな信者の行いとは思えないが、大義のためにはやむなしってことなのか? まあ、国家転覆を企てようとしてるなら、力があるに越したことはないんだろうが……。

エルド:
 じゃあ、メルテムに、「バリス教団の者たちは、聖域に入るときと出てきたときとで、なにか違ったところなどはありませんでしたか?」と聞いてみます。

メルテム(GM):
「いや。オレたちは連中を聖域まで送り届けただけで、帰りのことは知らない」

エルド:
「え? では、帰りはどうしたんです?」

メルテム(GM):
「帰りのことまでは頼まれなかったから、アイツら自身でどうにかしたんだろ。オレたちとしても、あんなに街に近い場所で長時間船を停泊させているわけにもいかなかったからな」

エルド:
 うーん……。帰りがどうにかなるくらいなら、行きも送り届けてもらう必要なんてなかったのでは?

イーサ:
 いや。つまりバリス教団は、帰還方法についてはあらかじめ確保していたってことだろ。おそらく、“リターン・ホーム”みたいなものが使えたんじゃないかと思うが……。

“リターン・ホーム”
 術者をあらかじめ用意しておいた魔法陣の描かれている場所に帰還させる、レベル6の白魔法です。もしも、魔法陣が消されてしまうなどした場合は効果があらわれないので、注意が必要です。また、この魔法の効果は術者本人にしか及びません。

 上記説明にあるとおり、“リターン・ホーム”では術者しか帰還できません。そのため、イーサも「“リターン・ホーム”みたいなもの」と発言しています。仮に、聖域内に入っていったバリス教団関係者の全員が“リターン・ホーム”を唱えられるのだとしたら、全員戦闘レベル6以上となるわけで、恐るべき高レベル集団だということになります。

エルド:
 だったら、アッバス海賊団に聖域まで送ってもらったのはなぜなんでしょうか? 先ほどの話では、バリス教団も自分たちの船を持っていたようなのに……。

イーサ:
 そういうことは、直接メルテムに聞いてみるとしよう。
「なあ、メルテム。なんで、バリス教団の連中は自前の船で聖域に向かわなかったんだ?」

メルテム(GM):
「ああ。それだったら、バリス教団の船は新造船みたいだったから、その当時にはまだなかったんじゃないか?」

イーサ:
 なんだ、そんなことか。

エルド:
「ちなみに、そのバリス教団の船というのは簡単に造れるようなものなんですか?」

メルテム(GM):
「いや。あの大きさの高速船を造船するためにはかなり大きな造船所が必要だし、完成するまでに最低でも1年はかかるだろうな」

イーサ:
 うお。船1隻造るのに、1年もかかるのかよ。それも造れる場所が限られてるとか……。じゃあ、連中はいったいどこでどうやって船を造ってたっていうんだ?

エルド:
 ……いえ、イーサさん。もし、バリス教団が表の世界の人間ともつながりを持っているのだとしたら、そう難しい話ではないのかもしれませんよ。バリス教団の船であることは隠したまま、港町の造船所で大っぴらに造らせていた可能性もあります。
「バッツのおかしら。クゼ・リマナほど大きな港湾都市になら、バリス教団が使っているという大型高速船を造れる設備もあるんでしょうが、ほかにもそういった場所はあるんでしょうか?」

バッツ(GM):
「それだけの設備を備えてるクゼ・リマナ以外の港町となれば、この周辺に限ればグネ・リマナくらいなもんだろうな。なにせ、あそこは軍港都市だ。造船設備は一級品だぞ。聞いた話じゃ、あそこの領主は総督府とあまり仲がよくないらしいが……」

エルド:
「ふむ。グネ・リマナですか……。そういえば、以前グネ・リマナを目指して旅をしている人に会ったことがありましたね……」

イーサ:
「バリス教団幹部のファルザードとシーラだな……。しかし、実際問題、軍港でバリス教団の船を造らせるなんてことができるのか?」

エルド:
「まあ、そこの領主は総督府と仲がよくなかったという話ですから、敵の敵は味方ということで協力してくれたのかもしれません」

イーサ:
 じゃあ、バリス教団は1年以上前からグネ・リマナの領主と手を結んでいて、高速船を造らせていたってことか?

GM:
 あー、その可能性を否定するわけではありませんが、なにもオーダーメイドである必要はありませんよね。まだ正規登録されていない建造中の船を横流ししたということもありえるわけです。たとえば、表向きは強奪されたことにするとかして……。

イーサ:
 あ、なるほどね。

『ガンダムシリーズ』に登場するアナハイム・エレクトロニクス社の得意技です(笑)。

エルド:
「しかし、あのファルザードという人はグネ・リマナに向かう前にもいろいろな場所に足を運んでいたようですが、それはバリス教団の協力者のもとを訪れていたということでしょうか? だとすると、この国の中には現在のカーティス王国の体制に不満を抱いている者が多くいるということになりますね」

イーサ:
「そうなのかもしれないな……」

エルド:
「バリス教団がクゼ・リマナを離れて王都方面に向かっているいま、彼らが本格的な活動を開始するまで、もうそんなに時間がないのかもしれませんね……」

イーサ:
「うむ……。ただ、これまでの話でひとつ気になることがある……。バリス教団が本当に国家転覆を企んでいるのだとしたら、わざわざ“死神の吐息”を使ってみせて、力の誇示なんてする必要があったんだろうか?」

エルド:
「たしかに……。力を誇示しても、かえって警戒されてしまうだけですからね……」

イーサ:
「俺には、サーラールという人物が、“死神の吐息”なんていう無差別に人の命を奪ってしまうような代物を軽々しく使うような人間だとは思えない。少なくとも、ベルカントと名乗っていたころの父なら、そんなものは絶対に使わないはずだ。だから、この一連の事件には、なにかもっとほかの意図があるような気がしてならないんだ……」




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