LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話(19)

バッツ(GM):
「さて、ほかにメルテムに聞いておきたいことはあるか?」

イーサ:
「いや、もう十分だ。あとは、サーラール本人に直接会って聞くことにする」

バッツ(GM):
「そうか。なら、あとは適当に宴を楽しんで、今日のところはゆっくり休んでおけ」

イーサ:
「ああ、そうさせてもらうとしよう」

GM:
 では、イーサとエルドが拷問部屋から出て港に向かって通路を歩いていくと、その途中で背後からふたたび激しい悲鳴が響き始めたのでした。

エルド:
 あちらは、ここからが本番のようですね(苦笑)。

 バッツは神の名において誓っていない約束については平然と破るようです(笑)。さすがは海賊。品行方正とは程遠い存在です。

GM:
 あなたたちが港に戻ると、横穴の入り口近くでアイダが、飲み物を片手にあなたたちが出てくるのを待っていました。

アイダ(GM):
「お帰りー。なんだかげっそりしてるみたいだけど、大丈夫?」

イーサ:
「う、うむ……。あまり見たくないものを見てしまったからな……」
 まあ、エルドは楽しんでいたようだが(笑)。

エルド:
 いえいえ、僕は昔のことを思い出していただけですよ。

アイダ(GM):
「疲れてるようなら、休める部屋に案内しようか?」

イーサ:
「ああ、頼む」

GM:
 では、アイダはあなたたちを空いている横穴へと案内してくれます。横穴といっても、牢屋と違って内装はしっかりとしています。

アイダ(GM):
「オイラの家はすぐ隣だから、なにかあったら声をかけてね。それじゃ、お休み」そう言うと、アイダは自分の家へと帰っていきました。

エルド:
「……さて、イーサさん。これからどうします? バリス教団は船で北上したようですけれど……。聞いた話から推測すると、だいぶ距離を離されしまったようですね」

イーサ:
「そうだな。バリス教団の船がアッバス海賊団のアジトを離れてからすでに6日か……」
 これから追いかけても、すぐに追いつけそうにはないよな……。だったら、バリスの聖域に行ってみて、バリス教団の痕跡を探してみるか? もしかしたら、教団が手に入れたものや、これから行おうとしている計画の内容を示す手掛かりになるようなものが残されているかもしれない。

エルド:
 でも、バリスの聖域は海底にあるんですよね? 僕たちだけでは中に入れないのでは?

GM:
 そこは心配しなくても大丈夫ですよ。すでにイーサは“ウォーター・ブリージング”を使えるレベルに達しており、バッツ海賊団のアジトには白魔法レベル3のユルヤナ司祭がいます。“ウォーター・ブリージング”は寺院で教えてもらえる魔法なので、相応の対価を支払えばここで教えてもらうこともできます。

エルド:
 なるほど……。ですがそのほかに、アッバス海賊団のアジトに乗り込んで遺産を奪うという選択肢もありますよ。アッバス本人に話を聞けば、バリス教団についてもっと詳しい情報が手に入るかもしれませんし……。
(少し考えてからなにかを思いだして)
 あッ、そういえば……。
「イーサさん。もし今後どうするかを迷っているのであれば、一旦クゼ・リマナに戻りませんか? このあとでどこに向かうにしても、一度タルカン様のところに戻って、これまでの報告をしておいたほうがいいと思うんですよ。そうすれば、タルカン様に移動手段を用意してもらえるかもしれません」

イーサ:
「ふむ……。それもそうだな。じゃあ、今晩はここで休んで、明日クゼ・リマナに向けて出発するとしよう」

エルド:
「わかりました。では、明日になったらバッツさんに途中まで船で送ってもらえないかお願いしてみましょう」


 そして、翌日になります。

エルド:
 目が覚めたら、バッツさんのことを探します。

GM:
 では、探し始めてすぐに、バッツが桟橋にいるところをみつけました。

エルド:
「おはようございます、おかしら」

バッツ(GM):
「おう。もう起きたのか」

エルド:
「ええ。今日、ここを出発しようと思っているので」

バッツ(GM):
「そいつはまた、ずいぶんと急ぐんだな」

イーサ:
「ああ。一刻も早くバリス教団を追いかけないと、手遅れになるかもしれないからな」

エルド:
「そこで、おかしらに相談なのですが、僕たちをクゼ・リマナの近くまで船で運んでもらうわけにはいきませんか?」

バッツ(GM):
「……船でクゼ・リマナの近くまでか……。まあ、西の街道の端まででよければ、送ってやらないこともないが、どのみち今日は無理だな」

エルド:
「どうしてですか?」

バッツ(GM):
「昨日の戦闘で、しこたま船体にダメージを受けたからな。今日は船を陸に上げて修繕作業にかかりきりになる予定だ。明日になってもいいならダウ船で送ってやるが、どうする?」

イーサ:
 ふむ……。それでも、徒歩でクゼ・リマナに戻るよりは断然早そうだな。
「じゃあ、それで頼む」

 こうして、イーサとエルドは、バッツに帰りの船を出してもらえる約束を取りつけました。

エルド:
「ところで、おかしら。昨日の戦利品の中で、なにかめぼしいものはありましたか?」

バッツ(GM):
「ああ。思った以上に使えるものが手に入ったぞ。ダウ船が手に入っただけでもありがたいってのに、嬉しい誤算ってやつだな」

エルド:
「あの……。なかには、サイズが合わなくて使えないものとかあったんじゃないですか? たとえばブーツとか……」

バッツ(GM):
「いいや、そんなことはなかったぞ。なにせオレたちは百人所帯だからな。誰かしらは使える」

イーサ:
 そりゃそうだ(笑)。

エルド:
 クソ―ッ(笑)。どうにかして、“疾風の靴”をもらえないものですかねぇ……。
(しばらく考えてから)
「では、この“魔弾の小杖”と“闇の宝玉”を、“疾風の靴”と取り換えてもらえませんか?」

バッツ(GM):
「なんだ、そんなに“疾風の靴”が欲しいのか……? まあ、交換ってことならいいだろう。特にその“闇の宝玉”は海戦時に役立ちそうだからな」

エルド:
 やったッ!

 エルド、念願の“疾風の靴”をゲットです(笑)。これで、エルドの敏捷度が+3されて19になりました。
 たしかに、互いに黒魔法を使えるイーサとエルドにとって、“魔弾の小杖”と“闇の宝玉”は無用の長物でしたから、このトレードは価値のあるものだったと言えるでしょう。ただ、もし今後アゼルと合流することがあれば、それらもかなり重宝するアイテムとなるはずでしたが……。

GM:
 では、特にやることがなければ、翌日まで時間を進めてしまいます。


GM:
 翌日の早朝、バッツは約束どおり、新たに手に入れたダウ船であなたたちをXN地点まで送ってくれました。その日は朝から天候も良く、季節風を目いっぱい帆に受けたダウ船は、朝6時半にはXN地点に到着します。

ビューク・リマナ地方西部地図06

イーサ:
 うおッ。とんでもなく速いなッ!

バッツ(GM):
 上陸に適した地点に船を停泊させたところで、バッツはあなたたちに対して、「送ってやれるのはここまでだ。これ以上クゼ・リマナに近づくと、こっちも面倒なことになりかねないからな」と言ってきました。

イーサ:
「ありがとう。ここまでで十分だ」

バッツ(GM):
「最後にこれだけは言っておく。もし、オマエらがオレたちのアジトの場所をおおやけにするようなことがあった場合には、草の根をかき分けてでも探し出してその代償を支払わせることになる。くれぐれも、そのことだけは忘れるなよ」そう言ってバッツはあなたたちににらみを利かせます。

イーサ:
「ああ、わかった。隠れ港の場所については、絶対に口外しないと約束しよう」

エルド:
 まあ、すでにある程度の場所までは特定されていたわけですし、僕たち以外のところから漏れる可能性もあるとは思いますけどね……。
「あ、そうだ。おかしら。別れる前に教えてもらいたいことがあります。結局のところ、ティルクというのはなんのことだったのですか? 聞いたところ、誰かの名前のようでしたが……」

バッツ(GM):
「ああ、ティルクか……。それだったら、半年ほど前にうちに入ってきた男の名前だ。オマエと同じ黒い肌の男で、しばらく下働きを務めたあと2番艦に乗船するようになっていたんだが、あの件があって以来消息不明になっている。同じ肌の色同士、オマエと知り合いなんじゃないかと思ったんだがな」

エルド:
「ふむ。黒い肌の男ですか……。なにか特徴とかはありませんでしたか?」

バッツ(GM):
「……そうだな。すぐに思いつくことといえば、キツネのように吊り上がった目をしていたことくらいか」

エルド:
 それって……(笑)。

イーサ:
 えーと、キツネ目の男といえばアイツだよな。バリス教団幹部の……。
(メモを確認してから)
「そいつは、おそらくバリス教団の幹部でレヴェントっていう男だな。ティルクってのは偽名だろう。そうなると、2番艦を総督府に拿捕されるように仕向けたのは、ほぼ間違いなくそいつの仕業だ」

バッツ(GM):
「そうか……。まあ、内部の者による犯行ならば、新参者のそいつの仕業だろうとは踏んでいたんだがな」

エルド:
「なるほど。そういうことでしたか……。ありがとうございます。これでスッキリしました。それでは、僕たちはこれで」そう言って船を降ります。

GM:
 了解です。あなたたちのことを陸地へと降ろすと、バッツ海賊団の船はそのまま西の海へと消えていきました。

イーサ:
 よし。それじゃあ、さっそく“通常”の速度でクゼ・リマナを目指して進んでいくとしよう。街道沿いだし、警戒もしなくていいだろ。

 数日前に隠れ港を目指したときと同様に、無警戒での行軍はGMとしてあまりおすすめできない選択ではありますが、NX地点からクゼ・リマナのあるWQ地点まで行軍したイーサたちは、その間敵と遭遇することもなく、無事18時半ごろにクゼ・リマナへと到着したのでした。

ビューク・リマナ地方西部地図07

イーサ:
 ようやく到着だ。なんだか、クゼ・リマナが懐かしいな。

エルド:
 実際は一週間ほどしか経過していないはずですが、クゼ・リマナを出発してからというもの普段とは違ったイベントが続きましたからね。

GM:
 さて、あなたたちが第2市壁に近づいていくと、相変わらず総督府付きの騎士たちが市壁沿いに立ち、警戒を続けているのがわかります。そして、あなたたちは入念な身体検査ののちに街の中に入ることを許されたのでした。

イーサ:
 まだ、総督暗殺事件は解決してないってことか……。まあ、犯人であるレヴェントはいまごろ王都に向かってるんだろうから、この検問はしばらく続きそうだな。

GM:
 第2市壁内へと入ったあなたたちは、貧民街で地上げをするアスラン商会に雇われた者たちの姿を横目にし、娼館や酒場を抜けて、中央門へとやってきました。
 このまま中央門をくぐると、外に出るのにまた一苦労することになるので、一応ここで確認しておきます。あなたたちは、これからどこに向かいますか?

イーサ:
 アスラン商会……でいいよな?

エルド:
 ええ。もし、そこにタルカン様がいないようであれば、別宅に向かいましょう。

GM:
 では、アスラン商会へと向かったあなたたちでしたが、タルカンはすでに退社したあとで、おそらくは別宅にいるだろうという話を聞けました。まあ、17時を過ぎてしまいましたからね。基本的にタルカンは職場で残業しない人なんですよ(笑)。

エルド:
 素晴らしい。無駄に残業する無能な社員とは違うというわけですね?

GM:
 いや、タルカンは家で仕事をしているみたいですけどね(苦笑)。

 労務管理などという概念がまだ存在しない世界のお話です(汗)。

イーサ:
 じゃあ、タルカンの別宅に向かおう。


GM:
 そうすると、あなたたちがタルカンの別宅に到着したのは19時になってからということになります。別宅を訪れたあなたたちは、タルカンの私室まで通されました。

タルカン(GM):
 さまざまな資料が山積みにされた机越しに、タルカンがあなたたちを出迎えます。
「お帰りなさい。思っていたよりも早かったわね。それで、首尾はどうだったの?」

イーサ:
「そのことですが――」と言って、クゼ・リマナを離れてからいままでにあったことの顛末をすべて報告した。

 リプレイを書き起こすまで気がつきませんでしたが、イーサはここで「すべて報告」と言っていました。言葉どおり受け取るのであれば、これはバッツ海賊団の隠れ港の場所のことも含めてということでしょう。もし、今後タルカンが総督府などにその情報をリークして、その結果バッツたちがイーサに報復してきたとしても、自業自得というやつですね(苦笑)。

タルカン(GM):
 一通りの話を聞いたタルカンは、情報を吟味するかのように何度もうなずいてみせます。
「なるほどね……。あの海賊バッツに一目置かれるだなんて、たいしたものじゃない。それで、アナタたちはこれからどうするつもりなの?」

イーサ:
 うーん。そこなんだよな。いくつか選択肢は見えてるんだが、どうするかな……。
(腕組みをしてしばらく考え込む)

エルド:
 もしバリス教団のあとを追うのであれば、海路で王都まで向かうべきだと思いますが……。

イーサ:
 そうだな……。じゃあ、そうするか。

エルド:
 ちょろい(笑)。

 ここに至るまで、結構話数を重ねてきた宮国紀行ですが、イーサの優柔不断で主体性のないところなどは、第1話から変わっていないようです(笑)。

イーサ:
「海路で王都を目指そうと思います。もしかすると、途中の港でバリス教団の痕跡を発見できるかもしれませんし……」

タルカン(GM):
「そう。だったら、ちょうどアスラン商会の商船を王都に向けて出航させることができるよう総督府にかけあっているところだから、そこにアナタたちのこともねじ込んであげる。ただ、すぐ許可が取れるわけではないから、出航の準備が整うまではうちでゆっくり休んでいくといいわ」

イーサ:
 そうだな……。金もあまりないし、せっかくだから厚意にあまえるとするか……。
「わかりました。そうさせてもらいます」

エルド:
 GM。ちょっと確認したいのですが、あの場所って第1市壁内でよかったんですよね?

GM:
 いえ、第1市壁の外ですよ。わたしもそれが気になって中央門で念を押したのですが、やはり勘違いしていましたか……。

エルド:
 むぅ……。では、いまから第1市壁の外に出ることは可能ですか?

GM:
 うーん、そうですねぇ……。まだ中央門は開いている時間帯ですし、タルカンの口添えさえあれば出られないこともないでしょうね。

エルド:
 わかりました。
「すみません、タルカン様。僕はちょっと用事があるので、第1市壁の外で宿を取ろうと思います。申し訳ありませんが、なんとか門の外に出られるように取り計らっていただけませんか?」

タルカン(GM):
「あら、そうなの? しかたないわねぇ……」
 しぶしぶではありますが、タルカンはそれを了承してくれました。

エルド:
「では、イーサさん。僕は――」
(メモを確認してから)
「ダーラー亭に泊まることにしますので、なにかあったらそこに来てください」

イーサ:
「ああ。以前、セルピルが使っていたっていう宿屋だな。わかった」

GM:
 では、こうして今後の行動方針を決定したあなたたちは、商船の出航準備が整うまでのあいだ、それぞれ別の場所で休むことにしたのでした。
 ――といったところで、今回の話は終了とします。お疲れさまでした。

イーサ&エルド:
 お疲れさまでした。




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