LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第8話 ティータイム

 第8話のタイトルは「北の国から来た海賊」ということで、バリス教団と協力関係にあるアッバス海賊団に対し、よその国から流れてきたバッツ海賊団と手を組んで戦いを挑むという話になりました。このよその国というのは、宮国紀行に参加するプレイヤーにとってはじめてのキャンペーンの舞台となった、なじみ深い国であったりします。そのため、ユルヤナという異国の神の名前が唐突に登場していたりしますが、これはあまり本編とは関係のない、わかる人向けのサービスです。ただ、宮国紀行の冒険の舞台となっているカーティス王国以外にも、この世界には数多くの国が存在するのだということは、この先の話を楽しむうえでも頭の片隅に留めておいてもらったほうが良いかもしれません。

 話のボリュームとしては、今回くらいの内容がベストに近いのではないかと感じています。情報収集、現地への移動、戦闘、交流と交渉、ボス戦闘、報酬分配。今回は、重すぎず、かつ薄くもない範囲に収まったと思います。しいて言えば、あらかじめGMが予定していた範囲内にプレイ内容がスッポリと収まってしまったことが気がかりではあります。やはり、TRPGとして遊んでいるからには、アドリブを交えて、そのときその参加者でしか紡げない物語を楽しみたいところです。とは言え、今回のセッション後にプレイヤーたちから「海戦の雰囲気がとてもよく出ていた」とか「拷問シーンは玉が縮み上がった」などの感想をいただき、どうやら無事に楽しんでもらえていたようなので、その点では良かったです。

 さて、それでは本編中の気になるところを振り返ってみましょう。

 まず、序盤の情報収集ですが、今回はエルドがかなり積極的に行動し、誤りまじりではあったものの鋭い推理を展開させていました。べつにわたしたちは推理力を競うゲームをしているわけではないので、推理が間違っていても一向に構いません。むしろ、その誤解が話を盛り上げるのに一役買っています。これが慣れたプレイヤーになると、真相に気がつきつつも話を盛り上げるためにあえて誤った推理を披露したりするので、油断なりません(笑)。

 これまで裏方に徹することの多かったエルドですが、話にバリス教団が絡んできてからというもの、かなり表立った行動をみせはじめてきました。今後、ほかのプレイヤーたちにもひた隠しにしてきた情報がおおやけになっていくに従い、さらに前面にでてきてくれることを期待したいところです。

 それに比べると、イーサのほうはエルドの陰に隠れる格好となってしまいました。アゼルと共に行動していたときには、アゼルの言動に突っ込みを入れていればそれなりにキャラ立ちできていたのですが、そのアゼルがいなくなりいざ矢面に立たされてみると、イーサのプレイヤー本来の優柔不断な性格が顔を覗かせはじめ、それに伴い長考するケースも多くなってきてしまいました。もちろん、キャラクターとして優柔不断な人物像を演じるぶんには、まったく問題ないのですが……。バリス教団と関わり続ける限り、イーサが話の主軸に立たされることは避けられないでしょうから、なんとか成長をみせて欲しいところです。

 次に、移動パートについて。移動の助けとしてラバを購入したことや、漁師に渡しを依頼した流れなどは、紀行ものとしてとても良い流れだったと思います。贅沢を言えば、あとは同行者との会話や食事の描写が欲しいところです。単調な食事で飽きがきたり、栄養バランスが偏らないように簡単な工夫をする姿などが見られるようになると、旅慣れてきた雰囲気がでてきて良いと思います。まあ、今回は「雨に濡れた保存食は柔らかくなって都合がいい」などと言うイーサのシーンがありましたが(苦笑)。

 その後、カルマシャ半島の西海岸に到着した一行は、バッツ海賊団の隠れ港を探すわけですが、このときにランタンに火をつけたのは大きなミスでした。闇夜の中、ひらけた場所で1キロ以内に存在するランタンの明かりを見つけることは、とても容易です。むしろ、意識して見つけようとしなくても、目に入ってしまいます。また、シチュエーションは異なりますが、ダンジョン探索などで暗闇を進むとき、防御力の低い者に明かりを持たせてはいけないということは、もはや最低限の常識であると言っても差し支えないでしょう。明かりは発見されやすく、それを持つ者は狙われやすいということです。そのようなわけですので、明かりをつけるという行為には、十分注意したほうが良いでしょう。

 続いて発生した海賊バッツとの戦闘ですが、念のため一応準備はしていたものの、GMの中ではこの戦闘は極力避けるべきものと位置づけていたものでした。いまになって振り返ってみても、なぜイーサとエルドがバッツとの戦闘を開始したのか理解に苦しむところです。プレイ中、イーサが「ここで死んでも本望だ!」と発言していましたが、どう考えてもこんなところで死んでしまっては犬死です。それが事故ならいざ知らず、そうでないのであれば、プレイヤーにはPCが生存できるように、あるいはPCにとって納得のいく死を迎えさせられるように、最大限の努力をしてもらいたいところです。

 なお、このセッション後、イーサがバッツとの戦闘を振り返り「まさか勝てない敵との戦闘が発生するとは思わなかった」といった内容の発言をしていたのですが、あくまでもバッツに戦闘を仕掛けたのはイーサたちのほうであり、シナリオ上で登場する格上の相手との戦闘は、ちゃんと避けるルートが用意されています。もし、バランス無視の戦闘を強要されることがあるとすれば、それはランダム遭遇したときだけです(笑)。……というか、実のところバッツとの戦いにおいても、バッツ側にこれ以上増援がこないという前提であれば、戦術次第で十分勝てる見込みはあったのですよね。しかし、もしあそこで勝利をおさめていたとしても、敵を増やすことになるだけで、良いことなんてほとんどなかったと思いますけど……。

 そして、今回のクライマックスである海上戦闘シーン。そこでは、アッバス海賊団の2番艦船長であるメルテムが、いかりを使った旋回(クラブホーリング)もどきを披露してくれました。まあなんというか、浅喫水の船、穏やかな波、海底が岩場の浅い海――と、今回のシナリオは、このクラブホーリングを決めるためのシチュエーションを整えるべく組み立てられたものだったといっても過言ではありません(笑)。『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『バトルシップ』でもここぞとばかりにやっていましたし、海洋ものでは一度はやっておきたいことのひとつでしょう。だいたい、TRPGにおいて船がメインで登場する話なんて、あまりお目にかかる機会もありませんし、やれるときにやっておかないと(笑)!

 ちなみに、ほかに海洋ものでやっておきたいことといえば、「密航」と「幽霊船との遭遇」と「巨大海洋生物との戦闘」と「餓死寸前の仲間割れ」と「沈没」です。まあ、海上でのイベントといったら、どれもこれもろくなものではありません(苦笑)。しかし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』はみごとにすべてのイベントを押さえていますね。さすが、一級品のアトラクション映画です。

 最後に拷問シーンについても軽く触れておきましょう。メルテムの受けた拷問は実際にあったことを確認していますが、ある意味タブー視されていたようです。拷問官が男性だったこともあり、同じ男として気が引けたというのもあったみたいですね。宦官のように手順を踏んで切除するならまだしも、万力でゆっくりと圧潰させるというその内容は、想像するだけでも背筋が寒くなります。ちなみに、動物の例で言うと、去勢されると性格が大人しくなるという説に根拠はなく、生殖行動や子育てなどの攻撃的にならざるを得ない機会が減るためそのように見えるだけのようです。ただ、イメージ的に心が折れてしまうという話もわからなくはありません。口を割らせるだけであればウォーターボーディング(水責めの一種)のほうが効率が良いのかもしれませんが、今回の話ではインパクトを求めてこの拷問をチョイスしました。

 さて、そのようなわけで、イーサとエルドの次なる行動方針も定まったところで、次回はふたたびセルダルが登場します。前回のセルダル編から2話あいだが跳んでしまっているため、内容を忘れてしまった方も多いと思いますが、前回の最後は結構緊迫した状態で終わっています。はたしてセルダルは、硬化してしまったニルフェルの態度を軟化させることができるのでしょうか? そして、ほかの女性キャラに押されて地味キャラと化しているニルフェルに対して、テコ入れは行われるのでしょうか?




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