LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第9話(02)

GM:
 最初のシーンは、前回の終わりから数えて翌日の昼頃としたいのですが、それまでになにかやっておきたいことはありますか?

セルダル:
 そーだな。その後の女性陣の様子が気になるが、なにか変化はあったか?

GM:
 あれから、ニルフェルとギュリスは部屋にこもったままのようですよ。ギュリスは食事などの席には顔をだしますが、ニルフェルは相変わらずです。

セルダル:
 そーなのか。じゃあ、その開かない扉を見て頭をかきむしるくらいの描写は入れておこう。

GM:
 はい。では、ほかになにもなければ翌日のお昼まで時間を進めます。


GM:
 その日の昼、実に5日ぶりにニルフェルが食事の席に姿をみせました。

セルダル:
 おおッ。ちょっと驚いてる。

ニルフェル(GM):
 食堂に入ってきたニルフェルは、まずユセフに対して「ご心配をおかけしました。おかげさまで食事がとれるまで体調も回復しました」と言って頭を下げました。

ユセフ(GM):
 そんなニルフェルに対し、ユセフは優しく微笑みます。
「それはよかった。ここから王都までの道のりは長い。体調管理には十分気をつけたほうがいいだろう。そうだ、あとで滋養のつく果物でも部屋に運ばせるとしよう」

ニルフェル(GM):
「ありがとうございます」
 ニルフェルは笑顔でお礼を述べると、そのまま自分の席に着きました。

セルダル:
 オレは間抜けな感じでぽかんと口をあけて、ニルフェルのことを見てる。

GM:
 ほかの者たちは、あえて騒ぎ立てるようなこともせず、穏やかに昼食の時間がながれていきます。

セルダル:
 じゃあ、オレも気を取り直してメシを食いはじめた。

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは、ゆっくりと時間をかけて、出された食事の半分ほどを口に運びました。

ギュリス(GM):
 ギュリスはそれを見て、少し安心したような表情を浮かべています。

GM:
 こうしてニルフェルを交えた昼食の時間が過ぎていき、先に食事を終えたユセフとギズリは食堂をあとにしていきました。

セルダル:
 いろいろと話したいこともあるが、まだ余計なことを口にするべき段階じゃねぇな……。
「ごちそーさん」と言って、オレも席を立つ。食堂を出るときにニルフェルをちら見してくが、食事に顔を向けたままか?

GM:
 そうですね。あえて無視しているというわけではありませんが、とりたててセルダルのことを気にするそぶりはないようです。

セルダル:
 了解。じゃあ、そのまま部屋に戻る。

 唐突に姿をみせたニルフェル。いったいなにがあったのでしょうか? セルダルはそのことを気にかけつつも、しばらくのあいだは様子を見ることにしました。


GM:
 その日、お昼過ぎからは、あいにくの小雷雨となりました。

セルダル:
「これじゃ、訓練もできねぇぜ……」
 部屋の窓から外を眺めて、そんなことをぼやいてる。

GM:
 そうですね。自警団の面々も、この日は訓練を行わないようです。部屋の窓からは、誰も集まる気配のない広場が見えています。

ギズリ(GM):
 部屋の中では、ギズリが慣れた様子で本を読んでいました。旅慣れた彼にとっては、悪天候によって足止めをくらうことなどは日常茶飯事なのでしょう。

セルダル:
 うーん……。こんなときにギュリスから戦盤を教えてもらえればいーんだが、ギュリスにはニルフェルのことを見てて欲しいしなぁ……。かといって、ギズリに話を持ちかけても、カモられるだけだろーし……。
 しかたねぇな。ここは大人しく、新調した両手剣の手入れをして時間を潰すことにする。

GM:
 了解です(笑)。では、さらに時間を進めます。


GM:
 その日の夕方15時を過ぎたころ、カルカヴァン総督ハイダールのもとに使者として出ていた自警団のメンバーが、ようやく戻ってきました。そして、ユセフは彼らとの内密な会議を終えると、ギュリスたちのことを執務室に呼び出しました。その呼び出しに応じて集まった面子は、当人であるユセフを含めて、ギュリス、ギズリ、ニルフェル、メルト、テジー、そしてセルダルの計7人です。

ユセフ(GM):
 集まったあなたたちに対して、ユセフは次のような説明をしました。
「すでに耳に入っているとは思うが、使いに出していた自警団員たちがついさきほど戻ってきた。そこで、かねてからの約束通り、君たちがイルヤソールに到着するまでの護衛を彼らに任せようと思う。しかし、あいにくと団長のトルガは別件でカルカヴァンに残ることになってしまったので、その代理として護衛の指揮はメルトに任せることにした」そう言うと、ユセフはメルトへと目を向けます。

メルト(GM):
 ユセフの言葉にあわせて、メルトがあらためてあなたたちに一礼しました。
「よろしくお願いします!」

セルダル:
 つまり、メルトがイルヤソールに向かう一団の隊長ってことだな。

ユセフ(GM):
「ついては、君たちの出発の日取りもここで決めておきたいのだが……」

ギュリス(GM):
 ユセフの言葉を受けたギュリスは、チラリとニルフェルの横顔を見ると、「それでは、出発は3日後ということでお願いできますか?」と答えました。

ニルフェル(GM):
 しかし、その視線に気が付いたニルフェルは、間髪おかず「明日ではダメでしょうか?」と言葉を被せます。
「もし、私の体調を気遣って出発を3日後にするというのであれば、その心配はいりません。今日はすっかり体調もよくなりました。お昼ご飯も沢山食べられましたし、明日になればもっとよくなると思います。これまでどおりの歩みであれば、十分ついていけます」

ギュリス(GM):
 そんなニルフェルに対し、ギュリスは、「まあ、イルヤソールまでは自警団の馬の背に乗せてもらえるだろうけど……」と口にしたものの、どこかニルフェルの申し入れを受け入れることを渋っているようでした。困った様子のギュリスは、セルダルのほうへと視線を投げかけます。

セルダル:
 なんでそこでオレを見るよ!

 それはもちろん、物語の選択権はPCに優先的に委ねられるべきだからです(笑)。

セルダル:
「あー。でもなぁ……。自警団の人らもカルカヴァンから戻ったばっかだし、しばらく休んでからじゃねぇと、ちときついんじゃねぇか?」

メルト(GM):
「あ、自分たちであれば問題ありません! 任せてください!」
 メルトは空気を読みません。

セルダル:
「いや、そーは言っても、長旅になるんだし、しっかり疲れをとらねーとな! クマ退治のときも、無理してきつかっただろ? な、メルト隊長!」そー言って、メルトにウインクしてみせた。ちょっと引きつった笑いを浮かべて。伝われ……!

メルト(GM):
「いえ、だから、問題ありません!」
 大切なことなので2度言いましたよ(笑)。

セルダル:
 くッ、こいつ……(笑)。

メルト(GM):
「自分たちは皆さんの都合にあわせますので、どうかお気遣いなく!」
 メルトは自信満々に胸を張りました。

セルダル:
 ギュリスに、だめだこりゃ的な顔を向けた(苦笑)。

ニルフェル(GM):
「自警団の方々にも差し支えないようでしたら、ぜひ明日出発ということでお願いします。私は早く王都に行って、フェザ先生にご指導いただきたいんです」

ギュリス(GM):
 ギュリスは首に手を当てて、「んー、本当に大丈夫? 無理して出発しておいて、途中でやっぱり休みたいなんて言いだされても、ここからイルヤソールまでのあいだには落ち着いて休めるような場所なんてないよ?」とニルフェルの顔をうかがいます。

セルダル:
 おおッ、いーぞ、ギュリス!

ニルフェル(GM):
 そう言われてもなお、ニルフェルは引き下がりません。
「私はギュリスさんより体力のあるほうだと思います。たとえ病み上がりだといっても、ギュリスさんには負けません。ですので、問題ありません」

ギュリス(GM):
「うっ……」
 ニルフェルの言葉に、ギュリスは絶句しました。

セルダル:
 マジか……。オレも目を丸くした。
「ははは……。ギュリスお嬢さん。もー、いーんじゃねぇか? こんだけ元気なら、長旅も大丈夫だろーさ」

ギュリス(GM):
「うーん……。まあ……いいけど……」
 セルダルが納得したのであれば、ギュリスもしぶしぶ了承します。

セルダル:
「そのかわりだ。ここまで言い切ったからには、途中で弱音なんて吐くんじゃねぇぞ。な、ニルフェル」

ニルフェル(GM):
「もちろんです」
 ニルフェルはセルダルの目をまっすぐ見て、そう答えました。

セルダル:
「じゃあ、決まりだな」

メルト(GM):
 話がまとまったところで、メルトが音頭をとります。
「では、明日の朝出発ということで、その前に行軍計画について確認しておきましょう!」

セルダル:
「おう、頼むぜ隊長!」

GM:
 そこからメルトは、次のようなことを説明してくれました。
 デミルコルからイルヤソールまでは直線で110キロほどの距離があり、馬の足だと片道4日前後かかります。その道程の移動手段として、ユセフは乗用馬を2頭、荷馬を5頭、それと3日分の水と7日分の食料を提供してくれるとのことです。これだと、水は予定日数分を少し下回るほどしか持っていかないことになりますが、アシャス平原にはところどころ水源があるため、よほどのことがないかぎり問題はありません。最悪の場合、ランド・ウォーカー技能の“生存術”によって、湧き水を掘り当てることもできます。
 また、護衛として自警団員を6人同行させてくれる予定です。現在デミルコルにいる自警団員11人の中から半数以上も護衛につけてくれるということで、モノケロース狩りにムーンベア退治と、2度も力を貸してくれたセルダルたちに対して、ユセフ以下デミルコルの人々が精一杯義理を果たそうとしていることがわかります。
 ちなみに、未開地で馬車を使った場合、かえって行軍速度が落ちてしまうため、今回の移動では馬車は使用しません。

セルダル:
 一緒に移動することになる面子の中に、ランド・ウォーカー技能の所持者は何人くらいいるんだ?

GM:
 NPCではギズリひとりだけですね。

メルト(GM):
「――といったところです」と、メルトはイルヤソールまでの行軍計画についての説明を終えました。
「なにか質問はありますか?」

セルダル:
「じゃあ、確認しておきてぇんだが、こんなかにアシャス平原を行軍した経験のある奴はいんのか?」

メルト(GM):
「自分は一度往復したことがあります。だからこその抜擢です。それと、自警団の中にもそのとき同行していた者が数人います」

ギズリ(GM):
 そこで、それまで黙って話を聞いていたギズリも口を開きました。
「オレも以前に何度か往復した経験がある。じゃなきゃ、わざわざこのルートを選びはしねぇさ」

セルダル:
「そんなら安心だな。オレには水源がどこにあんのかもさっぱりわかんねぇからな。皆が知ってるみたいでよかったぜ」

ギズリ(GM):
「水についちゃぁ、まったく問題なしだ。この季節なら、7日としないうちに雨が降るだろうし、アシャス平原はくぼ地を掘れば湧き水が出る。それよりも、オレが心配だったのは道中出くわすであろう獣のことだったんだが、護衛がつくなら安心だな」

セルダル:
「そうだった。メルト隊長、獣に出くわしたら指示を頼むぜ!」

メルト(GM):
「は、はぁ……。どちらかといえば、戦闘指揮はセルダルさんがとられたほうがよいのではないでしょうか?」そう言って、メルトは軽く頭をかきました。

セルダル:
「そんなこたぁねーよ。ムーンベアのときもメルトのおかげで助かったしな。大体、オレにはほかの団員の力量すらわかってねぇしよ。だから、頼んだぜ!」

メルト(GM):
「まあ、セルダルさんがそう言うのであれば……」

ギュリス(GM):
 ギュリスは、そんな2人のやり取りをニヤニヤしながら見ていました。

メルト(GM):
「では、明日の朝7時に出発するということで、その30分前にこのお屋敷の正門前に集合ということでよろしいですか?」

セルダル:
「了解だ」

ユセフ(GM):
 だいたいの話がまとまると、ユセフは、「それと、イルヤソールまではテジーも共に連れて行って欲しい」と言って、ずっと端に控えていたテジーへと視線を向けました。

テジー(GM):
 名前を呼ばれたテジーは、「よろしく頼む」と言って、あなたたちに頭を下げます。

セルダル:
 ギュリスのほーを見て、理由を知ってるかどーか目で合図を送ってみるが……。

ギュリス(GM):
 ギュリスは小さく首を横に振りました。

セルダル:
 ふむ……。
「オレたちのほーには、断る理由なんかねぇよ。でもまあ、わけを教えてくれるとうれしいかな」

テジー(GM):
 セルダルの言葉に対し、テジーは少しうつむいてから、「王都に用事がある」とだけ答えます。

セルダル:
「あー、了解だ。別に無理に話してもらおーなんてつもりじゃなかったんだ。気に障ったんなら謝る。すまねぇな」

ユセフ(GM):
 ユセフはテジーに目配せして小さくうなずくと、「では、話は以上だ。あとは出発までゆっくりして行ってくれ」と言って、その場をしめました。

テジー(GM):
 テジーは足早にその場をあとにします。

メルト(GM):
「では、また明日!」と言って、メルトも去っていきました。

セルダル:
「おう!」
 じゃあ、オレも部屋に戻って、出発の準備でもしておくか。


ニルフェル(GM):
 では、ユセフの執務室を出たところで、「セルダルさん……」と、ニルフェルがあなたのことを呼び止めました。

セルダル:
 声に反応して、そっちを振り向いた。

ニルフェル(GM):
「昨日は、ごめんなさい……」と、ニルフェルはまず昨日の部屋でのことを謝ってきます。

セルダル:
 その言葉に面食らって、気まずそーに頭をかきながら顔を下に向ける。
「あ……いや……。オレのほーこそ、すまん。昨日は意地のわりぃこと言っちまったよな。ホントーにすまなかった」

ニルフェル(GM):
「そんなことありません」そう言って、ニルフェルはセルダルを正面から見据えると、ふたたび言葉を続けました。
「きっと、セルダルさんには私のことが頼りなく思えたんですよね。……でも、もう大丈夫です。私、強くなりますから。王妃となるのにふさわしい女性だと思ってもらえるくらい、強くなりますから……」

セルダル:
 その言葉に顔をあげて、ニルフェルの顔を覗き込んだ。
「……そうか。決めたんだな……」

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは無言でうなずくと、「それじゃ、また明日」と言って立ち去ります。

セルダル:
「ああ、また明日な……」そう言ってニルフェルのことを見送った。ニルフェルの姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしてる。

 昨日のセルダルとの一件を経て、それまで臥せっていたニルフェルはふたたび立ち上がり、歩きはじめました。しかし、その原動力となっているのは決して前向きな感情などではなく、彼女の生き方を否定した者への意地でした。




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