GM:
翌日の朝6時半過ぎ、イルヤソールを目指す一行はユセフの屋敷前に集まります。昨日の昼からずっと降り続いていた雨は、今朝方になってようやく降りやみました。
セルダル:
ホッ……。よかった。
GM:
まだ霧は立ち込めていますが、強い風が吹いているためそれも昼までには晴れることでしょう。護衛を務める自警団員たちは、それぞれ出発前の馬に水を飲ませています。
メルト(GM):
メルトもムーンベア狩りのときに連れていた愛馬の首元をさすりながら、「長旅になるが、よろしく頼むぞ」と語りかけています。
GM:
そのように自警団員たちが6頭の馬を手入れしているなか、なぜか残りの1頭だけは少し離れた場所に放置されていました。
セルダル:
1頭だけ放置されてんのか……。それって、なにかあんのか?
GM:
もう少しするとわかりますよ。ちなみに、セルダルは何時くらいに集合場所に向かいますか?
セルダル:
6時半までにはそこにいられるように、少し前に行くだろーな。
GM:
了解です。ならば、セルダルがその場に姿を見せた時点で、メルトを含む自警団員とギュリス、ニルフェル、ギズリの面々は、すでに集合していました。
ギズリ(GM):
あなたが来たとき、ギズリはちょうど“天候予測”をしていました。
セルダル:
「おはよーさん。皆、ずいぶんとはえぇんだな」
ギュリス(GM):
「おはよう」
ニルフェル(GM):
「おはようございます」
ギズリ(GM):
皆が朝の挨拶を済ませていく中、ギズリだけは「オマエが遅いんだよ」とセルダルのことをなじります。
セルダル:
「な!? 時間には間に合ってるはずだろ?」って言って、ギズリに対して口をとがらせた。
ギズリ(GM):
「チッチッチッ。旅ってのはなぁ、準備が大切なんだ。準備の段階で旅の成否の半分は決してると言っても過言じゃないんだぞ」そう言って、ギズリはドヤ顔をします。
セルダル:
「ほほー」
ここは素直に関心しておこう。
テジー(GM):
では、あなたたちがそのような話をしているところで、テジーが荷物を持って姿をあらわしました。
セルダル:
「お、テジー。おはよーさん」
テジー(GM):
「おはよう」
テジーはぶっきらぼうに挨拶を返しました。そして、1頭だけ離れたところにいた馬のもとに歩み寄ると、その馬に水を飲ませ始めます。
自警団員たち(GM):
心なしか、自警団員たちはテジーを避けるようにわずかに場所を移動したように見えます。
セルダル:
なるほど、そーゆーことか(苦笑)。
ユセフ(GM):
しばらくすると、屋敷の中からユセフが出てきました。
「どうやら、出発の準備は整ったようだな。君たちにはいろいろと世話になった。ここから王都までは長い道のりだが、なにごともなく無事にたどり着けることを祈っているよ」そう言って、ユセフはエルバートの聖印を結びます。
セルダル:
「オレたちのほーこそ、ずいぶん世話になっちまった。ありがとな、ユセフ様」
さて、それじゃ、そろそろ出発するか。
こうして、セルダルたちはユセフに別れの挨拶をすると、一路イルヤソールを目指してデミルコルを出発したのでした。
GM:
では、ここからフィールドマップを用いての移動となります。特に要望がなければ、メルトの指示のもと馬の通常速度でイルヤソールを目指して進むことになりますが、よろしいですか?
セルダル:
ああ、そーしてくれ。
GM:
了解です。セルダル編ではこれがはじめての行軍となるので、ここで行軍ルールについてあらためて説明しておきます。
GM:
それと、行軍処理を行う前に、7頭の馬にどのようにわかれて乗るのかも決めておきましょう。周囲の警戒にあたるメルトとテジーは、それぞれ1頭ずつ使うことになります。残りの5頭に対して、乗り手は自警団員の5人と、あなたたち4人。ライダー技能所有者は、自警団員全員とギズリとギュリスになります。一応、ライダー技能がなくても馬を通常速度では進めることは可能ですが、速足以上の速度を出したり騎乗戦闘を行ったりするにはライダー技能が必要です。
セルダル:
馬1頭に2人までは乗れると思っていーんだよな? 必要以上の負担がかかるよーならあきらめるが。
GM:
メルトとテジーが乗っている馬以外は荷馬であり、1頭につき200キロまでなら問題なく乗せられます。もし、行軍速度が遅くなってもいいなら、最大400キロまで乗せられますよ。
セルダル:
なるほど。それなら安心だ。だったら、ギュリスとニルフェル、ギズリとオレ、あとは自警団員まかせってことで提案してみる。
GM:
了解です。では、自警団員は2人、2人、1人にわかれました。1人しか乗らない馬には、その分テントを積むこととなります。
さて、それではあらためて行軍処理を進めていきましょう。まずKW地点を目指して移動します。条件は、馬の通常速度、警戒あり、天候は霧の強風です。本来であればここで方角確認判定が必要になるところですが、今回はギズリが“風見星”という正しい方角を確認することできる遺産を所持しているため、必ず正しい方向へと進むことができるものとします。
では、目標値6の遭遇判定を行ってください。
セルダル:
(コロコロ)あぶねぇ。ピッタリ6だ。
GM:
ギリギリ成功ですね。ならば、敵との遭遇はありません。
デミルコルを出発したあなたたちが北西へと足を進めていくと、しばらくは何層かの段によって構成される下りが続くこととなります。ところどころ馬足でも降りるのがきつい斜面があり、一行はそのたび大きく蛇行しながら先を進まなければなりませんでした。
ギズリ(GM):
行軍の途中、ギズリが手に持った“風見星”という名称のオーブを覗き込んで、「こっちだ」と進むべき道を示してくれます。
GM:
こうして、9時半ごろにKW地点へと到達しました。続けてKV地点へ移動します。遭遇判定の目標値は同じく6です。
セルダル:
(コロコロ)5……。今日も逆の意味で絶好調だな(苦笑)。
GM:
遭遇対象を決定します。《2D》での判定をどうぞ。
セルダル:
(コロコロ)8。
GM:
……そうすると、段差ができている一帯に昨晩降った雨水がたまっていました。その水たまりに、ヌーの群れの姿が見えます。ウシ目ウシ科のあのヌーです。
セルダル:
ヌー!
GM:
ヌーたちの水浴びを横目に見ながら徐々に低地へと進んでいくと、やがてデミルコル周辺では多く見られた高地特有の植物や背の高い木々が周囲から姿を消し、あたり一面が人の膝の高さほどの草原となっていきます。時刻は昼を少し回り、霧もすっかり晴れてきました。
メルト(GM):
そんなところで、「そろそろいい時間ですし、ここらへんでお昼休憩にしましょう」とメルトが口にします。そして、近くに見える大きな岩に目を付けたメルトは、その周辺に馬を止めると、皆に岩の上にあがって昼休憩をとるよう指示を出しました。
セルダル:
「了解だ」
じゃあ、岩のところまで向かってく。
GM:
ちょうど、日々暖かくなっていく時季に入ったこともあり、岩の周囲にはアネモネやイベリスなど多くの植物たちが咲き誇っています。遠くのほうへと目を向ければ、そこには赤・白・青と色鮮やかな絨毯が敷かれているようにも見えます。
ここでGMは見渡す限りアネモネとイベリスの花で埋め尽くされた草原の写真を提示しました。著作権の関係で、リプレイでは掲載できませんが……。
セルダル:
「ほぉー。こいつはすげぇな!」
GM:
そのような景色を目にしながら、各自昼食をとることとなりました。
ギズリ(GM):
昼食をとり終えると、ギズリはメルトと2人で今後の行軍計画について再度確認しはじめます。
ニルフェル(GM):
一方、ニルフェルは岩のうえから一面の花畑に降り、ひとり花を愛でています。
セルダル:
なにかあるとヤバイからな。邪魔にならねぇ程度に距離をとって、ニルフェルのそばにいるとしよう。
ニルフェル(GM):
では、ニルフェルは近くにあったアネモネを愛でながら、セルダルに話しかけてきました。
「セルダルさん、知っていますか? このアネモネには花弁がないんですよ」
セルダル:
「花弁?」
オレも同じ花を手に取って、なにがないのか探そーとする。
ニルフェル(GM):
そんなセルダルの様子を見たニルフェルは、「花びらのことです」と言って軽く微笑みました。
セルダル:
「花びら? 花びらならあるじゃねーか」そー言って、花びららしき部分を指さした。
ニルフェル(GM):
「いいえ。厳密に言えば、この色鮮やかな部分は花弁ではなく、がく片と呼ばれる部分なんだそうです。世の中にはそのような植物がいくつもあるんですよ」
セルダル:
「はー。これ、花びらじゃなかったのかよ……。全然知らなかったぜ。ニルフェルはずいぶんと花のことに詳しいんだな」
ニルフェル(GM):
「……昔、兄さんが教えてくれました」そう言って、ニルフェルは少し遠い目をしました。
セルダル:
「アゼルが、か……」
ニルフェル(GM):
「……でも、たとえ花弁がないのだとしても、こうやって咲き誇るアネモネの姿は、ほかのどの草花よりも美しいと思いませんか?」
セルダル:
「ああ、そーだな。なんにも知らなかったオレにとっちゃ、花弁だろーが、がく片だろーが、綺麗な花であることにかわりねぇしな」
ニルフェル(GM):
そんな話をしたニルフェルは、それからしばらくのあいだ花を愛で続けていました。
こうして、たとえそれが偽りの花びらであろうとも美しく咲き誇ろうとするアネモネの姿に、自分を重ねるニルフェルでした。そして、それとほぼ同時期に、アゼルもまたアシャス平原に咲くアネモネの花を見て独り言を呟いていたのでした(第7話のシーン10より)。
GM:
そのようなできごとがありつつ、一行が昼休憩を終えたのは15時半ごろのことです。
メルト(GM):
出発の準備を整えると、メルトは一行に対し、「今日のところはあと10キロほど進みます。次の休憩地点を野営地としますので、もう少し頑張ってくださいね」と説明しました。
セルダル:
「ああ、大丈夫だ。なあ、ニルフェル」
ニルフェル(GM):
「ええ。馬に乗っているだけなので、これまでの道中より楽なくらいですよ」
セルダル:
「だとさ。んじゃ、元気よくいこーぜ、隊長!」
GM:
では、行軍を再開します。次はJV地点への移動となります。目標値6の遭遇判定をどうぞ。
セルダル:
(コロコロ)6。大丈夫!
GM:
ならば何事もなく、18時半にJV地点に入りました。
GM:
JV地点に入った一行は、野営地に適した場所を見つけるとそこで夕食をとり一晩過ごすことにしました。野営地の準備は、メルトたち自警団がほとんど取り仕切ってくれます。
セルダル:
ありがてぇ。
GM:
19時に野営地設営が終わり、20時には夕食が終わります。夜は見張りが必要となりますが、それもメルトが取り仕切って決めようとします。
セルダル:
んじゃ、それについては、「隊長。オレの見張り時間もちゃんと用意してくれよな」と言っておこう。
メルト(GM):
セルダルがそう申し出ると、メルトはこう返してきます。
「わかりました。では、セルダルさんには最初の見張り番をお願いしてもいいですか?」
寝起きに負担のかかりにくい最初の見張り番を指定してきたのは、メルトなりのセルダルに対する気遣いなのでしょう。
セルダル:
「ああ、わかったぜ」
そのメルトの気遣いは、働きで返すとしよう。
GM:
見張りは2人1組の3交代が基本となります。今回は見張り番を務められる者が7人いるので、セルダルとメルト、自警団員AとBとC、自警団員DとEにわかれての見張りとしましょう。
セルダル:
了解。
こうして一日目の行軍を終え、一行はアシャス平原ではじめての夜を迎えることになります。