GM:
さて、ジャイアント・バット戦が終わったところで、戦闘疲労判定をしておきましょう。
セルダル:
(コロコロ)疲労が6点溜まった。
メルト(GM):
(コロコロ)メルトの疲労は8点溜まりました。第6話でもそうでしたが、どうも彼は疲れやすい体質のようです(苦笑)。
「ふぅ……。なんとかコウモリどもを追い払えましたね」そう言って、メルトは冷や汗を拭いました。
セルダル:
「ああ。隊長のほーは大丈夫だったか?」
メルト(GM):
「ええ、なんとか……」そう答えたメルトでしたが、まだ肩口からは血が流れ続けています。
自警団員たち(GM):
あなたたちが安堵の息をついたところで、まだテントから出てきていなかった自警団たちも、次々と飛び起きてきました。
「なんだ? なにがあった!?」
ギズリ(GM):
自警団員たちと共にギズリも起きだしてきます。そして、あなたたちが怪我を負っていることに気がつくと、慣れた手つきで“手当て”してくれました。
セルダル:
おお! 助かるぜ!
ギズリ(GM):
まず、メルトに対する“手当て”です。(コロコロ)成功。それが終わると、ギズリはセルダルにも近づいてきます。
「オマエも怪我してるようだな。ほら、傷口を見せてみろ」
セルダル:
「すまねぇ」って言いながら腕を出した。受けたダメージは3点だ。
ギズリ(GM):
(コロコロ)とりあえず、止血には成功しました。しかし、残念ながら“手当て”では、生命点の回復まではできません。
セルダル:
いや、十分さ。
「ありがとよ、ギズリさん」
ギズリ(GM):
「ギズリ……さん? よせやい、気持ち悪い」そう言って、ギズリは手で払う仕草をしました。
セルダル:
「へへ……」
こっちも、ちょっと気恥ずかしげに笑った。
ギズリ(GM):
「オマエら2人は怪我してんだから、あとの見張りはほかの連中にまかせて、今晩は大人しく休んどけよ」
セルダル:
「ああ。悪いがそーさせてもらう。んじゃ、傷を治すためにも、早めに寝ちまおーぜ。な、隊長」
メルト(GM):
「そうですね。じゃあ、あとは皆でよろしく」そう言うと、メルトはテントの中に引っ込みました。
こうして、少しでも生命点を回復させるべく早めに休んだ2人でしたが、そこはなかなか自然回復しないことで定評のあるLOSTです。6時間程度の睡眠では、生命点を回復させることはできませんでした。
セルダル:
うう……。ギヴ爺さんが恋しいなぁ……。
GM:
さて、翌日となり、あなたたちは朝6時ごろから活動を再開することになりました。
野営地を引き払う作業は、自警団の幾人かが率先して行ってくれています。それが完了するまでのあいだ、手の空いているほかの者がたき火の残り火で湯を沸かし、それを皆で分けあって飲むといった光景がありました。
メルト(GM):
メルトは、セルダルたちにも白湯の入ったカップを持ってきてくれます。
「どうぞ。これで、喉を潤してください」
セルダル:
「ありがとな」と言ってそれを受け取った。
メルト(GM):
「どういたしまして。それが飲み終わったら、さっそく出発しましょう」
セルダル:
「ああ。そーだな」
そーいや、テジーも白湯を飲んでんのか?
テジー(GM):
いえ。テジーだけは少し離れた場所で周囲を警戒しているようです。
メルト(GM):
「傷の具合はどうですか?」
セルダル:
「オレのほーはたいした傷じゃねぇが、隊長はちっと休んだほーがいーな」
メルト(GM):
「そうですね」そう言ってメルトは苦笑いします。
「こういうとき、ギヴ老子がいてくれればと思いますよ」
セルダル:
「ハハッ。たしかに熊退治んときは助かったよな。……ところでさ、ちょいと聞いておきてぇんだが、テジーと自警団の連中って、知り合いってわけじゃねぇのか?」
メルト(GM):
「え……? いや、知り合いもなにも、デミルコルはなにぶん小さな村なので、村人は全員顔見知りですが……」
セルダル:
「んじゃ、あそこでぽつーんとしてるのが、いつものテジーってことなのか?」
メルト(GM):
「ああ、そのことですか……」
メルトは軽く相槌を打ってから、離れた場所にいるテジーのほうへと視線を向けました。
「あまり気にしないほうがいいですよ。あいつは昔から付き合いが悪くて有名なんです。暇さえあれば森に入っていましたからね。……きっと、森に魅入られてるんです。村の若い連中のあいだでは、テジーの奴は狼の腹の中から生まれてきたんじゃないかって揶揄されてます。それで、ついたあだ名が狼女」
セルダル:
「ふーん……。もったいねぇな。美人なのによ」
メルト(GM):
「セルダルさんはああいう外見がお好みですか? ですが、女は中身のほうが大切ですよ」
セルダル:
「中身だってたいしたもんだろ? 大事なところでしゃしゃり出てこねぇし、口も堅い。嫁さんにするにゃ文句なしの女だぜ」
メルト(GM):
「それは、セルダルさんがまだあいつとそこまで接していないからそう感じるんですよ。悪いことは言いません。あの狼女だけは絶対に止しておいたほうがいいです」
セルダル:
「ふーん。そーゆーもんかねぇ……」
メルト(GM):
「ええ、そうですとも。……まったく、あいつの親父さんと弟はどちらも気さくなほうなのに、なんであいつはああなってしまったのやら……」そう言うと、メルトは小さく溜息をつきました。
セルダル:
「――っと、そろそろ出発しねぇとな」と、話を切り上げよーとする。
メルト(GM):
「そうですね。今日も一日頑張りましょう」
GM:
では、2人はそこで話を切り上げました。
GM:
7時になり、野営地を引き払った一行はJU地点へと足を進めました。辺り一面が花と緑で色づくアシャス平原を、11人の旅人が進んで行きます。空には朝から雲が広がっていますが、しばらく雨の降る気配はないようです。
昨日の行軍では微妙だったセルダルのダイス目でしたが、この日の午前中は安定した値がでていました。そのため、特に敵と遭遇することもなく、14時にはJU地点へと到着します。そして、一行はそこで1時間の昼休憩をとることにしました。
GM:
JU地点まで行くと、自警団員たちは馬から荷物をおろしはじめます。そして、そのあとで各自に保存食が配られると、それぞれが適当な場所に腰を下ろし、昼飯を食べ始めました。
セルダル:
テジーはまた孤立してるんだろーか?
GM:
いえ。どうやら、テジーはニルフェルやギュリスと一緒に食事をしているようです。
セルダル:
お、それならいーな。
GM:
(コロコロ……シークレット判定)食事中、あなたたちのそばをインパラの群れが通り過ぎて行きました。
セルダル:
そーゆーのをぼんやりと眺めながら食べる昼メシってのもいーよな……。
GM:
まあ、いまのは時間経過による遭遇判定で出現したモンスターなので、出目次第ではヤバイ敵が登場した可能性もあるのですけれどね(笑)。
セルダル:
そーなのか(苦笑)。だが、今日はツイてるからきっと何事もないはずだ。……たぶん。
ギュリス(GM):
さて、そうやって各自がのんびりしているところで、ギュリスがセルダルのところまで近づいてきました。
「ちょっといい? アゼルのことで話しておきたいことがあるんだけど……」
セルダル:
うッ、嫌な予感がする……。
「お、おお……」
ギュリス(GM):
セルダルが了承すると、長い話になるのかギュリスはその場に腰を下ろしました。
「実はさ、あいつがデミルコルを離れる前に、あたしが書いた手紙を渡してくれるよう、ユセフ様に頼んでおいたんだけれど……。一応、やるべきことが済んでから手紙を読むようにって念を押してもらってね」
セルダル:
「はぁ。……なんでまたそんな事をしたんだ?」
ギュリス(GM):
「なんでって……。そりゃ、そうしたほうがいいと思ったからに決まってるじゃない」そう言って、ギュリスはニルフェルのほうをチラリと見ました。
「で、その手紙を読んだあいつは、きっとイルヤソールに来ることになると思う」
セルダル:
「ふーん……。で、手紙にはなんて書いたんだ?」
ギュリス(GM):
「……それは秘密。プライバシーに関わることだから」
セルダル:
「そっか……。んじゃ、聞かねぇでおくわ。まぁ、なんにしろ、アイツが戻ってきそーなことを書いたってことだよな」
ギュリス(GM):
「んー。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないし……」そう言って、ギュリスは悩ましげな顔をしました。
「ちなみに、もしアゼルがイルヤソールに来ないとすれば、それはあいつが独り立ちしたってことで――」
セルダル:
「んじゃ、くるな」
ギュリス(GM):
「あ、やっぱり、そう思う?」
即答したセルダルの言葉につられて、ギュリスは少し呆れたように笑います。
セルダル:
「アイツはいつだってそーだ。後先考えねぇでなんにでも首を突っ込むくせに……。クソッ」そー言って、足元の石を蹴り飛ばした。
ギュリス(GM):
「まあ、そんなわけで、あいつが来るかもしれないってのもあって、あたしはニルフェルのことを少なくとも1ヶ月間はイルヤソールに滞在させるつもりでいると……。そのことを、一応あなたにも話しておこうと思ってね」
セルダル:
「なるほどねぇ……。そんなに気にしてるんだな、アゼルのこと」
ギュリス(GM):
「そりゃ、見ればわかるでしょう?」そう言って、ギュリスはふたたびニルフェルのほうに視線を向けました。
セルダル:
そーきたか……(苦笑)。
「あー。ニルフェルが、ね……」
セルダルは、ギュリスがアゼルのことを気にかけてるのだと思ったようですが、残念ながらそのラインの好感度はすでにマイナスに突入しており、歯牙にもかけていないというのが本当のところです(苦笑)。
ギュリス(GM):
「ん? どうかした?」
セルダル:
「いや。どーやら、ニルフェルにとって大好きだったお兄ちゃんを壊しちまったのは、オレとオヤジらしいんでな。その前までは、それはそれは賢くて素敵なお兄ちゃんだったらしいぜ」
ギュリス(GM):
「へー。それは意外。……っていうか、それっていくつのころの話?」
セルダル:
「もー10年くれぇ前のことになるかな……。オレとオヤジがクルトの土地で暮らし始めて、アゼルが剣にのめり込んで……。それ以来、よっぽど剣を振るのが楽しくてしかたねぇんだろーよ」
ギュリス(GM):
「10年前って言ったら、まだあなたたちが10歳くらいのときの話じゃない。それって、いくらその当時賢かったって言っても、十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人ってやつだよね? あたしから言わせてもらうと、いまのアゼルはただの人どころか大馬鹿野郎としか思えないんだけど……」
セルダル:
「相変わらず手厳しいな……。でもよ、オレからすると、アイツはあのころからちっとも変わってねぇよーな気がする。どんなことだって自分になら出来ると信じて踏み出しちまうんだ」
ギュリス(GM):
「いや、普通、ろくに自己分析もできない奴は大馬鹿野郎に分類されるでしょ?」そう言って、ギュリスは呆れた顔をしました。
「……ま、この際そんなことはどうでもいいや。それでね、アゼルのことを抜きにしたって、どのみちすぐに王都に向かうのはニルフェルのためにもならないと思うんだ。聞いた話じゃ、王都に着いたらフェザ先生から宮廷教育を受けられることになっているみたいだけど、その前に、いまのニルフェルには基本となる女子教育が必要だと思うんだよね。いくらフェザ先生が高名な教育者だとはいっても、こればっかりは女性じゃないと教えられないものだからさ。その点、イルヤソールにはうってつけの先生がいるんだ。そんなわけで、もろもろ含んで、あの子には1ヶ月くらいイルヤソールに滞在するようにあたしから話しておくけど、それでいいよね? もちろん、アゼルのことは伏せておくつもりだけど……」
セルダル:
「ああ、それについては任せる。仮にオレがどーこーしたところで、ニルフェルのことを安心させてやれねぇだろーからよ……。なんだか、気を使わせてばかりでわりぃな。いつもニルフェルのこと、大事にしてくれてありがとよ」
ギュリス(GM):
「別に、あなたからお礼を言われる筋合いなんてないと思うけど……。ただ単に、あたしはあの子のことが好きだから、そうしてあげたいと思ってるだけだよ」
セルダル:
「そーは言っても、アニキはどっか行っちまうし、オレはオレでニルフェルのことを怒らせちまうし……。周りにはろくでもねー男ばっかりで、ギュリスお嬢さんにはいろいろと世話かけちまってるからさ」
ギュリス(GM):
そんなセルダルの言葉を聞いているうちに、ギュリスの目つきが厳しくなっていきます。
「たぶん、そういうところがダメなんだろうね……」
セルダル:
「は……?」
キョトンとした顔でギュリスに目を向けた。
ギュリス(GM):
「だってさ、あなたさっきから、まるでニルフェルの保護者みたいな口ぶりじゃない。そういうのって、本人からすると鬱陶しいと思うよ」
セルダル:
ギュリスがなにを言わんとしてるのかわかってないって感じで、斜め上を見て腕組みをした。
ギズリ(GM):
そんなところで、「よーし、そろそろ出発するぞー!」と、少し離れたところからギズリの声が聞こえてきました。
セルダル:
その声で我に返り、「お、おう!」とギズリに返事した。
ギュリス(GM):
ギュリスは立ち上がって服の裾についた土を払うと、「きっと、あの子も対等な関係でいられる人と一緒にいたいんだよ……」と小さく呟きました。
セルダル:
その呟きに、ギズリのほーに向けてた顔を、ギュリスへと向けなおした。
ギュリス(GM):
「ほら、さっさと行くよ」そう言って、ギュリスはセルダルの脚を蹴ります。
セルダル:
「いてっ!」
顔をしかめながら歩き始めた。
どうやら、セルダルがギュリスの言葉の意味を理解できるようになるためには、もうしばらく時間がかかりそうです。
この後、行軍を再開した一行は、ジャイアント・スパイダーと遭遇することになりました。しかし、テジーが相手よりも早くその存在に気付いたため、少し回り道をすることで戦いを回避することに成功します。そして、一行は18時半に2日目の野営地となるIS地点へとたどり着いたのでした。