GM:
さて、IS地点への移動を終えると、一行は野営地の設営と夕食の準備を進めていきます。
セルダル:
んじゃ、メルトが見張り番の担当を決める前に、「隊長。今日はオレが中番やるぜ」って言いに行った。
メルト(GM):
「そうですね。ではお願いします」と、メルトはセルダルの発言をそのまま受け入れます。
セルダル:
「任せとけ! だからオマエはしっかり身体を休めといてくれよな」
ルール的には、睡眠時間が6時間から9時間になったところで生命点の自然治癒判定に用いるキーナンバーに変わりはありません。このやりとりは、セルダルがメルトのことを気にかけていることの表れです。
GM:
では、夜間の遭遇判定を行いたいところなのですが、その前に誰かと会話するようであればそのシーンを挿入します。
セルダル:
だったら、テジーと会話しておきてぇな。
GM:
了解です。では、傷を癒すために休むこととなったメルトの代わりに、テジーが見張り番を務めることとします。念のため、自警団員も見張り番としてひとりつけておきたいのですが、構いませんか?
セルダル:
お邪魔虫め……。まあ、拒否まではしねぇけど(笑)。
GM:
GMとしては、敵との遭遇が発生したときに、戦える人員がセルダルだけになってしまうことを心配しています(苦笑)。
セルダル:
心遣いは嬉しいんだが、いまいち喜びきれねぇな(苦笑)。
しゃーない。だったら、差しさわりのない会話にしとこう。
GM:
あ、いや、そういうことであればこうしましょう。
自警団員(GM):
「すみません、セルダルさん。ちょっと用を足してきますので、そのあいだよろしくお願いします」そう言うと、見張り番を務めていた自警団員は火のついた木の棒を1本たき火の中から取り出して、少し離れたところへと歩いて行きました。
セルダル:
サンキュー(笑)。これで気兼ねなくテジーと話せるな。んじゃ、自警団員が離れていったところでさっそく切り出した。
「なぁ、テジー。オマエ、王都には行ったことあんのか?」
テジー(GM):
テジーは注意深く遠くのほうに視線を向けたまま、「ない」と答えました。
セルダル:
「んじゃ、むこーに知り合いでもいんのか? たとえば家族とかよ」
テジー(GM):
セルダルの言葉にピクリと反応してから、テジーは、「アナタには関係のないことだ」と返します。
セルダル:
「いや、オレも王都に着いたら、しばらくはそこで暮らすことになるだろーし、たまには一緒にメシ食ったりできねぇかなーとか思ってさ」
テジー(GM):
「ワタシにそのつもりはない」
セルダル:
「なんだ、つれねぇなぁ。まぁ、テジーらしいっていえばらしいか……」
テジー(GM):
「……」
セルダル:
「……」
GM:
いつのまにか上空の雲は晴れ、星と月が顔をだしています。この場でほかになにか話しておくことはありますか?
セルダル:
いや、もう十分だ。
GM:
了解です。では、夜間の遭遇判定をどうぞ。ここで遭遇が発生すると、用を足しに出た自警団員の彼の身に危険が……(苦笑)。
セルダル:
(コロコロ)8で遭遇せず。よかったな、自警団員クン(笑)。
自警団員(GM):
「ふぅ……。お待たせしました」そう言って、自警団員がスッキリした顔をして戻ってきます。
セルダル:
「おー。んじゃ、次はオレな」って言って、用を足しに行った。
こうして、テジーの内面に踏み込んでいこうとしたセルダルでしたが、想像以上に厚い彼女の心の壁を前に、あえなく阻まれてしまいました。しかし、テジーの反応から、どうやら王都に家族がいるらしいことがうかがい知れます。そして、彼女の家族といえば……。
GM:
さて、特にイベントが発生することなく翌日の朝となります。各自6時間睡眠がとれたので、自然回復判定を1回どうぞ。
セルダル:
回復しろーッ! (コロコロ)7。
メルト(GM):
(コロコロ)6。
GM:
――ということで、どちらも回復しません。
セルダル:
だよなぁ……。
GM:
やっぱり、12時間、18時間と連続して休みをとって判定に用いるキーナンバーを上昇させないと、生命点はなかなか回復させられませんね。
メルト(GM):
それでも、メルトは泣き言ひとつ言わず、「さあ、出発しましょうか」と声を発しました。
セルダル:
管理職の辛いところだな(苦笑)。
GM:
下手にこの場に留まっていても、敵と遭遇する危険性は変わりませんしね。
では、翌日7時に出発して、HS地点を目指します。イルヤソールまでの道のりも、残すはあと3分の1というところまできました。
その日の午前中、アシャス平原には強風が吹き荒れます。その中で行軍を続ける一行は、満開を迎えていた花々が強風に舞い上げられて空のかなたに消えていくといった風景を幾度か目にすることができました。
セルダル:
おー。
GM:
そんなところで、遭遇判定をどうぞ。
セルダル:
(コロコロ)5。こいつは、危険がやってきやがったな……。だが、オレたちにはテジーがついてる!
テジー(GM):
テジーの索敵距離判定は、(コロコロ)13。そうすると、HS地点に入ったところでテジーが、「なにかがワタシたちのあとからついてきている……」と呟いて、馬足を止めずに背後を確認し始めました。
GM:
テジーとともに背後を確認した人は、目標値7・9・11の動植物知識判定を行えます。
セルダル:
よし、確認しとこう。(コロコロ)7だ。
GM:
その値だとわかったのは名前とレベルだけですね。あなたたちの背後から追跡してきていたのは、10匹のジャイアント・ラットたちでした。戦闘レベルは1ですが、あなたたちの戦力からすると10匹を相手にするのはいささか危険です。
セルダル:
「クソッ、振り切れるかッ!?」
メルト(GM):
「馬を消耗させてしまうことになりますが、ここは仕方ないですね……」そう呟いたメルトは、全員に対して指示を送ります。
「皆、自分に続いて馬を走らせろッ!」
セルダル:
「おうッ!」
頑張れ、馬。
GM:
(ここでなにかに気がついて)
あ……。あれ? もしかして、現在の積載量だと馬を全力疾走させられないのでは……? データを確認しますので、少々お待ちください。
ここでGMは、あらためて現在の馬の積載量を計算しました。
GM:
お待たせしました。かいつまんで説明します。
まず、現在の状況だと、荷物の重量の影響で馬は速足まででしか移動させられません。そして、速足で移動した場合、ジャイアント・ラットに追いつかれてしまいます。
全力疾走してジャイアント・ラットを引き離すためには、なんとかして重量制限を解除しなければなりません。現時点で、あなたたち全員の体重と水と食料、すべてをあわせた重量は750キロです。馬は全部で7頭いるので、馬1頭あたりの積載量は100キロちょっと。馬を疾走させるためには、乗用馬ならば積載量を60キロ未満、荷馬であれば80キロ未満に抑えなければなりません。つまり、いまの状態から180キロ分の重量を減らす必要があるということです。
セルダル:
ふむ……。捨てるなら、水か食料か……。
GM:
水は残り約200キロ積んでいます。
セルダル:
たしか、出発前にギズリさんが水源は任せろとか言ってたよな……。
「隊長ッ、このままだと追いつかれるッ! 馬から水樽をはずして捨てちまえッ!」
メルト(GM):
「し、しかし、それは……」とメルトはためらいの言葉を漏らしました。
セルダル:
「水源の目星はあるんだろ? なぁ、ギズリさん」
ギズリ(GM):
「ああ。まあ、確保できる水が手持ちの水袋に入るだけになっちまうけどな。だが、オマエらがあのネズ公たちを相手に勝ち目がねぇって言うんじゃ、そうするほかにねぇだろ」そう言って、ギズリは後方のネズミの集団へとチラリと目を向けます。
セルダル:
「ネズミのエサになるくれぇなら、1日喉が渇くくらいどーってことねぇぜ」
ギズリ(GM):
「そりゃそうだ」
メルト(GM):
セルダルとギズリのやり取りを耳にしていたメルトは、しぶしぶながらも決断を下しました。
「皆、手持ちの水袋以外の馬に積んである水を全部捨てるんだッ!」
セルダル:
「おうッ!」
GM:
では、馬に括りつけられた樽や水袋が次々と捨てられていきます。ジャイアント・ラットたちは転がる樽を避けつつ、それでもなおしつこく追いすがってきます。
メルト(GM):
「よしッ、これで水は全部捨てたな!? あとは全力でネズミの追跡を振り切るぞッ!」
馬が軽くなったところで、メルトはそう号令を飛ばすと、馬の腹を強く蹴りました。
GM:
こうして、あなたたちは水と引き換えに、ジャイアント・ラットたちを振り切ることに成功したのでした。しかし、馬はこの移動で一気に11点の疲労を蓄積させてしまうことになります。馬の疲労耐性は7点あるので故障まではしませんでしたが、疲労が回復するまでのあいだ移動速度の低下は免れません。
セルダル:
ふー、助かった……。こりゃ、今日はもー休憩かな。
GM:
朝一のできごとだったので、野営地を出発してからまだ1時間しか経過していませんけれどね……(苦笑)。
一応、1時間の休憩することで疲労を1点回復させられます。食事休憩にすればさらに1点余分に点回復しますよ。
セルダル:
あとは、水場探しにどんだけ時間がかかるかにもよるだろーな。まあ、そこらへんは隊長とギズリさん任せになるが……。
「どーやら無事に振り切ったみてぇだが……。さっそく喉が渇いてきやがった」
メルト(GM):
「そうですね。馬も少し休ませたいところですし、とりあえずはこのあたりで水を補給できる場所がないか探してみましょう」
GM:
ということで、馬を休めているあいだに水源を探すこととなったわけですが、水源を見つけるためには、《ランド・ウォーカー技能+知力ボーナス+2D》の生存術判定で目標値12以上を出してもらう必要があります。ランド・ウォーカー技能を持っておらず、かつ知力ボーナスが2未満の人は6ゾロを出しても失敗なので、判定の余地なしですね。
セルダル:
皆、頑張れーッ(笑)!
GM:
なお、この判定は再判定可能とし、最初の判定には1時間、次の判定には6時間、さらにその次は1日と判定のたびに経過時間が長くなっていくものとします。また、別の地点まで10キロ以上移動したあとであればば、再判定ではなく新規判定として扱います。
ギズリ(GM):
「しかたねぇ……。んじゃ、水場を探してくるとすっか」そう言うと、ギズリは皆が休憩しているあいだ、水源を求めて周辺を歩き回りました。(コロコロ)8で失敗です。残念ながら、ギズリはそれらしい水源を発見できませんでした。
GM:
一応、知力ボーナスが2以上ある人は、水源を発見できる可能性があるので判定しておきます。
テジー(GM):
(コロコロ)4で失敗。
ニルフェル(GM):
(コロコロ)8で失敗。
知力ボーナスが2以上あるにもかかわらず、あたりまえのように参加しないギュリス。ですが、これはわざとではなく、単にGMが判定するのを忘れていただけです(笑)。
ギズリ(GM):
「だめだ。ちょっと探した程度じゃ見つけられそうにねぇ。このままここで馬が回復するまで休憩して、そのあいださらに水源を探すか、もしくは疲れた馬に無理させて、進んだ先で水源を探すかのどっちかだな」
GM:
ちなみに、手持ちの水の量からすると、明日の8時を過ぎた段階で水が不足する予定です。
セルダル:
こいつは賭けだな……。
「どーする、隊長? 馬も疲れてるみてぇだし、もーちっと休ませてから移動するか?」
メルト(GM):
「どうしましょう?」
メルトは心底困った顔をして、逆にセルダルに聞き返してきました。
セルダル:
「うーん……」
ギズリ(GM):
「頭ひねって決められねぇんなら、コインでも投げて決めてみるか? あ、別にやけっぱちになってるわけじゃねぇぞ。どっちもどっちだって判断したから、流れに身を任せようって言ってんだ」
セルダル:
「んじゃ、ギズリさん頼むよ」
ギズリ(GM):
「わかった。それじゃ、この銀貨(1D)が表(奇数)だったら、先に進むってことでいいな?」
セルダル:
「おう」
ギズリ(GM):
「どうか神様のお導きをってな」
(コロコロ……出目は6)
「裏だ」
セルダル:
「ってことは、もーちっとばかりここで休憩だな」
ダイスの神様のお導きによりその場で休憩することが決定したため、ここでGMは時間経過によるランダム遭遇判定を行いました。その結果、このあとでとんでもないできごとが……!
GM:
では、さらに休憩するということで、13時まで時間を進めてしまいます。そのころには馬の疲労もかなり回復してきて、鈍足であれば問題なく、通常の速度でも普段より多少遅くなる程度で行軍できるようになりました。
セルダル:
これでひとまず安心だな。
GM:
(コロコロ……シークレット判定)
さて、一応確認しておきますが、休憩のあいだあなたたちは周囲を警戒していましたか?
セルダル:
まあ、してただろーな。
GM:
ならば、索敵距離判定を行ってください。
セルダル:
(コロコロ)5だ。
テジー(GM):
(コロコロ)テジーの判定の結果は12です。そうすると、相変わらず孤立して周囲を警戒していたテジーが、「ダメだ……。ヤツらが来た」と口にしました。
GM:
時間経過による遭遇判定でジャイアント・ラットがふたたび登場しました。今度は5匹になりましたけど……。きっと、10キロ追いかけてくるあいだに半数が脱落したのでしょうね(笑)。
セルダル:
「チッ、きやがったか……」
メルト(GM):
「いまの状況では馬を走らせるわけにいきません!」そう言うと、メルトはジャイアント・ラットのほうへと目を向けました。
セルダル:
「隊長、アンタは傷が治ってねぇんだ。今回は大人しくしててくれよな」
メルト(GM):
「そうは言ってられません。一応、援護くらいならできます」
セルダル:
「んじゃ、あんま前には出ねぇでくれよ。今度無茶したら、それこそ死にかねねぇからな」
逃げても逃げても、しつこく追いかけてくる大ネズミたち。ダイスの神様の演出プランは完璧です。これが本当のチューチュートレ……。