GM:
さて、なし崩し的にその場で野営することになるわけですが、セルダルは今夜の見張り番でも誰かと話しますか?
セルダル:
メルトが特になにも言ってこねぇよーなら、今晩もテジーと一緒に中番で見張りをする。
GM:
了解です。では、セルダルとテジーと……あと、自警団員がひとりの合計3人で中番の見張りを務めることとなりました。
セルダル:
ってことは、その自警団員はまた用足しにいくのか(笑)?
自警団員(GM):
「うッ……。どうしたことだ……? 腹の調子が……。やっぱり、あの水をろ過せずにそのまま飲んだのはまずかったか……?」そう言って、自警団員は中座します(笑)。
セルダル:
「見張りはこっちでしっかりやってっから、気にせずゆっくりな」と言って送り出した。で、テジーに話しかける。
「なぁ、テジー。イルヤソールについたら、すぐ王都に向かうつもりなのか?」
テジー(GM):
「……そのつもりだ」
周囲の警戒を続けながら、テジーは相変わらず無愛想にボソリと答えました。
セルダル:
「ずいぶんと急ぐんだな……」と言って、なにか反応があるか待ってみる。
GM:
特に反応はありません。
セルダル:
「イルヤソールから王都までのアテはあんのか?」
テジー(GM):
「いや、特には」
セルダル:
「特には……って。だったら、いったいどーやって王都まで行くつもりだったんだよ?」
テジー(GM):
「王都に向かう隊商に加わるつもりだ」
セルダル:
「……いままで、そーゆーのに加わったことはあんのか?」
テジー(GM):
「……ない」
セルダル:
「おい!」と、少し声を荒げた。
テジー(GM):
セルダルのその声に、テジーは眉をひそめます。
「さっきからいったいなんなんだ?」
セルダル:
「オマエみたいなべっぴんが、知り合いのひとりもいねぇ隊商に加わって、無事に王都までたどり着けると思ってんのかよ」と言って、こっちも眉をひそめた。
テジー(GM):
「……セルダル殿には関係のないことだ」
セルダル:
「なッ、関係ねぇだと!?」
テジー(GM):
「関係あるのか?」
セルダル:
「大有りだろーがッ! だいたい、オマエは森やデミルコル以外で暮らしたことあんのかよ? 世の中の腐った部分を知りもしねぇで、隊商なんざにホイホイついてったらいーよーに食い物にされちまうぞ」
テジー(GM):
(しばらく沈黙してから)
「……セルダル殿。ワタシはアナタに対して、それなりの敬意を払っているつもりだ。だが、ここはハッキリと言わせてもらう。ワタシにはワタシのテリトリーがある。あまり踏み入らないでもらおう。それと、ワタシにだって自分の身を守るくらいの力はある。……まさかとは思うが、アナタはワタシのことを馬鹿にしてるのか?」そう言うと、テジーは目を薄くしてセルダルの顔を見ました。
セルダル:
「馬鹿になんかしちゃいねぇよ。ただ、心配なだけさ……。まあ、オマエが大丈夫だってゆーなら、これ以上はもー言わねぇよ……。余計なおせっかいだったな。気を悪くさせちまったんだったらすまねぇ」それだけ言ったら見張りに集中する。
テジー(GM):
「理解してくれたのなら、それでいい。ワタシはただ、人には皆それぞれの領分があると言いたかっただけだ」そう口にして、テジーも見張りに戻ります。
前日に引き続き、さらにテジーの内面に踏み込もうとしたセルダルでしたが、いらぬ口出しだと一蹴されてしまいました。テジーはこれまで誰かに頼ることなく自分の力を磨き生きてきた人間であり、この手の親切の押し売りはことごとく拒絶されてしまいます。特に、その実力を軽視した発言は彼女の逆鱗に触れるようなものでした。
GM:
では、さらに時間を進めて翌朝となります。明け方、ふたたび強い風が吹いてきました。その風は南西の方角から、薄暗い雲を運んできます。
セルダル:
「すげぇ風だな。ギズリさん、こいつは長く続くのか?」
ギズリ(GM):
(コロコロ)そう言われたのであれば、朝早くテントから出てきたばかりのギズリは上空を流れる雲を見て、「雲が流されてきてはいるが、この風はそのうちやむだろう。おそらく雨にまではならないと思うんだが……」と答えました。
GM:
しかし、ギズリの言葉とは裏腹に、朝6時過ぎには雷鳴を伴う小雨が降り始めます。
セルダル:
「こいつはありがてぇんだか、ありがたくねぇんだか……」
メルト(GM):
「まったくです。昨日のギズリさんの頑張りは、いったいなんだったんでしょうね……」そう言って、メルトはセルダルの隣で苦笑しました。
「まあ、落ち込んでいても仕方ありませんから、先を急ぎましょう」
GM:
メルトの号令のもと、一行は朝7時に野営地を引き払うと、HR地点を目指して3日目の行軍を開始します。
セルダル:
よし。イルヤソールまではあと少しだ!
GM:
しかし、意気込んだのも束の間、雷鳴がなるたびに馬とロバが足を止めてしまい思ったようには進めません。移動速度にペナルティが発生します。
セルダル:
な、なるほど(苦笑)。
行軍速度を飛躍的に向上させることができる馬での移動ですが、こういった自然環境の変化に弱いなどの弱点があったりします。なお、軍馬であればその弱点を克服しているのですが、荷馬が1,500銀貨、乗用馬が5,000銀貨で購入できるのに対して、軍馬は10,000銀貨からの費用が必要となります。
セルダル:
HR地点への移動に伴う遭遇判定は……。(コロコロ)12で遭遇なし。
GM:
ならば、雷鳴の影響で到着時刻が予定より1時間遅れて、10時ごろになってHR地点に到着しました。
ギズリ(GM):
ここで、ギズリが“天候予測”を行います。(コロコロ)11です。
「なあ、昼までここで休まねぇか? そんで、いまのうちに昼飯も済ませちまおうぜ。昼過ぎになれば雷も止むはずだ。それから移動したほうが、馬たちにも負担が少なくてすむ」
ギズリは空を見上げると、そう提案しました。
セルダル:
「了解だ」
メルト(GM):
メルトはギズリの提案を受け入れ、雨をしのげそうな木陰をいくつか見つけると、そこで自警団の面々に食事をとり始めさせます。
セルダル:
オレも昼メシを済ませておく。
GM:
ならば、セルダルが保存食を口に運んでいるところに、ニルフェルが歩み寄ってきました。
セルダル:
お?
ニルフェル(GM):
「雨、まだやみませんね。……隣いいですか?」
セルダル:
んじゃ、座ってメシを食ってたんだが、声に反応してニルフェルを見上げた。
「おう!」
少し横にずれて、隣に座るよーに促す。
ニルフェル(GM):
ニルフェルは、セルダルの隣に静かに腰を下ろしました。そして、こう話を切り出します。
「一応、セルダルさんにも報告しておこうと思いまして……」
セルダル:
「お、おう……」
ちょっと緊張してる。
ニルフェル(GM):
「たしか、ギュリスさんからすでに話は聞いているんですよね?」
セルダル:
「あー。あのことか……」
ニルフェル(GM):
「わたしは昨晩詳しい話を聞かせてもらったんですが、ギュリスさんのおっしゃることももっともだと思うので、しばらくイルヤソールでお世話になろうかと思うんです」
セルダル:
「ん、そーか」そー言って、水をゴクリと飲み干してから、「なんだか変わったな、ニルフェル」って言って笑ってみせた。
ニルフェル(GM):
「そう思いますか?」
セルダル:
「ああ。なんつーか、余裕があるって感じ……なのかな? まぁ、うまく言えねぇが、とにかく安心したぜ」
ニルフェル(GM):
「余裕なんてありませんよ……。でも、わたし、変わります。これから、どんどん変わるつもりです」そう言って、ニルフェルは真剣なまなざしをセルダルに向けました。
セルダル:
「ああ。もー、迷ってねぇみてぇだな。オマエが決めたことなら、オレはトコトン応援してやるぜ。ぜってー王都まで無事に送り届けてやっからな」
ニルフェル(GM):
「……実は、そのことなんですが……」
そこで一旦ニルフェルは口ごもると、しばらくしてからこう続けました。
「セルダルさんは、王直属兵に志願するつもりなんですよね?」
セルダル:
ニルフェルが口ごもったことを気にせず、ニカッと笑って「おーよ!」って答えた。
ニルフェル(GM):
「イルヤソールに1ヶ月滞在することになると、わたしが王都入りするのは8月になってからのことになると思うんです」
セルダル:
「そのころだと、すっかり夏だな」
ニルフェル(GM):
「ですが、それだと王直属兵の志願期間ギリギリになってしまうので……」
ニルフェルは少し言葉尻を濁しました。
セルダル:
「……そんで?」
ニルフェル(GM):
「セルダルさんはどうしたいですか?」
セルダル:
「そんなの決まってる。ニルフェルのことを無事に送り届けてから、志願する。それで、もし志願期間に間に合わなかったとしても、そんときはそんときさ」
ニルフェル(GM):
「……わたしも、セルダルさんが護衛としてそばにいてくれると心強いです。でも、たとえば、わたしが王都に向かうときに護衛についていてさえくれれば、あとは自由にしてもらっても構わないんですよ? たとえば、一足先に王都を見ておきたいとか思いませんか?」
セルダル:
「これっぽっちも思わねぇな」って、間髪入れずに答えた。
ニルフェル(GM):
ニルフェルの視線がチラリとテジーのいるほうへと向けられました。
セルダル:
ニルフェルの視線には気がついてない。オレは空気を読めない知力9の男だぜ!
「オレの役目は、ニルフェルを無事に王都まで送り届けることだ。それが終わらねぇうちに、オマエのそばから離れられっかよ」
ニルフェル(GM):
「では、わたしがイルヤソールにいるあいだ、セルダルさんもずっとイルヤソールに残る気ですか?」
セルダル:
「……迷惑か?」
ニルフェル(GM):
「そんなことはありません。でも、わたしのことはいいんです。いまは、セルダルさんがどうしたいかを聞いているんです」ニルフェルは少し強めにそう言いました。
セルダル:
「さっきも言ったとおり、オレのやりてぇことはニルフェルを無事に王都まで送り届けるってことだぜ」
ニルフェル(GM):
セルダルの返答を聞いたニルフェルの表情に、安堵の色が浮かびます。ニルフェルは、立ち上がってセルダルの正面に立つと、「わかりました。それでは、どうかよろしくお願いします」と言って、丁寧にお辞儀しました。
セルダル:
「おう、まかせとけ!」ニカっと笑って、そー答えた。
GM:
気がつくと、それまで振っていた雨が、いつの間にか止んでいます。
セルダル:
「おッ。雨が止んだみてぇだな。さすがはギズリさんだ」
ギズリ(GM):
「よーし! イルヤソールまではあと30キロ程度だ。こっから強行軍して、今晩は柔らかいベッドで寝るぞッ!」少し離れたところで、ギズリがそう声を張り上げました。
セルダル:
「おう! もう一息だ。がんばっていこーぜ!」
そこから残り30キロは人の住む土地の近くということで遭遇判定の目標値も低下し、一行は敵と遭遇することなく無事に進むことができました。最後の10キロだけは馬の疲れもあって行軍速度が遅くなってしまいましたが、それでも日が地平線に触れるより先に、イルヤソールのすぐ近く、目と鼻の先といったところまでたどり着きます。
GM:
では、あなたたちがひたすら北西へと足を進めていると、前方にうっすらと青いきらめきと、その手前に並ぶ建物のシルエットが見えてきました。
ギズリ(GM):
「見えたぞ! あの正面に見えるのがヴァハ湖だ!」前方のきらめく水面を指さして、ギズリがそう叫びます。
セルダル:
「うおおッ! 街だ! 街が見えるぜ!」
ギズリ(GM):
「よっしゃッ! こっからは街まで競争だッ!」そう言うが早いか、ギズリは自分たちのまたがる馬の腹を蹴りました。
GM:
そんなギズリにつられて、自警団員のうち何人かも馬を走らせはじめます。
セルダル:
「ヒャッホーイ!」
オレはギズリさんのうしろで歓声を上げてる。
ギュリス(GM):
「あの馬鹿たち……」
その様子をギュリスはあきれ顔で眺めています。
ニルフェル(GM):
それに対してニルフェルは、「男の子らしくていいじゃないですか」と言って微笑みました。
ギュリス(GM):
「いや、男の子って……。あいつら、全員成人してるし……。馬鹿だ、馬鹿。あいつらみんな大馬鹿だ」
セルダル:
実際、知力9だし、返す言葉もねぇな(笑)。
GM:
こうして、湖を目指して馬を走らせるあなたたちの目に、湖畔にたたずむイルヤソールの街並みが迫ってきました。