LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第9話(12)

GM:
 翌日の朝、メルトたちデミルコル自警団の面々は、イルヤソールに到着したのも束の間にさっそくデミルコルへ向けて帰還することになりました。彼らを見送るため、皆が屋敷の正門付近に集まります。

セルダル:
 自警団の全員に礼を言って、見送るぞ。
「皆、ここまでありがとな。帰りの道中も気をつけろよ!」

メルト(GM):
「はい。セルダルさんも、またデミルコルの近くにくることがあったら、ぜひお立ち寄りください。それでは、皆さんお元気で!」
 こうして、メルトたちは帰路へとつきました。

セルダル:
 姿が見えなくなるまで、手を振り続けて見送った。

ギズリ(GM):
 やがて、デミルコル自警団の姿が見えなくなると、「さあて、それじゃ、オレたちも……」とギズリがテジーに視線を送ります。

テジー(GM):
「うむ……」

セルダル:
「ギズリさん、テジー。ずいぶんと世話になったな。ありがとよ」

ギズリ(GM):
(セルダルの台詞にかぶせ気味に)「王都方面に向かう隊商を探しに街に出るとするか」

セルダル:
 え? あ、出発はまだ先なのか(笑)。

ギズリ(GM):
「――って、いまの挨拶はなんだよ。オレたちはまだここを離れたりはしねぇぞ! おい、テジー。聞いたか? セルダルの奴、遠まわしにさっさといなくなれって言ったぞ。まだ初夏だってのに、この冷たさ……。オマエ、どう思うよ?」

テジー(GM):
「……」
 テジーは無表情のままです。

セルダル:
「い、いや、オレもこれから仕事にでることになるわけだし、次いつ会えるかわかんねぇだろ? だから、言えるうちに言っておかねぇとよ。なんせ、ここの自警団は寝る暇もねぇって話だしさ」

ギズリ(GM):
「……まあ、ここはそういうことにしておいてやろう」そう言いながら、ギズリはニヤニヤと笑っています。
「一応、出発日が決まったら報告するから、そんときにはあらためて送別祝いでもくれよな」

セルダル:
「だったら、それまでにここの自警団の連中から情報を集めてうまい店を探しておくから、メシでも食いにいこーぜ!」

ギズリ(GM):
「了解だ。じゃ、せいぜい、うまい店を見つけといてくれよな」そう言うと、ギズリはテジーを連れて街へと出て行きました。

ギュリス(GM):
 そのような感じで、デミルコル自警団の面々に続き、メルトとテジーがいなくなったところで、ギュリスがボソリと呟きます。
「さてと……。少しは静かになったかな」

グン&トプラク(GM):
 しかし、グンとトプラクは相変わらずギュリスにベッタリです。
「ギュリスねーちゃん、あそぼー?」
「あそぼー?」

セルダル:
「ものすごく懐いてるな……」

ギュリス(GM):
「懐かれているっていうより、とりつかれてるって感じがするんだけど……」
 ギュリスは半ば引きつった笑いを浮かべています。

ニルフェル(GM):
 その一方で、ニルフェルは、「それじゃ、皆さんそれぞれにやるべきことをはじめたようですし、わたしもご指導のほどよろしくお願いします」と言って、ボレン夫人に頭を下げました。

ボレン(GM):
 そんなニルフェルに対し、ボレンは両手で待ったをかけるような仕草をすると、このようなことを言います。
「ごめんなさい。そのことなのだけれど、女子教育は明日からってことにしてもらえないかしら? こちらも突然のことで、教育に必要な準備がまったく整っていないの。引き受けたからには、いろいろと用意しておきたいものがあるのよね。だから、今日はお休みってことで……」

グン&トプラク(GM):
「「おやすみー?」」

ギュリス(GM):
「ってことは、今日一日は自由にしていていいってことね……。うぐぐぐぐ……」ギュリスは、グンとトプラクにしがみつかれながらそう言います。

セルダル:
「グン、トプラク、よかったな。ギュリスねーちゃんが一日中遊んでくれるみてぇだぞ(笑)」

グン&トプラク(GM):
「「わーい」」

ギュリス(GM):
「ちょっと、あなたねぇ。他人事だと思って……」ギュリスは恨めしそうな顔をして、そうぼやきました。

ボレン(GM):
「あ、それと、セルダル。あなたにはこれを」そう言って、ボレンはセルダルに書簡を渡します。
「自警団への紹介状よ。自警団の詰め所はここから少し北に行ったところにあるから、そこで団長のクムルにこれを見せるといいわ」

セルダル:
「サンキュー!」と礼を言って書簡を受け取った。
「んじゃ、早速行ってくるとすっか」

ギュリス(GM):
 そんなセルダルのことをギュリスが呼び止めます。
「セルダル! せっかくだし、自警団の詰め所に顔出す前に、街を一通り見て回ったらどう? 警らするなら、少しはこの街のことも知っておかないとね」

セルダル:
「おお、それもそーだな。さすが、ギュリスお嬢さんだ」

ギュリス(GM):
 続けて、ギュリスはセルダルにだけ聞こえる程度の小声でこう言います。
「ちなみに、それ以上に気がまわるかはあなた次第」

セルダル:
 ふむ……。
(少し考えてから)
 グンとトプラクの2人をオレの両肩に乗っけることはできるだろーか?

GM:
 え? あ、ああ……。それは大丈夫だと思いますよ。全速力で移動できないのと、疲労がたまるというペナルティをのぞけば(笑)。

セルダル:
 よし!
「んじゃ、ギュリスお嬢さん。もし時間に余裕があんなら、一緒に街を見て回ってくれねぇか?」

ギュリス(GM):
 ……その言葉を耳にしたギュリスは、意外そうな顔をしたあとで大きくため息をつくと、きつい目つきでセルダルのことをにらみました。
「……ねぇ、ニルフェル。時間も余ってることだし、せっかくだから一緒に街を見てまわろっか? もちろん、あたしたち、だ・け・で・ね!」そう言って、ギュリスはセルダルの足を踏みつけます。

セルダル:
「ぐッ! ……な、なぁ。なんか、勘違いしてねぇか?」

ギュリス(GM):
「ああ、勘違いだったんだ? それならよかったよ! じゃあ、どこがどう勘違いだったのか言ってごらん!」

セルダル:
「いや、オレは、ニルフェルとギュリスお嬢さんとドンとトプラクの4人と一緒に街をまわりたいって思ってたんだが、だめか?」

 ニルフェルと2人でというわけではないこと。そして、誘わずしてニルフェルが一緒に来ることになっていること。どうやら、ギュリスの怒りは勘違いによるものではなかったようです(苦笑)。

ギュリス(GM):
「へぇー。だってさー。どうする、ニルフェル?」

ニルフェル(GM):
 そんなやりとりを見て、ニルフェルはクスクスと笑っています。

セルダル:
「笑うなよ、ニルフェル。それに、ギュリスお嬢さんも、オレの言葉が足らなかったのは悪かったが、そんなにいじめねぇでくれって」

ニルフェル(GM):
「わたしは構いませんよ。イルヤソールの街に興味もありますし」

ボレン(GM):
「グンとトプラクの面倒を見てもらえるのなら、私としても助かるわ」と、ボレン夫人もセルダルのことを後押しします。

セルダル:
「そりゃ、もちろん!」

ギュリス(GM):
「うーん。セルダル優勢か。なら、仕方ない」そう言って、ギュリスもしぶしぶ納得しました。

セルダル:
「んじゃ、ギュリスお嬢さんは案内を頼むぜ」そー言って、グンとトプラクの前でしゃがみ込んだ。
「2人とも、オレの肩に乗っかってみねぇか?」

グン&トプラク(GM):
「たかいの?」
「きっと、たかいよ!」

セルダル:
「ああ、高いぜ!」

グン&トプラク(GM):
 では、好奇心に駆られたグンとトプラクはセルダルの肩に乗りました。

セルダル:
 2人を乗せて立ち上がった。
「んじゃ、いこうぜ!」

ニルフェル(GM):
「はい」

ギュリス(GM):
 セルダルたちのあとをついて歩きながら、ギュリスは目の前に見える景色に対して、「……あたしの考えていたのとは、なんか違うんだよなぁ……」とため息交じりにひとりごちました。


GM:
 さて、そのようにしてあなたたちがイルヤソールの街へ出て行ったのは、まだ朝の8時を過ぎて間もないころのことです。この日は晴天ですが、強風が吹いています(と言って、イルヤソールの市街地図を提示する)。

イルヤソール市街地図

ニルフェル(GM):
 吹きつける強風に、ニルフェルはバタつく長い髪を押さえました。

セルダル:
 んじゃ、ニルフェルの風上に立つよーにさりげなく移動する。

GM:
 まあ、その程度のことで防げるような風ではありませんが……。

セルダル:
 いーんだよ(苦笑)!

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは、そのセルダルの気遣いに気がつき、「ありがとう。セルダルさん」とお礼の言葉を口にします。

セルダル:
「お、おう……」

ギュリス(GM):
 そうして表通りへ出たところで、ギュリスが「さあて、案内を頼まれはしたわけだけれど、特に行きたいところとかはあるの?」と聞いてきました。

グン&トプラク(GM):
「「どこいくの?」」

セルダル:
「まぁ、一通り見て回りてぇんだが、今日のところは危なくねぇところだけで頼むぜ。……そーだな。なんだ、その……。雑貨とか小物を売ってるよーなところから見て回りてぇな。商売でにぎやかなところとかねぇか?」

ギュリス(GM):
「だったら、中央広場から東に抜ける通りだね」そう言うと、ギュリスはスタスタと歩き始めます。

セルダル:
 んじゃ、ギュリスのあとをついて行く。

GM:
 中央広場は、イルヤソール邸の目と鼻の先にあります。徒歩5分ですぐに広場の中心部分へと入りました。まだ早い時間帯なので露店は少ないですが、街の規模からすると想像以上に混雑しています。特に目につくのは、旅人風の格好をした人や、目つきの鋭い、いわゆる腕に自信を持っているような人たちの姿です。

セルダル:
「まだ早えのに、こんなに人がいるんだな」
 治安が気になるところだな。オレは周りに警戒しながら歩いてる。

ギュリス(GM):
「いま、この街には人が集まりつつあるからね」

セルダル:
「へぇ……。そいつはまた、どーしてなんだ?」

ギュリス(GM):
「平定戦争からこっち、遊牧で生計を立ててた人たちが、定住し始めてるんだよ。その影響で、商売人も集まってきてるってわけ。あと、聖域が近いってのもあるかもね」

セルダル:
「この近くに聖域があるのか?」

ギュリス(GM):
「北に20キロくらい行ったあたりに、ハルヴァ神の聖域がね。この規模の街がこれだけ聖域に近いところにあるっていうのは、ほかに例がないと思うよ」

セルダル:
「ほー。そんじゃ、ここは聖域に向かう連中にはありがてぇ街ってわけだな」

ギュリス(GM):
「うーん、それはどうなのかな……」

ニルフェル(GM):
 そこでニルフェルも会話に入ってきました。
「あの、聖域の探索って、いまは禁止されているんですよね?」

ギュリス(GM):
「そうそう。だから、表向きはね……」

セルダル:
「表向きって……。そいつはずいぶんな言い回しだな」

ギュリス(GM):
「だって、これまでそれで生計を立ててた連中は、探索禁止のお触れが出されたところで構わず聖域に行っちゃうからね……。たぶん、自警団の仕事の中には、そういった遺跡探索者の摘発とかもあると思うよ」

セルダル:
「ほー。そりゃ、危なそーな仕事だな」
 ……なんて返事をしつつも、目ではニルフェルの髪を止められるような小物を売ってる店がないか探してる。

GM:
 了解です。では、《ハンター技能レベル+知力ボーナス+2D》で目標値7の判定をどうぞ。

セルダル:
 ダイスの神様、頼むぜ。(コロコロ)10で成功!

GM:
 では、セルダルはアクセサリー類を扱っている雑貨屋を見つけることができました。

セルダル:
「お……。ちょっと、そこの店によってもいーか?」

ギュリス(GM):
「もともとそのつもりで来たんでしょ? 好きなようにしなさい」

セルダル:
「へへ。そーだよな」そー言って、店に入るなりアクセサリーを物色しはじめた。

GM:
 雑貨屋には、10銀貨から1,000銀貨まで、さまざまなアクセサリーが並べられており、よりどりみどりです。

ニルフェル(GM):
「わたしもイルヤソールに来た記念に、なにか買っていこうかな……」
 ニルフェルも雑貨屋の品々に手を伸ばし始めました。

セルダル:
 うッ。急げ、オレ。白い髪留めはないか!? なんとしても、ニルフェルに買われる前に探すんだ。

GM:
 別に珍しいものというわけではないでしょうから、すぐに見つかりますよ。

セルダル:
「ニルフェル。これなんていーんじゃねぇか?」そー言って、手に持った白い髪留めをニルフェルに見せた。

ニルフェル(GM):
「あ、可愛いですね。女物みたいですが、誰かにプレゼントでもするんですか?」

ギュリス(GM):
「……」
 ギュリスはそのやり取りを少し離れたところで見ています。セルダルがお店に行ってしまったので、おそらくはその場に残されることとなったグンとトプラクの手をつないで(苦笑)。

セルダル:
「いや……。誰かにってゆーか、ニルフェルになんだが……。もしかして、こーゆーのは嫌いか?」

ニルフェル(GM):
「え? いえ、嫌いというわけではないですけれど……。でも、どうして? わたしの誕生日はまだ少し先ですよ?」
 ニルフェルは小首をかしげています。

セルダル:
「別に誕生日じゃなくたっていーじゃねぇか」そー言うと、店の主人に対して、「これいくらなんだ?」って確認した。

GM:
 いくらの髪留めを選んだんですか?

セルダル:
 やだなぁ……。んなもん、オレの財布の中身からして、100銀貨以下のもんに決まってるじゃねぇか(泣)。

GM:
 了解です(笑)。(コロコロ)では、《2D》で7が出たので、70銀貨としましょう。
「それだったら70銀貨だよ」と店主が教えてくれました。

セルダル:
 オッケー。店主に70銀貨支払って、髪飾りを購入した。
「そんじゃ、あらためて。ニルフェルにこれをプレゼントさせてくれ」

ニルフェル(GM):
「でも……。あの……」
 ニルフェルは申し訳なさそうにしています。

ギュリス(GM):
「せっかくだし、受け取ってあげなよ。もうお金払っちゃったんだし。セルダルがそれをつけるわけにもいかないでしょ?」

セルダル:
 ナイスだ、ギュリス!

ニルフェル(GM):
「えーと……。それじゃ……」
 ニルフェルは戸惑いつつも、セルダルのプレゼントを受け取ることにしました。
「……そのかわり、今日のお昼はわたしがごちそうしますね」

セルダル:
「ああ。んじゃ、昼メシは頼むぜ」そー言って、ニカッと笑った。

ニルフェル(GM):
 では、あらためてニルフェルは白い髪留めを受け取ります。
「ありがとうございます」

セルダル:
「いいってことよ。それよか、よかったらここでそれをつけてみてくれよ」

ニルフェル(GM):
「そうですね」そう言ってニルフェルは店の売り物の鏡の前に立つと、セルダルがプレゼントした白い髪留めで髪をまとめました。

ギュリス(GM):
「へぇ……。結構いいんじゃない?」
 髪留めを付けたニルフェルに対して、ギュリスが感想を漏らします。

セルダル:
「おお! 似合ってるぜ、ニルフェル」

ニルフェル(GM):
 周囲の評価に、ニルフェルは気恥ずかしそうにして頬を赤く染めました。




誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。