セルダルがニルフェルへ贈る髪留めを購入したあとも、一行はいくつかの店を見て回ります。
セルダル:
「よーし。んじゃ、次はあの店にいってみよーぜ」そー言って次の店に向かった。
GM:
ならば、その店の軒先には、「ヘルスポーション入荷!」という張り紙がありました。
セルダル:
そいつは、懐の寂しいオレには縁のないもんだな……。
このヘルスポーション入荷の張り紙は、回復手段のないセルダルに対するフォローとしてGMが用意していたものでしたが、貧しさに負けました(苦笑)。武士は食わねど高楊枝とは言うものの、先立つものがあるに越したことはありません。
セルダル:
「そーいや、勉強するのに用意しとくものとかはねぇのか?」って、ニルフェルとギュリスに聞いてみる。
ギュリス(GM):
「それは、叔母様任せだね。あたしたちのほうは、心構えだけしておけば大丈夫」
セルダル:
「ほー。……しっかし、いまさらながら、ボレン夫人はなんつーか、かっこいー人だな」
ギュリス(GM):
「フフン。まあね」
ギュリスはまるで自分のことのように、誇らしげに胸を張りました。
ニルフェル(GM):
「そういえば、ボレン夫人はどのような経歴の持ち主なのですか?」
ギュリス(GM):
「あー。叔母様の経歴は凄いよ。なにせ、女性では数少ない王立大学卒だからね」
セルダル:
「おーりつだいがく?」
ギュリス(GM):
「王立大学っていうのは王都カドゥンにあるカーティス王国で一番最初に開校した大学。あのヤウズ王子も通ってたっていう、将来の国政を担う人たちが集まる場所のことだよ。以前、お世話になった国家測量士のファジル様も話してたじゃない」
セルダル:
「はー。ボレン夫人は、そんなすげぇところで勉強してたのか」
ギュリス(GM):
「で、叔母様はそこを卒業したあと、さらに王宮で5年間、教育係を務めてる。そのあいだに受け持っていた相手っていうのが、なーんと、あの小メルテム王妃とエミーネ姫だっていうんだから驚きでしょ?」
セルダル:
「王妃に姫!? オイオイ。なんだか、すげぇ人に教わることになったみてぇだな……」
GM:
ここで、小メルテム王妃とエミーネ姫の名前がはじめてでてきたので、セルダルがその2人についてどこまで知っているかを《スカラー技能+知力ボーナス+2D》で判定してみましょう。目標値は小メルテム王妃が6・8・10、エミーネ姫が8・10・12です。
セルダル:
(コロコロ)小メルテム王妃については7、エミーネ姫については11だ。
GM:
では、セルダルの知っている範囲でその2人について説明しておきます。
まず、小メルテム王妃ですが、彼女はいまは亡きアゼル王の2番目の正室です。アゼル王が晩年になってから娶った妻で、黒い肌の人物です。アゼル王の義理の母もメルテムという名前だったため、国民からは小メルテムと呼ばれています。そして、その小メルテム王妃がアゼル王とのあいだにもうけた子供が、エミーネ姫です。エミーネ姫は現在16歳で、2人とも健在です。
ボレン夫人は、小メルテム王妃が王宮入りした直後からエミーネ姫が生まれて物心つくまでのあいだ、教育係を務めていたということになります。
ギュリス(GM):
「あたしのお母様が亡くなったのがきっかけで、叔母様はイルヤソールに戻ってくることになったんだ。それからしばらくのあいだ、あたしも伯母様の教育を受けることになったんだけれど、もう厳しいのなんのって……」そう言って、ギュリスは苦笑いします。
ニルフェル(GM):
「あの……。王立大学に在籍されていた時期から考えて、もしかするとボレン夫人はヤウズ王子とご学友であったのでは?」
ギュリス(GM):
「あ、たしかにそうかもね。今度聞いてみようか?」
ニルフェル(GM):
「はい」
GM:
そのような感じで、ボレン夫人の経歴を知ったニルフェルは、その後もギュリスといろいろと会話を続けています。
セルダル:
仲がいいみてぇでなによりだ。
ところで、昼までにまだ時間はありそーか? 街をぐるっと回ってこよーと思うんだが……。
GM:
まだ9時前なので、時間は十分あります。どうぞ、市街地図を参考に足を運ぶ場所を指定してください。
GM:
あと、以前装備していた両手剣ってどうしました? もし持ってきているようであれば、武器屋で買い取ってもらうこともできますけれど。
セルダル:
了解。以前使ってた両手剣も一応持ってきてる。
んじゃ、まずはここから東に進んで宿屋方面に向かう。で、そこから北に向かって街の外周を時計回りに、防具屋、武器屋、中央広場の順に回る。中央広場に戻ってきたところで昼メシにして、そのあとで自警団の詰め所に向かう予定だ。
GM:
では、あなたたちは中央広場から東へ延びる道を進んでいきました。その道の両側には店が乱立していて、将来的には目抜き通りへと発展していきそうな感じです。中央広場から離れていくにしたがい、通りに軒を連ねる店は雑貨屋などから宿泊施設へと変わっていきました。そして、そこから北側へ向かいぐるりと街の外周を歩いていると、今度は街の外側に放牧されている馬や牛や羊などの姿が見当たります。
ギュリス(GM):
その光景を目にしたギュリスは、「やっぱり、マーキ・アシャスといったら馬だよね。よその馬とは毛並が違うよ」と口にしました。
ニルフェル(GM):
「そういえば、ギュリスさんは馬にも乗れるんですよね。それも、ボレン夫人に教えていただいたのですか?」
ギュリス(GM):
「いやいや、さすがに違うよ」と、ギュリスは笑います。
「あれは、ニハト兄様から教わったんだ」
ニルフェル(GM):
「そういえばギュリスさんにはお兄さんがたくさんいらっしゃるんでしたね。うらやましいです」
セルダル:
兄貴に関する話が出てきたところで、思わずギクリとした。
ギュリス(GM):
「まあ、中にはとんでもない馬鹿兄貴もいるから、そこまでうらやましがられるようなものでもないんだけどねぇ……。でも、氏族長の家系としては、男子が多いのは喜ばしいことなのかな」
セルダル:
ここらへんで少し口を挟みたいところだが、藪蛇になると嫌だからグッとこらえた(苦笑)。
GM:
了解です(笑)。
では、そんな雑談をしながら街を歩き、10時を回ったあたりで防具屋の前まできました。周囲には、槌を打つ音が響き渡っています。
セルダル:
「お、ありゃ防具屋だな。ちょいとのぞいておきてぇんだが、いーか?」
ギュリス(GM):
「いいよ。そのあいだ、あたしたちは店の外で待ってるね」 と、ギュリスは了承するのですが――
グン&トプラク(GM):
「ねぇ、もうつかれたよ~」
「つかれた~」
長時間歩き回ったことで、グンとトプラクは愚図りだしてしまいました。
ギュリス(GM):
「ついにはじまったか……。はいはい、抱っこね」そう言って、ギュリスはヤレヤレといった顔をします。
「ニルフェル。悪いんだけど、トプラクのことを抱っこしてもらえる? あたしはグンのことを抱っこするから」
セルダル:
「あ……。んじゃ、防具屋はまたあとにするわ。オレひとりのときに来りゃいーことだしな。ほら、グン、トプラク。こっちにこいよ。肩に乗せてやるぞ?」
グン&トプラク(GM):
そのセルダルの誘いに、グンとトプラクは顔をそむけました。
「え~。おじさんかたいから、もうイヤ」
「かたいのイヤ~」
セルダル:
「お、おじさん……? オレはまだハタチまえだぞ。どこがおじさんだよ。まったく……」
ニルフェル(GM):
そのやり取りをみたニルフェルは、思わず吹き出します。
ギュリス(GM):
「ほーら、おじさん。こっちのことはいいから、お店見てきなよ。どうせあなたじゃ、グンとトプラクの面倒みるのに、たいして役に立たないんだからさ」
セルダル:
「ギュリスお嬢さんまで……」
(少し考えてから)
「わかったよ。んじゃ、お言葉に甘えて少し見てくるぜ」そー言って、店に入っていった。
GM:
では、セルダルが防具屋に入っていくと、店内にはソフトレザーアーマーからコートオブプレートまでの鎧が一揃い陳列されていました。その中には、軽量化された良質な鎧も見当たります。また、店内に設置されたボードには、「オーダーメイド承ります」と書かれていました。
セルダル:
うおおッ! んじゃ、高品質のハードレザーアーマーも置いてあんのか?
GM:
ありますね。サンプル品として飾られている高品質のハードレザーアーマーには、1,820銀貨と書かれた値札がつけられています。ちなみに、現在この店の目玉商品となっているのは高品質のコートオブプレートで、そちらの値札には8,800銀貨と書かれています。
セルダル:
まあ、どっちにしてもいまの懐事情じゃ手が届かないわな……。だが、目標はできた。とりあえず、貯金2,000銀貨を目標に頑張るとしよう。それだけ確認できたら、店を出る。
GM:
セルダルが店の外にでてみると、そこにはワイワイ遊んでいる4人の姿がありました。
セルダル:
「すまねぇ。待たせちまったな」
ニルフェル(GM):
「いえ、思っていたよりも早かったですね。なにかいいものはありましたか?」
セルダル:
「おう。目標金額は2,000銀貨だ。これから自警団で頑張るぜ!」
ニルフェル(GM):
「あ……。お金、足りなかったんですか?」
セルダルの言葉に、ニルフェルはちょっと気まずい表情をしました。
セルダル:
「いやいや、足りるもなにも、いますぐ欲しかったわけでもねぇし、逆に稼いで手にいれる楽しみができたってだけだぜ?」
ニルフェル(GM):
「……」
ニルフェルは申し訳なさそうに、セルダルから貰った髪留めに手を当てます。心なしか、髪留めが実際の重さよりも重く感じられたり……(苦笑)。
セルダル:
「それに、イルヤソールの街をはじめて回った日の思い出は金じゃ買えねぇ。いつかその髪留めを見て、その日は風が強かったんだっけなとか、そーゆーことを思い出せるなら、それ以上の金の使い方はねぇと思うぜ?」
ギュリス(GM):
「思い出はお金では買えない……ね。まあ、悪くない言葉ではあるけど、甲斐性なしが口にすると負け惜しみにしか聞こえないから不思議なもんだよねぇ」そう言って、ギュリスは苦笑しています。
グン&トプラク(GM):
「かいしょうなし?」
「かいしょうなしってなぁに?」
セルダル:
「オマエらまで……(苦笑)。しかし、甲斐性なしっていうのは止してくれよ、ギュリスお嬢さん。金はこれから手に入れるんだからよ。この腕でな」
ギュリス(GM):
「まあ、せいぜい頑張りなさい」
ニルフェル(GM):
「お、応援しています!」
ルフェルもまた貧しさに負けた口なので、その応援の言葉にはやけに力が入っています(笑)。
セルダル:
なんにしたって、互いに共感できることがあるのはいーことだ(笑)。
さてと、そろそろ昼メシどきになるんじゃねぇか?
GM:
11時を過ぎたところですね。このあと予定されていた武器屋はどうします?
セルダル:
武器屋はパスだな。武器はデミルコルを出る前に新調したし……。
ここでの確認は、使い古しの両手剣を売って少しでも軍資金を補充してみては?という意図だったのですが(苦笑)。
GM:
了解です。そうすると、このあとは一度中央広場に戻り、そこから南下して酒場のある場所まで足を延ばすことになりますかね。そのルート上に美味しそうな飯屋があれば入るといった感じで。
セルダル:
ああ。それがいーな。
GM:
では、ハンターとしての嗅覚が美味しい飯屋を教えてくれるということで、《ハンター技能レベル+知力ボーナス+2D》で飯屋探しの判定をどうぞ。達成値7で標準的なお店を見つけられます。
セルダル:
あ、いや、それは待ってくれ。オレはニルフェルに店を選んでもらおーと思ってる。もしくは、ギュリスが安くてうまい店を紹介してくれるとかよ。
GM:
ふむ。そうすると……。
ギュリス(GM):
「さて、じゃあ、そろそろお昼にしようか。……で、肝心のお店だけど、あたしはいっつもボレン叔母様のところで食べてたから、外のお店のことは知らないんだ。あなたたち、なにか食べたいものとかある?」とギュリスが確認してきました。
セルダル:
なん……だと……。
ニルフェル(GM):
「わたしはなんでもかまいませんよ。セルダルさんにごちそうするという約束でしたから、セルダルさんが好きなお店を選んでください」そう言って、ニルフェルもセルダルのほうへと目を向けました。
セルダル:
やられた……。
「お、おう……。んじゃ……」
GM:
まあ、女性の口にする「わたしはなんでもかまいません」という発言が文字通りの意味であることなどありえませんがね(笑)。
グン&トプラク(GM):
「おいしいごはんがいい!」
「おいしいのね!」
グンとトプラクも、期待のまなざしをセルダルへと向けています。
セルダル:
ひでぇ……。ここで追い打ちかよ(苦笑)。
ええい、ままよ! イチかバチか、ハンターとしての嗅覚に賭ける。(コロコロ)よっしゃッ、11だ。
GM:
おお、素晴らしい(笑)。
セルダル:
しかし、今日の運はきっとこれで終了だな(笑)。
「あの店なんかどーだ?」
GM:
セルダルが指定したお店からは、とても香ばしい匂いがただよってきています。
ギュリス(GM):
「ふーん。見た感じちょっと汚そうなお店だけど、あなたがあそこがいいって言うなら、入ってみるとしようか」
セルダル:
「オレのハラの虫が、あの店はアタリだって言ってるからな。ニルフェルも、あの店でいーか?」
ニルフェル(GM):
「ええ。セルダルさんにお任せしたんですから、もちろん構いませんよ」
GM:
こうしてあなたたちは、多少薄汚れた感じのする飲食店へと入りました。そのお店では、ケバブと白パンとヨーグルトのセットが10銀貨で注文できました。
ギュリス(GM):
店に入ったときには顔をしかめていたギュリスでしたが、運ばれてきた料理を口にしたところで、その表情が明らかに変わります。
「モグモグ……。んッ! これ、なかなかいけるね……」
ニルフェル(GM):
「ええ。すごくおいしいです」
グン&トプラク(GM):
「おいしいよ!」
「おいしいね!」
ギュリス(GM):
「やるじゃん、セルダル。ちょっと見直したよ」
セルダル:
「ギュリスお嬢さんからそんなこと言われるのは、はじめてだな」
予想してたよりも、かなりいー反応だ(笑)。
GM:
ギュリスが手放しで褒めるのは達成値12からということにしていたので、今回は80点といったところですね(笑)。
ギュリス(GM):
「……まあ、すごいのはセルダルじゃなくて、お店のほうなんだけど……」
セルダル:
「あー。そーだよな……(苦笑)」
GM:
そのような感じで、あなたたちは昼食を終えたのでした。