LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第9話(15)

GM:
 さて、セルダルのほうで特にやりたいことがないようであれば、翌日、自警団の詰め所に出勤するところまでシーンを進めてしまうつもりだったのですが、やりたいことがあるのですよね(笑)?

セルダル:
 ああ。朝一に武器屋で両手剣を売り払い、そのあとギズリさんとテジーととニルフェルとギュリスを連れて、チャウラに昼メシを食いに行くつもりだ。もちろん、14時までには自警団の詰め所についていられるよーに行動するぞ。
 あ、あと、もしクムル団長のことについてボレン夫人から話を聞ける機会があんなら、それも聞いておきてぇところだな。

GM:
 そうすると、まずは夕食のシーンにしたほうが良いですかね……。セルダルはピザ食べてから屋敷に戻ったわけですが、そのあとでさらに食事しますか?

セルダル:
 するする。

GM:
 では、場面はその日の夜、セルダルがイルヤソール邸に戻ってきたところとします。チャウラで食事をしたのが19時くらいのことでしたから、セルダルが戻ったころにはすでに夕食が始まっていました。

セルダル:
 口の周りにピザのソースがついてねぇか気をつけてから食堂に向かった。
「いやぁ、思ってたよりも戻ってくるのが遅くなっちまったな」

ボレン(GM):
「お帰りなさい。先にいただいていますよ」

セルダル:
「ああ。こっちこそ遅くなっちまって面目ねぇ」

ギュリス(GM):
「で、自警団はどうだったの?」と、ギュリスが興味津々の様子でセルダルに話しかけてきます。

セルダル:
「ああ、ボレン夫人に用意してもらった紹介状のおかげで、無事に入団できることになった。ホントーにボレン夫人には感謝しっぱなしだ」

ボレン(GM):
「それは良かった。それじゃあ、頑張って働いてちょうだいね」

セルダル:
「もちろんさ! ところでさ、団長のクムルさんってのはどんな人なんだ?」

ボレン(GM):
「クムルですか……。彼は昔、傭兵団を率いていたことがあるそうですよ。聞いた話では平定戦争において、ずいぶんと功績をあげたとか」

セルダル:
「傭兵団ね……。その傭兵団の名前とかはわからねぇか?」

ボレン(GM):
「たしか、“鉄の月”とか言ったかしら? 傭兵団自体は、平定戦争末期に解散したそうだけれど……」

セルダル:
 GM、その名前に聞き覚えはねぇかな?

GM:
 では、《コマンダー技能レベル+知力ボーナス+2D》で目標値8の判定を行ってみてください。

セルダル:
(コロコロ)6……。ダメだ、わからん。

GM:
(苦笑)

ボレン(GM):
「それで、そのクムルがどうかしたの?」

セルダル:
「いや、片手剣と盾を使って、見たこともねぇ技を使ってたから、ちょっと気になってさ」

ボレン(GM):
「そう……。まあ、彼は優秀な人だから、一緒にいれば学ぶことも多いと思うわ」

セルダル:
「そーだな。明日からが楽しみだよ」そー言って食卓についた。

ギュリス(GM):
 セルダルからの質問に区切りがつくと、今度はギュリスがボレンに質問を投げかけました。
「そういえば、叔母様は王立大学時代にヤウズ王子と一緒に学んだりしたことはあったの?」

ボレン(GM):
 それに対してボレンは、「ええ、何度か同じ講義を受けたことはあったわ。ヤウズ王子のほうが先に卒業していかれましたけどね」と答えます。

ニルフェル(GM):
 その答えを聞いて、ニルフェルも身を乗り出しました。
「あの、ボレン夫人からみて、ヤウズ王子はどのような方でしたか?」

ボレン(GM):
「うーん、そうね……。すごく変わった人というのが素直な印象かしら。とにかく、まわりの人とは異なる価値観の持ち主だったわね」
 ボレンはニルフェルとギュリスの強い視線を感じて、さらに考え込みます。
「ヤウズ王子は自分の目的を果たすために最も効率の良い手段を選択して、それに対して一切取り繕うことがない人だったわ。多分だけど、あの人にはわたくしたちが漠然と抱いている善だとか悪だとか、そういった判断基準はないんじゃないかしら。まあ、わたくしもヤウズ王子と直接お話したことがあるわけではないから、それ以上の詳しいことは知らないのだけれど……」

ギュリス(GM):
「うーん、もう少し具体的な話が聞きたかったんだけど……」そう口にするギュリスは少し残念そうです。

セルダル:
 オレはたいして興味もなさそーに、晩メシを口に運んでる。

GM:
 結局、ボレンはヤウズ王子とさほど面識もなかったということで、それ以上の話は聞けませんでした。

 王立大学時代よりも、ボレンが王宮で教育係を務めていたころのほうがヤウズ王子と顔をあわせる機会は多かったような気がしますが、2人のあいだに直接の面識はなかったというのは、その期間も含めてのことです。


 翌日、セルダルは午前中のうちに武器屋へと向かい、使い古した両手剣を売り払いました。そして、お昼時になると、ギズリたちを誘って街へと繰り出します。

セルダル:
 ――ってわけで、ギズリさんたちをチャウラに案内した。
「ついたぜ。ここだ、ここ」

ギズリ(GM):
 店の前まで来たギズリは、「ほう、チャウラか。結構穴場の店を見つけたもんだな」と、少し感心したようにそう言いました。

セルダル:
「え? ギズリさん、この店のこと知ってたのかよ!?」

ギズリ(GM):
「言っただろ? この街には何度か来たことがあるって」

セルダル:
「さすがだなぁ……。でも、うまけりゃ知ってる店でも別に構わねぇよな」

ギズリ(GM):
「もちろんさ。セルダルのおごりだしな(笑)」

GM:
 こうして、一同はチャウラに入ると、そこでお店自慢のピザを頬張ることになります。

セルダル:
 ピザを食いながら、旅の思い出話とかしたりしてる。

GM:
 了解です。

ニルフェル(GM):
 では、そんな話の合間に、ニルフェルが「昨日のお店もおいしかったですけれど、ここもおいしいですね」と感想を漏らしました。

セルダル:
「だよな! この街にはほかにもまだまだうまい店があるんじゃねぇかと思うと、今後が楽しみだぜ」

ギズリ(GM):
「ん~ッ! このケバブピザがまたうまいんだよなぁ」

テジー(GM):
「……」
 テジーも手を休めることなく、無言でピザを口に運んでいます。

セルダル:
「おう! じゃんじゃん食ってくれよ。おーい、飲み物の追加頼むぜ!」

ギュリス(GM):
 そうやって、それぞれが食事を楽しんでいるなか、ギュリスがギズリに対して次のように切り出しました。
「……で、ギズリ。あなた、たしかこの国を出るって話してたよね? 国を出て、そのあとはいったいどうするつもりなの?」

ギズリ(GM):
「おう、よくぞ聞いてくれました! この国を出たら、まずホルム王国に行って、そこから五国連合を順に回ってみる。そのあとで、サイラス、ギルモア、レイフィールド、グランディって感じで内海世界を一通りめぐるつもりだ」

セルダル:
「そいつはすげぇな……」

ニルフェル(GM):
「ずいぶんと沢山の国を回るんですね」

ギズリ(GM):
「ああ。実は以前友人から聞いた話なんだが、そいつの知り合いがレイフィールドから出発して、グランディ、オクシリア、カーティス、アスケル、ホルム、ベルナール、ギルモアと、内海世界をぐるりと旅してまわったそうなんだ。で、その話を聞いて以来、オレもいずれはそんな旅を……いや、それ以上の旅をしてみたいって思ってたんだ。この世界の景色全てを、この目で見てやるんだ!ってな」

セルダル:
「すげぇ! やっぱ、ギズリさんはすげぇよ!」

ギュリス(GM):
「まあ、もし生きて戻ってくるようなことがあったら、そのときはあたしのことを訪ねてきなさい。そしたら、あなたが見てきた世界の話を聞いてあげるから」

ギズリ(GM):
「言っとくが、そんときには金とるからな」そう言ってギズリは笑います。

セルダル:
「オレにも話を聞かせてくれよ。メシをご馳走すっからさ」

ギズリ(GM):
「なら、それまでにもっとリッチなメシをご馳走できるくらいに出世しといてくれよな!」

セルダル:
「ああ、まかせといてくれ!」
 ――とまあ、そんな感じでメシを楽しんだ。

GM:
 はい。こうして、ギズリとテジーの送別会は終了しました。どうやら、皆一様に楽しめたようです。
 ちなみに支払いについてですが、全員分をセルダルが支払うのであれば、所持金から50銀貨減らしておいてください。

セルダル:
 了解。

 送別会で語られた、ギズリの大きな夢。明確な目標を持っていると、冒険も一層楽しくなります。ギズリのようなキャラクターをPCとして遊ぶと、きっと楽しいキャンペーンになることでしょう。

 ちなみに、ギズリの話しに出てきた友人とは第3話で名前だけ出てきたハイローのことであり、その知り合いというのは『聖域の守護者』などに登場したベネット伯のことです。


GM:
 さて、送別会も無事に終わり、セルダルは14時前に自警団の詰め所へと行くことができました。

クムル(GM):
 詰め所では、クムルがセルダルのことを待ち構えていました。
「来たか」

セルダル:
「ああ。しばらく世話んなるぜ」

クムル(GM):
「じゃあ、同じく遅番を務める者たちと顔合わせをしておこう」

GM:
 そうやって、ほかの遅番の面々に挨拶していくと、その中には昨日のあの先輩も含まれていました。

セルダル:
「お、先輩も遅番なのか?」

自警団員(GM):
「おう。そーか、そーか、おまえ、今日が初勤務だったな。んじゃ、あらためて自己紹介しておこう。俺はエニスだ。別の班ではあるが、勤務時間は被ることになるからよろしく頼むぞ。あと、わからないことがあったら、自分で考えろよ」

セルダル:
「了解。頼りにしてるぜ」
 オレはエニスの言葉の意図に気づいていない(笑)。

クムル(GM):
「さて、一通り挨拶が済んだところで、これから10分後に3人1組で警らにでる。それまでに装備を整えておけ」

セルダル:
「了解だ」

GM:
 セルダルには、自警団の紋章が入ったクォータースタッフとチェインメイル、あるいは腕章が支給されています。ちなみに、勤務時間、もしくは訓練以外のときにそれを使うと怒られるので注意してください。

セルダル:
 了解。んじゃ、クォータースタッフを持って、鎧は自前の革鎧のままで腕章をつけた。

GM:
 では、セルダルはクムルに連れられて、街中を警らすることになりました。
 警らにでると、30分に1度の頻度で事件に出くわします。喧嘩、窃盗、遺跡探索者らしき者たちの取り締まりと、休む暇がありません。そうやって、2時間警らして1時間詰め所に常駐というサイクルが勤務時間終了時刻まで続くことになります。


GM:
 さて、時間は進みまして、17時ごろ。セルダルの参加する班が常駐する番となり、詰め所に腰を落ち付かせたころのことです。

クムル(GM):
 勤務開始から3時間が経過したところで、クムルはセルダルの仕事ぶりに対して、「腕っぷしはあるみたいだが、体力は足りてないな」と評価しました。

セルダル:
 なるほど……。そーゆー評価になるのか。まあ、たしかに、オレはヘヴィ・ウォリアーにしちゃ生命点が低いほーだからな……。

GM:
 そんなことを話していると、詰め所にひとりの男性が飛び込んできました。見たところ、商人風の格好をした男性です。

男性(GM):
「すみません、助けてくださいッ!」

セルダル:
「なんだ、どうした?」

男性(GM):
「私は行商をしている者なのですが、実はさきほど街中で怪しげな男に恐喝され、商品である装飾品を奪われてしまったんです!」

セルダル:
 クムル団長のほーに目を向けた。

クムル(GM):
「今度は恐喝か……」
 クムルはやれやれといった感じで息をつきます。
「で、具体的に、どこで恐喝され、相手はどんな奴だった?」

行商の男(GM):
「は、はぁ……。場所は酒場通りで、相手は布でくるんだ大剣を背負っていました」

セルダル:
「武器を持ってやがんのかよ……」

行商の男(GM):
「そういえば、たしかそいつは自分のことを“死神”とか名乗ってました。『この死神様に逆らうなら命はない、金目のものをよこせ』って」

クムル(GM):
「相手はひとりだったのか?」

行商の男(GM):
「はい、ひとりです。仲間はいなかったと思います」

クムル(GM):
「わかった。ならば、その場所まで案内してくれ」そう言うと、クムルはセルダルと、もうひとり同じ組のブダックという名の自警団員に目くばせしました。
「出動だ」

セルダル:
 クムル団長の視線にうなずき返した。


GM:
 こうして、行商人を名乗る男の案内で酒場通りへと向かったセルダルたちは、さっそく死神を名乗る男についての捜索を開始することになります。

セルダル:
 よし、気合いを入れて捜すとすっか!

GM:
 そして、その男は簡単に見つかりました(笑)。

セルダル:
 なん……だと……?

GM:
 なぜなら、酒場通りを歩いていた通行人にそのような男を見かけなかったか聞いてみたところ、近くの酒場で食事しているところを見かけたとの情報があっさり得られたからです。

クムル(GM):
 クムルはあなたたちを率いて、すぐさまその酒場へと乗り込みました。

セルダル:
 団長に続いて、店に足を踏み入れるぜ!

GM:
 店の中に入ると、奥のテーブル席に大柄な男の姿が確認できます。その男の手の届くところには、これまた大きな布に包まれた剣らしきものが立てかけられていました。店の中にはその人物以外に大剣を持っていそうな人物はみあたりません。

クムル(GM):
 クムルは男のことを見定めると、ゆっくりとその男の座る席へと近づいていきます。

GM:
 さて、この段階で自称“死神”の外見を確認できましたので、目標値9の名声知識判定をどうぞ。その男は、見たところ30代くらいの男性で、ツンツンした短髪をしており、その様相は野獣を思わせます。

セルダル:
(コロコロ)6で失敗。

クムル(GM):
(コロコロ)クムルは6ゾロで自動成功です。その男の顔を目にしたクムルは、「まさか……“砂塵の死神”スレイマンか……?」と漏らしました。

スレイマン(GM):
 スレイマンと呼ばれた男は、食事の手を止めずにぎらついた目だけでクムルのことをにらみつけます。加えて、クムルの後方に控えるセルダルとブダックのこともチラリと視認しました。
「このオレに、なンか用か?」

クムル(GM):
「我々はこの街の自警団の者だ。この付近で、“死神”を名乗る大剣使いが恐喝を働いたとの通報があった。……貴様の仕業か?」そう言って、クムルはさらにスレイマンとの距離をつめます。

スレイマン(GM):
 クムルの追及に対して、スレイマンは不敵な笑みを浮かべると、「そりゃ、人違いだな」と言って、そのまま口の中に料理を詰め込みました。

クムル(GM):
「被害者は貴金属を奪われたとのことだ。貴様の荷物をあらためさせてもらう」
 クムルはそう口にすると、スレイマンが席の隣においていた荷物袋へと手を伸ばします。

スレイマン(GM):
 その瞬間、スレイマンは手に持っていたフォークの刃を、クムルの手の動きを遮るかのように机に突き立てました。
「人違いだって言ってンだろーが!」
 ドスのきいた声が店内に響きます。

クムル(GM):
「人違いだというならば、荷物を確認しても問題はなかろう……。そして、我々自警団には貴様の荷物を確認する権利がある」

スレイマン(GM):
「どーしても確認するつもりか?」

クムル(GM):
「それが仕事だ。あまり手間を掛けさせるな」
 スレイマンの威嚇に対して、クムルも引き下がる気はないようです。

スレイマン(GM):
 クムルの返答を聞いたスレイマンは、右手を壁に立てかけていた大剣へと伸ばしました。
「そーかい。だったら、力尽くで見てみろよ」

クムル(GM):
「ほう、やるつもりか?」

スレイマン(GM):
「オマエらが引かねぇっていうンならな」

GM:
 クムルとスレイマン、双方譲らず、明確な敵意がバチバチとぶつかりあい、極めて険悪なムードが店内に漂っています。




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