GM:
さて、セルダルの攻撃を受けて昏倒状態にあるスレイマンでしたが、不思議なことに彼の身体からは徐々に外傷が消えていっています。
セルダル:
「なんだ……? 傷が消えてく……。いったいどーなってやがるんだ……?」
その様子に、思わず目を奪われてる。
クムル(GM):
「遺産の恩恵か……。さっきのこいつの身体を覆っていた影といい、どうやらいろいろと持っているようだな。このぶんだと、すぐに目を覚ますだろう。いまのうちに拘束しておくぞ」そう言うと、クムルはスレイマンの手足を縛るよう、ブダックに促しました。
ブダック(GM):
それを受けたブダックは、自分の荷物の中から捕縛用のロープを取り出すと、スレイマンを拘束していきます。
酒場の客たち(GM):
そのあいだに、一度は外に避難した客たちも店の中へと戻ってきました。
「まったく、とんだ場面に出くわしちまった」
「いやぁねぇ。物騒で怖いわ」
セルダル:
んじゃ、オレはスレイマンの荷物袋を拾い上げてみる。
GM:
すると、スレイマンの荷物袋の中からはジャラリという音が聞こえました。その重量は相当なものです。
セルダル:
「いったいなにを入れたら、こんなに重くなるんだよ……」
酒場の主人(GM):
そんなところで、酒場の主人がおずおずとあなたたちのところまで近づいてきました。
「あのう……。自警団の旦那方……。いまの騒ぎで破損した店のものとかは、いったいどうなるんでしょうか……?」
セルダル:
お、そーだよな(苦笑)。クムル団長がいったいなんて答えるのか見てる。
クムル(GM):
「それについては、のちほど補償金が支払われることになるかもしれん。あとで壊れたものを書き留めて、それを自警団にまで持ってきてくれ」クムルは慣れた口調でそう答えます。
セルダル:
なるほど。そー言えばいーのか……。
GM:
さて、クムルと酒場の主人がそんなやり取りをしているなか、戻ってきた客たちからなにやらざわめき声が起こりはじめました。
酒場の客たち(GM):
「あれ? 俺の荷物がないぞ?」
「あたしの小銭入れもないわッ!」
「わたしのもだ!」
クムル(GM):
「む……。いったいどうなっている?」
ブダック(GM):
「そういえば、いつのまにかあの行商人もいなくなっていますね……」
セルダル:
「え? どこ行ったんだ?」
酒場の客たちのユニットを移動させている途中で、GMはさりげなく行商人のユニットも戦闘マップ外へと移動させていました。
酒場の客たち(GM):
「おい、あんたら自警団なんだろ? あんたたちが騒ぎを起こしてるあいだに、俺の荷物が盗まれたみたいなんだ。どうにかしてくれ!」
ひとりの客がそう言ったのを皮切りに、店にいたほかの客たちも一斉にあなたたちに詰め寄ってきます。そして、その矛先はスレイマンにも向けられました。
「そういや、その気絶してる男に窃盗の容疑がかかってるとか言ってたよな? ってことは、そいつが犯人なのか!?」
セルダル:
「ちょ、ちょっと、待ってくれよ。コイツはいまさっきまでオレたちとやりあってたんだ。どー考えたって、アンタらの荷物を盗む暇なんてなかっただろ?」
酒場の客たち(GM):
「いや、そいつが単独犯だとは限らないぞ!」
「なるほど! じゃあ、ほかに仲間がいたんじゃないか?」
「だったら、盗まれた荷物分は、その気絶した男から返してもらわねぇとな!」
「そうだそうだ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
「返せッ!」
セルダル:
「おいおい……」
クムル(GM):
その状況を見かねたクムルは、騒ぎ立てる客たちに向かって一喝します。
「静かにしろッ! これ以上騒ぎ立てるようなら、お前たちも牢屋にぶち込むぞッ!」
セルダル:
周りの連中の反応はどーだ?
酒場の客たち(GM):
客たちはクムルの怒声に怯み、返せコールはやめたものの、「だが、財布を盗まれたんじゃ、ここの店の代金すら払えやしない……。いったい、どうしたら……」と、自分たちはあくまでも被害者であると主張しています。
セルダル:
「あー。たしかに、そりゃそーだよな……」そー言って、その言葉を聞いた店主に目を向けた。
酒場の主人(GM):
「……」
クムル(GM):
「……主人。すまないが、ここにいる客たちの代金も、補償項目の中に加えておいてくれ」
酒場の主人(GM):
「えッ!?」
クムル(GM):
「ほかに、この場を収める方法でも?」そう言って、クムルは店主をにらみつけました。口調は穏やかでしたが、その視線には有無を言わさぬ力があります。
酒場の主人(GM):
「は……はい。わかりました……」
主人は泣きそうな顔をして、それを了承しました。
クムル(GM):
クムルは、ブダックにこの場に残って客たちの名前や住所、そして盗まれた荷物の内容などを確認するように指示をだします。そしてセルダルに対しては、「スレイマンを起こせ。とりあえず、こいつを詰め所まで連れて行くぞ」と命じました。
セルダル:
「了解」
あと奴の武器とか荷物袋とかも運ばねぇといけねぇよな。しかし、どーやったら昏倒してる奴を起こせるんだ?
GM:
スレイマンの生命点はいつのまにか1点まで回復していますので、適当に起こしてもらって構いませんよ。……あと、スレイマンのことを起こす前に、きっとクムルはこう言いますね。
クムル(GM):
「そうだ。起こす前に、指輪やマントあたりは外しておいたほうがいい。どうやら、そいつは神々の遺産を所持しているらしいからな。手足を縛っているとはいえ、なにかまずいものを身に付けているようだと面倒だ」
セルダル:
「ああ、なるほど。たしかに、なにがあるかわかんねぇもんな……」
んじゃ、可能な範囲で装備をはいだ。
GM:
スレイマンは、両手剣以外に、黒いマント、指輪をひとつ、ネックレスをひとつ身につけていました。あと、すぐにはぎとれない装備として、高品質の革鎧を身につけています。
セルダル:
うらやましいな……。オレだって、いつか金をためて買ってやる!
GM:
さて、そうやってスレイマンから装備をはぎとっていったセルダルですが、スレイマンがつけていたネックレスを手に取ると、今度はそれを手にしたセルダルの傷が徐々に癒えていき……って、あれ? セルダルはこの戦闘でノーダメージでしたか?
セルダル:
だな(苦笑)。
GM:
あー、残念。であれば、変わったことはなにも起きませんでした。
セルダル:
了解! んじゃ、アイテムをはぎ終えたら、拘束されたスレイマンのことを起こして、詰め所に向かうとする。
スレイマン(GM):
では、セルダルに起こされて、スレイマンは目を覚ましました。
「う……うう……」
セルダル:
「わりぃな……。立てるか?」
スレイマン(GM):
ぐるりと周りを見渡して、自分の置かれた状況を確認したスレイマンは、「チッ……。なにがわりぃなだ、このクソッたれめ……」と悪態をつきながらも立ち上がります。
セルダル:
「気持ちはわかるぜ。ホントーに申し訳ねぇとも思ってる。だが、とにかく詰め所まで付き合ってくれよな」
スレイマン(GM):
スレイマンは怒りを込めた目でセルダルを見ましたが、それ以上の抵抗はしませんでした。
GM:
では、場面を自警団の詰め所へと移します。
GM:
詰め所に連れてこられたスレイマンは、そのまま牢屋の中に叩き込まれました。そして、スレイマンに対する取り調べが行われる前に、彼の荷物が自警団員たちの手によって確認されていきます。
彼の荷物袋からは生活用品から装飾品のたぐいまで、たくさんのアイテムがでてきました。特に、指輪やら、首飾りやら、ベルトやら、マントやら、そういったものが個人で身につけるにしては多すぎるほど入っていました。見たところ、3人分はあるようです。
セルダル:
その物品検分には、オレも立ち会っていーのか?
GM:
もちろんです。その場には、クムルのほかにエニスの姿もあります。
セルダル:
「しっかし、スレイマンはなんでまたひとりじゃ身に付けられねぇほどたくさんの装備を持ってんだ……?」
エニス(GM):
その品々を目にしたエニスは、「あー、こいつは……。団長、寺院に行って導師を呼んで来ましょうか? 団長も傷の手当てをしてもらったほうがよさそうですし」と口にしました。
クムル(GM):
クムルもなにかを察したのか、二度うなずいて「うむ。そうしてくれ」と返しました。
セルダル:
「導師って?」
エニス(GM):
「そりゃ、導師って言ったらエルバート教の導師さ。この手の品は、専門家による鑑定が必要だからな」と、エニスがセルダルの疑問に答えてくれました。
「じゃあ、さっそく呼んできます」
GM:
15分くらいすると、エニスはエルバート寺院から導師を連れて詰め所に戻ってきました。
導師はまずクムルの傷を魔法で治療したのちに、スレイマンの荷物の前で白魔法を唱えると、なにやら紙に書きだして、それをクムルに手渡します。
クムル(GM):
導師から渡された紙に目を通したクムルは、思わず唸ります。
「まさか、これほどまでとは……。さすがは“砂塵の死神”と言ったところか。あの酒場の中でこれらを使われていたら、負けていたのはオレたちのほうかもしれんな……」
エニス(GM):
クムルの手に持たれた紙を覗き込んだエニスも、「個人でこれだけの遺産を所有してるなんて見るのも聞くのも初めてですよ。まさか、あいつひとりで戦争でもおっぱじめるつもりだったんですかね?」と口にしました。
セルダル:
「そんなにすげぇもん持ってたのか?」
エニス(GM):
「ああ。スレイマンが持っていた荷物袋の中に入っていたもののうち、8つの品物は遺産だ。それと、奴が身につけていたっていうマントと指輪と首飾り、それと大剣。それらをあわせると、遺産の数は全部で12点。さすがにこれだけとなると……」
セルダル:
「荷物袋の中身を見られたくなかったってゆーのも、わからなくはねぇな……」
エニス(GM):
「まるで、歩く遺産の見本市だ」そう言ってエニスは笑いました。
「まあしかし、さすがにこれらは全部没収だろうなぁ……」
セルダル:
「え? そーなのかよ!? なんで取り上げちまうんだ?」
クムル(GM):
そのセルダルの疑問にエニスが答える前に、クムルが釘を刺します。
「エニス、軽率なことは口にするな。必ずしも没収されると決まっているわけではない」
エニス(GM):
「いやぁ、ですが団長。ヤウズ王子がこれまで以上に取り締まりを強化しようとしてるって噂は、いろんなところから聞こえてきますよ。それで、その一環として個人所有の遺産は没収されるって……」
クムル(GM):
「噂は噂だ。それに、遺産没収の判断は中央の下すことであって、オレたちが関与するところではない。まあ、中央に伺いを立て、その後、指示があるまでのあいだはこちらで預かることになるがな」
セルダル:
「伺いを立てるって……。場合によっちゃ、やっぱり没収なのか?」
エニス(GM):
「だから、噂じゃそうなんだって。遺産は国の財産として扱われるって話だからな……。しっかし、これ、全部売ったらいくらになるんだろうな……。10万金貨……いや、もしかしたら100万金貨くらいになんのかな?」
クムル(GM):
「いい加減にしろッ! エニス、お前は自分の仕事に戻れッ!」
耐えかねたクムルがエニスを叱り飛ばします。
エニス(GM):
「は、はい! では、導師を寺院にお送りするついでに、そのまま警らに行ってきます!」そう言うと、エニスは慌てた様子でエルバート教の導師を連れて詰め所の外へと飛び出していきました。
GM:
その場には、セルダルとクムルだけが残されます。
セルダル:
「……ところで、団長。今回の恐喝と窃盗の件はどーなっちまうんでしょーね。被害者だったはずのあの行商人もいなくなっちまったし……」
クムル(GM):
「もちろん、引き続き調査する必要がある。そのためにも、まずはスレイマンに対する取り調べだ」
セルダル:
「了解」
GM:
では、クムルとセルダルは、スレイマンが勾留されている牢屋へと向かいました。