スレイマン(GM):
牢屋の中では、スレイマンが大の字になって床に寝転がっています。
クムル(GM):
「おい、起きろ」
スレイマン(GM):
「なンだ? もー釈放か? そりゃ、そーだよな。オレはなにひとつワリィことなンかしてねぇンだからよ」スレイマンは皮肉めいた口調でそう返しました。
クムル(GM):
「あれだけの遺産を抱えておいて、よくそんな口がきけたものだな」
スレイマン(GM):
「はぁ? なンの話だ? ……少なくとも、オレはまだ遺産没収のお触れが出たなンて話を聞いたことがねぇ。まさか、オレが旅をしてるあいだにそーなっちまったってゆーのか?」
クムル(GM):
「その可能性があると思ったから、荷物の検閲を拒んだんじゃないのか?」
スレイマン(GM):
「……違うね。オレが荷物の中身を見せなかったのは、テメェらの態度が気に食わなかったからさ」
セルダル:
「……なぁ、どのへんが気に食わなかったんだ?」って、真顔でスレイマンに聞いてみた。
スレイマン(GM):
「どのへんが……だと? いきなり、恐喝犯だなンだって決めつけられて、いい気分になれるヤツがいるならお目にかかりたいね!」
セルダル:
「ふーん……。オレだったら、『オレサマが集めた宝の数々をとくと拝みな! どこが商人から巻き上げたもんだってんだ!』って言いてぇけどなぁ……。遺産没収は知らなかったんだろ? なら、オレだったら自慢するね!」
クムル(GM):
「……いや、セルダル。あの荷物袋の中身を俺たちに見せたのであれば、その没収まではなくとも、拘束されたうえで取り調べを受けることになるだろうことは、この男にもわかっていたことだろう。遺産のことは抜きにしても、許可なく聖域に立ち入ること自体は明確に禁じられているのだからな」
セルダル:
「あ、そっか……」
クムル(GM):
「……だが、スレイマン。あれだけの数の遺産を抱えていたんだ。実際のところ、聖域にも立ち入っているのだろう?」
スレイマン(GM):
「……さあ、どーだかね……」スレイマンは不敵な笑みを浮かべながらそう答えるにとどまります。
セルダル:
「なんだよ。もったいぶらずに教えろよ」
クムル(GM):
「はっきりと否定しないことが、認めていることの証明だろうな」
セルダル:
「あ、たしかに……。なんだかんだでウソつけなさそうな奴っぽいもんな」
クムル(GM):
クムルはそのセルダルの反応に苦笑しました。
「まあ、そのあたりの話についてはのちほどゆっくり聞かせてもらうことにして、まずは恐喝の件について確認させてもらうとするか。……なあ、スレイマン。貴様、酒場で俺たちが連れていた行商人と面識はあったのか? あの行商人は、貴様に恐喝され、商品を奪われたと話していたが……」
スレイマン(GM):
「ハンッ! なに言ってやがる。オレはあンな奴知りもしねぇよ」
セルダル:
「どっかで見かけたことがある顔だったってことはねぇのか? たとえば……聖域とかでよ」
スレイマン(GM):
スレイマンはしばらく沈黙して考え込みました。記憶術判定を行います。(コロコロ)5。
「さぁ……? さっぱり記憶にねぇな……」
セルダル:
「ふーん……。ってことは、ホントーに面識なかったのか……?」
クムル(GM):
クムルは小さな声でセルダルに耳打ちしました。
「この事件、お前はどう思う?」
セルダル:
「そーだなぁ。あの行商人は聖域で遺産を手に入れたスレイマンからそいつを掠め取ろうとしたケチな野郎なんじゃねぇかな? ところが、そー簡単に奪い取れそーになかったから、火事場泥棒に切り替えてトンズラしたと……」
クムル(GM):
「もしそうだとして、仮にスレイマンが素直に荷物袋の中身を見せていたとしたら、その行商人はどうするつもりだったんだ? 俺たちとしては、遺産と疑わしいものがでてきた時点で、それを預かることにしただろう。そして、行商人が恐喝されたと言い張ったものは荷物袋の中からはでてこず、彼は立場を悪くしたはずだ」
セルダル:
「……うーん。その場合、行商人がどーするつもりだったかってゆーと、あとで詰め所に盗みに入るつもりだったんじゃねぇかな?」
クムル(GM):
「この詰め所に盗みに入るだと? さすがに、そうはさせんさ」クムルは自信たっぷりにそう言いました。
セルダル:
「なんにしたって、ここまでは行商人野郎の思い通りにことが進んでると思うね」
クムル(GM):
「しかし、お前のその推測だと、スレイマンは犯人ではないということになるな。酒場にいた客の中には、スレイマンと盗人が共犯ではないかと疑っていたものもいたが……」
セルダル:
「共犯ってのは違う気がするなぁ……。どちらかってとゆーと――」そー言って、クムルの耳元に口を近づけた。
「あの行商人と自警団の誰かがつるんでる線のほーがありそーな気がする」
わざと目当ての宝を押収させてから、詰め所勤めの内通者を使って押収品を盗み出すという展開はかなり斬新です。さすがに、GMもその流れは想定していませんでした(笑)。絶対にあり得ないとは言いませんが、その展開を第三者も納得できる形で成立させるためには、かなり条件を整えてあげる必要があるでしょう。
真相とはかなりかけ離れた推測がでてきたので、脱線を避けるためにもここはクムルに全力で否定させます。
クムル(GM):
クムルは一瞬驚き、そして怒りに近い感情を顔に出しました。
「そのようなことは絶対にない! いま自警団員として働いている者たちは、ひとり残らず俺が手塩をかけた連中だ。私利私欲で犯罪に加担するような者がいてたまるか!」
セルダル:
「オレもそーだと思いてぇよ。だが、人は変わっちまうもんだ。だから、オレは頭の片隅にその可能性も入れとく」
クムル(GM):
そう口にしたセルダルの胸ぐらを、クムルが乱暴につかみました。
「次に同じことを口にしてみろ! そのときは、たとえイルヤソール夫人の紹介であろうと容赦せんぞッ!」
セルダル:
「わ、わかった。すまねぇ……。アンタを怒らせるつもりはなかったんだ。でも、どー思うって聞かれた手前、ウソついたり、思ってることを隠すよーなまねはしたくなかった。あとになって、あんとき言っておけばよかったなんて後悔すんのは嫌だからな。気を悪くさちまったことは謝る。本当にすまねぇ」
クムル(GM):
「……そうか。まあ、お前の言いたいことはわかった。だが、俺は実直な自警団員たちに疑いの気持ちなどひとかけらもない。薄給で拘束時間は長く、それどころか命の危険までもある仕事だ。利己的な奴には勤められるはずがない。違うか?」
セルダル:
無言でうなずいた。でもなぁ、嫌な予感がするんだよ……。ちなみに、エニス先輩の勤務時間って何時からだっけ?
GM:
エニスの勤務時間は14時間から22時までとなっています。なお、現在は18時。エニスは先ほど警らに出たばかりなので、19時くらいに詰め所に戻ってくることでしょう。
自警団員共犯説をクムルに全力で否定されたセルダルでしたが、まだ名前ありのNPCを疑っているようです。そして、容疑者筆頭として疑われるエニス(笑)。きっと、エニスが少し前に遺産の価値が100万金貨だとか話していたのが引っかかっているのでしょうね。
クムル(GM):
「しかし、困ったものだな……。スレイマンのことはこのまま勾留しておくにしても、恐喝事件と窃盗事件についての糸口が見えない。俺は戦うことと組織作りには慣れてるが、どうもこういった込み入ったことは苦手だ。謎めいたことは特にな。ほかの連中も実直な奴ばかりで、化かしあいには弱いときてる……」
セルダル:
「あー、クムル団長。もしオレでよけりゃ、今回の事件、担当しよーか? まあ、オレも頭はわりぃけどよ……」
クムル(GM):
クムルはセルダルのことをまじまじと見ました。
「なにか、いい案でもあるのか?」
セルダル:
「いや、オレ自身にいー案があるわけじゃねぇけど、オレには結構頼りになる仲間がいるんだよ」そー言って、ニカッと笑った。
クムル(GM):
「ほう……。なら、任せてみるとするか。なにせ、いまのところ手を空けられそうなのはお前くらいしかいないからな……」
セルダル:
「団長……。そこは、もーちょっとオレを持ち上げておくところじゃねぇの?」
クムル(GM):
「事実を言ったまでだ」
セルダル:
「そりゃ、そーなんだけどよ……(苦笑)」
クムル(GM):
「そういうことであれば、スレイマンの取り調べもお前の好きなようにやってみろ」
セルダル:
「いいのか!?」
クムル(GM):
「ああ。俺としても、いつまでもこの件にかかりきりになるわけにはいかないからな」
セルダル:
「わかった。任せといてくれ!」
まさか、スレイマンのことまで任されることになるとはな。
GM:
あくまでも、クムルは取り調べの許可を出しただけですからね(笑)。
クムル(GM):
そうやって、セルダルのことをこの事件の担当に任命すると、クムルはスレイマンのほうに一度目を向けてから、その場を立ち去りました。
セルダル:
「はー。さてと、どっから手をつけたもんかな……」
スレイマン(GM):
「さっきから、ごちゃごちゃうるせぇンだよ。オマエもどっか行っちまえ」
スレイマンは相変わらず牢屋の中で寝そべっています。
セルダル:
「そーだな。ちとうるさかったよな。わりぃわりぃ」
いま18時か……。なら、まだ店もやってそーだな。
「んじゃ、ちょいとどっか行くとすんぜ」スレイマンにそー言って、ピザを買いにチャウラに向かうことにする。
GM:
チャウラにですか?
セルダル:
ああ。この世界じゃ、かつ丼は注文できねぇしな(笑)。あと、ついでに途中でイルヤソール邸にも寄ってく。
GM:
なるほど、了解です。では、ちょうどセルダルが自警団の詰め所を出ようとしたところで、酒場での後処理を任されていたブダックがようやく戻ってきました。
ブダック(GM):
「ただいま帰りましたー」
ブダックはかなり疲れた様子です。
セルダル:
「お帰りー。どーだった?」
ブダック(GM):
「あー。まったく、疲れたよ。こっちに文句言われたって困るんだよなぁ……」
セルダル:
「だよなぁ……(苦笑)」
ブダック(GM):
「もう、客たちの苦情を聞くので、予定より時間がかかっちゃってさ。あ、そういえば、店の人から少し新しい話が聞けたぞ」
セルダル:
「お? いったいなんだって?」
ブダック(GM):
「いやぁ、それがさ、スレイマンの捕り物騒動のあとで、店から客がひとり消えてたんだってさ」
セルダル:
「なんだって!?」
ブダック(GM):
「まあ、ただ単にそのまま帰宅しただけなんだとは思うけどな。飯代が浮いてラッキーって感じだったんじゃないか?」それだけ言うと、ブダックはのほほんとしながら自分の席に向かって歩いて行きます。
「ああ、忙しい、忙しい。書類仕事も山ほどたまってるし、このままじゃ過労死しちまうよ」
セルダル:
「な、なあ、その客がどんな奴だったのか、詳しい話は聞いたのか?」
ブダック(GM):
「いや、それは団長に指示されたことに含まれてなかったから、詳しい話までは聞かなかったな」
セルダル:
「ほかに客や店員はなにか言ってなかったか?」
ブダック(GM):
ブダックは書類にペンを走らせながら、「たとえばどんな?」と聞き返してきます。
セルダル:
「店にやけに長くいたとか、捕り物してるあいだにへんなことしてる奴がいたとか……」
ブダック(GM):
「いいや。別にこっちもそんなことは聞かなかったからなぁ」
セルダル:
「んじゃ、その店にいた客で名前と住んでる場所がわかる奴はいるか?」
ブダック(GM):
「店に残ってた客のだったら、全員分確認したよ。団長にそう指示されたしな」
セルダル:
「それ、メモにとらせてくれ!」
GM:
では、セルダルは酒場にいた客の名前と住所を書き移しました。
セルダル:
「よし! 団長。オレはこれからちょいと調査に出てくるぜ!」
クムル(GM):
「おう。気をつけてな」そう言って、クムルは詰め所から出て行くセルダルを見送りました。
セルダル:
「こいつは面白くなってきやがったぜ!」そー言って、詰め所から駆け出していった。
GM:
詰め所の外に出ると、すでに夕暮れ時です。
セルダル:
まずは、晩メシに間に合うよーに、イルヤソール邸に戻る。
GM:
ならば、セルダルは18時半前にはイルヤソール邸に戻ってこられました。イルヤソール邸の食堂では、すでにアテーシュとアーチとグンとトプラクのが食事中です。ほかの者の姿はみあたりません。
グン(GM):
「あ、セルダウだ!」
トプラク(GM):
「セルダウ?」
アーチ(GM):
「違うよ。あいつはセルダルって言うんだ」
セルダル:
「正解!」おどけた感じでそー言って中に入っていった。
アテーシュ(GM):
あなたが食堂に入ってくると、アテーシュが席を立って出迎えました。
「おかえりなさいセルダルさん」
セルダル:
「ただいま! ……ひょっとして、ギュリスお嬢さんとニルフェルはまだ勉強してんのか?」
アテーシュ(GM):
「ええ。書斎にこもりきりですよ。先ほど、お母様がスーにミルクをあげにきたのですが、その際、おふたりの課題が終わるまで食事はお預けだと言っていました」
セルダル:
「うへぇ、頑張ってんだな……。こりゃ、オレも負けてらんねぇや」
アテーシュ(GM):
「ところで、セルダルさん。お食事はお済みですか? まだのようでしたらご一緒にいかがです?」
セルダル:
「んじゃ、もらってもいーか? 晩メシはまだだったんだ」
アテーシュ(GM):
「はい、ではすぐにご用意いたしますね。お部屋のほうでお待ちいただければ、整い次第お呼びいたします」
セルダル:
「いや、わざわざ呼んでもらうのもわりぃから、ここで待つとするわ。……そーいや、ギズリさんやテジーは帰ってきてんのか?」
アテーシュ(GM):
「ええ。おふたりはすでにお食事を終えられて、それぞれのお部屋にいらっしゃると思います。明日に向けて出発の準備をなさるとおっしゃっていました」
セルダル:
「そっか。サンキュー」そー返して食卓についた。
アテーシュ(GM):
「では、急いでお食事をご用意いたしますね」そう言うと、アテーシュは調理場へと向かいました。
GM:
アテーシュがいなくなった食堂では、アーチがグンとトプラクの食事を手伝っています。
セルダル:
兄弟の仲がいーのはなによりだな。
アテーシュ(GM):
10分ほど待っていると、アテーシュがあなたの分の食事をテーブルに並べてくれました。
「お待たせいたしました。どうぞ、お召し上がりください」
セルダル:
「おう、ありがとな。んじゃ、いただきます」
GM:
さて、セルダルがその食事を終えるころには時刻も19時過ぎとなります。
セルダル:
メシを済ませたら、アテーシュに礼を言ってからギズリの部屋に向かった。
GM:
了解です。まあ、セルダルが向かった先はギズリ専用のひとり部屋というわけではなく、あなたとギズリの相部屋になるわけですけれどね。