LOST ウェイトターン制TRPG


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宮国紀行 第9話(19)

GM:
 では、セルダルがギズリとの相部屋に戻ってみると、ギズリは荷物をまとめているところでした。

セルダル:
「ただいま」

ギズリ(GM):
「お、お帰りさん。自警団の仕事のほうはどうだった?」

セルダル:
「実は、そのことで相談があるんだけどよ。いまいーか?」

ギズリ(GM):
 ギズリは器用に荷物をまとめながら、「手は止めなくてもいいか?」と返してきます。

セルダル:
「ああ、かまわねぇさ。実はオレ、初日からある事件を任されることになっちまってさ。その事件ってのが――」そー切り出して、ギズリさんにことの経緯を話した。

ギズリ(GM):
「へぇ。恐喝に窃盗ねぇ……。まあ、よそ者が集まる場所じゃそう珍しいことでもねぇか。オレたちも荷物の管理には十分気を付けねぇとな。……で、相談ってのは?」

セルダル:
「いや、これからその犯人捜しをはじめんだけど、いったいどーやって捜せばいーのか皆目見当がつかなくってさ」そー言って肩を落とした。

ギズリ(GM):
「犯人捜しねぇ……。いまの話に出てきた行商人を名乗ってた男ってのは、そのあと行方知れずなのか?」

セルダル:
「ああ、それっきりさ」

ギズリ(GM):
「ふぅん……。もしそいつが本物の行商人だっていうなら、商人ギルドかアスラン商会あたりをまわってみれば足取りくらいはわかるとと思うんだが――」

セルダル:
「商人ギルドにアスラン商会か。なるほど……」

ギズリ(GM):
「――まあ、行商人っていうのは嘘だろうな」

セルダル:
「って、ウソなのか!?」

ギズリ(GM):
「ああ、さすがに本物の行商人じゃないと思うぞ。実際にそうだとしたら、おもいっきり足がつくからな。その場合、突然姿を消した意味がわからなくなる」

セルダル:
「そっか……。行商人じゃねぇんだったら、スレイマンを狙ってなにかをたくらんでる悪人ってところか?」

ギズリ(GM):
「さあ、どうだろうな? いま聞いた話だけじゃなんともな……。もし、そいつのわかりやすい特徴とか似顔絵とかがあるなら、商人ギルドに行ってそいつがギルドの人間なのかどうかを確認してくるくらいのことはしてやれるんだが……」

セルダル:
「特徴か……」

GM:
 もし、行商人の特徴を思い出すのであれば、目標値8の記憶術判定を行ってください。

セルダル:
(コロコロ)8。冴えてるぜッ!

GM:
 ならば、セルダルは行商人を名乗った男の顔を空に思い浮かべることができました。それをさらに似顔絵として描くのであれば、《スカウト技能レベル+器用度ボーナス+2D》で目標値10の判定を成功させてください。

セルダル:
「ちょいと似顔絵を描いてみるわ」
 とは言っても、技能がないから厳しいな……。判定の前に“祝福の指輪”を使っておく。(コロコロ)成功して、本人限定の“ブレス”を発動。
「こんな感じの奴だったぜ」って言って似顔絵を描いた。(コロコロ)ぶっ(笑)! “ブレス”の効果を上乗せしても達成値5で失敗。

ギズリ(GM):
「こ、こいつなのか……?」
 似顔絵を目にしたギズリは、苦笑いを浮かべてセルダルの顔を見ます。

セルダル:
「待て、待ってくれ。よく見ると、こーじゃなかったよーな気がする」
 再判定していーか?

GM:
 もちろん、再判定してもらっても構いませんが、次の判定には1時間かかります。

ギズリ(GM):
 セルダルが再度似顔絵を描き始める前に、ギズリが失笑交じりでこんなことを口にしました。
「あのさぁ……。オマエが描くよりも、ほかにその自称行商人の顔を見たことがある奴に描かせたほうがいいんじゃねぇか? もっと絵心のある奴にさ」

セルダル:
「あッ! その手があったか! さすがだぜ、ギズリさん! ちょいと詰め所までひとっ走りしてくっから、寝ないで待っててくれよ!」そー言うと、慌てて部屋から出て行った。


セルダル:
 で、詰め所に向かうんだが、その前にチャウラに寄ってピザを買ってく。いまの時間、詰め所には何人くらい残ってんだ?

GM:
 勤務時間からすると遅番はあなたを除いて9人のはずなのですが、早番でまだ残業している人も数に加えるなら、おそらく18人全員います……。完全にブラック企業ですね(笑)。

セルダル:
 恐ろしい職場だ……。しかし、ピザを20枚買うとなると200銀貨か……。そんな金はないな(笑)。んじゃ、ひとりあたり半分ってことにして、ピザを10枚買っていくとしよう。

GM:
 了解です。では、セルダルは20時ごろにピザを持って詰め所に顔を出しました。

セルダル:
「おつかれーッス!」

エニス(GM):
「おつかれ~」
 エニスが疲れた様子でセルダルを迎えます。

セルダル:
「エニス先輩、差し入れ持ってきたんでよかったらどーぞ」って感じで、ピザを自警団員2人に1枚ずつ配ってく。

クムル(GM):
「お、セルダル。調査は進んでるのか?」
 もちろん、クルムもまだ勤務しています。

セルダル:
「実は、その件で団長にひとつ頼みたいことがあって……」と、似顔絵の件を相談した。

クムル(GM):
 ならば、セルダルから話を聞いたクムルは、一緒に出動していたブダックに似顔絵を描かせてみると約束してくれました。
「出来上がるまでにはしばらく時間がかかるだろうから、少し経ってからまた来い」

セルダル:
「了解。んじゃ、似顔絵ができあがるまでのあいだ、オレはスレイマンと話してくるんで」
 牢屋にゴー。

GM:
 では、場面を牢屋へと移します。


スレイマン(GM):
 スレイマンは牢屋の中で寝ていました。

セルダル:
「お~い」

スレイマン(GM):
 セルダルの声に、スレイマンがムクリと身体を起こします。
「チッ、また来やがったのか……。釈放じゃねぇなら静かにしやがれ」

セルダル:
「まあ、そー邪険にするなって。まだあったけぇから、よかったらこれでも食ってくれよ」そー言って、残ってた最後のピザを スレイマンの牢屋の中に入れた。

スレイマン(GM):
「お? メシか。ありがてぇ。そーゆーことなら、遠慮なくもらってやるよ」そう言って、スレイマンはピザをつかみ取りました。 ピザを口の中に放り込むと、スレイマンは「なかなか、うめぇな」と感想を漏らします。

セルダル:
「気に入ってくれたんならよかったぜ。……しっかし、あの行商人はなんだってアンタのことをハメよーとしたんだろーな。別に知り合いとかじゃなかったんだろ?」

スレイマン(GM):
「またそいつの話かよ。オレは何度も知らねぇって言ってンだろ」

セルダル:
「ホントーに、なんにも思い当たることはねぇのか? たとえば、恨まれてるとかよ」

スレイマン(GM):
「知らねぇよ」そう言うと、スレイマンはあなたに背を向けて寝転がります。
「まあ……オレに恨みを持ってる奴ってことなら、いたるところにいるだろーけどな」

セルダル:
「あー。やっぱ、そのセンもあるんだな……。んじゃ、オレは頑張ってそいつのことを捜し出してみることにするよ。寝てるとこ悪かったな」
 それだけ言って詰め所のほーに戻った。


セルダル:
 さあて、似顔絵はできただろーか?

ブダック(GM):
 ブダックによる似顔絵判定は、(コロコロ)4です。
「たしかこんな感じだったと思うんだが……」
 ブダックは、前衛的な絵を渡してくれました。

セルダル:
 オ~イ。オレのほーがうめぇじゃねぇか(笑)。
「団長。これ、どー思う?」
 クムル団長にもそれを見せた。

クムル(GM):
「さあ? 似てるのかどうか、微妙なところだな」
 クムルは首をかしげます。

ブダック(GM):
「いやさぁ、正直なところスレイマンのインパクトが強すぎて、ほかの奴らの顔なんて忘れちまったんだよ。スレイマンに吹っ飛ばされた瞬間、マジで記憶も飛んだし……」

セルダル:
 なるほど。それじゃ、無理もねぇか(笑)。
「ああ、もうッ! オレにペンを貸してくれッ!」
 しかたねぇ。ここはオレがもう一度似顔絵判定に挑戦することにする。詰め所の便所に入って、こっそり“祝福の指輪”も使っておくぞ。(コロコロ)発動。そんで、“ブレス”効果込みの似顔絵判定は、(コロコロ)7……。

ブダック(GM):
 セルダルの書いた似顔絵を眺めたブダックは、「微妙……」と漏らしました。

セルダル:
「すまん……。偉そーなこと言ったけど、これもなんか違うな……」

GM:
 ……さて、“似顔絵”の再判定で21時まで時間が進んだわけですが、そこから先の行動はどうしますか?

セルダル:
 うーん……。ほかに、行商人の顔を見た奴に心当たりもねぇし、一旦イルヤソール邸に戻ることにする。いつまでもギズリさんのこと待たせておくわけにもいかねぇからな。


GM:
 では、セルダルはふたたびギズリとの相部屋へとやってきました。

ギズリ(GM):
 ギズリは、荷物の整理をすっかり終えており、のんびりとお茶をしています。

セルダル:
「遅くなっちまった。すまねぇ」と言って部屋に入っていった。で、「実は――」と、部屋を出て行ってから戻ってくるまでにあったことを話して、自分で描いた一番マシな似顔絵をギズリさんに渡した。

ギズリ(GM):
「ギャハハハハハハッ!」
 その似顔絵を見たギズリは、腹を抱えて笑い転げます。

セルダル:
 恨めしそうな顔で、「ひでえ話だぜ。まったく……」とぼやく。

ギズリ(GM):
「しかし、これじゃ商人ギルドで聞き込みってのは難しいかもな」ギズリは目にたまった涙を拭いながらそう口にしました。

セルダル:
「しょーがねぇ。やっぱ、オレが直接見て捜すしかねぇか。絵にできねぇのはシャクだが、記憶にはあの顔が焼き付いてっからな」そー言って、天井を見上げた。

ギズリ(GM):
「おいおい。オレがこのあいだ言ったこと、もう忘れちまったのか? 言っただろ。人には得意、不得意があるってよ。オマエが直接捜すのも結構だが、その前にもっといろんな奴に話を聞いてみろよ。どっかに解決の糸口が転がってるかもしれねぇぞ」

セルダル:
「……そーだな。じゃあ、もー少し話を聞きまわってみるとすっか」
 んじゃ、次はスレイマンがいた酒場に行ってみることにする。

GM:
 了解です。


GM:
 セルダルがあの酒場に到着したのは、21時半のことになります。店は書き入れ時で客であふれかえっています。

酒場の主人(GM):
 酒場の主人は「いらっしゃいませ」と反射的に声を発したあとで、セルダルの姿を確認すると、「あ、あんたは自警団の……」と口にしました。

セルダル:
「その後の様子を見に来たんだが、あれからはなにもねぇか?」

酒場の主人(GM):
「いやはや、あれからしばらく営業できませんでしたが、夜になってようやく普段通りにまわりはじめたところです」そう言って、主人は額の汗を拭います。

セルダル:
「そーか……。ところで、あんときにいた客で、いまもここにいる奴はいるか?」

酒場の主人(GM):
「いえ、さすがにもういませんね」

セルダル:
「ふーん……。ああ、それと、あんときいた客はなじみの客ばかりだったのか?」

酒場の主人(GM):
「えーと、それはですね……。私よりも詳しい者がいますので、ちょっとお待ちくださいよ」そう言うと、主人は「おい、お前。ちょっと」と、若い女性の店員を呼びよせました。

女性の店員(GM):
「はーい。なんですか店長?」そう返事をして近づいてきた店員は、主人からだいたいの説明を聞くと、セルダルの質問に対して次のように答えます。
「なじみのお客さんばかりだったか、ですか? そういう意味では半々でしたよ」

セルダル:
「半々ね……。その半分ってのを教えてくれねぇか?」と言ってブダックの資料から写し取ったメモを見せた。

女性の店員(GM):
 女性の店員はメモにチェックをつけてくれました。
「あと、ここには書かれていませんが、スレイマンって人と、もうひとり、あの事件のあと戻ってこなかったお客さんはなじみの方ではありませんでした」

セルダル:
「なるほど……。あとは、ほかに気付いたことはねぇか? たとえば、戻ってこなかった客の特徴とか」

女性の店員(GM):
「うーん」
 店員はしばらく考え込みます。
「戻ってこなかったお客様の特徴ですか……。顔はあまりはっきりと覚えていないのですが、そのかわり飾り帯の網目模様が独特なものだったので、それは覚えています。特に派手というわけではありませんが、あの模様はきっと東の山麓に暮らす氏族が好んで編む形ですね。それと、たしかそのお客様は、スレイマンって人が入ってきた直後にご来店なさったと記憶しています。わたしが覚えているのはそれくらいですね」

セルダル:
「そりゃ、ありがてぇ情報だ! これでまた手がかりが増えたぜ。サンキュー!」そー言って店員の手を握ると、ついでに銀貨10枚も握らせて店をあとにした。今度はスレイマンのところに向かう。

 情報を集めつつ、あっちへこっちへ行ったり来たり。かなりアドベンチャーゲームっぽくなってきました。シティ・アドベンチャーって本来そういうものですよね。あとは、どれだけ無駄足を踏まずに物語としてふさわしいルートを選択できるかということで。


GM:
 では、時刻は22時。自警団詰め所の牢屋前へと場面を移します。

スレイマン(GM):
 そのころになると、スレイマンは大いびきをかいて寝ていました。
「グゴォォォ、スピィィィ、グバァァァ、ジュバァァァ、ドヒャァァァ」

セルダル:
「こりゃまた、すげぇいびきだな……(苦笑)。おーい、スレイマン!」

スレイマン(GM):
 スレイマンはズボンから半分はみ出た尻を手でかいています。

セルダル:
「ケツかいてる場合じゃねーぞ! おーい、起きろーッ! おーきーろーッ!」

スレイマン(GM):
 そうやって牢屋の前で騒がしくしていると、スレイマンがムクリと身体を起こしました。
「チッ、またお前か……。ヒトが気持ちよく寝てるところを起こすンじゃねぇよ。オレはメシと睡眠と戦闘を邪魔されるのが大っ嫌いなンだ。覚えとけ!」

セルダル:
「わかった、わかった。次から気をつける。それはそーと、起きたついでにちと教えてくれ」

スレイマン(GM):
「ケッ! 用があンなら、さっさと言いな。そーしねぇと、また寝ちまうぞ」

セルダル:
「じゃあ、聞くが、アンタ、飾り帯の網目模様が特徴的なヤツに覚えはねぇか? 東の山麓に暮らしてる氏族が好んで編む形のやつでさ。なんでも、その飾り帯を身に付けた奴が、あの騒動のあと姿をくらましたみてぇなんだ」

スレイマン(GM):
「ハンッ、そんなのオレの知ったことじゃねぇ」

セルダル:
「知ったこっちゃねぇかもしれねぇが、アンタのあとをつけてあの酒場に入ってきたソイツが、アンタを恐喝犯呼ばわりした行商人とグルなのかもしれねぇのさ」

スレイマン(GM):
「だったら、そいつらのことをさっさと捕まえてみろよ。それが、テメェらの仕事だろーが。とにかく、オレはなンも知らねぇよ」

セルダル:
「わかった。知らねぇんじゃしょーがねぇ。寝てるとこジャマして悪かったな」そー言って、牢屋をあとにした。

スレイマン(GM):
 去りゆくセルダルに対し、「二度と、オレの睡眠を邪魔すんじゃねぇぞ!」と、スレイマンが毒づきました。


セルダル:
 さてと……。んじゃ、自警団の先輩方や団長にも同じことを聞いてみるとすっか……。

クムル(GM):
「うむ、その方向で調査を進めてくれ。俺は忙しい。正直、窃盗事件など日常茶飯事だ。それひとつにこれ以上人手を割く余裕はない。調査はお前ひとりでなんとかしてみせろ」

セルダル:
 ちょッ、団長(笑)!

GM:
 完全に、厄介ごとを余剰戦力であるあなたに押し付けた格好です。

セルダル:
「……わかりました」
 んじゃ、今日はもう帰って寝ることにするぜ。勤務時間も終わったしな。

GM:
 では、セルダルがクムルのデスクから離れようとしたとき、自警団員のひとりが詰め所に駆け込んできました。

自警団員(GM):
「団長、大変ですッ! 今度は宿屋で事件がッ!」

クムル(GM):
「なんだとッ!? さっそく出動だッ! すまんが、セルダル。お前はお前で頑張ってくれ!」クムルはそう言って詰め所から出て行きました。

セルダル:
「おう、任せてくれ」
 しっかし、ヒデェ職場だな……。ちなみに、いまの出動で詰め所に残ってる人数が減ったんじゃねぇか?

GM:
 3人出動していきましたね。22時から勤務時間となる夜勤組はすでに詰め所にいますが。

セルダル:
 うーん……。なんだかんだでやっぱり詰め所は手薄にしたくねぇし、今日は帰らずここに泊まってこーかな……。

GM:
 まだ、事件のことを相談していない名前持ちのNPCが半分以上残っていますが、ここで朝まで待機してしまいますか?

セルダル:
 そーはいっても、もー22時だろ? こんな夜中に相談しに行くってのも迷惑な気がするが、そーでもないのか?

GM:
 もちろん、NPCごとに迷惑に感じる人とそうでない人がいますよ。ニルフェル、ギズリ、テジーあたりは迷惑がらないと思われます。ボレンとギュリスは迷惑だと感じつつも対応してくれるといったところでしょうか。

セルダル:
 その面子なら、明日の朝でもよさそーな気もするけどなぁ……。

GM:
 判断はお任せしますが、ギズリとテジーは明日の早朝にはイルヤソールを出発する予定であるため、少なくとも彼らに相談する機会は今晩しかありませんからね。

セルダル:
 えッ!? それじゃ、いますぐ相談しに行く(笑)。

 事件解決のことに夢中で、ギズリとテジーの旅立ちのことをすっかり忘れていたセルダル。情報量やタイムテーブル的に考えて、PCひとりでは手が回らない部分が出始めています。さて、今回の件でまだ相談を持ち掛けていないNPCといえば……。




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