LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 08.報告

 BGMは強い雨音と鬼気迫る曲。

GM:雨足の途絶えることのないレイフィールド商業区の表通りをウィルとクラウスが走っています。向かう先は商業区を抜けた先の居住区にある穏健派の旗手カーライル女男爵の屋敷です。ふたりともシーフ技能、もしくはレンジャー技能を用いた知力判定を行ってください。

クラウス:(ころころ)14です。

ウィル:(ころころ)10です。

GM:どちらが先を走っていますか?

ウィル:俺かな。

GM:了解です。それではウィルが先を急いで走り、それを追いかけるかたちでクラウスが走っているわけですが、クラウスは横手に延びる裏路地に人が倒れているのを見つけました。

クラウス:「ウィル!」とウィルに後ろから声をかけ、わき道に逸れて入っていきました。

ウィル:「ん? おい、クラウス!」といって後を追います。

クラウス:「人が倒れてます!」

ウィル:「本当か?」

GM:はい、そこにはゼオルが倒れています。

ゼオル:ギャーッ! 俺、倒れてるーッ!?

一同:(笑)。

ゼオル:まるで時がすっ飛んだみたいだ(笑)。

GM:ゼオルが左の肩口に傷を負って、その場に倒れています。

クラウス:「ゼオル!?」

ゼオル:肩口を押さえながら、ゆっくりと立ち上がります。「ぐっ。お、お前ら……」

クラウス:スタッフを握り締めて“キュア・ウーンズ”を唱えます。

GM:(クラウスが癒しの魔法を使おうとしたことにハッとして)あ、そうか。クラウスはプリースト技能を追加で取得したんだっけ。

クラウス:まずかったですか?

GM:いや、大丈夫だけど……。本当は――。

ウィル&クラウス:カーライル女男爵が癒してくれるはずだったと。

GM:そうだったけど、それほどストーリーに影響はないのでいいです。プリースト技能があるのにここで治してあげないのもおかしいので癒してあげてください。

クラウス:はい、それじゃゼオルの肩口に手を当てると、ゼオルに暖かい光が流れ込んでいきます。

ゼオル:「すまないな」

クラウス:「こんなところでいったいどうしたんですか!?」

ゼオル:「いやぁ、ちょっと野暮用でな……」

ウィル:「野暮用ってお前……。お前ほどの男にこれほどの傷を負わせるなんて……」。傷は一太刀って感じですか? それとも、切り傷? 刺し傷?

クラウス:投げナイフの傷ですかね。

GM:傷口の鑑定する?

クラウス:いや、PCはわからなくていいです。

ウィル:投げナイフでそれだけの傷を負わせるなんて……。おっかねぇー。

クラウス:どんだけ強い人なんだろう? 怖いなぁ。

GM:(いや、むしろ8点というダメージで済んでいるところがミソなんだけどね……)。

クラウス:「それほど危険な仕事だったのなら、言ってくれれば協力できたかもしれないのに」

ゼオル:「いや、いいんだ。それよりここで癒してもらえて助かった」

クラウス:(にっこり笑って)「治療費でも請求しましょうか?」

ゼオル:「うわっ!」

クラウス:「冗談ですよ(笑)。それよりなにがあったか話してもらえますか?」

ゼオル:「詳しい話は――」

ウィル:(ゼオルの言葉をさえぎり)「この雨の中ではなんだから、いったんカーライル女男爵の屋敷まで行こう。そこでしっかりと傷の手当をしながら話を聞かせてくれよ。さっきのじゃ応急手当程度だろ?」

クラウス:まぁ、完全に癒えているわけではありますが。「そうですね。もう大丈夫だとは思いますが、念のため明るいところで傷をみさせてください」

ゼオル:「ああ、そうだな」

クラウス:とりあえず、カーライル女男爵の屋敷に急ぎます。

 雨音が弱まり、優しさを感じさせる曲が流れる。

GM:はい、そうしてあなたたちはカーライル女男爵の屋敷にたどり着きました。屋敷に着くと、傷の治療と濡れた服を乾かすために女中に案内されて空いた部屋に通されます。会合の開始時刻まではもう少し時間があるので、会合に参加するのにも問題はないようです。カーライル女男爵本人を呼びたければ部屋の外に控えている女中に声をかけてください。部屋の中は暖炉に火が入れられていて、あなたたちはその周りで服を乾かしています。ゼオルの傷はさっきの魔法で完全に癒えたようですね。

クラウス:「で、ゼオル。いったい何があったんですか?」

ゼオル:「会合まではまだ時間があるな。この話は直接カーライル女男爵の耳に入れたいんだが」

GM:部屋の外に控えている女中に話を通すと、カーライル女男爵を呼んでくれます。しばらくするとあなたたちの居る部屋にカーライル女男爵が入ってきました。黒い髪の美しい女性です。ふくよかな胸と常ににこやかな笑顔を絶やさぬところが母性を強く感じさせます。民衆からもとても人気の高い人物です。若くして夫を亡くした未亡人なんですが、夫亡き後カーライル商会をひとりで切り盛りして、国益をもたらしたその功績を認められて女男爵位を得たという経緯があります。若い頃は男勝りなところもあったそうですが、近頃は清廉潔白なイメージが強いです。その人気が買われて穏健派の有力者をまとめる立場にあるわけですが、穏健派には彼女より地位の高い人物も多く、悪く言えば御輿として担ぎ上げられた感じがあります。

 GMが優しい目をした落ち着いた女性の描かれたカードをテーブルの上に置く。

GM(カーライル):「ゼオル、傷の具合はいかがですか?」

ゼオル:「おかげさまで助かりました」

GM(カーライル):「命に別状がなくてなによりです」(ゼオルの上着についた傷の跡を確認して)「もう少し傷が内側に入っていたら取り返しのつかないことになっていたかもしれません」

クラウス:うなずきます。

ゼオル:ふぅ、危ない、危ない。ダメージが4点ですんだのはそのおかげか(笑)。

GM(カーライル):「それでゼオル、話したいこととはなんでしょう?」

ゼオル:「そのことですが。実は……」(しばらく沈黙して)えっと、オルコット大公たちはいつ聖域に侵攻するって話でしたっけ?

ゼオル以外の一同:おーいっ!(笑)

GM:(苦笑しながら)シーフ技能+知力ボーナスで記憶術の判定をどうぞ。長い話だったから忘れちゃうよね(笑)。

ゼオル:俺の知力17が冴え渡るぜ! (ころころ)15。

GM:それなら思い出しました。オルコット大公たちのやろうとしていることは、王に許しを得ず独断で、明日の朝、聖域周辺に集わせた傭兵たちを侵攻させる計画です。既成事実を作ってしまえば国王も止められないだろうと話していました。

ゼオル:なんてこった。(カーライル女男爵に対して)「実は明日の朝、オルコット大公とベネット伯が差し向けた傭兵がクローディアの聖域に侵攻しようとしています。急いで兵を向かわせて、それを食い止めなければなりません! 直接耳で聞いた話なので、証言以外の証拠はありませんが……」

GM(カーライル):「その話はどうやって得たのですか?」

ゼオル:「オルコット大公とベネット伯のふたりが話しているのを盗み聞きしました」

GM(カーライル):「あのお二人がそんなことを……。わかりました。会合に集まっている方々にもこの話を伝え、早急に対策を取る必要があるようですね。ゼオル。よろしければあなたの口から直接、みなさんに今の話をしていただけますか?」

ゼオル:「わかりました」

ウィル:GM、質問なんですが、穏健派って兵力を有しているんですか?

GM:各有力者が個別に私兵を有しているかもしれませんが、穏健派としてのまとまった兵力はありません。穏健派としては何か問題が発生したら国王陛下に進言して正規兵を動かしてもらおうというスタンスです。

ウィル:なるほど。

 力強い作戦会議風のBGMがかかる。

GM:それではゼオルをはじめとしてあなたたち三人は会合の席に通されました。穏健派の実力者たちが十数名集まっています。

クラウス:居心地悪そうにしてます。

GM:ゼオルが一連の内容を報告し終えると、それを聞いた有力者たちはざわめきます。「陛下の判断を仰がずに聖域に兵を向かわせるなどと、なんたることだ!」「すぐにでも陛下にお伝えし、正規兵をもって鎮圧していただかなくては」「しかし、この時刻にお目通りが叶うものか……」「陛下は聖域の力に興味をお持ちだという話もあるが」「これから正規兵を集めようにも、出発は明日の朝ではないか!」「ダメだ、それでは間に合わん!」各々がそれぞれの考えを口にするのですが、最後に発せられた「では、どうしたらいいんだ?」という問いかけに答えられる者はなく、場に沈黙が訪れます。

ウィル:GM、質問なんですが。オルコット大公はあくまでも傭兵を動かしているんですよね?

GM:ゼオルが記憶術で思い出した内容によると、今回オルコット大公の動かそうとしている兵は大半が傭兵ということですね。もちろん、それを指揮するために騎士サディアスを始めとしてオルコット大公やベネット伯の私兵も少しは作戦につぎ込まれるでしょうが、聖域への侵攻が穏健派に漏れないように私兵はあまり動かさないようですね。

 ここで、しばらくPC側から何か発言がないか待ってみましたが、この段階で一介の若者に過ぎない彼らが言えることはなにもなかったようです。

GM:会合が沈黙に支配されて数分がたったところで、カーライル女男爵が口を開きました。「傍若無人なオルコット大公らしいやりかたです。このことは早速わたくしから陛下へお伝えします。それと、並行してクローネの民に使いを出そうと思います。オルコット大公による聖域への侵攻計画をクローネの民に事前に伝え、彼らに一時的に退避してもらえば、陛下の正規兵が到着するまでに大きな被害を出さずにすむかもしれません」。それに対して有力者の一人が異を唱えました。「クローネの民に使いだと? あの、聖域への侵入者を排除することしか考えておらん者たちが、はたしてこちらの話に耳を傾けるものか」。カーライル女男爵はその言葉を聞いて首を横に振りました。「それはわかりません。ですが、わたくしは以前、誤って聖域に迷い込んでしまったときにクローネの民に出会ったことがあるのです」。そう言うとカーライル女男爵は皆の前でクローネの民と出会ったときの話を始めました。




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