LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 14.侵攻

GM:さて、ようやくはじめての戦闘ですね。ここで大体の戦闘ルールを把握してください。

アンリ:早くもゲームオーバーになりそうな予感(汗)。

GM:頑張ってください。戦闘バランスは結構ピーキーです。

アンリ:アンリよ、死んでしまうとは情けない。

シーン外のウィル:長老様の前で?(笑)

GM:それでは、各PCの実質敏捷度(通常の敏捷度から鎧によるペナルティを引いた値)とイニシアチブ値を教えてください。イニシアチブは戦闘を開始するときに1Dで決定します。一応、まだ登場していないウィルたちもお願いします。

シーン外のウィル:実質敏捷度が7で、イニシアチブが(ころころ)5。

シーン外のゼオル:実質敏捷度が20で、イニシアチブが(ころころ)6。

シーン外のクラウス:実質敏捷度が18で、イニシアチブが(ころころ)1。

アンリ:実質敏捷度が8で、イニシアチブが(ころころ)3。

 LOSTでは戦闘データの一部をパソコンで処理するため、PC名や実質敏捷度、イニシアチブ値など、必要なデータをあらかじめパソコンに打ち込んでおく必要があります。このおかげで、タクティクスオウガのようなウェイトターンシステムによる煩雑な戦闘を処理することができるのです。

 ちなみにLOSTではさらにNPCの判定処理もすべてパソコンで行っています。これは、NPCの判定を固定値を用いずに短時間で処理できるというメリットがあります。逆にこれらの処理をパソコンに頼らないとプレイ時間が何時間あっても足らなくなってしまうのですが(苦笑)。

 劣勢の戦闘曲がBGMとして流される。

GM:それでは戦闘を開始します。この時点での勝利条件は「敵に捕獲されるな!」です。

アンリ:捕獲されるな? ……なるほど。

GM:まず敵兵の戦士Cの行動からですね。通常移動で4マス分アンリたちのほうに向かってきます。通常移動のウェイトは5。サディアスはウェイト5で待機。戦士AはCとおなじく通常移動

 GMが戦闘マップに置かれた敵兵の駒を次々と進めていきます。

 キャラクターたちのとる行動にはそれぞれウェイトという値が設定されています。ウェイトというのは次に行動するまでの待ち時間であり、実行した行動のウェイトが小さければ小さいほど次の手番が早く回ってくることになります。さらにキャラクターの実質敏捷度によってウェイトに微妙な修正が加わるので、同じ行動を取ったとしても行動順に細かい変動が発生します。

GM:続いてアルトの行動ですが、彼はロング・ボウを持っていますので、それに矢をつがえました。弓矢装填はウェイト3。その次はアンリの行動ですね。

アンリ:瞑想を6ウェイト。

シーン外のクラウス:6ウェイト!? 6ウェイトも瞑想して唱える魔法なんてありましたっけ? (自分の使える魔法を見て)私にはない(笑)。

 魔法を唱えるためにはマナと呼ばれる力が必要となりますが、このマナを得るためには等価の精神点を消費するか、もしくは瞑想する必要があります。瞑想した場合も精神点を1点消費するのですが、瞑想に費やしたウェイトに比例してマナを得ることができるので、直接精神点を消費するよりも効率的です。アンリは1ウェイト毎に3マナを得られるので、6ウェイト費やすと18マナ得られることになります。実はクラウスの言っているように、アンリの習得している魔法にも18マナを必要とするものはありませんでした。あえて長時間瞑想することで敵を驚かせるなどのブラフとしての使い方もありますが、ここはただの勘違いだったようです。

 アンリが瞑想を開始した後に戦士Dと戦士Bが前進して間合いを詰めました。ローブの男はサディアスの指示待ちで待機を続けています。

GM:アルトが「それ以上近づかせるものか!」と言って、戦士Aに向かってつがえていた矢を放ちました。

 アルトはハード・レザー・アーマーにロング・ボウを装備しています。そして、彼の持っているお手製のロングレンジ・アローは通常のものより飛距離の伸びる矢です。

GM:アルトが放った矢に対して戦士Aはラージ・シールドでディフレクトしようと試みました……が、アルトの放った矢は戦士Aの肩口に深々と刺さり込みました。「ぐっ!」と戦士Aが苦悶に顔をゆがませます。

シーン外のクラウス:せっかく装備させたラージ・シールドの効果なし?(笑)

GM:その一撃をみたサディアスが言います。「ベネット卿の話は嘘ではなかったようだな。たしかに良い射撃の腕だ。だが……」

 サディアスは何かを思いついたようですが、まだ彼の行動順ではないので、先に戦士C、Aが行動します。共に前進しますが、弓矢は危険と判断したのか、木を遮蔽物にするように動きます。そして、戦士たちの移動の後にサディアスが静観を行いました。

 静観は相手1人の実力を見抜いたり、知力ボーナス+1人までの次回行動までの残りウェイトを調べたりできる行動です。サディアスはアルトの射撃を警戒して、行動までの残りウェイトを調べたうえで部下に命令をくだそうとしました。サディアスの知力ボーナスは3なので、それに+1人で4人までの残りウェイトを調べられます。その結果、アンリが残り2ウェイト、アルトが残り4ウェイト、戦士Bが残り3ウェイト、戦士Dが残り1ウェイトであることを確認しました。

 アルトは現在矢をつがえてないので、少なくとも射撃までにあと7ウェイトの余裕があります。ここで、戦士Bにウェイト3の小移動、戦士Dにウェイト5の通常移動をそれぞれさせて、その後に盾を構えるをさせれば完璧だったのですが、最初の戦闘ということもあってGMに焦りがありました。サディアスに間違った指示を出させてしまいます。

GM(サディアス):「戦士B、D。お前達は前進だ! 他のふたりは盾を構えて敵の射撃に備えろ!」

GM:サディアスの命令にしたがって、「そうか、俺が次に動くまで矢は飛んでこないんだな! それなら安全だぜ!」と言いつつ戦士Dが前進します。

 たしかに戦士Dは安全です。しかし戦士Bはまったく安全ではありません(苦笑)。GMは過ちに気づかずに戦闘処理を進めてしまいます。

GM:続いてアンリの番です。

アンリ:“リプレニッシュ・ヘルス”を自分に唱えます。(ころころ)発動。

シーン外のクラウス:さっき、間違えて6ウェイトしてましたね。5ウェイトで足りてましたよ。あと、GMに確認なんですが、朝のお祈り(白魔法のラック)は済ませておいたことにしてもいいですか?

GM:いいですよ。一応、発動判定を行って、その分の精神点を消費しておいてください。

 そして、引き続きサディアスが状況を判断して戦士たちに指示を送り、戦士たちはその命令にしたがって行動していくのですが……。

GM:それでは次はアルトの番です。アルトは……。ん? あれれ? アルトは射撃を試みるんですが……。サディアスさん、指示間違ってますよー。戦士Bが盾を構えてません(笑)。

一同:おや?(笑)

GM:ウェイトの計算、間違えちゃいました。仕方ないのでアルトは戦士Bに矢を放ちます。

シーン外のウィル:(戦士Bになりきって)俺が動いている間は矢が飛んでこないんだぜっ!(笑)

シーン外のクラウス:(戦士Bになりきって)えっ? 飛んできたっ!? サディアスさーん!(笑)

シーン外のゼオル:(戦士Bになりきって)あれ? 何で俺、矢が刺さってるの?(笑)

 出番待ちで暇なのか突っ込みが増えてきました。しかし、息のあったいいトリオです(笑)。

GM:うん、かわせません。戦士Bは盾で身を守ろうとしたのですが、がら空きになった足元に矢が刺さりました。ごめん、戦士B。完全にGMのミスだ(汗)。

 戦士ふたりが矢傷を負ったのを見たサディアスの指示で、後方からローブの男が援護のために前に出てきます。その間に射撃の対象とならなかった戦士Cが、ようやくアルトに隣接するところまでたどり着きました。

GM:戦士Cが通常移動でついにアルトに隣接。あわせて中武器攻撃を行います。それに対してアルトは、装填している矢を外して回避しようとしますが……。

アンリ:それは何らかの受動行動で割り込めますか?

シーン外のクラウス:身代り範囲ディフレクトですね。

GM:……そう、身代り範囲ディフレクトで阻害できますね。身代りはあなたがアルトの代わりに攻撃を受けます。範囲ディフレクトはアルトに対する攻撃にディフレクトを試みることができますが、失敗するとアルトが攻撃を受けます。

アンリ:それではラージ・シールドで範囲ディフレクトを試みます。(ころころ)15。

GM:それならば、戦士Cの振り下ろしたブロード・ソードとアルトの間にスッと盾を入れてその攻撃を防ぎました。

 プレイ中は気がつきませんでしたが、この処理には誤りがありました。

 LOSTで行える行動は能動行動と受動行動の二種類に別けられます。能動行動は自分の手番にとれる行動であり、受動行動は自分の手番以外にとれる行動です。範囲ディフレクトは能動行動であり、自分の手番に使って、次回手番までの間、隣接する仲間への攻撃に対してディフレクトを試みることができるという行動なので、本来この場面では使えません。しかし、GMはルールを誤ったままプレイを続けてしまいます。

 盾を構えるタイミングの失敗と範囲ディフレクトのルールミスで、この戦闘で見せようとしていた、戦術による弓矢使いの無力化という青写真は消し飛んでしまいました。アンリの援護を受けつつアルトが矢を放ち続けます。

GM:アンリが守ってくれたおかげでアルトは矢を落とさずにすんだので、そのまま目の前の戦士Cに射撃します。戦士Cはディフレクトを試みるんですが……失敗。

シーン外のクラウス:シールド役に立ってないですね(笑)。

シーン外のゼオル:盾を構えないと……。

GM:(まったくそのとおりなんだよね(泣))。

 強硬派陣営にとって怖いのはアルトの射撃だけなので、なんとかアルトに攻撃を加えて射撃の邪魔をしようと頑張ります。しかし、戦士たちの攻撃はアンリの防御に阻まれ、なかなかアルトを止められません。

GM:戦士Cが再びアルトに斬りつけます。

アンリ:それは身代りになって受けます。

GM:それでは戦士Cの攻撃をアンリが受けました。ダメージは7点です。

アンリ:ハード・レザー・アーマーで6点止めて、1点受けました。

 プレイ中は気がつきませんでしたが実はここもルールミスです(汗)。

 身代りの使い方自体は問題なかったのですが、ダメージ減少の計算が間違っていました。プレイの終盤になってアンリのプレイヤーはダメージ減少の算出方法を誤解していたことに気がつくのですが、どうやらこの時点では鎧の防御力をそのままダメージ減少として用いていたようです。実際には冒険者レベル+鎧の防御力を半分にして端数切捨てしたものがダメージ減少になります。このときのアンリは冒険者レベル3で、防御力6のハード・レザー・アーマーをつけているので、ダメージ減少は4になります。

 しかしながら、アンリに“リプレニッシュ・ヘルス”のかかっている状況では、この程度のダメージ差はあってないようなものですが……。

 こうして数に勝る戦士たちが攻めあぐねているうちに、ついに援軍が登場します。




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