LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 16.手紙

 BGMが激しい戦闘曲から緊張感のある曲に変わる。

クラウス:しばらく待ってから瞑想して“ライト”を唱えます。ここに闇を残しておくのも気持ち悪いですし。

ウィル:(“ダークネス”の効果が消滅して)「闇が晴れた?」。たぶんクラウスの技なんだろうなと思ってクラウスの方を見ました。

GM:そうして闇が晴れた場所には、あなたたち五人が残されています。アルトはウィルたちを警戒し、アンリを背後に庇うように立ちました。「助けてもらったことには礼を言う。しかし、きさまら何者だ?」

ウィル:「我々はレイフィールド王国の王都から来た者だ。あなたたちは聖域を守るクローネの民で間違いないか?」

GM(アルト):「そうだ。それで、その外界の者たちが俺たちに何の用だ?」。彼にとってはどこの国の者であろうが外界の者といった括りでとらえられてしまうようです。

ウィル:なるほど。とりあえず剣をしまいます。他の場所から喧騒とか聞こえますか?

GM:今のところ、この周りでは聞こえないですね。

ウィル:それでは、「実はあなたたちが守る女神クローディアの聖域を荒らそうと、我が王国の造反分子がこの地域への侵攻を画策している。我々はその話を聞きつけて、あなたたちにその危機を知らせるためにやってきた。少々遅くなってしまったことは申し訳なく思う」

GM:それを聞いたアルトは、こいつは何を言ってるんだといった怪訝な表情を浮かべます。そして、下ろしていた弓をスッと持ち上げようとしました。

アンリ:その持ち上げようとする手を抑えました。

ウィル:「あなたたちの中にアンリという名の少女は居るだろか? もしアンリという少女がいるのであれば、彼女にあわせてもらいたい」

GM(アルト):「なぜだ?」

ウィル:「我々をここに使わしたカーライル――」と言っちゃうだろうな……。「カーライル女男爵が、以前この地でアンリという少女に助けられたという話を聞いた。彼女なら話を聞いてくれるかもしれない」

GM:(その発言は色々と問題があるようですが……)。アルトはあなたたちから視線を逸らさずにボソリと小さな声で「本当か?」とアンリに尋ねました。

アンリ:(小声で)「カーライルって名前は知らない」

GM(アルト):(小声で)「外界の人間とは会ったのか? それともあいつの嘘か?」。アンリの答え次第でいつでも矢を早撃ちできるように準備をしました。

アンリ:(小声で)「アルト、ごめんなさい」(隠し事をしていたことに申し訳なさそうにして)「でも……カーライルって人は知らない」

 ここでゼオルが互いに歩み寄るための布石を投じます。

ゼオル:「たしか、カーライル女男爵は少女と出会ったときに何かを渡していたはずだが……」

ウィル:「そうだ。アンリという少女はカーライル女男爵が渡したアクセサリを持っているはずなんだ」

GM(アルト):「お前たちの話は嘘だな!」と言って素早く――

アンリ:「まって! まって! まって!」と言ってアルトを後ろから止めた。「たしかにプレゼントは貰ったの。でもカーライルって人じゃない。わたしが会ったのはメイっていう女の人」

ウィル:その発言は聞こえていいんですよね?

アンリ&GM:はい。

ウィル:では、アンリのその言葉を聞いて得心したようにうなずいて、「メイ・ジョージナ・ドナか?」と……そうですね、今度はフルネームで言ってしまうでしょう。

GM:(そうそう。メイ・ジョージナ・ドナ。もちろん知ってま――)

アンリ:(間髪置かずに)「知らない」

GM:(えーっ!?)

 直前にウィルのプレイヤーがカーライルの名前をフルネームで言ってしまうことを融通の利かないウィルらしい行動であるとして演じていたので、それを受けての返答だったのでしょうが、この咄嗟の「知らない」発言にGMは思わず吹いてしまいました(笑)。

 このあとの会話から察すると、この「知らない」は「そんな人は知らない」といった完全否定の意味ではなく、「同一人物ではあると思うけどわたしはその呼び名を知らない」といったニュアンスを含んだものだったようです。

アンリ:「わたしが会ったのはメイっていう女の人。優しい目をしたとてもとても優しい女の人。この髪飾りはその女の人から貰ったの」と言って自分の髪の毛につけていた金の髪飾りをとって見せました。

GM:その髪飾りの内側にはたしかにメイ・ジョージナ・ドナ・カーライルと人間の文字で彫ってあります。人間の文字で書かれていたのでアンリには読めなかったのでしょう。

アンリ:「わたしがアンリです。あなたたちは?」

ウィル:あらためてアンリの方を見て、「我々はカーライル――いや、メイ殿に使わされた者だ。君たちに危険が迫っていることを知らせに来た」と答えます。

 ウィルはアンリの問いに対して立場と目的について答えてしまいましたが、それについてはすでに一度伝えていますし、アンリが聞きたかったのはウィルたちの名前だったのではないでしょうか。ここで機会を逃してしまったこともあり、この後のセッション中にウィルたちがアンリに対して自己紹介をすることはありませんでした。あらかじめ決められた台本もなく、後で推敲できるわけでもないTRPGのセッションでは、こういったこともよくあります。

GM(アルト):「なぜお前たちが俺たちに危険を知らせる必要がある?」

ウィル:それは、なぜクローネの民たちを助けようとするのかって意味ですよね?

GM:そうです。彼らは外界の人間同士が争っているということを知らなかったので、どうしてあなたたちが先ほどの戦闘で自分たちに加勢してきたのかをよく理解できていないようですし、あなたの発言の意図するところも良くわかっていないようです。

クラウス:「えーと、少しわかりにくいかも知れませんが、外界の人間すべてがこの聖域を荒らしたいと考えているわけではないのですよ。あなたたちと話をしたい……そう思っている者もいます。平たく言って、我々はそういった者たちの代表といったところでしょうか。あなたたちの守る聖域を荒らそうとしている者と反対の側の人間と言えばわかりやすいですか?」

GM:アルトは信じられないといった表情をしています。

アンリ:「なぜなんです? なぜあなたたちは二つに別れてしまったんですか?」

ゼオル:「あんたたちが外界と呼んでいる俺たちの国は、さらにもっと外の奴らから侵略の対象として狙われている。そいつらと戦うために、俺たちの国の一部の人間が聖域の中に眠ってる魔法の物品とか戦力になりそうなもんを手に入れようとしているのさ。だが、それを良しとしない者たちもいる」

GM:アルトがアンリの方を見ました。どうする?といった顔をしています。

アンリ:「わたしはあなたたちの話が嘘だとは思いません。あなたたちの言葉からはメイと同じような気持ちを感じます」

GM(アルト):「おい、信じるっていうのか?」

アンリ:(アルトに対して)「あの方たちはきっとわたしたちの力になってくださるはずです。それは身を呈してわたしたちを守ってくれたことで示されたはずです。それに、そうでなければ……」と言って、倒れている外界の戦士の亡骸を見て「同胞の亡骸を残して逃げていく者たちと、同胞を倒してまでわたしたちを守ろうとする者たちが存在することの説明がつきません。あの方たちはきっと本心からわたしたちを守ろうと思っているんです」

GM:アルトは倒れている兵士たちを見て、それ以上は何も言おうとはしません。

アンリ:(ウィルたちの方を向いて)「ですが、わたしたちはいったいどうすればいいのですか?」

ウィル:「ここ以外に、すでに外界の者が入って来ている場所はないのか?」

アンリ:「あります」

ウィル:「クローネの民がどれほど戦に慣れているかはわからないが、侵攻してくる外界の者たちは戦闘の専門家だ。普通に戦えば双方に……いや、クローネの民に大きな被害がでる。もし聖域の奥に隠れることができるのであれば、一時退避して欲しい」

ゼオル:「大丈夫。明日には俺たちの仲間が来る。それまでの間だけだ」

クラウス:「明日……というのは少し難しいですね。正規兵が派兵されるのには少し時間が掛かるでしょう。ある程度時間を稼いでもらえれば、我々の仲間が到着する可能性が高いというのが本当のところです」

ゼオル:(ばつが悪そうにしながらアンリの方を向いて)「すまん。確約はできん。だが近いうちに必ず助けが来るはずだ」

アンリ:(アルトに対して)「わたしたちを騙そうとするならば、明日には助けが来ると言い切っていたはずです。でも、そうはしなかった。そういったところにも真実味を感じます」

クラウス:「アンリさん……でしたか?」

アンリ:「はい」

クラウス:「渡したいものがあるんですが、近づいても構いませんか?」

アンリ:(うなずく)。

クラウス:少し近くに寄って行って、懐から手紙を一通取り出すと、「カーライル女男爵、つまりあなたの言うメイという女性からお預かりしてきた手紙です。我々を信用してもらえなかったときのためにと頂いてきたものですが、何が書いてあるかはわたしも知りません。お渡ししておきます」とアンリに手紙を渡してまた後ろに下がっていきます。

アンリ:手紙をもらうと、匂いをかいでから開けました。

GM:匂いをかいだ(笑)。ちなみに開けると神聖語(白魔法を用いるための言語)で「もう一度会うという約束を果たすために、あなたを守りたい。彼らの指示にしたがって、一時聖域の奥に退いて欲しい。そのためにあなたにクローネの民たちを説得するための力を貸して欲しい」というような内容が書かれています。手紙の最後には「追伸。あのときのクッキーの作り方を教えてください」と書かれていました。

アンリ:アンリの表情が神妙な顔つきから、喜びの顔、そして真面目な顔つきに変わり、最後にまた喜びの顔に変わると、大切そうに手紙をゆっくりとたたんでしまいました。「ありがとう。あなたたちは間違いなくメイのお知り合いの方なんですね」(アルトに対して)「大丈夫、アルト。この人たちは信用してもいい人たちです」

GM(アルト):「そうは言われても、全面的に信じるわけにはいかん」(しかし、アンリの投げかける表情に負けて)「……だが、疑う理由も特にない。判断は長老に委ねる。それでいいか?」

アンリ:うなずいた。

GM(アルト):(やれやれといった様子)。

アンリ:(ウィルたちに対して)「では、あなたたちの援軍が到着するのを待つ間、わたしたちは聖域の奥地へ退いたほうがよいのですね?」

クラウス:うなずいた。

ウィル:「ああ、そうしてもらえると助かる」

アンリ:「それならきっと、長老も納得してくださいますよね?」(アルトに同意を求める)

GM(アルト):「それは……わからんな……」

アンリ:(ウィルたちに対して)「あなたたちはどうするんですか?」

ウィル:「できればその長老という方にはお会いしたい」。それは難しいと考えたほうがいいんでしょうか?

GM:条件付きでしょうね。「それならば」とアルトが言って、「お前らの得物をすべて渡しておいてもらおうか。さすがに武器を持たせたままで集落に連れて行くわけにはいかん」

クラウス:「長老という方に会いたいんですか?」とウィルを見ます。

ウィル:「アンリという娘には会えたけど、どうせだったらその長老という人物にも会いたいじゃないか。それで事情を話して本当にわかってもらえれば――」

ゼオル:「それはわかるが……ちょっと内心怖いところもあるな」

クラウス:(ため息をついて)「わかりました。もう毒を食らわば皿までです」と言ってスタッフを前に差し出した。

GM:アルトはあなたたちの武器を回収すると、「先を歩いてもらおうか。集落はそっちだ」と言って警戒しながらもあなたたちを集落へと連れて行くのでした。




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