アンリ:いいのかなぁ……と思いながら。(GMに対して)いいですよね?
GM:(説得に協力してくれるものだと思って迷うことなく)はい。
アンリ:そうしたら、ガタリと立ち上がりました。ざわつく有力者たちを前にして、ゴクリと唾を飲み込み、意を決したように言いました。「どうしても彼らの言葉を信用して退避することができないと言うのであれば、有事に備えて守護者を――」
GM:(あれ?)。アルトがアンリの方を見て「おいっ!」と声をかけます。
アンリ:「守護者を決めましょう。長老、長い間ご迷惑をおかけしました。今がそのときだと思います」
GM:(あ、やっぱり。そっちに行くのか……)。
メイからの手紙に「クローネの民たちを説得するための力を貸して欲しい」とあったので、てっきりアンリがクローネの有力者たちを説得してくれると思っていたGMと、守護者をきめてもいいんだよねと確認を取ってオッケーをもらったつもりのアンリのプレイヤーとで見事なすれ違いが発生しました。ちなみに守護者というのはクローネの隠しだまである深淵の力を安心して使うために必要となる存在です。
ここで守護者を決めることになってもシナリオ上問題はありませんが、退避してもらうためにやってきたウィルたちや、なによりアルトにとっては望まぬ展開となってしまいます。
GM(アルト):「待てっ!」と言ってアルトが立ち上がりました。
アンリ:「わたしは彼らの言葉を信じます!」
GM(アルト):「それはわかる。お前が彼らを信じているのは、もうよくわかってる」
アンリ:「でも、皆は信じてくれません。このままこの場に留まり続けるのであれば多くの人たちが死ぬことになるでしょう……」
GM:そう言われてしまうと……(アルトは説得に回るしかないわけで)。
GM(アルト):「皆、もう一度良く考えてくれ! 聖域の奥へ退くと言っても一時的なことだろ? そうすることで俺たちにどれだけの不利益があるって言うんだ? 仮に退避した後でこいつらが嘘をついていたってわかったとしても、そのときまた手を考えればいいじゃないか!」
ウィル:(拍手)。すみません、俺が不甲斐なくて……。
GM(アルト):「俺は……俺は……」(グッと目を閉じてから見開き)「俺もこいつらを信じるぞ!」
ゼオル&クラウス:折れた(笑)。
GM(アルト):「こいつらは俺とアンリを窮地から救ってくれた。もし彼らが助けに来てくれていなかったらあのときに深淵の力を使わざるを得なかっただろう。こいつらが助けてくれたから、今こうしていられるんだ。一度くらいこいつらの言葉を信じてみてもいいじゃないか!」
ゼオル&クラウス:アルトー! アルトー!(拍手喝采)
GM:アンリ、もしこの流れに乗ってもらえるのでしたら交渉判定を行ってください。もともとアンリが交渉を行ったときには相性ボーナスが加わる予定でしたので。
アンリ:そうだったのね……わかりました。
ウィル:(小さくなって)本当にすみません……。
クラウス:(慰めるように)いや、誰が振ってもきっと結果は同じだったと思いますよ。
アンリ:(ころころ)11。
GM:はい、「決裂」から「疑念」へひとつ回復しました。「人間を毛嫌いしていたアルトがあそこまで言うとは……」とか「たしかにこの状況で判断を下すのはアンリの役目なのかもしれない」といった声がちらほら聞こえ始めました。あと二回判定の余地がありますが。
アンリ:(ころころ)7。
GM:7だと……残念ながら「疑念」のままですね。もう一回判定できます。
アンリ:(ころころ)9。
GM:それで「疑念」から「中立」になりました。その場の雰囲気は退避に対して賛成派と反対派が半々に割れているといったところでしょうか。(残りのPCが判定を行うと悪いほうに転びそうな予感がする……。ここが頃合かな)。その状況を見かねたエルモ長老が言いました。「皆の者の意見も割れているようじゃし、決をとることとしよう。集落を離れ聖域の奥へと退避するか、否か。退席したアインの分は否として……、退避を良しとする者は左手を、退避を望まぬ者は右手をあげるのじゃ」。その長老の言葉にしたがって、クローネの民がそれぞれ手を上げていきます。アルトは左手を上げます。
アンリ:もちろん左手を上げます。
ゼオル&クラウス:左手を上げて……わーい、わーい!(笑)
GM:(無視して)その他に三人の有力者が左手を上げました。残り四人の有力者が右手を上げます。
ウィル:五対五か……。
一同:(ゴクリ)。
GM:全員の手が上がったことを確認してからエルモ長老がゆっくりと左手を上げます。
GM(エルモ長老):「深淵の力は使わぬに越したことはない……とわしは考える」と言ってからアンリを見て、「じゃが、守護者については早急に決めておくのじゃぞ」
アンリ:まじめな面持ちで「はい」と答えました。
GM(エルモ長老):「では、明日の早朝に聖域の奥へと退避することとする」。(ウィルたちに対して)「お主たちはどうするつもりじゃ?」
ウィル:「長老。先ほどお話した通り、我々の仲間の準備が整えば使者が送られてくることになっています。ですので、あなたたちが準備を終えて、聖域の奥へと退避されるまではこの地に留まり……」その後はどうしようかな。俺としては聖域の奥にも関心があるんだが……。(なにやら考えている様子)。
GM:(あれ? 悩んでる?)。シーフ技能を持っている人はシーフ技能レベル+知力ボーナス+2Dで記憶術判定を行ってください。目標値は10です。
ゼオル:(ころころ)成功しました。
GM:では思い出しましたが、カーライルの指示では使者と合流するまではクローネの民と行動を共にしてくださいということでしたよ。
ウィル:プレイヤーとしては、高台とかに陣取って強硬派の動きを監視しないといけないのかなと思ってしまって(汗)。
ゼオル:「もしよろしければ、使者が来るまでは我々もあなたたちと共に行動したいのですが」と言ってクラウスに目配せをした。
クラウス:アルトさんとアンリの方を見ながら「少しではありますが、民を守るために力をお貸しできると思います」
アンリ:「ありがとうございます」
GM(アルト):「たしかに戦力として期待できることは間違いない」
GM(エルモ長老):「そうか。わかった」(しばらく考える素振りを見せて)「外界人であるお主たちには何かとわからぬこともあるじゃろうから人をつけることとしよう」
GM:ちょうどそのときに部屋に入ってきた世話役のサンディが長老の言葉を聞いて、その場で凍り付きました。
GM(エルモ長老):「とは言っても、外界人であるお主らの面倒を見れる者は限られておる」(アンリの方を見て)「アンリ、お主に任せるが良いな?」
アンリ:「もちろんです」
GM:サンディがふぅーと息を吐くとアンリの方を見て手を振って感謝の意を示しました。
このようにして、アンリとアルトの必死の説得によりクローネの民は聖域の奥へと一時退避することとなり、ウィルたちはカーライル女男爵の使者が訪れるまでクローネの民と一緒に過ごすこととなったのでした。