落ち着いた郷愁を誘うBGM。
GM:クローネの民たちが集落からの退避を決めたその夜。ウィルたちは集落の外れにある空き家をあてがわれて、そこで休むことになりました。
クラウス:武器は返してもらえるのでしょうか?
GM:それは、アルトが「俺が管理しておこう。たとえ俺がお前らを信用したとしても、お前らが武器を持って集落を歩いていたら他の者たちが怯えてしまう。武器は預かっておくから、何かあったら俺のところに来い」と言って預かっています。
クラウス:仕方ありませんね。
GM:ウィルたちが休んでいる空き家に、サンディの用意した食事と寝具を持ったアンリとアルトがやってきます。「寝具だ」と言ってアルトが扉を開けて家の中に入ってきました。
クラウス:「助かります」
GM:アルトが寝具だと言って渡してくれたものは草を編んだものと毛皮を張り合わせただけのものです。
クラウス:「変わった寝具ですね」と言ってしげしげと眺めます。本を開いてペンを手に取ると、シュシュシュッとスケッチし始めました。
アンリ:「お待たせ」と言って食事を運んでくるアンリの姿もあります。他の集落の者と同じく簡易服に帯を巻いただけの格好をして、金の髪飾りで髪をまとめています。
GM:運んできた料理は鍋ものですね。
クラウス:しばらくすると、本にこの集落の文化とか色々まとめたレポートが出来上がっていくと思ってください。シュシュシュッ。
ウィル:「クラウス、料理が冷めちまうぞ?」
クラウス:「はい、いま食べます」(と言いつつもスケッチを続ける)
GM(アルト):「何か面倒ごとがあったら声をかけてくれ」と言ってアルトは外にでようとして、食事を運び終えても動こうとしないアンリにふと気づき、「アンリ?」と声をかけるのですが……。
アンリ:「え? な、なに?」。アルトの方を振り返った。
GM(アルト):(呆れた様子で)「いい。好きにしろ」と言って外に出て行きます。
GM:アルトが出て行き扉が閉められると、あなたたち四人が残されました。
ウィル:「すまないな、アンリ」
アンリ:「こちらこそ」
ウィル:(登場人物一覧に書かれたアンリの年齢を見て)あれ? 同じ歳くらいなのか? すごく年下のイメージがあったけど。
アンリ:「せっかくわたしたちのためにここまで来てくれて、そして戦ってくれたのに……ごめんなさい」
ウィル:「いや、俺たちの方こそ、自分たちの国のいさかいをこの聖域にまで持ち込んじまって……」
クラウス:(アンリに対して)「しかし、あなたに一番最初に会えたのは幸運でしたね」
ウィル:「そうだな。女神クローディアに感謝しなくちゃな」
ゼオル:「まったくだ」
クラウス:「では、感謝をしつつ、食事をいただくとしましょうか。どんな味がするんでしょうね」と言いながら鍋からよそって食べ始めました。
GM:はっきり言って不味いです。
クラウス:「んっ! これは……」
アンリ:「美味しいでしょう?」
クラウス:「……変わった味ですね」
GM:調味料が一切使われておらず旨味が殆どありません。
クラウス:薬膳料理みたいなものだと感じて、「これは身体には良さそうですね」
ウィル:身体には(笑)。
ゼオル:「たしかにこれは身体には良さそうだよな」と言って黙々と食べています。
GM:川魚と野草を入れて煮込んだだけのようですね。
アンリ:「お口に会うようで良かった」
クラウス:「いや……」(まだ料理に手をつけていないウィルを見て)「ウィルは覚悟して食べてください」
GM:(たしかにウィルは良家の生まれだから、良いものばかり食べてるしね)。
ウィル:「なに言ってるんだよ(笑)。こんなの旨いに決まって……」(しばらく沈黙)。
一同:(笑)
ウィル:「いつもこんなの食べてるのかい?」
アンリ:「そんな」(とんでもないと手を振って)「いつもはこんなにお魚入ってないのよ」
クラウス:これは手ごわい(笑)。
ウィル:「ああ……そうなんだ……」(小声で)「もっと違うものを入れたほうがいいような気がする……」
アンリ:「ねぇ。それより、お話を聞かせて欲しいのだけど」
ゼオル:「なんの話だ?」
アンリ:「一番知りたいのは、どうしてあなたたちはここを欲しがっているのか?ってこと」
ウィル:「なぜ聖域の遺跡に眠る魔法の物品を欲しがっているのかということかい?」
アンリ:(うなずく)。
ウィル:「すでに何度か話したけど俺たちの国はよその国に狙われている。そこで、自分たちの国を守るために、よその国と同じかそれ以上の力が必要なのさ」
アンリ:「あなたたちの国を狙っている人たちは神様の遺産を使ってるの?」
クラウス:本の間に挟んであった世界地図を取り出して「これを見てもらってもいいかな」と言って説明を始めます。
クラウスは世界地図を指差しながら、あらためてアンリに対して仮想敵国であるギルモア王国などが聖域を荒らして魔法の物品を手に入れて力をつけていることや、レイフィールド王国と他国との関係について説明しました。
アンリ:「そんな状況でもあなたたちは聖域に残された遺産を奪おうとせず、わたしたちと仲良くしようとしている?」
クラウス:ウィルの方を見て、どうするつもりなんだといった渋い表情をしました。
ウィル:「先ほど戦っていた俺が言うのもなんだけど、俺はできれば争いなどせずに皆が仲良く日々を過ごせる世の中であって欲しいと願っている。ギルモア王国が和平条約の締結を要求してくるならばそれをのんでお互いに平和な生活をしていたほうがいいんじゃないかと考えている」
クラウス:「ですが……」ダガーを取り出して「ギルモア王国というのは我々に対して握手を求める振りをして……」(握手を求める手と逆の手で持ったダガーを突き出して)「隙あらば首を刈ろうとしてますからね。それさえなければこちらも素直に手を出せるんですが」
ゼオル:「そんな奴と仲良くはできないよな」
アルト曰く、武器は預かっておく……って、何やってんだ、クラウスッ! そもそもお前はダガーを所持していないだろッ!! ってところはご愛嬌です(笑)。
クラウス:「ちなみに違う解決策があればと思って聞くのですが、クローディア様の遺産を私たち外界の者にわけてもらうというわけにはいかなのでしょうか?」
アンリ:「長老も仰っていましたが、できれば使いたくないのです」
ゼオル:「どうしてだ?」
アンリ:「神様がご不在なのに、わたしたちが勝手に神様の所有物を使うわけにはいかないでしょう? 勝手に神様の遺産を使う者には、きっとばちがあたりますよ」
ゼオル:「そうか、すまなかった。さすがはクローネの民。聖域の守り人というわけだな」
アンリ:「……でも、レイフィールドという国が二つに別れているというのであれば、片一方のわたしたちに敵対する方々が居なくなってしまえばいいのですか? そうすればあなたたちはひとつになってわたしたちと仲良くできるのですか?」
ウィル:「それはわからない。今はまだギルモア王国の脅威がそこまで表面化していないから、女神クローディアに対する信仰心が勝って聖域に手を出すことをタブー視している人たちもいるのかもしれない。だから、ギルモア王国による侵略が始まってしまったら、また我々の中から聖域を侵そうとする者が出てこないとは限らないんだ」
アンリ:「なら、クローネの民の力がギルモア王国より恐ろしいということを示せば……」
ゼオル:「それはないな。それに、そんなことになったらかえってクローネの民が持っている力を奪えば、他国なんて恐れることはないって話になる」
クラウス:「今の我々にはこのクローディアの聖域に眠る遺産や深淵の力というものがどれほどのものなのか、皆目検討がつきません。そのおおよその力を知ることができれば、どの程度の影響を与えるか推測はできますが……」
ゼオル:「実は蓋を開けてみたらこの聖域には戦力になるものは何一つありませんでした……っていうなら話しは早いんだが。そうなれば誰も目をつけなくなる」
クラウス:「しかし、前回の戦いで兵団が壊滅させられてますからね」
ゼオル:「いまさら何もないじゃ通らないか……」
クラウス:「クローネの民が本気をだせば、今回の強硬派の兵も壊滅することができるのかもしれませんが、私もウィルと同様に国の同胞が殺しあうことを望んではいません。被害が大きくなればギルモア王国に付け入る隙を与えてしまうことにもなりますからね。それをわかっているはずのベネット伯やオルコット大公がここを攻めるということは何らかの攻略法があるのかもしれません……」
アンリ:うなずいた。
クラウス:「もうひとつよろしいですか? 先ほど話されていた守護者を見つけるというのは何かたいへんなことのようですが……」
ゼオル:「俺たちにできることがあれば、できる限り協力するぞ」
アンリ:「本当ですか?」
ウィル:「そもそも、守護者というのは何なんだ?」
アンリ:(少し悩んでから意を決したように)「……これから話すことは内緒にしてくださいね」
一同:(うなずく)。
アンリ:「深淵の力を使うためには、深淵の力を使う御子を守るための守護者が必要です。守護者になるためには、試練を乗り越えなければなりません」
ウィル:「その深淵の力を使う御子というのは?」
アンリ:「わたしです」
一同:「えっ!?」
アンリ:「ですが、守護者が居なければわたしも安心して深淵の力を使うことができません」
ゼオル:「深淵の力を使えない?」
アンリ:「はい。魔法を使う方ならおわかりになると思いますが」
クラウス:「たしかに私もウィルやゼオルが近くに居ないときに魔法を使うのは、少々腰が引けてしまいますね」
ゼオル:「それは、魔法を唱えるまでに時間が掛かるとかそういうことか?」
アンリ:「時間は掛かるでしょう。わたし自身もまだ深淵の力を使ったことがないので、お話しとして聞いているだけです。わたしが知っているのは、深淵の力を使える御子は、今はわたしだけであるということ。そして、御子が深淵の力を使うためには守護者を選ぶ必要があるということだけです」
ウィル:「深淵の力を使ったことがないということは、それがどのような力なのかもわからないのか?」
アンリ:「あなたたちの方が詳しいと思います。わたしは以前の戦いのことをあまり詳しくは知らないんです」
クラウス:「以前私が読んだ文献には、クローネの民は国の研究者たちがまだ実用化できていないほど強力な黒魔法を自由自在に操っていたと記されていました。私が昼の戦いで見せた雷撃よりも遥かに高位の黒魔法を使える可能性が高いでしょうね」
アンリ:「……こんなことを外界人のあなたたちにお願いするのは心苦しいのですが……。もし協力をしてくださるなら、わたしはあなたたちに守護者をお願いしようと思っています」
一同:「えっ!?」(突然のことで少し考え込む)
ゼオル:「守護者ってのは三人で足りるもんなのか?」
アンリ:「わかりません。ひとりでいいのか、もっとたくさん必要なのか。ただ、わたしが決めるのだと言われてきました」
クラウス:「なるほど」
アンリ:「お願い……できますか?」
GM(アルト):(扉をノックして)「いいか? サンディから皿を下げてこいと言われてきたんだが……」と言ってアルトが入ってきました。
アンリ:ナイスタイミング!
GM(アルト):「なんだ、空いてるじゃないか? 持って行くぞ」
アンリ:では、アルトを手伝ってお皿を持って、「それではまた後で」と言って外へでていきました。
こうしてウィルたちはアンリの突然の願いに戸惑いつつも、答えを出せぬままクローネの集落で一日を終えることとなりました。当初はカーライルの依頼を受け、クローネの民を退避させるためにやってきた彼らですが、ここにきて別の流れが彼らを取り巻きつつありました。
GM:というわけで、ウィルたちはクローネの集落で休息を取ります。八時間の休息で生命点と精神点をそれぞれボーナス値をキーとしたレーティングロールを行って、その値の分だけ回復させてください。
クラウス:精神点の回復量が少なくないですか? それだと回復しないこともありますよ?
GM:うん、そうだよ。でも平均値だと2点は回復するでしょう? それと八時間毎の回復量だから、丸一日休息を取ればもっと回復するよ。
この自然回復のルールに関してクラウスは不服そうでしたが、LOSTでは瞑想があるのでその分のバランス調整だと納得してもらうしかありません。LOSTでは中期的計画を立てて精神点を管理しましょう。